スパイダーマン:ホーム3部作が終った事について。|『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想/考察【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

スパイダーマン:ホーム3部作が終った事について。|『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想/考察【ネタバレ注意】

2022年1月14日金曜日

MARVEL movie

X f B! P L

 ということで公開から1週間経ったことでそろそろネタバレ解禁の感想と気になったところを書いてみたいと思います。短評で語った通り今作品『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はこのMCUスパイダーマン:ホーム3部作とでもいうべき作品を綴じるのに相応しい作品になっていたと思います。(あえて閉じるではなく綴じると使っています)MCUスパイディはコミックブックのように『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』で唐突とも言える登場をし、その後トム・ホランドが演じるスパイダーマンは単独作品『ホーム・カミング』で本格的にMCUの世界に降り立ちました。そして『ファー・フロム・ホーム』を経て『ノー・ウェイ・ホーム』をもって独り立ちをしたと思います。とは言えいろいろ気になるところもあるしそう言ったところをちょっと書いてみたいと思います。


<ありがとう>編『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』15秒予告|YouTubeより|ソニーピクチャーズ公式

※いきなり核心部分の話をしていますので何卒本編映画をご鑑賞頂いてからお読みいただきますようお願いいたします。【ネタバレ】

そしてホームへ

 ぶっちゃけていうとストレンジのルーン魔術でスパイダーマンの正体はピーターであるということは忘れ去られたんですが…これピーターの事も全員忘れてしまう呪文だったようです。でも学校の書類とか一切合切も消えてる感じである意味存在を消去する魔法って禁術じゃないのか?ストレンジ、それを最初の時に軽く使おうとかヤバくないかって思いました。これは最初の時の呪文とクライマックス時に使った呪文は掛かり方が違うのか?細かい所が気になるtonbori堂です。


 その術のため愛するMJと親友ネッドまでピーターの事を忘れてしまいました。また会いに行って思い出さなくとも思い出を伝えると術の発動前にMJに約束し、MJのバイト先であるドーナツショップに会いに行ったもののやってきたネッドと、二人の事を思い結局言い出せずに去るピーター。これはもう完全にヒーローの振る舞いだと思います。(想いを伝えてというのも有りなんだけど)そしてたった一人で「親愛なる隣人」としてヒーロー活動をしていくピーターというのは、これまでのスパイダーマンの描いてきたスパイダーマンの雛形にまた戻るという事でそれをライミ版スパイディやアメスパの世界からヴィランを集めあろうことかスパイダーマンも勢ぞろいするという離れ業のオールスター映画でそれ(彼らが出るという噂は制作時から常に出ていましたがまさか本当に出るとは…)をやってのけてしてしまうとシャッポを脱ぐしかありません。ああ脱帽って意味です(苦笑)


 アメコミでは物語のリブート、別ユニバースとしての再出発はよくあるしヒーロー同士の共演(クロスオーバー)もありますがそれでも別の世界のスパイダーマンが一同に介するってのはある種の夢でもありますから。アニメーションでは新しいスパイダーマン、マイルズ・モラレスがピーターの遺志をついでスパイダーマンと奮闘する前に別世界のスパイダーマンが登場するという『スパイダーバース』がありましたが今作にもその影響はあると思うんです。それは不殺のヒーローとしてのスパイダーマンとしての確立でもすごく感じました。言わば3作とMCU客演3作を経て彼は「ホーム」に戻ったんだなとそこでタイトルが『ノー・ウェイ・ホーム』(ホームへの帰り道が無い)なのに戻ったはおかしいじゃないかとなりそうだけどそれは今作での事象を端的に示しているのと自ら退路を断ち前へ進むピーターの不退転の決意を示すタイトルであった。だからこそ彼はスパイダーマンとしての独り立ちへと戻ったのだとも思えるのです。意識的に「ホーム」を入れてきたのはそういう事じゃないかなと。


 もともと3部作になればいいなという話はパンフレットのジョン・ワッツ監督のインタビュー記事にありましたけど、先を固めてはいなかったけれど3部作としての構想はあったはずで内容はこのCOVID-19パンデミックの影響で変更はあったでしょうけれど(Twitterでは初期のイメージボードが出てきており『ドクター・ストレンジ2』が公開時期が遅れたため変更があった模様です)ピーターの物語としてハイスクール篇完結みたいな様相はあったと思います。だからスタート時は1年から始まっていたわけですし。ブリップで5年飛ばししていたとはいえ卒業の年にヒーローとして拠って立つ物語にしたのは天晴れだなという話ですね。ビターですが脳天気ハッピーエンドはやはりスパイダーマンには似合わないという話です。


 当然脳天気ハッピーエンドというのもあってもいいかもしれません。高校生で生意気で何も考えていない(一応考えているけれど助けるという事だけで反射的に動いている事が多い)トム・ホランドのピーターはその力に想い悩みMJとの関係でも悩むトビー・マグワイアのピーター、両親の事、クモに噛まれて力を経てそしてまたその力について悩むアンドリュー・ガーフィールドのピーターとは違った魅力がありましたが今回はその先輩ピーターに囲まれ彼らの通った、いやそれよりさらに厳しい道を往くのかというのは流石に堪える人もいるかと思います。正直ちょっとした救いは欲しいかな(分かりやすいということで敬遠されるかもしれないけど)とも思いましたがピーターはこの街(ニューヨーク)にいる。そして「親愛なる隣人」として活動しているというのがその答えなのかなと思うのです。それはトム・ホランドピーターはMCUの世界に未だ「居る」という事で全てが断ち切られた訳じゃないよという。だからこそプロデューサーのケヴィン・ファイギとエイミー・パスカルのインタビュー記事で次作の(次も3部作という噂も)企画があるよという話をしたんだと思います。少し間を空けるとは思うけれど大人になった青年トム・ホランドピーターの活躍に期待したいと思っています。

ビターエンドになった事とキュアとセカンドチャンス

 前回の【ややバレ】感想で書いたキュア、治療についての引っかかり、これについても書いておきたいと思いますが、そもそもトムホピーターがこのMCUにやって来たヴィランをストレンジの術で送り返せば問題なかったんですがその先に待つ死を回避するためというのは「不殺」のヒーローだから分る話なんですがそれでどんどん状況が悪化していきやがてはメイおばさんが命を落としてしまう事態になってしまうこの展開。そしてその決着のために世界全ての人がピーターの事を忘れる事になりました(さすがに社会保障番号は消えてないと思うんだけどそれもなのかな?)この辺りはもしかするとキャンセル・カルチャーに対するカウンターもあるのかなと。治療するという文脈も悪い事をする、してしまう原因を探り分かったなら適切な手段を施してあげる事も必要ではないかという話なのかなと。これには別の話でキャンセル・カルチャーに関する件をTwitterで見かけたりポッドキャストで聴いたこれもまた別の文脈なんですが去年の音楽シーンのみならず日本でもあったキャンセル・カルチャーについての言及でもしかするとあのシーンについてはそうなのかもしれないなと思った次第です。特に日本では宗教的背景もなく断罪だけして後は知らんぷりというキャンセル・カルチャーの悪い部分があってやった事は酷い事でそこはしっかりと批判されるべきではあるが本人が真に反省しもしくは反論したい時にセカンドチャンスの芽も与えないという部分でもしかすると米もセカンドチャンスが与えられにくくなっている。それは世界の分断であったりBLM運動やANTIFA、Qアノンまでを包括したものではないか?と思ったのです。映画は社会を映す鏡でもあると思っているので普通なら帰す方法が分からないので探そうって話がそうではなくヴィランのセカンドチャンスやそれはそれぞれのスパイダーマンのセカンドチャンスにもなっていくという(トムホピーターだけが救われていませんがそれはまだこの世界が真に救われていないからとも)構造もそうなのか?と。考えすぎかもしれませんがそう思ったので前回は引っかかった部分がここ数日で色々見聞きしたことで別の視点が産まれたので記しておきます。

マルチバース問題

 ここからはマルチバース関係で気になったところ書いてみたいと思いますが、今回のヴィラン(敵役)はストレンジの秘術の暴走により他のユニバースからピーターがスパイダーマンと知っている者が呼び寄せられたとなっています。ドック・オク、グリーンゴブリンことノーマン・オズボーン、エレクトロことマックス・ディロン、リザードことコナーズ博士、サンドマンことフリント・マルコの5人です。あと一人ヴィランが登場すればシニスター・シックスという話もありましたがソニーで先行した5作品よりという事でこうなったんだろうと思います。だけどここにやってきた彼らは何時の時点のノーマンやドック・オクなんだろうかと。ストレンジが彼らはスパイダーマンと戦って死ぬ運命(サンドマンは明確に死んだ訳じゃなく砂嵐となって消えたはずなんだけれど。)ということでトムホピーターは彼らにセカンドチャンスを与えるために奮闘することになるんですがそれで彼らが戻ったら…それ時間軸に分岐イベントが起こってしまうのではないかと。つまり映画で描かれた時間軸と『WHAT IF…?』タイムラインが発生してしまうのでは?それをも今後ストーリーとして映像化にするのか?とかかなり大胆に世界を変える事を一方ではしてしまったかなと。

スパイダーマン『WHAT IF…?』

 起こってしまった事は変えられなさそうですが(例えばアメイジングスパイダーマンのユニバースではやっぱりグウェンは死んでしまう事になってしまうという、ストレンジが時間改変を仕掛けても絶対点なので変更出来ないみたいな事)例えばドック・オクがヒーローサイドになる世界線みたいなものが出来る(実際2の最後で彼は自らを犠牲にしたのでその性質はそもそも善き人でした。)んじゃないかと。もしかするとアニメの方は『スパイダーマン』問題は無さそうなので(でなければ『WHAT IF…?』での登場は無いはず)『WHAT IF…?』シーズン2では『ノー・ウェイ・ホーム』受けてのストーリーが出来るかもしれません。そしてもう一つ。違うピーターが3人。そしてライミ版スパイダーマン、アメイジングスパイダーマンでは存在していたオズコープについて、MCUの世界に来たノーマンは自分の会社を探しますが無かったと発言しました。MCUには本当にオズコープは存在しないのか?

MCUにはオズコープは本当に無いのか?

 それは他のヴィランズの事も含めてですが今は確かにノーマンの言う通りオズコープはMCUの世界には「今」は無いのかもしれない。だけど今後例えばノーマンなりハリーが小さな会社であったオズコープでなんらかのブレイクスルーを果たして急成長し、全米に知れ渡る表舞台に登場するかもしれません。今のところスターク・インダストリー以外で目だった企業体としてはハマー・インダストリーぐらいでしたがその他の企業体もMCUの世界には当然あるのでオズコープが元スタークタワーを買収しオズコープタワーになる事も考えられるのです(スタークタワーの買収した人物、企業は未だ不明)その時ピーターはグリーン・ゴブリンの経緯を知っているので注意を払うかもしれないし兆候をさぐろうとしてノーマンなりハリーと知己になるかもしれません。いやノーマンはノーラになっているかもしれません。『スパイダーバース』のマイルズの世界ではドック・オクはオリヴィアでしたし『WHAT IF…?』や『LOKI』を観た後では何が起こっても不思議ではないのでは?そう可能性は無数にあるしMCUでのコナーズ博士ともこれから出会うかもしれないのです。それは今後のMCUスパイダーマンのお話次第だと思います。(もちろん登場はずっと後になるかもしれませんが。)それにニューヨークには幾つもの脅威があります。「親愛なる隣人」として犯罪者と戦うクライムファイターとしてニューヨークで活動するなら、あの男とも対峙する事になるかもしれませんよね?コミックスでのスパイダーマンの天敵であり『スパイダーバース』でもメインヴィラン(敵役)だったあの「おじさん」。

スパイダーマンvsキングピンvsデアデビル

 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が米本国で公開された週にドラマ『ホークアイ』でマヤの「おじさん」の正体がキングピンであることが分かりました。その週公開の『ノー・ウェイ・ホーム』でマット・マードック(デアデビル)がカメオ登場し、そしてその翌週の『ホークアイ』での最終決戦の地はロックフェラーセンターのクリスマスツリー下のアイススケートリンクでその場面をスイングするスパイダーマンがエンドロールに流れるなど、これはリアルタイムで観ていた米のMCUファンは興奮したんじゃないでしょうか。tonbori堂もおおっ!ってなりましたよ。まずマットがしれっと弁護士としてピーターの弁護してたり、そこにハッピーも同席していましたが観た時は忘れてたけどやたら絡むなマットって思ったらハッピー役ジョン・ファヴローはベン・アフレックが演じたデアデビル/マット・マードックで親友で相棒のフォギー・ネルソン役をしてたんですよね。そういうところも抜かりの無いマーベル・スタジオです。


 今後、マーベル・スタジオ側でも『デアデビル』の活躍や、それこそNetflix版マーベルの『ジェシカ・ジョーンズ』『ルーク・ケイジ』『パニッシャー』が戻ってくる可能性も大きくなり(あ、『アイアンフィスト』を忘れてました(^^;)ピーターと絡んだりすることもゼロではなくなってきました。まあがっつりという点ではキングピンが一番ではないかと思っているですがどうでしょう。

MCUスパイダーマンとSSUスパイダーバースへ

 最後にここまでのオールスター感謝祭的なスパイダーマンを作ったマーベル・スタジオ、今後も幾つかのプロジェクトが準備されているとの事ですがソニー・ピクチャーズはマーベルのIPで映像化権を持つキャラで独自のSSUというシェアワールド作品をリリースするという話です。ヴェノムについては出オチ感がありましたけど(あれは思わず「いやアンタ出オチかよ!」って言いそうになりました。)公開待機中『モービウス』にはヴァルチャーことエイドリアン・トゥームスと思われる人物がいたし、今回の作品後に『アメイジングスパイダーマン』の続編が再起動するという噂も入って来ています。まあスパイダーマンというIPはソニーにとってもドル箱。でも『アメイジングスパイダーマン』はよく出来ていても観客が動員出来なかったところでマーベル・スタジオが当時ソニー・ピクチャーズの会長でスパイダーマンシリーズのプロデューサーでもあったエイミー・パスカルと交渉し『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』への客演を経てソニーとの協業が始まりました。『ファー・フロム・ホーム』後は利益の分配で揉めたけれどトム・ホランドがパスカル、マーベルのファイギを取り持ったとも言われています。そうしてこの『ノー・ウェイ・ホーム』が製作された事を考えるとより感慨無量ではあるんですが、ソニーが自分のところのユニバースを作るからマーベル側は要らないとかなるとまた話がややこしくなるかもなと少し危惧しています。それは『アメイジングスパイダーマン』3の話や『モービウス』後のSSU『クレイヴン・ザ・ハンター』(キャスティングされているのはエイジオブウルトロンでクイックシルバー/ピエトロを演じたアーロン・テイラー=ジョンソン)など拡大化を計っている模様でそこから独自路線を歩むのでは?というものです。今のところは両者の関係は良好のようですけれどいつ何時また違えるかもしれないのでそこはこのまま良好で居て欲しいですね。そして更なるスパイダーバースと各キャラクターの冒険を観たいものです。

※観てすぐのファーストインプレッション【ややバレ】

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』短評【感想】【ややバレ】

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』短評【感想】【ややバレ】

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』短評【感想】です。【ややバレ】完全ネタバレではないけれど内容が推察できる程度にはバレています。

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※ソニーピクチャーズのスパイダーマンシリーズ。それぞれのヴィラン(悪役)の成り立ちを観ると今作の理解がより深まるかと思います。

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