マトリックス3部作の直接の続編である『マトリックス レザレクションズ』年末の合間に鑑賞してきました。フルサイズIMAXとはいきませんでしたがとりあえずIMAX規格のシネコンスクリーンです。で、最初に思ったのは「愛」についてのお話で、実は3部作もとどのつまりそうなんだけ全く通じて無かったので今回改めて自家撞着になりかねない設定を持ち込み第1作目を解体してメタな視点から見つめ直した映画だなと。面白いかどうかで言うと前半は凄く面白かったですね。メタ視点というより繰り返される毎日というのは如何にも「押井イズム」だし、なので後半部分は若干そこに落ち着きましたかという感じです。ではざっくりとしたあらすじの後その辺りを書いてみたいと思います。
映画『マトリックス レザレクションズ』本予告 |YouTubeより|ワーナー ブラザース 公式チャンネル
三月兎を追いかけて/STORY
トーマス・A・アンダーソンはゲームクリエイター。世界中で大ヒットしたゲーム『マトリックス』3部作を作った男だ。今は『バイナリー』という仮想現実をテーマにしたオープンワールドのゲームを製作している。しかし最近彼は何かここにいる自分に違和感を覚えていた。所属しているゲーム会社デウス・マキナのCEO、スミスに再び『マトリックス』の続編を作るように命じられる。
その前にこの世界への違和感をかかりつけのセラピストに相談するとセラピストは大量の青いピルを渡し心配ないとアドバイスする。しかし日増しに違和感が高まるアンダーソンの前にティファニーという子連れの女性とカフェで出会う。何故か彼女を知っていると感じるアンダーソンであるが何故知っているのかは思い出せなかった。別の日に同じカフェで出会う2人。身の上話をする2人、ティファニーはググってアンダーソンが有名なゲームデザイナーであり『マトリックス』の作者だと知ったという。ティファニーはゲームのファンでありとりわけトリニティに憧れバイクを趣味とし今もドゥカティに乗っているとアンダーソンに話した。ますます彼女を良く知っているように思うアンダーソンだったがやはり思い出せないままその日は別れる2人。
アンダーソンがデウス・マキナ社に出社すると突如避難を告げるベルが鳴り響いた。『バイナリー』のファンがアップデートに怒って爆弾を仕掛けたという予告電話があったのだ。何故かその時にアンダーソンの携帯にメッセージが入りドアを開けろと指示が入る。誰だという返信に返事はなかったがアンダーソンはドアを開けてトイレに駆け込むがそこに待っていたのは一人の男だった。そしてアンダーソンに今いる現実は本当の現実ではないといい知りたければこの赤いピルを飲めと差し出す。アンダーソンはマトリックスの救世主「ネオ」だというのだ。俄に信じられないアンダーソンはオフィスに戻るが駆けつけた警官隊と男との激しい銃撃戦が始まりそこにスミスが加わってオフィスは破壊された…はずだったがアンダーソンが目を覚ましたのはセラピストのオフィスだった。彼はアンダーソンにまた発作が起きてビルから飛び降りるところだったという。翌日オフィスに出社しても破壊の跡もなくアンダーソンはますます混乱し屋上から飛び降りようとして引き留められる。引き留めた女性はやはり彼をネオと呼び以前飛び降りようとした彼を見てこの世界がマトリックスと気が付いたといいずっと探していたと告げられる。そして真実が知りたければ自分に付いてきてほしいとアンダーソンに告げる。アンダーソンは再び銃撃戦の時の男に引き合わされ青いピルと赤いピルを差し出され選択を迫られる。この「現実」か本当の「真実」かを。果たしてアンダーソンはマトリックスを救った「ネオ」として再び覚醒出来るのか?そして何故死んだはずの彼が生きていたのか?ティファニーはトリニティなのか?ザイオンはどうなったのか?アンダーソンはネオとして再び運命を選択する事になる…。
我思う、故に我あり
ということであらすじは前半部分のダイジェストなんですが何故かぐるぐると同じところで迷っているネオ(アンダーソン)彼が真実の姿にまた行きつくところはなんども不自然に繰り返される日常ということで『うる星やつら/ビューティフル・ドリーマー』や『イノセンス』を思い出せる繰り返すという行為でちょっとゾクゾクしましたね。ああいうメタな視点でどうなっていくのかをもっと観ていたかったんですがやはりネオは目覚めなくては話は続かないし。ただオチがちょっと乱暴だったかなと感じました。確かにマトリックスの支配者たるデウスエクスマキナに今までのアーキテクトに対し新しいアーキテクトであるアナリスト=セラピストがネオとトリニティとの関係性に目を付けて新たな人間発電安定化装置にするというのは上手く収まっているし驚いたけどゾクゾクはしないんですよね。
それは最初の『マトリックス』から『マトリックス リローデッド』『レボリューションズ』での事からザイオンを抜いた話でもあるから。仕掛けとしては面白かったんですがバッグスにネオが知らずにサインを送っていたプログラム・モーフィアス(スミス)などをもう少し上手く回してくれればもっとワクワクしたんじゃないかなと思っています。
それでも続編を作れと言われて一時は辟易していたんだろうなという思いを作品中に吐きだし(ゲーム『マトリックス』3部作の続編製作会議中に語られるワードたちはほぼラナ・ウォシャウスキーの感じた事ではないかと)実は真の救世主はという部分やネオが再び覚醒してから案内された新たな人類の都市でマトリックスを作り出した機械たちが争いはじめザイオンもまたそこに巻き込まれていったこと。人類と歩もうとしたAIも現れた事は人類というか知性を持つにも関わらず争いはどうして無くならないのという思いのストレートな現れだなぁって感じました。ラナ自身もラリーであった頃からカミングアウトして性適合手術を受けたけれどそれまでにいわれなき中傷やそれによる迫害時には脅迫めいたこともあったんではないかというのは想像に難くありません。そう考えると4で改めて前回と同じような覚醒の物語をしたのは「目を覚ませ」とメッセージ送ったけどビジュアルや設定、張り巡らされた謎に翻弄され届いていなかった、だから再度メッセージを送るつもりでこういう風にしたのかな?とも思うのですがどうでしょうか。
愛ゆえに
そして結局は愛をもって相手を知り、信頼する事しか物事は解決しない、それには肌の色だけではなく性別、年齢、人種は関係ないんだよというシンプルだけど力強いメッセージが込められたクライマックスとなっていました。そしていささか露悪的ではあるけれど何も考えないまるで日々無為無策に生きていると為政者に操られるよっていう事をそう表現しますかと、具体的にはbotとして表現されたプログラムなんですがコマンド一つでゾンビや人間爆弾(ビルから墜落してくる)ってのは恐ろしいですよね。とtonbori堂は取ったんですが、ラストに至るところでやっぱり『マトリックス』で語られている事を再度焼き直しではなく語り直したという。それはやっぱり「愛」なんですよっていう話であったと思います。それを確信したのはエンドロールでのメッセージですね。ただそうなると今まで組んできた妹の事は?ってなるんですが…。でも近しい者ほどこじれると大変というのもこれまた真理。何があったかは分からないんですが妹の方も何かしらの作品を準備しているのかどうかは気になるところです。
最後に
人気シリーズが故に続編をという話を随分と蹴っていたのは噂で聞いていましたけれど(それを揶揄するかのようなデウス・マキナ社での会議風景も皮肉が効いてましたが)それを入れてなお続編に着手したというのは勇気があると思うしよくぞ作ったなと。どうしたって「ロバは旅に出ても馬になって戻ってこない」んですから。でも皆まず第1作目を越える衝撃を求めるはず。そこをいやこの映画のコアはそこじゃないんだっていうのをメタ視点をもってして描いて見せたと思います。当然すんなり入る人もいるだろうしそうでない人もいるでしょうけど。それも含めて極めて『マトリックス』っぽい映画だったなと思いました。
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※アニマトリックス [Blu-ray]|Amazonより|アニメで描かれたマシンシティの話やマトリックス前史を含めサイドストーリーながらも正史として扱われるストーリーなので興味のある方は是非。
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