この前『プリンセス・プリンシパル』を観ていて、ウェブリー=フォスベリーとは珍しいなと思い視聴する事にしたといいましたが、現実と地続き感があるアニメに実銃が出る事は今では当たり前のようになっています。当然作品によってですが今回、そういった作品にスポットを当てて紹介するエントリをあげてみようかと思います。それで最初に紹介するのは、昔のアニメ『鉄人28号』『鉄腕アトム』の頃にはデフォルメされたピストルやマシンガンであったものが、明かにそうだと分かる形で出てきたのはこの作品からかもしれません。その作品は『ルパン三世』です。
※こちらで取り上げているのはルパン三世、次元大介、銭形警部の3人が使う銃です。不二子や1stでのパイカルなどが使う銃はこちらで取り上げております。(一部、カリオストロの城での対戦車ライフル、不二子のUZIなど。)併せてお願いいたします。リンク:アニメに出てきた実銃【その壱.伍】『ルパン三世』2019増加補填版
ルパン三世
画像は「100てんランドアニメコレクション4「ルパン三世」PART-1&2より/©双葉社 |
ルパン三世の愛銃は?というクイズである年代の人なら、こう返ってくるでしょう。『ワルサーP38!』と。ワルサーP38はルパン三世の愛用の拳銃として知られた存在になりましたが、それまでアニメで銃の名前などの固有名詞が出てくることは稀でした。実写の映画などでは、『俺のコルトが火を噴くぜ』っていうセリフが出ることはあってもアニメではそういうシーンは稀でした。このルパン三世以前には殆どなかったと思います。
ルパン三世は大人向けの漫画誌、漫画アクションで連載されていたことからも、ターゲットが小学生低学年ではなく高学年から中学生をターゲットにしていたのではないかと思います。実際にスタッフからの証言からもルパン三世は大人をターゲットにしていたという証言もあります。それはパイロットフィルム(初期に製作されたものでまだルパン三世の声が山田康雄さんに決定していなかった頃につくられたもの)からもありありとそれが観て取れます。そんなルパン三世は持つ小物や車も実際にあるものをが出てきますが、中でも愛用の拳銃はワルサーP38、これはエンディングテーマの歌詞にもあります。
ワルサーP38とは?
ワルサーP38/マルシン工業製モデルガン/tonbori堂所有品 |
ルパン本人は直ぐに拳銃で片を付けるキャラクターではないのですが、抜くときは必ず相手を仕留めるか、印象的に使う事が1stシーズンでは多かったように思います。2nd以降では抜かないばかりか、抜いても碌に使えなかったりカリオストロの城ではレーザーで溶かされちゃったりしました。それでもワルサーはルパンの愛用拳銃、ルパン三世と言えばワルサーP38なのです。やがてはルパンのトレードマークとなっていったのです。
P38はドイツのカール・ワルサー社で開発された軍用拳銃で、それまでの正式採用されていたルガーP08に替わり旧ドイツ陸軍に採用されました。口径は9mmで9mmパラベラムという弾薬を使用。ショートリコイルブローバックシステムを採用し当時としては珍しいダブルアクション機構を搭載した画期的なセミオートピストルでした。それまでのセミオートピストルは撃鉄、ハンマーが起き上がった状態(コック)された状態から引き金(トリガー)を引くのが普通でしたが、撃鉄が不意に落ちたりして暴発の危険性がありました。ですがこのP38は撃鉄が起きていない状態からトリガーを引くだけで撃発出来るようになっています。暴発を防ぎ尚且つ、不発時に再度トリガーを引くだけで再射撃を試みることが出来る当時としては画期的な機構を備えた拳銃だったのです。
第二次世界大戦では連合軍がノルマンディー上陸した後、米軍では捕虜から取り上げたり、戦場で鹵獲する事が流行ったくらいにその高性能が認められていました。ルパンもそういう高性能さにひかれたのかもしれませんね。印象的なのは1st後期のOPにも映像が入っている『7番目の橋が落ちるとき』のラスト、罠にかけられ銭形警部に手錠かけられたルパンが、悪党である黒幕のボルボが用意していたモーターボートで逃げようとした時、桟橋の端に結わえたロープで引っ張られた桟橋の板の上に飛び乗り、口でスライドを引いて初弾を薬室に装填。手錠のまま銃を構えて1発で仕留める!あのシーンです。
ちなみにルパンの銃の腕前ですが、これが割とうまいんです。1stシリーズで逃亡を計る殺し屋百地の気球を見ずもせず一発で撃ち落としたり、不安定な板きれの上でボルボが撃ってくるライフル銃をものともせず口でスライドを引き揺れる不安定な水上スキー状態から一発で仕留めました。2ndシリーズでは次元を追い詰めた殺し屋ストーンマンが道しるべとして置いていたコンバットマグナムのシリンダー(弾倉)を弾き飛ばして仕留めようとしたところを反対にはじき返してナイスアシストをするとか、こと『ルパン三世』で銃の扱いと言えば相棒の次元大介っていう部分がクローズアップされますが、ルパンも結構やるのです。
※追記20211021:ルパン三世はTVスペシャルとして長編が何本も作られましたけどそこでも人気ナンバーワンは『ルパン三世 ワルサーP38』というそのものずばりなタイトルな作品です。シリーズの中でも異色作でありシルバーメタリックのP38が出るなどワルサーP38が物語のキーになる作品です。やはりルパンとワルサーP38は切っても切れない関係を感じますね。
次元大介
そのルパン三世の相棒といえばこの人、次元大介です。次元はガンマンです。早撃ちは0.3秒(1stのOPでの解説より)愛用の銃はコンバットマグナム。正式名称はS&W M19コンバットマグナムです。ルパンの女房役でもありますが、ルパンと組む前はガンマンとして殺し屋や用心棒など銃を使う裏仕事をしていたという事で様々な銃を扱えます。とは言え世の中がセミオートマチック主流になってもリボルバーを使うクラシックな男でもあります。(『ルパンvs複製人間』でもルパンにクラシックなやつだよと言われていましたね。)
S&W M19コンバットマグナム
M19コンバットマグナムはスミス&ウエッソン社が開発したリボルバー(回転式拳銃)です。使用弾薬は.357マグナム。ミリタリー&ポリスという同社が開発した拳銃が使用している.38スペシャルという弾薬を強化したもので強力な威力を誇り、相手を1発で倒せる拳銃です。そのミリタリー&ポリスと同じフレームを強化して強力なカートリッジ.357マグナムを扱えるよう開発されたのがこのM19コンバットマグナムというわけです。
つまり戦闘用に開発された拳銃でプロの道具というわけです。まさにプロのガンマンである次元にぴったりの銃と言えるでしょう。1stシリーズ第2話では、その射撃の腕を披露するシーンがありました。(的をきれいに撃ち抜いてくりぬくというシーン)ただその時の敵役、パイカルにはご自慢の.357マグナムも歯が立ちませんでしたが。その教訓を生かしたのか『カリオストロの城』では特殊弾を用意し追手の車を一発でおしゃかにしていましたね。
コクサイ モデルガン S&W M19 4インチ /tonbori堂所有品 |
オマケ※次元大介のエピソードとトリビア
次元の一番の活躍エピソードは数ありますがtonbori堂が印象に残ったのがルパン三世2ndシリーズの『荒野に散ったコンバットマグナム』です。あるお宝を探しにブランコ公国へやってきたルパンたち、そこへ過去の因縁から次元への勝負を挑む拳銃使い、ストーンマン。かつて次元に決闘をすっぽかされたため決着をつけるために彼を追いかけてきたのです。公国から脱出するルパンたちとは分かれ決着をつけるべく残った次元のコンバットマグナムをルパンが盗んで分解し、次元がそれを拾って組み立てながら最後にストーンマンと決着をつけるこのストーリーは次元が主人公ストーリーの中では屈指のストーリーだと思っています。ちなみに敵役ストーンマンの使う銃はルガーP08で次元がもう弾切れじゃないかと思ったら、ジャケットを脱ぎ捨てたその下に弾帯を巻いていたのが印象的でした。
タナカ ルガー P08 6インチ HW/tonbori堂所有品 |
これはトリビアですが最初のルパン三世として作成されたパイロットフィルムでは次元のリボルバーはS&Wのモデルではなくコルト・ポジティブという.38口径のリボルバーだったそうです。またシリンダー(弾倉)を回しているシーンではS&Wのハンドエジェクターという説も。これらは一瞬なので見逃しがちですが1stシリーズのOPにパイロットフィルムのシーンが挿入されているのでちょっとだけですが確認することが出来ます。
コルト ポリスポジティブ リボルバー/画像はWikipediaより |
M1917リボルバー(S&W)ハンドエジェクターモデル/画像はWikipediaより |
※20211011:追記:次元大介役声優交代によせて
ルパン三世PART6が9日深夜に放送されHuluやネットフリックスでの配信も始まりました。相変わらずの朴念仁のクラシックな次元、このエピソード0を以って長らく声優を務めていた小林清志さんが勇退され来週より『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL』のバトー役などでおなじみの大塚明夫さんが次元を担当される事になりました。これも楽しみなんですがここでもう一つ次元の愛用のリボルバーについて。次元といえばコンバットマグナムなんですが同じくS&Wの.357マグナムを使用するM27を使っていた事があります。主に劇場用作品や「峰不二子という女」をはじめとするLUPIN THE 3RDシリーズではM27だとか。何故M27かといえばM19は.357マグナムを使用できるものの元のフレームがKフレームという.38スペシャルを主に使用するフレームだったため厳密に言うと.357マグナムのような強力な弾薬を発射するには適していないし、その発射時の反動がきついという事でした。その点、M27はNフレームという大型で堅牢なフレームを持ち.357マグナムを使用するには適しています。ちなみに同じNフレームを使用しているのが同じく.357マグナムを使用する廉価版として開発されたM28ハイウェイパトロールマンやダーティハリーの使う.44マグナムM29です。このM27もまた玄人らしい次元にぴったりな.357マグナム使用銃だと思います。
銭形警部
銭形警部もクラシックなお方です。1stシリーズから使っているのは一貫としてコルトM1911A1。コルト・ガバメントという名でも知られています。第二次世界大戦中のアメリカ軍の制式拳銃でした。今も多くのコピーが出回り、カスタマイズされ競技用になったりとアメリカを代表する拳銃と言っても過言ではないでしょう。
COLT M1911A1(コルト・ガバメント)
設計したのは銃器の天才と言われたジョン・ブローニング。彼の開発したシステムは完成度も高く、改良点はあるものの多くの銃器につかわれ続け、このM1911も現在でも使われ続けています。またM1911は同型銃も他のメーカーからクローンと呼ばれるほどに多くでています。戦後、日本の警察にもアメリカ側からM1911が警官に貸与され使用していました。しかし牛殺しとまでいわれ、一発で人を倒せる強力な.45APC弾を使用するM1911は日本人の手にはいささか大きいグリップを持ち扱いづらく反動もきついものでした。そのためニューナンブというその後日本の警察に採用されたリボルバーは小型の.38口径でした。
MGCモデルガン/コルトM1911A1 ガバメント|かつてtonbori堂が所有していた物 |
とは言え銭形警部は大柄でがっしりとした体躯です(確か身長180㎝)。そのため両手で構えるシーンやなんとなれば片手で射撃しているシーンが度々描写されています。無骨なコルトM1911A1ガバメントはルパンを捕まえるために世界を飛び回る銭形警部の力強い相棒といえるでしょう。
最後に
今回はここまで。他にも『戦闘メカ ザブングル』『シティーハンター』『ブラックラグーン』など実銃の出てくるアニメは枚挙にいとまがありませんがちょっと長くなりました。それらは次の機会に譲りたいと思います。
追記20191113:『アニメに出てきた実銃』【その壱.伍】として不二子やパイカルなどが使った銃を紹介しています。是非こちらもご覧ください。アニメに出てきた実銃【その壱.伍】『ルパン三世』2019増加補填版
追記:ルパン三世グッバイ・パートナー
※ルパン三世 銃で検索していらっしゃった方向けに2019年1月25日放送の『ルパン三世 グッバイ・パートナー』で次元が使用していたのはSIG P226でした。次元がオートマチックを使うのは非常に珍しい事ですがこれには訳があり、ルパンにプレゼントした防弾仕様のジッポライターに残した弾丸も政府などのロウ・エンフォースメント(法執行機関)が使うものという事でルパンが背景を察知するというシーンが用意され伏線となっていました。
SIG226/タナカ製モデルガン/かつてtonbori堂が所有していたもの |
そのSIG SAUER(シグ・ザウアー、ザウエルとも。劇中ではザウアーだったように思います。) P226は9㎜×19パラベラムを使用するスタンダードなセミオートマチックピストルで他に.40S&Wに.357SIGという弾薬を使用するモデルがあります。最近ハリウッド映画や海外ドラマでもグロックと並びよく見かけるようになりました。SIGはスイスのメーカーで高級品というイメージがあるんですがSAUERはドイツのメーカーでSIGの拳銃部門を引き継ぎSIGの血統を引き継いだ拳銃を開発。米軍制式のトライアルなどにも積極的に参加し存在感を増しています。
ソース|SIG SAUER P226 - Wikipedia
Amazonプライムビデオにてルパン三世配信中。(プライム会員特典見放題のシーズンやスペシャルもあります。)
リンク|ルパン三世(1stシリーズ)(リンク先はAmazonプライムビデオ)
リンク|ルパン三世PART6(リンク先はAmazonプライムビデオ)
0 件のコメント:
コメントを投稿
お読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想などございましたら、コメントをよろしくお願いいたします。【なおコメント出来る方をGoogleアカウントをお持ちの方に現在限定させて頂いております。】