アニメに出てきた実銃【その参】|『戦闘メカ ザブングル』-Web-tonbori堂アネックス

アニメに出てきた実銃【その参】|『戦闘メカ ザブングル』

2019年10月2日水曜日

anime Gun

X f B! P L

 アニメに出てきた実銃シリーズ。今回取り上げる作品と関係はないのですが『名探偵コナン』も実銃を使っていますね。残念ながらtonbori堂、たまに日テレの金ローで映画が放送される時に見るくらいなので取り上げられないのですが、たまたま観たときに登場人物の一人、安室がH&K P7を使用していて、グリップにあるスクイズコッカーを握り込んだ時にファイアリングピンが発射位置(撃発位置)になる描写には驚きました。


 最近はそういう描写もしっかりやるようになったみたいですが、やっぱりそういう意味では『ルパン三世』は偉大なる先行者だなと思います。で、今回取り上げる『戦闘メカ ザブングル』はその中でも一風変わった作品に分類されます。いわゆるスーパーロボットものというジャンルのアニメなのですが出てくるロボットはリアルロボット寄りなウォーカーマシンというどちらかと言えば作業用のレイバーに近い感覚のロボットが動き回り、砂漠の荒野をは渡る浮上船(ランドシップ)が行き交うというワイルドな世界観。サブメカを担当した出渕裕はパトレイバーに登場する98式イングラムの前に第一小隊に配備されたレイバー97式をデザインした時にウォーカーマシンに寄ってしまったとデザインラフに上に走り書きをしていました。そういうロボットが出てくる中、主人公ロボット、ザブングルはスーパーロボット然としたデザインで随分と違和感あるなあと思ったアニメでしたが、第一話からグイグイと引き込まれていきました。実に砂塵と硝煙の匂いが香り立つ西部劇タッチの異色のロボットアニメとして始まった『戦闘メカ ザブングル』。最後はトミノアニメらしくレボリューションですが(笑)ロボット=ウォーカーマシンの動力源はガソリンエンジンですし、今で言うと世界観はマッドマックスに近い感じです(笑)

戦闘メカ ザブングルOST Vol.2/馬飼野康二/キングレコード
戦闘メカ ザブングルOST Vol.2/馬飼野康二/キングレコード

 そんな『戦闘メカ ザブングル』の主人公を始めキャラクターたちのサイドアーム(携帯武器類)は一部を除いて旧式の銃器だったのです。オープニングでは主人公の饅頭顔ジロンがブローニング・ハイパワーを構えマグチェンジ(弾倉交換)するカットがありました。ということで今回は前置きがながくなりましたが今回は『戦闘メカ ザブングル』に出てきた実銃を紐解いてみたいと思います。

※上記「ルパン三世」のリンクは前々回のエントリです。併せてお読みいただけると幸いです。

戦闘メカ ザブングルとは?

 そもそもは富野由悠季監督の企画ではなく宇宙を舞台にしたロボットものとして脚本家、演出家の吉川惣司が監督を務め脚本は鈴木良武という布陣で進められていた企画だったそうです。そのうちに吉川惣司監督が多忙のためということで企画から降板。その後を引きついたのが富野監督だったというわけです。

 その時既に主役ロボ(ザブングル)と主人公たちの変形する移動基地アイアン・ギアーのデザインは大河原邦男さんの手により終了しており、富野監督のぶち上げた世界観に合わせたウォーカーマシンというサブメカ、やられメカはその後の設定だそうです。そのため宇宙を舞台したロボットものを想定していたデザインは、急に西部劇タッチになったためそれに合わせてキャラクター以外の設定が新しく起こされたとか。そのためザブングルとアイアン・ギア―(外観)だけが世界観から浮いている感じがありますが、主人公機交代というイベント(これは後にダンバインやエルガイム、Zガンダムまで引き継がれていきました)を盛り込んで世界観に近い主役メカ、ウォーカーギャリアを登場させました。そういう背景からキャラクターたちが持つ武器も「現実」に存在する武器となったのです。ちなみにその新規設定に合わせたウォーカーマシンやサブメカのデザインにはパトレイバーの出渕裕が参加しています。

キャラクター/Gun

 それぞれのキャラクターたちは特徴的な銃をもっており、銃がそのキャラクターにあっているところもザブングルの魅力の一つです。以下キャラクター名の後に愛用している銃の名前をつけました。ちなみにこの作品に出てくる銃も含めて旧式の現実メカ類一切はイノセントが失われた技術のアーカイブを参照して存在していたものを作ったものだという設定がありますが、それにしてもこのラインナップを再生産するとはイノセントの中にそうとうなGunマニアがいたに相違ないと思います(笑)

ジロン・アモス/ブローニング・ハイパワー

 主人公、ジロンはこれまでの主人公らしからぬまん丸な顔に団子っ鼻。マンジュウなどいろいろ言われましたが少なくとも富野作品の主人公らしく、世界を壊す(しきたりに捕らわれない)破天荒な主人公で、舞台となる惑星ゾラと呼ばれる星での不文律、「3日間の掟」を守らず、両親の仇であるティンプ・シャローンをどこまでも追いかける(でも結局この仇は果たせていないのも富野作品主人公っぽいのですよね)。愚直で純情、そして剛腕な主人公です。


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|ブローニング・ハイパワー|画像はWikipediaより
 そんなジロンが使うのはベルギーのFNハースタル社の傑作セミ・オートマチックピストル。ブローニング・ハイパワーです。英国や、カナダの制式軍用拳銃にも採用された拳銃で、当時のセミ・オートマチックピストルは弾倉(マガジン)はシングルカラム(一列)が主流だったもの量産拳銃としては初のダブルカラム(複列)にして装弾数を増やし携行弾薬量を増やせたピストルとして有名です。銃器開発の天才、ジョン・F・ブローニングの最後の設計として今もなお名銃として語り継がれています。OPではジロンが空中にあるハイパワーを構えたり、マグチェンジをするカットがありましたが、マガジンがきっちりと膨らみのあるダブルカラムで、おおっ!となったことをよく覚えています。

ラグ・ウラロ/H&K P7

 ジロンが知り合う事になる盗賊団サンドラットの首領でありメンバーの頼れる姐御、ラグが使うのはH&KのP7です。枕の文章で紹介した『名探偵コナン』の安室と同じ銃で多分TVアニメではこの作品が初出ではないかと思います。


[[File:H&K P7 (6825671856).jpg|thumb|H&K P7 (6825671856)]]H&K P7|画像はWikipediaより
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H&K P7|画像はWikipediaより

 なぜH&K P7がラグのサイドアームとして選ばれたのかは不明なんですが推察するに小型でカッコイイからではないかと(ヲイヲイ)いや実際シルエットは中型、小型セミ・オートマチックピストルの中ではシンプルでストレートなラインをもっててカッコイイのです。P7、その特徴はなんといってもグリップ前部にあるスクイズコッカー。初弾を薬室に装填したままでも安全に持ち運びが出来るように銃把(グリップ)に前にあるレバーを握り込まないと撃発芯(ファイアリングピン)がコック(撃発位置に移動)しないというシステムです。ちなみにこのP7、ブルース・ウィリスの『ダイ・ハード』でテロリストを装った強盗団のリーダー、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)がシルバーメッキのP7をサイレンサーをつけて使用(途中で外します)していましたし、スティーブン・セガールの『沈黙の戦艦』に登場した悪役ストラニクス(トミー・リー・ジョーンズ)も使用していました。ちなみにトミー・リー・ジョーンズはその前に主演した映画『ブラック・ライダー』という作品でも使用していました。

ブルメ/エンフィールド・Mk2リボルバー

 サンドラットの一員。ちょっと皮肉屋でジロンとはそりが合わないけれどラグに惚れてる弱みから結局手伝うという、割と声を当ててる古川登志夫さんの事もあってカイ・シデンの系譜?かもしれません。ただどっちかというと美少年キャラなんですよね(笑)


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|エンフィールドMk2リボルバー|画像はWikipediaより

 射撃が得意設定もあったんですがそこまでだっけ?という。とにかくザブングルって女子が強いアニメなんで印象あるけど射撃得意設定って今回のことで資料読み直すまで、えっ?そうだっけとなりました(笑)どっちかというとラグやエルチに振り回されてたなとか。でも富野作品お得意の家出もしたり、小型のランドシップで助っ人に現れたりとかは覚えてます。そんなブルメの愛用銃はエンフィールドMk2リボルバー。中折れ式の英国の軍用リボルバーです。そこまで映像によく出てくる銃ではないですが、『エンゼル・ハート』(リンク先はAmazon)っていうミッキー・ローク主演のサイコホラーで主人公ハリーが使用していました。ちなみにちょっとえぐい描写があるので万人におすすめできかねる作品ですが(苦笑)ゾラでは砂漠なのですが主要な登場人物の殆どがセミオートのピストルを愛用しています。何故かリボルバーは少数派です。砂漠のような過酷な環境ではタフで故障が少なく確実に発射できるリボルバーが大流行りでもおかしくないのですが、覚えてる限りはジロンの仇ティンプとブルメくらい?でも妙に心に残る形状でカッコいいリボルバーです。

チル/スコーピオンVz.61

 チルはサンドラットの最年少メンバーでジロンと行動を共にするようになってからは彼と一緒にザブングルに乗り込み時には操縦をサポート。ウォーカーギャリアに乗り換えた時には腹部機銃を担当したりと大活躍しており、多分後のダンバインでのチャム・ファウやエルガイムのリリスにその役割が引き継がれたのかもしれません。


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|スコーピオンVz.61|画像はWikipediaより

 そんなチルの持つサイドアームはスコーピオンVz.61サブマシンガンです。チェコのチェスカー・ズブロヨフカが製造しているサブマシンガンで映像作品ではあまりお目にかかれないですが『キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー』でウィンターソルジャー(バッキー・バーンズ)が背部のハーネスに装着していたのがこのVz.61です。ほぼ大型ピストルと同じくらいの大きさのためサブマシンガンとしては小型であり閉所での戦闘に優れたサブマシンガンで今でも特殊部隊などに採用されていたりします。小型なれとチルの体格ならば普通の大きさとして彼女の心強い相棒、それがこのスコーピオンです。ちなみにチルの声は当時まだ声優というよりシンガーソングライターとしての肩書が前に出ていた気がするTARAKOさんでした。(豆知識)

ダイク/ハイスタンダードM10-B

 ダイクはサンドラットのまさに縁の下の力持ちポジションで、整備、操縦なんでもござれのオールマイティ万能選手。しかも上半身は裸のワイルド系(笑)もっともワイルド系はエルチのガードをつとめるファットマンもそうなんですが(笑)割とゾラは高温なのかそういう格好の人多いです(笑)当然高山では気温は低いけれどだいたい緯度の低い所でドタバタしている感じです。そういえば途中から登場したビリンは寒い所から登場したから厚着のイメージがありますね。とこれはちょっと脱線しました(^^;そんなダイクはハイスタンダードM10-Bを愛用。M10-Bはアメリカのハイスタンダード社が製造していたショットガンで見た目が当時のどのショットガンにもない斬新な形状をしていました。警察、軍用などに使用されることを想定した暴徒鎮圧というよりは戦闘用ショットガンというべきものでした。


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|ハイスタンダードM10-B|画像はWikipediaより

 ただジャム(装弾不良)がよく起こるということで結局生産は打ち切りになったのですが、そういえばダイクの発砲シーンあんまり無かったような(ヲイヲイ。映画では『エクスタミネーター』というB級アクションで刑事が敵地に踏み込みに行くときにケースにおさめたこれを取り出すシーンがありました。これもまあレアな銃ですね。あとダイクはこの長物を(ショットガンにしては小型だけど)特製ホルスターにいれて腰にさげていますが(ほぼ足の半分の長さもある大きさ)これはスティーブ・マックイーンの『拳銃無宿』で主人公のランダルがウィンチェスターライフル銃を切り詰めた(ソウドオフ)ランダルカスタムを腰から下げているのとよく似ています。

エルチ・カーゴ/ベレッタM84

 ランドシップ「アイアン・ギアー」のオーナー、キャリング・カーゴの一人娘で勝気で負けん気が強いラグとともにダブルヒロインの一角であるエルチ。敵に捕まり洗脳され敵の先兵となってジロンたちに立ち塞がったり、最終回で旧時代のICBMの暴発した光をまともに見てしまって失明してしまったりと後の富野ヒロインの悲劇の原型をもってる少女です。そんなエルチは護身用にベレッタの小型セミオートピストル、M84をもっていますが、実は拳銃よりもナイフ投げの方が得意だったりします。スカートの裾の下にガーターベルトよろしくナイフホルダーを装着。実際ピストルよりも早いかも(笑)彼女もまたあまり発砲シーンが無かったように思います。


[[File:Beretta 84F-JH01.jpg|thumb|Beretta 84F-JH01|alt=Beretta 84F-JH01.jpg]]
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|ベレッタM84|画像はWikipediaより

 ベレッタM84はベレッタの小型セミオートピストルで別名チーター。.380ACP弾を使用し護身用、警察用に販売されました。日本でもモデルガンがマルシンから、ウェスタンアームスからはチーターとしてエアソフトガンが販売されていたので日本の刑事TVドラマや映画での使用例もあるようです。

キッド・ホーラ/モーゼルC96

 キッドはアイアン・ギア―のカーゴ一家のブレーカー頭です。ゾラにはロックマンというイノセントとの交易の材料となるブルーストーンを採掘する鉱夫。バザーを開いて生活用品などをブルーストーンと交換し、それをイノセントに収めて物資と交換する交易商人。彼らを護衛するブレーカーなどに分かれます。まあブレーカーはいうなればガードマンであり兵隊でもあるという位置づけでしょうか。ですが交易商人も上り下りあるのでランドシップごと野盗になることもあり、ブレーカーもそのまま強盗に早変わりという事も。キッドはゆくゆくはエルチと一緒になりアイアン・ギア―を率いる野望をもっており、それなりにウォーカーマシンの扱いにもたけてはいますが結局は2枚目半なところが災いしジロンたちと対立していくことになります。そんな彼が使用するのはモーゼルの大型軍用拳銃C96です。


[[File:Mauser C96 7,63 (6971794467).jpg|thumb|Mauser C96 7,63 (6971794467)|alt=Mauser C96 7,63 (6971794467).jpg]]
[[File:Mauser C96 7,63 (6971794467).jpg|thumb|Mauser C96 7,63 (6971794467)|alt=Mauser C96 7,63 (6971794467).jpg]]
|モーゼルC96|画像はWikipediaより

 まあ説明不要な名銃ではありますが、本当に絵になる銃なんですよね。このタイプの銃はバランスが悪いので(グリップは小さく、弾倉はグリップ内ではなく前方にあるため前方の重量が重くなるし小型がしにくい形状)敬遠する向きも多いのですが、とにかく押し出しは強いデザインです。ドイツ軍の制式弾薬強力な9mmパラベラムを使うタイプも作られ、また中国でも多くのモーゼルC96が使用されました。映画では『殺しの免許証(ライセンス)』やあたらしいところでは『コング:髑髏島の巨神』で冒頭の日本軍パイロットが持っていたのもモーゼルです。これ考証的には南部14年式か自動拳銃辺りを以ってて欲しいところですがモーゼルが当時の日本に無かったわけではないでギリギリOKだと思っています(笑)とこれまた脱線😅

ティンプ・シャローン/コルト・S.A.A(ピースメーカー)

 流しのブレーカーで実はイノセントから依頼を受けたエージェント。あちこちで人が結集しないように争いの種をまくのがティンプの仕事です。しかしジロンの両親を殺したことからゾラの「3日間の掟」、どんな罪も3日間逃げ切れば問わないという掟を4日も超えてティンプを追う掟破りをさせるきっかけをつくってしまう物語の発端を作った男です。いかにもな黒のポンチョマントにテンガロンハットという出で立ち。シガリロ(葉巻)を咥えガンベルトにはコルトを2丁差しているティンプ。それなりに腕もたち、強力なウォーカーマシン、ガバメントタイプに搭乗しているんですが、詰めが甘い悪党の見本でした。最後の最後でドジを踏む。でも結局仇として討たれず最終回後も生き残っている事からしぶとさだけは折り紙付きです。そんなティンプの愛銃はコルト・S.A.A、ピースメーカー、シックスシューターと呼ばれウィンチェスターM1873とともに西部を征服した銃として有名です。それまでの主流であったパーカッション(雷管)・リボルバーと違い金属をつかった装薬と弾丸を一緒にした金属カートリッジを使用することで飛躍的に装弾がしやすくなり火力の増強につながった革命的な銃でした。(金属カートリッジはS.A.Aの専売ではないですが)


[[File:Colt SAA US Artillery RAC.jpg|thumb|Colt Model 1873, U.S. Artillery Model]]
[[File:Colt SAA US Artillery RAC.jpg|thumb|Colt Model 1873, U.S. Artillery Model]]
|コルトS.A.A(アーティラリー)|画像はWikipediaより

 西部劇では欠かせない銃で多くの映画で使用されています。『リオ・ブラボー』『OK牧場の決斗』『真昼の決斗』など。『シェーン』ではアラン・ラッドがファニング(手のひらで撃鉄を叩き引鉄はひいたままで連射する技)を見せていましたが、確かティンプもしてたような記憶が?

西部劇的ロボットアクションアニメ

 西部劇的ロボットアクションアニメ、ザブングルってそういう匂いがありました。世界観は割とシビアで「惑星ゾラと言われている地球。しかし、人々はゾラという名前を忘れて久しい」というナレーションが最終回、実は本当に地球でしたと言うオチはかの有名なSF映画『猿の惑星』に匹敵する衝撃…も吹っ飛ばすほどのキャラクターの自由奔放ぶりが印象に残る作品でした。今ならジロンたちシビリアンが産み出した地球に適応できる人種としてのトラン・トラン族やハナワン族。ハナワンは猿の惑星に出てくるミュータントとして捉えることが出来るけど(未来の人類や退化した人類のメタファーとして)トラン・トランはまるっきりネイティブアメリカンです。そういう部分も西部劇感を増しています。


 でもそれだけではない設定もちゃんと用意されており、ハナワン、トラン・トランたちは虚弱になった人類を適応させるためにイノセントたちにより産み出された結果、肉体は頑健なれど社会的行動をとって、共同体を発展させる(コミュニティはつくっていたが一族だけで固まってしまう)能力に欠けていたため打ち捨てられた種族という設定はディストピア未来で常に人に希望とともに絶望をみる富野監督の十八番というべき設定だと思います。

 また富野監督の支配に対する抵抗としての後のZガンダムのエゥーゴにつながるシビリアンのイノセントへの反抗組織ソルトはこの後に続く『聖戦士ダンバイン』のアの国の野望に燃える領主ドレイク・ルフトに対するギブン家一党、そして『重戦機エルガイム』支配者ポセイダルに反抗するゲリラ、反ポセイダルといった権威、権力に対する闘争が描き込まれた最初の作品でもありました。

 それとこの『戦闘メカ ザブングル』は富野監督がその前に作った『伝説巨人イデオン』で登場人物を殺しすぎたりしたもんで「皆殺しの富野」とか言われた事を気にしてか、ゲストキャラは命を落とす事があってもレギュラーキャラはしぶとく(悪党でも)生き残った事から、根強いファンも多い作品です。

おまけ:ウォーカーマシン

 作品に出てくるロボットはウォーカーマシンと言われており、殆どが土木作業メカなんですが、純粋に戦闘用に作られたザブングルや、プロメテウス、後半にはドランタイプという飛行タイプまで出てきました。


 これらのウォーカーマシンと銃がまたよく似合っていました。サブメカのホバギーと呼ばれるエアクラフトバイク(ホバーで浮遊し推進するフライングプラットホーム)も相まって西部劇感を醸していました。またウォーカーマシンやランドシップにはブローニングM2重機関銃やM60機関銃(映画『ランボー』でランボーが使っていたやつ)にオリジナルデザインのバズーカ砲(キュサ81㎜ランチャーという設定名がついていたように思います。)があってロボットアニメでは珍しく硝煙と火薬の匂いがする、そういった世界観がザブングルの世界を作り出していました。

荒野のブルーゲイル

 漫画家の伊藤明弘(『ワイルダネス』『ジオ・ブリーダーズ』の作者)が確かザブングルのラグを主人公にした漫画があってそれをまとめた本があったと思い調べるとありました。ここではほぼ西部劇として描かれていてイノセントとシビリアンが混じっていく過程で新たなゾラでアウトローの時代は終わったとうらぶれたラグが困っている人たちのために一肌ぬぐ、いわるゆ「シェーン」や「渡り鳥」シリーズな話でした。タイトルは『ブルーゲイル』(リンク先はAmazon)ラグの髪が青い事からザブングルの主題歌に引っ掛けた優れたタイトルだと思います。ザブングルってそういう「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザブングル』みたいな事が出来る作品なんですよ。男もいるし女もいる。そして荒野に砂漠。硝煙の匂い。アニメ本編ではそういう部分は味付けになっているけれどそこだけを抜き出したそういう外伝をまたどこかで観たいし読みたいものです。失われたものへの郷愁という部分もザブングルの底流にあってイノセントの首魁、アーサーも側近ながら支配者になろうとしたカシムもそういう部分を担ったキャラクターでしたね。本編もまた観たい作品です。

※2023.01.07:追記 リライトを行いました。

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