ここんところ時間があればコレばっかり観てる。そろそろ映画館とか本家のスルー映画祭りも再会したいしとか思っているんだけれどなんせこれが面白いんでなんか時間が空くとつい観てしまう。それがこの映画、『独立愚連隊、西へ』だ。
『独立愚連隊西へ』/監督:岡本喜八/出演:加山雄三/佐藤允 |
風の吹くまま、気の向くまま…とはいかないけれど
あらすじ
物語は戦争末期中国大陸で八路軍と大日本帝国陸軍の戦いいわゆる北支戦線で歩兵四六三連隊が八路軍の攻撃を受け玉砕。師団司令部は四六三留守部隊に行方不明になった軍旗の捜索を命じる。第一次捜索隊はこれまた全滅。補充兵として、手違いで戦死公報が出てしまった左文字少尉率いる独立左文字隊が留守部隊の駐屯する玄武関に到着するが・・・・・。
俺たちゃ、天下御免の愚連隊。
これだけでは言い尽くせない。話だけだと四方八方敵だらけの中を敵中突破、困難な任務に立ち向かう…というと厳しい重いストーリーが頭に浮かぶが、全編に渡って重く考えるなスカーッといこうぜ!な空気が漂っている。
多分コレは主役でもある加山”若大将”雄三氏の存在と喜八監督があえてそうしたということが大きいと思われる。だってアヴァンタイトルで軍旗掲揚の文句がナレーションされ(これは多分留守部隊隊長大江大尉を演じた平田昭彦さんだと思うのだがどうだろうか?)行軍中の部隊に重なった途端に銃撃戦。軍旗を持って逃げる将校(軍旗旗手北原少尉、演じるは久保明氏)そこに独立愚連隊のマーチがかぶる。もうここでこの映画がいったいどんな映画か解らない、引き込まれていく。戦争モノだけど妙にあっけらかんとした軍歌。しかも内容はいわゆる戦意高揚じゃない。でも画面では激しい銃撃、爆発。そしてそのまま物語りは軍旗の行方を巡ってドタバタが続く。
役者陣が際立っていて、とくに佐藤允演じる戸山軍曹がまた頼もしい。中国語を操り敵や民間人、ゲリラとの交渉にあたるかと思ったら頭も回る、豪快な古参兵を前作の秘密めいた男ではなく楽し気に演じている。とはいえ荒削りな部分や突っ込みどころもある。(ピー屋のオヤジである早川と参謀のくだりとか。関曹長が最初は去文字の事を出来るやつと見ていたのに後々野望をあらわにしていくるとことか、でも結局そこも後のエピソードに関わってくる。)考えるに喜八監督は反戦ではあったが戦う事には反対はされておらぬように思う。そこんところ結構混同したり分けて考えられない人が増えてきているんで困ったものだがそういった矜持のある連中が苦境を受けても鼻歌まじりで跳ね返す。そういった今では感じることもすくなくなった胆力のある人間を観ることが出来る物語だ。
古き良き西部劇の作法
これは余談だがよく喜八監督は西部劇が好きで後年「EAST MEETS WEST」で時代劇と西部劇の融合をやってのけたんだけれどその西部劇魂が炸裂しているのはこの作品と一作前の「独立愚連隊」の方で物語の骨格が完全に西部劇だった。『独立愚連隊』は風来坊が実は心に秘めた思いをもっていて悪漢と対決、これを退治する。こちらはロードムービーの趣きもあるが駅馬車でフロンティアで西へ向かう人たち(実は兵隊)、ゴールドラッシュかはたまた牛追いか?(実際には軍旗捜索)そしてインディアン(ネイティヴアメリカン)の呼び声、ときの声を左文字小隊の兵隊が上げる。そういったところも喜八監督の遊び心に溢れているが時代を考えると冒険をしたものだと思う。
実際に前作「独立愚連隊」では屍累々など描写がきつい所もあり(現代ではもっとえげつない描写がゴマンとあるが)批判を受けなにより戦争肯定ととられたことに忸怩たる思いがあったそうだ。(独立愚連隊DVDスリーブノートより)それだけにこの作品ではさらに喜劇的な要素を強めた。その上悲劇の要素まで盛り込みテめーらは勝手に戦争やってろ、でもどっこい俺たちはそんなもんでやれはしないぜ規則に縛れたってどっこい自由に生きてやる!ということを表現したかったのではないだろうか。
最後に余談を
さらに余談ついでに喜八監督の熱烈ファンとして樋口のシンちゃんがいるが押井さんもそうじゃないのかなと。喜八組常連の天本英世さんを初代月見の銀二にとか。あと押井監督つながりで言えはパトレイバーの愚連隊チックな設定とか後藤サンのキャラ造形にはメカデザイナー出淵裕さんが熱烈ファンで監督の『殺人狂時代』をゆうきまさみさんに見せて信者にしたとかいうのをどっかで読んだ記憶があるんだけれどその掲載誌がなんだったかが思い出せない。そういう意味でも結構業界ウチでもその影響は大きい監督さんだった。
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追記20171004:
ちなみに『独立愚連隊』は前作『独立愚連隊』そして今作『独立愚連隊西へ』そして『どぶ鼠作戦』と3作あるがWOWOWでこの三作(監督は岡本喜八作品はこの3作のみ)に5本を加え愚連隊シリーズとして放送していた。『やま猫作戦』、『独立機関銃隊未だ射撃中』(以上2本、谷口千吉監督)、『のら犬作戦』(福田純監督)、『蟻地獄作戦』(坪島孝監督)、そして裏愚連隊とも言うべき岡本喜八監督の『血と砂』の計8作。それぞれに痛快な娯楽作もあれば兵隊の悲哀も併せ持った作品もありバラエティに富んでいるので気になる方はチェックされたい。
後藤さんは仲代達矢だったんですか!あのキレ者なのか何なのかよくわからない感じは、言われるとそうなのか~という感じです。
返信削除『どぶ鼠作戦』というのもあるみたいで、私は観る機会がないのですが、どうなんでしょう?
cardhuさん>
返信削除いやー昔読んだ雑誌の記事のうろ覚えなんで確かではないんですが(^^;その類の雑誌は殆ど処分してしまったんでウラが取れませんでした。
でも『大きな声じゃ言えないけれど』出淵さんは天本さんファンでもあるとのことで喜八エッセンスにはやられてはると思います。