M.C.U通算35作目『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』の感想を遅まきながらアップします。率直に言うと、「悪くはないけど、もう少し深く切り込んでほしかった」というのが最初の感想です。もちろん、これまで『ファルコン&ウィンター・ソルジャー(FAWS)』などでサム・ウィルソンを追いかけてきたファンにとっては、感慨深い場面も多くありました。
ただ、作品全体に流れる雰囲気として「無難にまとめられたな」という印象も拭えません。これは今の現実世界があまりにもトンチキ(=混沌として予測不能)すぎて、フィクションが逆に追いつけなくなっているのでは…?という疑念も感じさせました。以下あらすじに続いて感想をまとめておきたいと思います。
(このエントリはあらすじ以外はtonbori堂のBlueskyポストでの『ブレイブ・ニューワールド』評をChatGTPでまとめたものを再度校正し改稿したものです。)
ソース*https://bsky.app/profile/tonborido.bsky.social/post/3li5mrm4n6c2l
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STORY/誰がために戦う?新たなキャップの試練
サム・ウィルソンはスティーブ・ロジャースからヴィブラニウム製の盾を受け継ぎ、ファルコンから新たなキャプテン・アメリカに関わる米国との諍いによるジョン・ウォーカーの起こした事件やフラッグスマッシャーズとの戦いを経てキャプテン・アメリカの名を引き継ぎ人質解放、テロリストの制圧など米軍に協力しながら活動していた。
そんななか、バナーがハルクと化した実験を主導しハルクを執拗に追跡し、その後は米国務長官としてソコヴィア協定でアベンジャーズを分裂させスティーブやウインターソルジャーであるバッキーを追っていたサディアス・サンダーボルト・ロス元将軍が混乱している米国を立て直すべく米大統領選に立候補、見事に当選した。ロスはサムを呼び今後は協力して世界の平和を立て直すべくアベンジャーズの再建をして欲しいと依頼する。
サムは彼の軍とのリエゾン(連絡役)兼アシスタントをつとめている米空軍のホアキン・トレス、それと個人的にトレーナーを依頼している元超人兵士のイザイア・ブラッドリーとともにホワイトハウスでのインド洋に突如出現したセレスティアル島において発見された新種の金属アダマンチウムについての取り扱いのための会議のセレモニーに招待される。しかしセレモニー中に突如イザイアが立ち上がり警護官から銃を奪いロスを銃撃、そのタイミングで複数の出席者もロスを銃撃する。やがて正気にかえったイザイアは何も覚えていなかったが、米国にセレスティアル島を任せる事を不安視した日本をはじめとする出席国はセレスティアル島の管理について見直す必要があると通告。一挙に関係が悪化する。事件の手がかりを追うサムは傭兵集団のリーダー、サイドワインダーに襲撃される。先のテロリスト制圧での報復かと思われたが実はサイドワインダーは先の襲撃にも関わる人物より情報を提供されていた。全ての糸がロスが隠すブラックサイト(政府の秘密の収容所)キャンプ・エコー・ワンにあると睨んだサムは急行するがそこにいたのは意外な人物だった。果たしてサムはロスを巻き込んだこの陰謀を止める事が出来るのか?
社会風刺としてのMCU作品と、「現実」のトンチキ化
米の映像作品レビューサイトRotten Tomatoesの批評家スコア(トマトメーター)は約50%と、MCU作品としては正直あまり高くない数字でした。けれど、これは「駄作だった」というよりも、「もっと攻めて欲しかった」「惜しいところで留まった」という、期待の裏返しのようにも見えます。一方でオーディエンススコアは80%近く(今後70%台になる可能性もありますが)、観客はそこそこ満足している様子。エンタメ作品として楽しめたし、サムのキャップとしての活躍を素直に喜んだ人が多かったんだろうなと思います。
ただ、今のポップカルチャーを取り巻く空気を考えると、「この程度でも批判される」という声が出るのも無理はありません。ただ先の作品『マーベルズ』や『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のローズ、そして『アコライト』のような作品が受けた理不尽な反発を思い出すと、マーベル・スタジオが慎重になるのも仕方ないとは思います。
現実の方がトンチキすぎてフィクションが追いつけない?
本作の最大の“難しさ”は、現実のアメリカ社会がすでに十分すぎるほど「物語的」になってしまっているという点です。たとえば、作中でサディアス・ロス大統領(ハリソン・フォード)がレッドハルクになるという展開がありますが、今の政治的現実を考えると「それくらいなら現実にもありそう」と感じてしまうのがなんとも皮肉です。このせいで、本作が用意していた風刺や政治的な比喩が、逆に控えめに見えてしまいます。過去作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のような鋭さを期待していた人にとっては、「今回はやや遠慮気味だったな」という印象が残るかもしれません。
とは言え劇中で日本が描かれ(日本ロケは無かったですけど)やたらと決断する尾崎首相を平岳大が演じており、いやこれこそ真田さんに演じて貰ったら次回以降とも思いましたけど、平さんも力強い演技でハリソン・フォードと渡り合ってましたね。でも日本側から攻撃とかここでも苦渋の構成が透けて見えます。もっともセレスティアル島の利権問題から省かれている中国、ロシアがとなれば余計に火種を拾ってしまうので決断してしまう日本という描写もある意味トンチキで凄いんだけど一周回って遠慮気味に感じてしまいます。
キャストの奮闘/サム・ウィルソンというキャップの成長は確かにあった
とはいえ、サム=キャプテン・アメリカの成長を描いた点は非常に良かったと思います。アンソニー・マッキーの演技には説得力があり、「スティーブの後継者」ではなく、「新しいキャップ像」としてのサムがしっかりと成立していました。黒人がアメリカの象徴を担うことの重さは、前作『FAWS』でも描かれていましたが、今作でもそのテーマはきちんと引き継がれています。これに対して、「またその話?」と感じる人もいるでしょう。でも、こういうテーマって一度やって終わりじゃないと思うんですよね。むしろ、何度も繰り返し語って、初めて定着していくものだと感じます。
ハリソン・フォードのロス大統領も良かった!
他キャストで言えば、ハリソン・フォード演じるロス大統領の存在感も素晴らしかったです。故ウィリアム・ハートからの引き継ぎということで難しいポジションでしたが、さすが『エアフォース・ワン』で大統領を経験済み(?)なだけあって、どっしりとした演技で説得力がありました。作中での活躍は今後の展開にも関わってきそうですが、彼がレッドハルクへと変貌する展開は、単なるサプライズではなく、アメリカの政治と権力の変質を象徴するようなメタファーにも見えます。ただ、それを活かしきれていたかというと…ちょっと疑問も残ります。
反面、イスラエルのモサドのマーベルキャラクターといわれていたルース・バッド・セラフは元レッドルーム出身の工作員(ブラックウイドウ)の1人として登場しました。悪くなかったけど(イザイアとのやりとりなど)サムとの絡みを考えると若干『ウインターソルジャー』の時のナターシャほどではなく、それはサムの友人でシークレットサービスのエージェント、レイラにも言えます。しかしルースは出自が今の時期にはセンシティブ過ぎたキャラクターなのでこれを一概に攻めるのは酷かもしれません。それにCOVID-19パンデミックの期間と脚本家と俳優ストライキが影響しているとは思いますがキャラが整理できていないのも問題かと思いました。ホアキンはFAWSからの続投で今回見せ場がありましたが彼についても同様です。まだサイドキック(補佐役)として見せ場はあったのですがもう少しキャラクターの整理や掘り下げが出来ていればと思います。後はイザイアですよね。キャップが戦後行方不明になった後に残った超人血清を打たれ実験体として過酷な戦闘に放り込まれた挙句、軍に拘束された人物です。彼を窮地に追い込むというプロットはサムの動機としては分かるんですがそこも少しお手軽に盛り込み過ぎかなと。ただ彼の存在感は大きくサムの先輩としての立ち位置としても良かったかなと思っています。
サムの隣に、もしボーズマンがいたら…
本作を観ていて切なくなったのは、「本来ならこの後のアベンジャーズではサムの横にはティ・チャラ=チャドウィック・ボーズマンがいたんだろうな」と思ってしまった瞬間です。サムとティ・チャラ、二人のヒーローが並び立つ姿は、MCUの次世代にふさわしい象徴だったはず。ボーズマンの早すぎる死が、本作の影に静かに漂っています。サムが今後MCUを引っ張っていく存在になっていくことは間違いありませんが、その背中には、自分だけの物語だけでなく、「失われた未来」の分まで重なっているように感じました。
MCUはこれからも「語り続ける」力を持てるか?
『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニューワールド』は、完璧な作品とは言い難いです。テーマの掘り下げが足りなかったと感じる人もいるでしょうし、現実世界の混沌と比べて「安全運転だったな」と思う人もいるかもしれません。
それでも、サム・ウィルソンというキャップがきちんと「成立」したこと、そして観客の多くがそれを受け入れたという事実には、やはり大きな意味があると思います。
MCUが社会とどう向き合っていくのか、フィクションとしてどこまで踏み込めるのか。難しい時代だからこそ、語るべきことはまだまだあるはずです。今回の映画がその“途中地点”だとしたら、これから先にまた、サムのキャップがもう一段深く飛び込む姿を観たい。そう思える一作でした。
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