『ザ・フラッシュ』雑感|感想【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

『ザ・フラッシュ』雑感|感想【ネタバレ注意!】

2023年7月9日日曜日

DC movie

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 DCの『ザ・フラッシュ』観てきました。オープニングのジャスティスリーグの大活躍シークエンスも中々凄いんですけれど実は物語の方が凄い事になっててどちらかと言うとそこを語るべきだと思っているのですが、Twitterなどで眺めていると、どうもカメオやゲストスターの扱いや、そもそもその話で良いのか?論なんかも出てきているなって感じなんですよね。あくまでもtonbori堂のTwitterでの観測範囲での話ではあるんですが。もちろん絶賛評もあるんですが、お話の重心はあくまでもバリーの選択にあると思っています。そう選択したのかと、ある意味この映画はハリウッド映画の定型でもある、抗えない運命と選択の物語であるというのを大真面目にやったと思うのです。しかもスピードスターなキャラクターでここまでの物語をやり切ったのは賞賛に値すると思います。という事でいつものように簡単にあらすじをご紹介のあと色々と雑感を語ってみたいと思います。

The Flash – Official Trailer/YouTube/Warner Bros. Pictures 


誰がために戦うのか?|ザ・フラッシュ/STORY

 バリー・アレンはセントラル・シティの科学捜査官だがもう一つの顔がある。フラッシュと知られているスーパーヒーローでスピードフォースという高次元の力を得たメタヒューマンで超高速で動く事が出来る。今日も出勤前にブルース・ウェインakaバットマンの執事アルフレッドの要請でゴッサムのマフィア、ファルコーネの息子が起こしたウィルス強奪を阻止するために呼び出される。強奪を受けた病院は今にも崩壊寸前だが逃げ遅れた看護師と赤ちゃんを無事に救出し、バットマンとワンダーウーマンともにファルコーネの息子を捕らえた。そんな1日の後、大学の同窓生であり今はジャーナリストのアイリスと再会する。彼女はバリーの父親で彼の妻でありバリーの母であるノラの殺人の犯人として投獄されていた。その再審についての話を聞きに来たのだ。バリーが科学捜査官になったのも事件の証拠を集め父の潔白を証明するためだったが事件は未だ新たな手がかりを見出せなかった。


 アイリスと別れた後、バリーはかつて暮らしていた家の前に行き当時を振り返る。そして自らの力を使えば時間の壁を越える事が出来るのではないかと考え、ついそれを試してしまう。すると時間の回廊のようなところに出る事が出来た。早速ブルースにその話をしてみるバリーだったが、ブルースはそれは予期せぬ未来を産み出しかねないと警告する。しかし、ほんの少しだけ接触も最小であれば世界に対する結果は軽微で済むのではないかという想いにとらわれたバリーはブルースの忠告を無視し父がその時間に家から出ないように仕向けた。しかし元の時間に帰還中に黒い影に襲われ元の時間に戻る途中で放り出されてしまう。それはまだバリー自身が力を得る前の2013年であった、彼は自宅で両親が家にいる事を確認するがそこに折悪しくその時代のバリーが戻って来てしまう。そして18歳でまだ力を得ていないバリーに母の死の事は伏せ次第をかいつまんで説明するがその時天空に巨大な宇宙船が飛来する。クリプトンのゾット将軍がやってきたのだ。慌ててスーパーマンの事を尋ねるがこの時代のバリーはスーパーマンの存在を知らなかった。バリーが出来事を変えてしまったためスーパーマンの存在しない、または未だ活動していない事になってしまったのだ。焦ったバリーはその日がインターンシップで科学捜査局で雷に打たれて力を得た日だと気付きともかく18歳のバリーに力を与えるために科学捜査局の分析室に忍び込む。そこで首尾よく雷に打たれたものの両名共に受けたため18歳のバリー(バリー’/ダッシュ)は力を得たがバリー自身は力を失った。


 まずは力になってくれそうなメタヒューマンを探すところから始めたがアクアマンもダイアナ/ワンダーウーマンも見つからない。しかしバットマンは昔活躍していたと知ったバリーはダッシュを連れて、ゴッサムの町外れにあるウェイン邸へと向かう。しかしそこにいたのは元居た世界のブルースとは違う偏屈な老人だった。ウェイン老人から過去を変えた事で別の世界に枝分かれしてしまい、元居た世界とは別の世界に君は来てしまったと告げられるバリー。しかし現実にゾット将軍の宇宙船は地球に着陸し地球に隠れているクリプトン人の引き渡し要求をしている。ウェイン老人から協力を断られたバリー達はバットケイブへの隠し通路から侵入しシステムを発見、ウェイン老人は呆れながらもバットスーツに身を包みこの危機に共に対処することになった。そして政府機関ネットワークのバックドアから過去にシベリアに宇宙船が墜落したことをしりカル・エル/クラーク・ケントがそこにいると確信した3人はシベリアにカル・エルを救出するためにバット・ウィングで出発する。


 果たして3人はカル・エルを見つけ出し、ゾット将軍を撃退する事が出来るのであろうか?そしてバリーは元居た世界に戻る事は出来るのだろうか?運命と対峙する時が迫っている。

バタフライエフェクト

 この映画をみて、いの一番で思い出したのが『バタフライエフェクト』です。蝶が羽ばたけば桶屋が儲かる…ちがいましたね。どこかで蝶が羽ばたけばどこかの天気変わるという話だったように思います。まあ映画はちょっと違う話で時を戻せる力を持つ青年が運命を変えようともがくお話です。歴史改変というか時間改変はそれぐらい無視しても良いぐらいの小さなことを行ってもそれがトリガーとなって大きな変化が持たされるという話なんですがバリーの行った改変は、例えば母の死の運命を、直接その力を持って止めるのではなく歴史に大きな影響を与えないように、ほんの小さな変更を過去に戻って行っただけでした。しかしピタゴラスイッチよろしく歴史は変ってしまい、『バックトゥザフューチャー』の主演はマイケル・J・フォックスからエリック・ストルツになっていたり元居た世界から変ってしまった世界になってしまった事に責任を感じてゾット将軍をなんとしようとして止めようとします。

(参考/外部リンク)バタフライエフェクト:作品情報/映画ドットコム

 そしてこの世界はそこで何度もやり直しても上手くいかない事に気付くバリー。しかしダッシュはまだなんとかなると過去へ戻る事を止めません。ダッシュを止めようとするとバリーを元の世界に戻ろうとしていた時に押し出した影が現れるのですがそれこそも実は何度も過去に戻ってやり直しているバリー、ダーク・フラッシュだったというのは過去に囚われた囚人という感じでいたたまれなくなります。そしてこの混乱の元を作ってしまったバリーはある決断を下すんですが、そこが映画『バタフライエフェクト』の主人公と違って過去の惜別、過去を振り返らず未来を指し進むという決断なんですよね。これは苦しい決断でもあるけれどじっくりと尺を取り、エズラ・ミラーが2人の自分(現在のバリーとダッシュ=18歳のバリー)をしっかりと演じ分けた事ですっと入ってきました。それぞれクライマックスから最後のシークエンスまでこれは凄いな!スーパーヒーロー映画の定石もちゃんと踏んでてなおその決断をちゃんと描くのか驚きました。最近のスーパーヒーロー映画だと全ては上手くいくようにしない事も多々ありますが、話としては行って戻ってくるだけ、全てがバリーに帰結するこの物語をよく紡いだなと思うしこれにOKを出したのも偉いと、この部分だけで『ザ・フラッシュ』をtonbori堂はもう良かったなと思っています。それは映画『バタフライエフェクト』が究極的に逃げを打ったなと完全ネタバレになるからこのぐらいにとどめておきますけどそういう終わり方だったのでそれと同じネタを扱いながらもそう来たかと膝をポンと打ってしまいましたね。なので異論のある方もいらっしゃるかもしれないけどtonbori堂は好きな終わり方でした。

バットマン

 この映画の見どころは他にもあってバリーが世界線を改変してしまったことによって発生した別バース、アメコミ世界ではアース〇〇だのなんだの色々な呼ばれ方をしていますけどバリーがたどり着いた世界のバットマン=ブルース・ウェインはティム・バートン監督版でバットマンを演じたマイケル・キートンのブルースでした。引退したバットマンという設定はベン・アフレックよりも説得力がある風貌でしたし、流石に眼光するどく口元がやっぱりバットマンなんですよね。キートン自身は演技力も確かだし、今回は迷える若者バリーを光ある方へ導く導師の役割が本当にピッタリでした。それとオールドファンとしてはバットケイブの再現やお不動さんではあったけれどバットモービルの登場。マニアにはウェイン邸の再現が素晴らしい!とかジョーカーの笑い袋が!というぐらいファン泣かせでしたね。


 そしてキートンがブルースを演じる事で話が引き締まった感じも出ているのも嬉しいところですよね。ベン・アフレックのブルースも嫌いじゃないんだけどやっぱりキートンいいなってなってしまうあたり、ちょろいファンではあるなと思ったんですが酸いも甘いも噛み分ける感じが本当に良かった。でも最後のアレは…。虚を突かれた人も多そうだし実際観たtonbori堂も、ええっ?ってなったけどあのシーンは厳重に伏せられ試写の時もカットされていたそうです。そして最後のシーンは3パターン撮られていたとか。で、そのあたりのゴシップ込みの話をネットで読むと本当にワーナーにおけるDC混乱の端境期とエズラ・ミラーのしてしまった幾つかの違法行為が尾を引いてしまった格好になってしまったかなと思います。

スーパーガール

 それは今回登場したカーラ・ゾー゠エル/スーパーガールにも言えますよね。スーパーガールといえば最近ではTVドラマで展開していたアローバースのスーパーガール、正確に言うと彼女はアローバースの住人ではないんですがアローバースとのクロスオーバーイベントには登場して、その結果世界が統合という…ややこしいけどそういうシリーズがあったんですが、多元宇宙の衝突(マーベルでいうと「インカージョン」ですよね)シーンではクリストファー・リーブのスーパーマンとヘレン・スレイターが演じたスーパーガールが登場したり(そのシーンではティム・バートン版の衣装合わせまであったというニコラス・ケイジがスーパーマンが登場しこれまた度肝を抜かれましたけどね)今回のカーラは髪が黒髪でスーパーガールといえばブロンドという固定概念から外れているのも良かったし新しいスーパーガール像を、そしてヘンリー・カヴィル版のカル・エル/クラークの系譜をも感じさせるスーパーガールで良かったですね。ただポッと出の感じでもっと彼女の掘り下げをとなったのも事実でこれ1作はもったいなさすぎる。ただ今やっと落ち着いたジェームズ・ガンとピーター・サフランの新しいDCスタジオとしてのロードマップにスーパーガール居るのか?居たとしても今回演じたサッシャ・カジェなのかは分からないんですが叶うのであれば彼女の演じたカーラの物語を観たいところです。

まとめの雑感/『ザ・フラッシュ』

 まとめてみると、この映画の良かったところは3点、バリーの目を通して過去を振り返る事によりオリジンとパーソナリティを描き切った点。2つ目は原典にもあるフラッシュのスピードフォースを使ったタイムトラベルとパラドックスから生じるマルチバースを描いた点。3つ目は魅力的なキートン・バッツとサッシャ・カジェのスーパーガール。これらの要素はこの映画の面白い点でした。その反面、足を引っ張った要素もあります。それは主演のエズラ・ミラーの犯罪沙汰。今クリアになった問題もありますがその前の事件で宣伝活動にまで尾を引いたのはマイナスポイントでした。それとDC本体の混乱。それによりキートンのバットマンが今後みられる可能性がかなり低くなった事(これはマイケル・キートン側も色々と約束が守られていない事もあるので難しそうです。)もちろん今後の事は一切分かりませんけれど。そして風呂敷が大きく拡げられてしまったのでその分肩透かしになっている部分も否めないという事です。確かに最初のジャスティス・リーグのOPシークエンスは心躍るものがあるしゾット将軍との決戦も凄いんだけどこの作品が極めてパーソナルなバリー・アレン個人の話に収束する様がマルチバース・ヒーローそろい踏みを期待した向きに期待を裏切る結果になっていないかという事です。でもこの作品そんな大仰なものではないところに美点があると思っているのでtonbori堂は気にならなかったんですけれどね。それと同様にバリーの決断を受けての結果に関してもDCの混乱が影響している感じがありありと感じられたのはちょっとだけマイナスでした。いやびっくりしたけど…それならばっていうエクスキューズが出てしまったので。でも総じて面白かった作品だと思います。フラッシュというスーパーヒーローであるバリー個人の物語を上手くまとめたと思っています。

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※米CWで放送された通称アローバースでの『THE FLASH/フラッシュ』、エズラのバリーとこちらの主演グラント・ガスティンのバリーの共演もアローバース、クロスオーバー作品でありました。

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