全てはカメラに映っている。|『ブレイキング・ニュース-大事件-』感想(2005公開|香港)|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

全てはカメラに映っている。|『ブレイキング・ニュース-大事件-』感想(2005公開|香港)|tonbori堂映画語り

2014年3月29日土曜日

movie

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 香港の鬼才ジョニー・トー〈杜[王其]峰〉の作品。

 エキサイトの本家でも取上げた。(参照)そして日本でもこんなの取れないのかという事も書いた。

リンク|日本でこういうの撮れないの?香港映画『ブレイキング・ニュース』を観て。|Web-tonbori堂アネックス

 この時は劇場で鑑賞したのだがあらためてDVDを購入したことだし本当にオススメできる作品なのでちょっと感想をアップしてみたいと思う。

『大事件』/Breaking News/予告編/YouTube


全て目撃される。

 あらためて観るとオープニングの長回し13分。クレーンとステディカムをつかっているんだろうと思うのだがまるで流れるようなテンポの良さと画面の切り返し。ちょっとそんじょそこらの映画では観られない。ハリウッドの大作でもここまでの流れるような画を作れるだろうか?そして異なるグループが共闘するという設定も面白い。とくにメシのシーンは秀逸でキャラクターにより深みを持たせられているし緩急の意味でも重要なシーン。もし無かったとすればラストまで物語を引っ張ることも出来なかったとも言える。そしてその異なるグループ同士どちらもが大陸から来た人間。いわゆる省港旗兵モノとしてものテーマもふくませてある。このあたりは香港作品としては定番のようで父さん関係でもダークトリロジーといわれている3本のうち『非常突然』がそれにあたる。


 じつは『非常突然』と似通った構造を持ちながらも全然違うのは今回の焦点がメディアを使ったもしくは使う画についてということだから。犯人側と警察側の情報合戦それを小気味よくつなぐことで見せている。もっともこれもうちょっと尺を足してもよかったかな?という気が今回観直してみて感じた。

『PTU』との関係性

 トー監督の撮りたかったという『PTU』のポジかも?という気がする。トー監督のテーマ(主題)として仁義、助ける。仲間というのは外せない。いやこれは香港映画の底流にあるかもしれないものだ。『男たちの挽歌(英雄本色)』とかもそうだしトー監督の『PTU』ではラム・シュー(林雪)演じるサァ刑事が無くした拳銃のためにPTUのサイモン・ヤム(任達華)演じるホー隊長がかけずりまわってそこにボスの息子殺しが絡んでCIDが動き回るという構成だったが、ホーが動くのも仲間というものと仁義だった。


 『ブレイキングニュース』はニック・チョン(張家輝)演じるチョン警部補がリッチー・レン(任賢斎)演じるユアンが率いる強盗団を追い掛け回す。そこにO記(この部署って『無間道』で黄秋生演じるウォン警視が所属している部署でもある。組織犯罪対策部の頭文字から来ている別称)のレベッカ警視が香港警察の威信をかけてこの強盗団を逮捕する様をメディアに流すことを提案し事件に強引に関わってくる。『PTU』でもルビー・ウォンが演じるCID(刑事捜査課)のチョン警部と対になっている。どちらも自分の目的に向って邁進する。そして男性社会で舐められない様に突っ張って生きている。だが『PTU』は人間くさい警察官たちの物語だが『ブレイキングニュース』は警察官だけでなく犯罪を犯した側も魅力的に描いてみせる。

食事シーンの妙

 特にリッチーの演じるユアンが逃げ込んだマンションにたまたま隠れていた殺し屋チュン(ユウ・ヨン)と料理をするシーン。逃げ込んだ部屋の主イップ(またもやラム・シュー、いい仕事してます)が成り行き上食事を用意することになったのだがお約束どおり(笑)ずっこける。で、料理をユアンとチュンが2人とも手馴れた手付きで冷蔵庫の食材を調理する。このシーンがまたいい。

 包丁をふるい食材を炒める。緊張感あふれるべき篭城シーンで調理と食事。しかもここでのやりとりでのんきにチュンは『喰うことが好きだ。金は食事に消える。」といえばユアンも『おれもそうだ。店を持ちたい』と返す。その後に『本気だ』と付け加える。そして食事シーンをネットで公開、レベッカも負けじと豪華弁当を警官隊のみならず記者にもふるまう。だがチョン警部とその部下(トーさんおなじみホイ・シウホン)達、は先行しすぎてメシ抜き。この対比、もうどっかの映画と比べる気も起こらない。


 コレがジョニー・トーである。もちろんそれだけじゃない前半の長回しから一転後半は畳み掛けるようにカットをかさねていく。元々香港のプログラムピクチャーはカットの積み重ねが秀逸な作品が多い。そしてラストまではもう目が離せない。何が起こるかほんとうにわくわくしてくる。今回レビューのためにさらに観なおしたが展開わかっていてもやっぱりわくわくする(笑)これって結構大事な事で邦画でもわくわくするけどその比率が120分中40分とすれば90分中90分わくわくさせてくれるのがトー監督だったりする。そんなパワーをもった映画を数多く撮って今も作り続けているトー監督。だからジョニー・トー監督の作品がもっと日本で観れればいいなあと思う。

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