フューリーの後始末/『シークレット・インベージョン』雑感|【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

フューリーの後始末/『シークレット・インベージョン』雑感|【ネタバレ】

2023年8月6日日曜日

drama MARVEL

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 先日ディズニープラスで配信されているマーベル・シネマティック・ユニバース(M.C.U)『シークレット・インベージョン』の最終回が配信開始となりました。全6話、終わってみると色々と乗り切れなかったところも多い作品でしたがキャストや第1話のルックは決して悪くなく、同じくディズニープラスで配信されているM.C.Uドラマ『ホークアイ』からこっちあまりM.C.Uドラマについて書いていなかったのすが、この『シークレット・インベージョン』の感想を少し書いてみたいと思います。

マーベル・スタジオ『シークレット・インベージョン』|最終予告編|Disney+ (ディズニープラス)/YouTube

ディズニープラスで配信中『シークレット・インベージョン』について内容に言及しているので【ネタバレ注意】とさせていただきます。

シークレット・インベージョン雑感

 ニック・フューリーを主人公にエンドゲームから暫し地球を離れていたニックが再び地球に戻り、スクラル人との問題を解決するために動き出すという物語です。スクラルはクリー人と戦争している異星人でクリーに母星を破壊され放浪者となったのですがスクラルの新天地を探すためのエネルギー源を探しにコズミックキューブの力を手に入れようと地球に侵入していました。スクラルの残党狩りをしていたクリーの部隊スターフォースに所属していたキャプテン・マーベル(当時は記憶をなくしてヴァースと呼ばれていた)がスクラルの将軍タロスに捕らえられた時にその力が地球にあると分かったためです。そこからキャプテン・マーベルの覚醒やスクラルはただ新天地を探しているだけという事でフューリーとキャプテン・マーベルは協力する事を約束しましたがその約束が履行されないためスクラルの中で不満が充満し、とうとう人類を殲滅し地球を新たなスクラルの新天地スクラロスにする事を決意し、中でも急進派のグラヴィクがタロスを追放し着々と人類殲滅計画を進めている状況をなんとかするためにフューリーは戻ってきたというのがイントロです。


 初回にそれまでフューリーの片腕であったマリア・ヒルがフューリーに擬態したグラヴィクに銃撃され死亡、スクラルと人類の戦争を回避しようとフューリーに協力していたタロスも大統領襲撃の時に死亡というショッキングな展開がありました。またタロスの娘でグラヴィク側にいたもののタロスの説得により母を殺したグラヴィクについていけなくなったガイア、MI6のソーニャ、フューリーの妻でスクラル人のプリシラ(ヴァーラ)などキャラは立っていたしキャストも豪華でしたが個々のエレメントが上手くいってなくて本来なら侵略者ばりの怖ろしい侵略ものや、MCUでは裏方である謀略、諜報の世界が「ウィンターソルジャー」以来で描写されるのかと思ったらどちらにも振り切れていないという感じがしました。


 1話目と2話目は確かにショッキングな展開であり四面楚歌のフューリー、どうするのかという展開を見せていたんですが3話の終りぐらいから失速し始めて、それでも4話で反抗開始だ!となったけれど非常にあっさりと終わってしまいました。フューリー役サミュエル・L・ジャクソンは製作にも名を連ねていますけどやっぱりキャストの事を考えると拘束期間が短くせざえるを得ず、本来なら1クール20話ほどでじっくりと描く話を非常に駆け足で駆け抜けてしまったように思いました。そのためか映画にすればよかったのにという声もネットでは見かけましたがローディが主演の『アーマーウォーズ』が映画になったのもそういう経緯があったからかもと邪推してしまいます。


スーパー・スクラル問題

 毎度のことながら原典コミックスを読んでいないのであらすじしかしらない『シークレット・インベージョン』は実は地球で活躍しているヒーローたちがいつの間にかスクラルと入れ替わっていたというまさにウルトラセブンの「あなたはだぁれ?」や『SF/ボディスナッチャー』を思い出せますが、ドラマのスクラルも記憶や姿形だけではなくDNAレベルまで擬態できるシェイプシフター能力を持っています。擬態されれば見破るのは至難の業ですが、死ねばその姿は元に戻り正体を現します。そういう設定だと相互不信と疑心暗鬼の渦巻くサスペンスになるだろうと思いきや、実際このドラマでもクライマックス後の状況にそれが適用されていたりとするだけでグラヴィクによる人類殲滅を阻止しただけに留まっているんですよね…。その部分が全てにおいてクリフハンガーになっているという批判をも産んでいるように思います。それとともに終始スパイサスペンスのマナーで話が進んでいたのですが当然クライマックスではそれなりのアクションシークエンスが必要になる訳で、スパイ映画なら脱出行であったり、敵の親玉との対決であったり。当然『シークレット・インベージョン』でも親玉との対決はあるんですが…普通のMCU映画の対決になっているし、これは後々のスパーパワーのインフレを引き起こすのではないかと少し心配になりました。


 グラヴィクはフューリーを殺さず生かしていた(実際にすぐに殺せるほどに近づいたことも何度かある)には彼の進める対アベンジャーズ戦略、スーパースクラル人計画というのがあったのです。原典コミックスではファンタスティック・フォーのヴィランとして彼ら4人の能力を併せ持つ強化されたスクラル人兵士として登場、その後幾人かのスクラル人がスーパー・スクラルと名乗っているようです。今回のスーパー・スクラルはグラヴィクが研究させていたもので、その能力は彼らがフューリーの命令で集めていたスーパーヒーローの遺伝子情報。中でもアベンジャーズの遺伝子情報は「収穫(Harvest)」と呼ばれておりその隠し場所が分からないためグラヴィクはフューリーを泳がせていたという図式もありましたがそれも分かりづらかった。その辺りがすっきりしていれば徐々に身辺に潜んでいる侵略者という図式と『キャプテン・マーベル』でそれまでマーベルヒーローのヴィランでシェイプシフター(擬態する者)としてのスクラルを反転して、クリーに母星を滅ぼされ宇宙の放浪者となった難民という図式が今現在の、危うい世界を描くのに非常に面白い題材になるはずであったはずで、それは例えばフューリーとヴァーラ(プリシラ)との関係性やタロスとグラヴィク、そしてガイアがそれぞれ地球に対する態度の温度差、あくまでも自国を守るために敵を利用するMI6のソーニャなど要素が良すぎるだけにハンドリングが上手くいってないところばかりが目立ってしまったように思います。

ローディ問題

 今回登場したローディはスクラル人であったというのはショッキングではありますが、確かにグラヴィクが地球人を殲滅するというのであればアベンジャーズに近く、また軍の中枢にも関係しているローディと入れ替わる作戦を取るのは理屈にあっているので問題ないと思っています。ただファンの心理としてはじゃあ何時から?という事になり、特にアイアンマンであるトニーとの関係性を描いてきたMCUのシリーズを観れば、『シビル・ウォー』の後からだとすると『エンドゲーム』でトニーに駆け寄ったあのローディはスクラルなの?いやそれは辛いってなるのも分かるし、でもだからこそこの後に控えてる『アーマーウォーズ』がその回答になるのでは?という話も考えられるわけです。これについてはもう作られてしまった事で後はその話の流れでどうその事実がはっきりするのかという事だけですが、ローディとトニーの事だけに放置だけはしないでくれればと、tonbori堂は思うのみですかね。『エンドゲーム』で後からでも別に問題は無いけれど後々に影響を及ぼす要素として提示したならばそれは後で回収してほしいかなと思います。

新キャラクターたち

 色々と文句を言ってるけれども良かった面もあって一つはMI6のエージェント、ソーニャ・ファルズワースです。ニック・フューリーとも旧知の間柄でベテランの諜報員。ロシアが捕らえたスクラルのスパイの尋問に一人で現れさっくりと拷問して口を割らせるなど冷酷かつ冷静沈着。捕虜奪還にやってきたグラヴィクたちの襲撃を察知するとあっさりと逃げ出す狡猾さも併せ持つキャラクターで、ヴァル(ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ)と今後張り合えそうなキャラクターとして今後も色々と絡んで欲しいしそもそもアメリカ由来のヒーローが殆どM.C.U世界でブラックパンサーのようなキャラクターやウィドウであるエレーナなどもっと多国籍でも良いのではと思っていたのでソーニャのおかけで英国のスーパーヒーローへの道が開けたかなと思っています。


 そしてタロスの娘、ガイア。グラヴィクと対峙するためにスーパー・スクラルとなった彼女もまたその強大な力とどう使っていくのか?立ち位置としてもMI6との共闘(損得での)というのを結んだのも非常に興味深いしタロスともグラヴィクとも違う道を模索するという事でも今後が楽しみなキャラクターです。

『シークレット・インベージョン』が残したもの

 最後に『シークレット・インベージョン』後のM.C.Uの話として色々積み残し課題が多いんですよね。リットソン大統領がスクラル人に宣戦布告したり、その裏でMI6のソーニャはガイアと手を組んだり、フューリーはS.A.B.E.R.(セイバー)に戻りヴァーラとともにクリーとの和平交渉に臨みます。それら全ての伏線が回収されるのか?、投げっぱなしになるのかが気になるところです。11月に予定されている(ストライキの影響で公開延期も有り得るかもしれませんが)『ザ・マーベルズ』の予告編では既にS.A.B.E.R.のステーションに戻っているフューリーが映されていましたが、『シークレット・インベージョン』への言及はあるのか?実際マーベル・スタジオの秘密主義なのか監督の方針かは分からないけど『マルチーズ・オブ・マッドネス』の監督サム・ライミは『ワンダヴィジョン』はほとんど観ていないと言ってたし脚本のマイケル・ウォルドロンはロキのショーランナーを務めながらもワンダヴィジョンはあまり観ていないとか。『ザ・マーベルズ』ではキャロルやモニカ、カマラがメインだけど、フューリーも物語に噛むのでそこはちゃんと反映させて欲しいなと思うところなんですが。特にヴィランのダー・ベンはクリー人のアキューザーの持つハンマーを持っているところからクリー人なのは間違いないし。予告編だけでの話で言うと『ザ・マーベルズ』面白そうなんですがそこの不安がぬぐえないですね。とマイナス面なところになってしまったけれど、上手く行けば例えばローディ問題でも『アーマーウォーズ』でのフックになり得るし、スクラル問題も『アベンジャーズ』シリーズ新作でのフックになり得ます。それにリットソン大統領の後、ロスが大統領になる展開が『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』であると噂されその後の『サンダーボルツ』にも関係してくる事が予想されます。活かすも殺すもファイギ次第。いやマーベル・スタジオ次第という訳です。その辺りはまた別エントリでお話したいと思います。ということで『シークレット・インベージョン』色々の残したものが大きなシリーズでした。


※やっぱりSHIELDのエージェントが助けに来て欲しかったなーという『エージェント・オブ・シールド』(リンクはAmazon)こちらが本格的にM.C.Uに合流して欲しいと秘かに思っている今日この頃です。

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