ウルトラセブンの『幻』のアレをみた。『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」|tonbori堂特撮話り-Web-tonbori堂アネックス

ウルトラセブンの『幻』のアレをみた。『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」|tonbori堂特撮話り

2014年3月28日金曜日

drama SF 特撮

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 「幻の」と言われるものはある意味幽霊と同じで『正体見たり!枯れススキ』なのかもしれない。ただその宇宙人が被爆していたということはやはり重いのだ。

ウルトラセブン45周年記念PV/YouTubeより/ウルトラマン公式 ULTRAMAN OFFICIAL by TSUBURAYA PROD. -

封印されたストーリー

 なんのことか解らない人は「ウルトラセブン 幻の」または「ウルトラセブン 封印」のキーワードで検索して片っ端から当ってみよう。え?不親切すぎるって?確かにそうだ。なのでここからは観ていないまたは元ネタに理解できない方のために、このリンクを貼っておく。

(参照|ウィキペディア|スペル星人)

 もうこれでお解りだろう。そう『ウルトラセブン』欠番となった第12話『遊星より愛こめて』である。で、何を言いたいのかというと確かに幻と言われているがこれはリンク先の言及にもあるように実際に観た人にはあまり評判がよろしくない。また実際においらも鑑賞してみてそう思ったがそれ以上にあのメトロン星人のちゃぶ台の対峙を撮った実相寺監督が演出したのかと思う位普通だった。確かに突っ込みどころ以前に物語も破綻しているのだが、奇をてらったというか実相寺アングルとも呼ばれるなめるようなカメラワークもない。普通に平坦に撮られている印象。

実相寺タッチ

 で特にそれに傾注したいのだ。後年の実相寺監督の演出スタイルやウルトラセブンの無国籍な部分を出すためのロケ地をなるべく異国感の溢れるロケ地が探されていたのに対しそれに逆らうように学校や町の描写を入れていく実相寺監督。実はこの作品の前に放映されていた(先ほどこのリンク先にあたるまで後だとばっかり思っていた人の記憶なんてあてにならないものだ。)メトロン星人の回でもちゃぶ台での対峙などシュールな空間を演出し夕焼けの戦闘を演出した実相寺監督とは思えない。


 いやそうではなくこれはわざとではないのだろうか?この宇宙人、母星が新型兵器で滅亡の危機に瀕したため、別の星系へ治療のための資源として人間の血液を欲した(特に白血球)という設定など、かなり踏み込んでいる。ネーミングセンスとして「ひばく星人」というのはデリカシーがまったく感じられないがストーリーとしては考えさせられる内容だ。今回の宇宙人(元々の放送禁止に至った事になるスペル星人)の造形に口出しまでしてデザイナーの成田亨氏との確執(それまでも度々あったとリンク先に記述アリこの件に関してはぐぐればいくつもの記事がある内容は殆ど同じ、成田氏の手記にこの辺りの経緯が書いているそうだ)に関してもそのこだわりを見せわざわざ宇宙人のケロイドまでを指定までした。そのことを考えると監督の狙いとけれん味が合致すれば面白いモノが生まれるが、そうではないときには非常に凡作が生み出されるという事なのか。


 この回に関していえばメトロン星人の回や第4惑星の回に見られた、冴えは無かった。同様なテーマならギエロン星獣(これは演出も脚本も違う方である)の方が切実に突き刺さる。

 名監督、いや名俳優でもホン(脚本)がまずければどんなものでも名作にはなりえない。それは黒澤監督でもそうだし他のあまたの名監督でも殆どそうだ。ここで例外を認めているのは時として筋無しでも奇跡なようなキャラクターの面白さで突破できる事があるからだ。ただしそれに頼っていつも同じような事をしているとすぐに飽きられる。ワンパターンの美学にはそれに沿ったホンがあってその通りに流れが動くから判っていてもそのワンパターンに皆が泣き笑うのだ。反対に最高のホンがあったとしても、演出が凡庸であったり歯車が噛みあっていないとこれまた凡作になってしまう。この幻を見たことにより今更ながらにまずがホンありきだなということを再確認したと共に、それだけではなく演出、演者の三位一体がとれていないと名作たりえないのだなと思った。

2017.04.20改訂、少し文末を変えました。ホンありきというのは未だにそう思っていますが、それだけでは名作にはなり得ないし、演出だけでもそれは難しい。すべてのピースがかっちりとはまったときに(現場は最悪だったとしても)それは名作になるのではないかという事で、このままだとホンありきで終わっているので、そうじゃないなという事をどうしても付け加えておきたかったのです。スペル星人の回にしても演出は実相寺さんらしからぬ普通の演出で、多分その前の回(メトロン星人の回)でいろいろやり過ぎて大人しくなった事と、スペル星人の造形の事でなんかあったのかもしれませんがその冴えは抑え気味に感じられました。内容自体はいろいろ考えさせられる内容だっただけにその部分もいろいろ思うところがあったので、当時はちょっと何故なんだろうと思ったこともあります。

 こういうストーリーは世に問うてなんぼって思ってるので、この他の凶鬼人間(怪奇大作戦)とかなるべく欠番とか出さず放送して欲しいものだと思います。また出演者の不祥事についても状況は違いますが同様に作品に大きな瑕疵が無ければ冷却期間をおいて放送、上映しても良いのではというのがtonbori堂のスタンスです。内容としてはこのエピソードは今にも通じるものがあるし放送してもいいのではないかと。却って覆い隠す事でそれが歪になるより観た人が判断する方が健全だと考えます。

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