『騎士とファティマ』/ファイブスター物語/FSS/ 月刊ニュータイプ2023年7月号/第6話時の詩女「TRAFFICS4」アクト5-2|考察【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

『騎士とファティマ』/ファイブスター物語/FSS/ 月刊ニュータイプ2023年7月号/第6話時の詩女「TRAFFICS4」アクト5-2|考察【ネタバレ注意!】

2023年7月2日日曜日

FSS manga

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 月刊ニュータイプ2023年7月号での展開、tonbori堂が予想だにしていない状況になり、それからもやもやしているんですが色々とTwitterでの感想ツイートやDESIGNSやCHARACTERSを引っ張り出してヨーンとパルスエットというのは終生パートナーではなかったのかと思っても、実はそれを明記している記述がどこにもなく、ああそうだった永野護という作者は何時だって「これは既に決まっていた事」っていう人だったと(苦笑)もちろん年表表記が少し変わったりタイムテーブルの変更があった事は1巻やトイズのCHARACTERSをカバーしている星団民ならご存知だとは思いますがMHがGTMに変っても天照の嫁はラキシスってのは変らないしクローソーはその時まで眠っているしアトロポスは長い放浪の末A.K.Dに行き最後はクローソーと対決というのは変りません。だからヨーンが「叩き上げの騎士」としてCHARACTERS1MIRAGEで紹介された時に、それはもう決まっていたんだと思います。ただそれだとパルスエットがあまりに不憫と感じてしまうのではあるのですが、ファティマというのは生きている生命体であるけれど「道具」でもあるという事実がここに来てまた刻まれたように思います。という事で今回は騎士とファティマについて少し考えてみたいと思います。

月刊ニュータイプ2023年7月号/KADOKAWA刊
月刊ニュータイプ2023年7月号/KADOKAWA刊


月刊ニュータイプ(NT)掲載中「F.S.S/ファイブスター物語」の内容に触れておりますので【ネタバレ注意】です。何卒よしなに😌
今月号の感想はこちら。(リンク先は2023年7月号の感想です)


騎士とファティマ

 そもそもは「ヨーンとパルスエット」というタイトルを決めて色々考えていたんですが、これは『ファイブスター物語/F.S.S』に登場する騎士とファティマにも当てはまる話でヨーンが登場最初期(キャラクターシートで)の説明文「叩き上げ」というところに掛かっているのではないかと思い当り「騎士とファティマ」と改題しました。それはヨーンがファティマの魔性に囚われているのに、それを知りながらなお、彼に元にいく意思を示したパルスエット。それは助けられたからなのか?(ついていけば生存確率が上がる)とも思えるんですが、彼女もまた騎士というものに囚われていたのかもしれないとふと思ったんですよね。それは騎士とファティマ全般に言える話でこれまでにも数多くの騎士とファティマがそれぞれの物語を紡いできました。(天照とラキシスについては神様なんでちょっと番外にしておきたいと思いますが)


 コーラスとウリクル、ギエロとシューシャ、ブルーノとパラーシャ、ミューズと静、アイシャとアレクトー、カイエンとアウクソー、もちろんレスターとパルスエットもそうですし、今も騎士とファティマの物語は紡がれています。そうなれば騎士とファティマの関係性とはなんなのか?ここでバーシャの言を引けば「GTMを駆る者」こそが騎士であるという事になるんですが、それと同時に騎士という存在もまたGTMで効率よく戦闘を行う「道具」であるという見方が出来ます。ファティマはウラニウム・バランスの生体演算理論を経てリチウム・バランスが完成させた人工生命体ですが、騎士もまたAD世紀にユニオ3、炎の女皇帝ことナ・イ・ンが作り出した人間をベースにした「道具」ということがリッターピクトによって明かされています。言わば近い者がそれぞれ欠落したものを補う側面があるのではないか?という事です。でも同じではないんですよね。「騎士」はあくまでも「人」としてその能力をブーストした強化された(遺伝子を含めですからそれはもう人工生命体ではないか?という見方が出来なくも無いですが)人類であり、ファティマはそれをベースに「人」が産み出した「物」とも言えるからです。同じような話はこれまでSF小説や漫画、映画でもありましたね。例えばSF映画の金字塔とも言われるリドリー・スコット監督『ブレードランナー』。人によって産み出されたレプリカントとその定めから逃げ出した者を追う捜査官ブレードランナーの話です。『ブレードランナー』もレプリカントと人との違い、心とは?感情とは?という部分がテーマとなっていきますが騎士とファティマの関係はそれよりも複雑です。


 ファティマもレプリカントと同じく人に使役される存在で、その力は一般の人類(騎士の力を持たない)をも遥かにしのぐ力を持っています。違いと言えば物扱いされてはいるけれど騎士やその支援組織(軍隊や国家)には大事にされるという事です。レプリカントは完全に使い捨てであり道具といっても、例えは悪いですが最高級のナイフと造りも甘い、少し切ると刃も鈍るナイフといったところでしょうか。大事に使えば一生モノだけど雑に扱うと直ぐにダメになってしまうという描写はこれまでにも幾度か描写されています。それこそギエロのシューシャに対する態度やスカのリンザに対する態度。レスターやミューズもそうですし直近ではニナリスに対するジィッドの態度とエストに対するデコースの態度。それぞれ千差万別ですがデコースは道具としてきっちりとやることをやる、やっぱり出来る騎士なんだなというのが、マスターではないニナリスがデムザンバラに対する処置を黙認したところにも出ていました。


 パルスエットはエスト(バーシャ)が鍛えた騎士であるヨーンを認め、彼ならばレスターを喪った後自らをまたファティマとしての日常へと戻してくれると思ったのは間違いないと思います。でもヨーンはファティマのマスターにはならないと言いながらもあの時パルスエットをモノ扱いしたアイシャに反発して仮マスターではなくマスター登録してしまった。あの時にレスターのように「パルセット」っていう呼び名で呼んだことが彼女への呪いになってしまったのか…という事をふと思ってしまいました。


 一方ヨーンはあの時に「この子はモノじゃない」って言ったんですよね。そこがデコースとヨーンの差ではあるんですが、いやちょっと待ってよミューズだって静を大事にしてるしアイシャはアレクトーといい関係じゃないかと(他にも同じような例はありますが以下割愛)でもやはりファティマと騎士との関係というのは何処かしら歪であり、一線は引いていると思うのです。この辺りそれが如実に出ているのがフィルモアの騎士で、ファティマに入れ上げすぎて「魔性」に囚われると言い方をブルーノはしていましたが主従関係というものの線引きはちゃんとした上でバーバリューズも、その娘のクリスティンも、レーダーⅧ世陛下もファティマと付き合っているのが分かります。ギエロはあれはちょっとダメな感じですよね。モノを大事にしない人は腕があっても一流にはなれないと思うんですよ。そういう意味ではやはりレーダー陛下、大物だと思いましたよ、ええ。なのですが他方ヨーンはまだファティマの魔性に囚われたままで、しかも自分のせいでパルスエットが死んでしまったところからどう騎士として一本立ちするのか?そこが全く予想が付かないのですよ。そこが多分もやもやする原因なんだと思います。


ヨーンのこれから

 これまで『ファイブスター物語/F.S.S』に登場した騎士は騎士としてちゃんとしているというよりはド級というかS級ばかりで突き抜けた人ばかり、普通の騎士ってのはどちらかと言えばモブだったり敵役に多かったように思います。だからこそヨーンが設定されたんだろうけど物語がここまで進んで気が付けば、ブラフォードにしっかりとした型を持った騎士と言われるほどS級の腕を持ちながら未だ完成していない未完の大器になった感じはありますよね。そこからどう「叩き上げの騎士」としてミラージュ入りとなるのか。最近追加された文言としては入団以降特命を受けるとありますがパルスエットが、バーシャが望んだ「騎士」として一度だけGTMを駆りダッカスと対峙するのではないかという予想も星団民の間では交わされています。マジェスティックスタンド導入部の挿入シーンで雨の中佇むプラスティック・スタイルのファティマ2人と騎士一人がその根拠であり、DESIGNSなどで予想されているザ・ブライド(バクスチュアル)の事を重ね合わせるとその予想は正しい気がしますがこの展開からどうやってGTMを駆る決心をするのかがどうしても上手く想像できないのです。そこは本編を待ちたいとは思いますがこれまでどんな結果や結末になっても飲み込めてきたのにまさかヨーンの事でここまでもやもやするとは思ってもみませんでした。

デコース・ワイズメルの最後

 そしてここまで圧倒的な格を見せつけているデコース、彼もまたこの後明確には示されていませんが舞台からは退場する事が示唆されているキャラクターです。それは四代目の種がもう巻かれているという事もあるし、先のヨーンと思われる騎士がファティマ2人と立ち尽くすとなればそれはデコースは倒されているという事でしょう。亡くなったか、それとも再起不能なのかそれは予想もつきませんけど。だけどヨーンの幼い感情のままに今も戦っているところに圧倒的に刹那的であり、快楽的なデコースが株を上げてしまうのはこれまた皮肉を感じてしまいますね。デコースって言わば初期のルパン三世に近い所があるんですよ。これ別に両人ともに三代目って話ではなく死んでしまうかもしれない死線に身を置きながらもそれを楽しむ退廃的なところ。エストに語り掛ける目を見るとルパン三世1stシリーズ第4話『脱獄のチャンスは一度』で次元がなかなか脱獄しないルパンに対して言った言葉「おめえは生まれつき贅沢なんだよな。ま、好きにするさ」が何故か浮かびました。


 デコースがエスト以前にファティマを使わなかった理由を「お前らの魔性に捕まるほどまだ落ちぶれちゃいない」と言いましたけど、そこもエストを娶り三代目黒騎士となって何かが変わった訳でもなくそこも結局他の騎士が悔しがるという理由だけでエストのマスターになっただけで万事(自分が)面白い方へと進めるそれがデコースという人物なんですよね。ヨーンは本当に囚われているけど、刹那で生きているデコースの方が自由というのはなんという皮肉なんだろうかと思ってしまいます。そんなデコースがメインキャラクターとしての最後も多分近いんだろうなと今万感の思いを感じています。

最後に

 予想はつかないんですけれど、ヨーンにしろ、ちゃあにしろ、クリスティン、ジーク、桜子たちにとっての転換点も近づいている訳なんですが単行本18巻掲載相当分に当たる物語はトラフィックスを含めてまさに「終わりの始まり」だなというのを感じています。もちろんどこまでをクリス(永野護)が描くのかは分かりませんけど(大侵攻とスタント遊星攻防戦は確実に描くための布石を打ってるのでそこは間違いないのかなとは思っています。)連載開始からずっと追っかけている身にとってはやっぱりヨーンのエピソードは一つの終わりを意味しており、それらはその後に出てきたクリスティンやジーク、ちゃあ、桜子、ダイ・グまでに波及する物語になっているなと改めて感じました。そしてその物語の中心にはやはり騎士とファティマがあるということも。どんな結末になっても見届けたいと思います。

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