ジョーカー星団の宇宙海賊|『ファイブスター物語/F.S.S』考察/備忘録【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

ジョーカー星団の宇宙海賊|『ファイブスター物語/F.S.S』考察/備忘録【ネタバレ注意】

2022年8月14日日曜日

FSS manga

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 若干古い話ですが現在の『緋色の雫』の前『カーマントーの灯火』に出てきたオーダ宇宙海賊。登場についてはそれ以前に出ていたのでその頃からジョーカー星団の宇宙海賊については気にはなっているんですが存外それほど資料があるわけでもなく、松本零士先生が描くような自由を求めて戦い、宇宙を彷徨う孤高の集団…ではないなと考えていました。幾つか考えられるうち一つは宇宙の自警団的存在(自警団というよりは民間の警察組織的な役割を持つ、ジャコーはヘアードに自らを治安騎士団と説明していました。)であるイオタ宇宙騎士団も最初は宇宙海賊って書いてあったことから(第1巻の勢力表のそれ以外のところにあり)この頃の作者の永野護の中での宇宙海賊っていう表記は多分、名前こそは宇宙海賊ですが実質的には戦国時代の村上水軍のようなジョーカー星団の各太陽系にある航路を縄張りとして航路の安全を保障する代わりに通行税をとるような集団を想定していたのではないかと思われます。ただそれなら海賊行為っていう話でもないんですが『カーマントーの灯火』のエントリで書いたジョーカーの宇宙海賊は私掠船(オーダには正式な免状はなさそうですが、例えばブーレイなどは雇われ兵として登場したとき航路へ無理な割り込みしていたしハイドパイパーもザームラントで宇宙戦闘をしていたと言っていましたので傭兵騎士団にはそういう役目もあったかもしれません)に近い連中もいるという話も考えられます。

 本当に松本先生のキャプテン・ハーロックのような自由のためにこの旗に集えみたいな自由人の集まり、自由のために戦うみたいな人たちはジョーカー星団にはいない?って訳でもないでしょうけどジョーカー星団会議に列席する連中がひしめき合うところではなかなかそれを通すには難しいんでしょうね。もっともローゼンクロイツ(シャフトが仕切ってたザンダシティの犯罪組織)は自由人の集まりな気がしますがかなり行き過ぎている感が(^^;と脱線。まあ今回は時期をはずしてしまいましたがイオタとオーダの話から見えてきたものを書いてみようかと思います。

ファイブスター物語/F.S.S第10巻/KADOKAWA刊永野護著/ジャコー登場巻
ファイブスター物語/F.S.S第10巻/KADOKAWA刊永野護著/ジャコー登場巻


※毎度のことながら月刊ニュータイプ(NT)掲載/連載分のF.S.S/ファイブスター物語の内容に若干触れておりますので【ネタバレ注意】です。何卒よしなに

出雲(イズモ)・アストロシティ

 イズモ・アストロシティは宇宙に浮かぶ巨大なステーションでありコロニーです。そこに居住している人々はヘリオス鋼の加工生産に関わっている者が殆ど。MH時代はヘリオス鋼ではなくメトロ・テカ・クロム鋼と称されていましたが現在はヘリオス超鋼を鍛え上げた玉鋼を生産しているジョーカー星団一の刀匠でもある泰千錫華がその強みを使って自治権を勝ち得た宇宙に暮らす労働者の希望の星でもあります。とは言え危ういバランスの元での中立ではありましょうが。そのイズモをイオタは拠点としています。


 イオタがイズモ・アストロシティを拠点としているのは宇宙空間が縄張りのイオタとしてはどこかの星を根拠地にするより即応性に優れるという事だけではありません。単純に補給の面や休息する場所も必要だからという身も蓋もない話なんだと思います。基本的にはそこから周辺(縄張り)の巡回(パトロール)と救難活動(SOS)を行っていると推察されます。とは言え一騎士団がそこまで名を馳せているのはそれなりの力を有しているからであり、イマラが加入していたことも大きいのかもしれません。AKDは宇宙軍でのオペレーションを管轄していましたがその前はイオタで大暴れしていたことが三条やジャコーから示唆されています。(現役時代のアティアの鬼姫っぷりは過去回想でもなし。そのためMk2とはいえイオタの作戦を指揮したのは非常にレアケースであると思われます。まあ天照の命ではあるんですが。)それでもイオタがイズモに常駐している事は実はイズモ側にとっても利がある話なんですよね。つまり国家騎士団を持たないイズモにとって(警備のための小規模なものはあっても)イズモにはイオタがいるという事が抑止力になるという事です。ここは双方ウィンウィンの関係ではと。では次はイオタ宇宙騎士団について考えてみましょう。

イオタ宇宙騎士団

 2199の勢力図の時から気になっていた騎士団なんですがここまでAKDと深いかかわりをもつ騎士団になっているとはその時は露とも思っていませんでした。創設者はイオタ・コルテッサ。彼の名前を冠しているところから相当な豪傑だったのか?DESIGNS3ではイオタ・コルテッサは宇宙の民の出身の騎士という事で色々苦労もあったのではないかと推察されます。というのも「カーマントーの灯火」でドーマ連合と元SPK支隊のハル支隊長のやりとりを見ても宇宙の民ってことだけで(オロダムド・ハル支隊長もマグダルのカプセル回収の時のドーマ連合とのやり取りには明らかにドーマに格下と思われており、ヘアードがアデムとしてマグダル探索に来た時の彼女とのやりとりから考えても彼は宇宙民出身だと思われる)かなり差別的な見方があるのではと感じました。


 イオタ自身は宇宙の民出身騎士という出自からクバルカンやハスハの宇宙軍所属の騎士たちと交流を深めトラブルシューター(揉め事解決屋)のような事をしていたようです。そこで自らの騎士団を立ち上げることにしたとの事なんですが興味深いのは騎士団の成立には採掘惑星の少ない資金だけではなくAP騎士団ダンダグラーダ宇宙都市に常駐するSPKとの連携もあった(テキストはAP宇宙騎士団ダンダグラーダとありましたけど)との記述がありました。ただ魔導大戦でSPKダンダグラーダ支隊はミノグシア連合を離脱しドーマについたことでイオタとの関係は現在は悪化していることが伺えます。でもそれまでは共に宇宙海賊などの取り締まりで協力していた関係ではないかと思われるのです。そのためドーマを落とせばダンダグラーダもミノグシア連合に戻る事は考えられますがそれは今後の展開次第です。


 三代目団長ジョルジュ・スパンタウゼンは宇宙の戦神とまで称される宇宙戦闘のプロフェッショナル。凄腕なんだろうなという雰囲気は纏っているんですがスパンタウゼンも彼が戦う戦闘シーンは描かれておらず実質周りが豪傑であったというシーンだけでしかもそれはミューズがカステポーで壊し屋イラーのアシュラ・テンプル(MH/GTMではホウライ)を撃破した時の助命嘆願書で触れられたのみ。スパンタウゼンがカステポーで営んでいる騎士専門のバー、WAX TRAXのマスターの道はDESIGNSによるとこれは自分で選んだ道との記述があります。イオタはイズモに拠点を置いてはいますが大きな惑星にも寄る辺がないとやはり不都合が多い。特に情報収集の重要性は独立騎士団だからこそ。また新人のリクルートにしても窓口がボォスのような大きな惑星、そしてカステポーのようなどの勢力も出入り自由な地域にあるのは必須でしょう。イオタが地上(特につながりの深いハスハ、ミノグシア)で戦闘を行う事になった場合のバックアップとしても機能する事も見逃せません。それよりも人脈という点でも大きいものがあるのも事実。WAX TRAXが騎士の情報交換の場となり各騎士団の者たちもそこで知己を得て繋がりをもてば一触即発の事態でもチャンネルが設けられるというイオタの事情だけでなくそこには大国騎士団(特にハスハ)の意思も薄っすらと見えます。

アティアの鬼姫

 イマラがどうやってイオタの息子タブロと知り合ったのか?そして三条から姐御(アネゴ)と呼ばれているという事はミラージュ入団前にイオタに在籍していたまたは掛け持ちしていたのでは?この辺りは物語の本筋ではないもののトラフィックスの外伝か過去の回想でも良いのでちょっとだけ挿し込んで欲しい気がします。タブロは本編では登場していないし、ジャコーの父でありイオタの二代目としか出てこないため既に故人の可能性もあります。ただ子どもジャコーの時は錫華がニュー、じゃーじゃー姫とともいたときに大旦那(大旦はんと関西の言い回しで)と言っていたので(イオタを引き継がせた)まだ存命かもしれません。しかしイマラの母国であるアティア王国はカラミティの国家です。その姫が何故自警団のような宇宙騎士団に在籍しそこからミラージュ騎士になったのか?というのもジャコーの台詞からなんとなくは推察されなくもないんですがそこが語られる事は無いのかな…。若き日のイマラとイオタのタブロとの出会いとかは二次創作としては面白い話になりそうな気がしますが。

シルバーナイト

 シルバーナイトはアトロポスの登場エピソード、ツアイハイでの一件(チバム城からスカ閣下を撃退まで)がシルバーナイトの仕業ということがWAX TRAXでの導入部でした。そう「シルバーナイト」っていうのは剣聖カイエンのもう一つの銘です。何故ジャコーがこの銘を継ぐ事になったのかは定かではないですが、Dr.ダイアモンドが初登場した時に錫華御前がそう言っていたことで現シルバーナイトはジャコーであるという事が分った訳ですが何故とは語られていません。ダイ・グ殿下とジークの時から考えると、ダイ・グ殿下もクリスとユーゾッタが片腕もぎ取られた時にジャコーも腕飛ばされたと言っていたので、(うろ覚えだけど確か傷もキャラシートにあったはず)イオタ宇宙騎士団の団長の息子としてこの先の騎士としての力をという事でカイエンに手合いしこの先もやっていけるか力を見たという事でしょうか。にしてもぶっ飛ばされながらも致命傷は避けたという事で天位を与えられた上に「強天位」となったのはその力があったという事でしょうが、馬鹿だけど(ヲイヲイ)そこで「シルバーナイト」の銘を継がせたのはその銘が宇宙の民とカステポーという自由な領域にいる人々の護り手としてイオタの若頭に託した…のかなと考えています。「シルバーナイト」って現状騎士の銘としては特段の意味を示すシーンはありません。カステポーのナイトギルドの総評という地位にいたカイエン(ヒッター)がSの意匠のシュペルターマークのみがその人物がカイエンというのを示していたという事がありますが(ミューズの助命嘆願書のシーンでスパンダ法王がそのマークに気が付いた)シュペルターマークを引き継いだというのはその後A.K.Dか自由を護る側かを問われるかもしれないそんな事をふと思いました。

ジャコーは成長してからはその無鉄砲さは…見かけは治まった感じはあるけれど熱い血を滾らせる熱血漢ってところは変っていないと思います。MH彗王丸ではなくGTM賽星アストラガルスを駆ってのシーンではまだまだ母には敵わないって感じでしたが。まだちょっと先にはなりますが彼が「シルバーナイト」という銘の重さと意味に気が付いた時、ミラージュの番外のエースナンバーはどうするのか?彼の大侵攻後の動きも気なりますね。それもこのエピソード群「時の詩女」が終わればすぐにやってきます。

三条 香

 三条 香、読みは「さんじょう こう」と読むそうです。でも三条ならかおりって名前でいらっしゃいそうですよね。調べた事は無いですが😅彼女の初出は確か10巻でジャコーがイマラとともに星団会議に出席したときで、ミラージュ・レフトの「スピナー」ことヒューズレス・カーリーとともにセイレイがジャコーをからかった時にも一緒に錫華御前に会う途中でしたね。懐かしい。その後DESIGNS3では彼女はある人物を見送り、その時この世のものではないものを見る事になるとか、その後もイオタとミノグシア側とのつなぎのためにミース邸に出向いて人質になるとかいろいろ重要な局面に居合わせるいわば目撃者(ウォッチャー)となる感じなんですよね。彼女自身の出自に関してはDESIGNS3が詳しいですが宇宙の民の出自なれどラーンの近衛支隊から誘いを蹴ったぐらいなので相当な女傑です。そんな彼女が手も足も出ない状況で何を見届けるのか?その時もどんどん近づいてきています。

ジョーカーの宇宙海賊

 ダンダグラーダのSPK支隊もSPKはスペース・パイレーツ・キラーの略から分るようにある一定数の宇宙海賊がおり、傭兵騎士団のように大国の下請けのような汚れ仕事からただ単純に交易船などを襲撃し気ままに宇宙を荒らしまわるといった者たちもいると思われます。オーダ宇宙海賊に関しては後者っぽい雰囲気だけど、ブーレイが青銅騎士団を襲撃したところで難民に被害が出たところで赤十字をというルーティンからみると前者のような事もやるというまあ外道働きな連中なのでしょう。当然カイエンのような超の付くほどではないにせよそれなりの賞金首ではあるものの徒党を組んでいるのでおいそれとは手が出しにくい連中であることは間違いなさそうです。もっとも物語の構成上これ以上の宇宙海賊が出てくるとは考えにくく名のある宇宙海賊はオーダだけなんでしょうね…残念。

SPK支隊ダンダグラーダ

 魔導大戦では宇宙の民のためにドーマ連合側についたSPK支隊ではありますが現状ではドーマ連合の傘下の宇宙戦闘部隊の扱いのようです。マグダルの生存が明らかになるかカーマントーで解放の狼煙があがるかどちらかの局面で彼らはドーマ連合を取るのか宇宙の民を取るのか?それは宇宙の民一択でしょってなるんでしょうけどカーマントーでの解放の事もあるので一概には言えませんが、真の詩女が現れた時彼らは宇宙の民のために立つ気がしますね。オロダムド・ハルはそういう漢気のある人物だと思います。

オーダ宇宙海賊

 オーダ宇宙海賊は元々南の海(サザンド太陽系、コーラス王朝のある惑星ジュノーの太陽系です)でやりすぎたとなっていますが…ホントかなあ?大方トリオに目を付けられたんで西の海にやってきた気が凄くするんですが(苦笑)にしてもミラージュ騎士ポシェ・ノーミンのパートナーでコークス博士のAFシェラスタをオーダの頭目はどこでどうやってパートナーとしたのか。普通のお披露目は考えにくいんですが、コークス博士の元に出戻りしていたんでやっぱり普通のお披露目なのかな?海賊でも出入できるもんなんですかね(ヲイヲイ)それともあんな感じだけど元はどこかの騎士団に…うーん分からんです。でも元はどこかの騎士団に属してたけどなら、カラミティのノイエシルチスにいた騎士が放逐されて海賊になってとか、メヨーヨ朝廷が修行の場と称して僧兵海賊みたいなことを(国籍は当然隠して)やってる話とか思いついたんでそういう話も読みたい気がするんですが…まあ無いでしょうねえ(^^;それこそファンの妄想、二次創作ぐらいしか。ただ斜め上から突然別の宇宙海賊が現れる可能性もゼロではないのでイオタ、SPKに互する強力な海賊騎士が登場して欲しいものです(笑)


 ということで次は傭兵騎士団について覚書を書いておこうかなと思います。というのも今月号(2022年9月号)に置いてブーレイの新型GTMブーレイ・ロウカン(琅玕)が登場しまたもや傭兵騎士団に大きなスポットが当たってきました。ということで次はジョーカー星団謎の傭兵騎士団について備忘録書いてみたいと思います。何卒よしなに。

※勢力表にイオタが宇宙海賊って書いてあるのは第1巻なんですが残念ながら現在の1998EDITIONでは掲載されていません。ちなみに宇宙海賊の他「無職」とも。(つまりどの勢力とも繋がりがない設定だったのが1998の時点で見直されたとも思えます。)

ファイブスター物語/F.S.S第1巻1998EDITION(リンクはAmazon)

(たまに品切れ状態でマーケットプレイスの古本が上がっている事があるので、在庫状況をよく確認して最新刊発売時の重版かかった状態でお買い求めになるのがよろしいかと思います。)

イオタ宇宙騎士団についてはDESIGNS3が詳しいです。(リンクはAmazon)

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