こんなご時世ではありますが観てきました。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』tonbori堂としてはサブタイトルは『レジェンド・オブ・テンリングス』でいいじゃんって思うんですけどこの邦題も巡り巡って往年の香港映画っぽくて良いと思います。そう既にTwitterでは感想をつぶやいたんですけれど、言うなればシャン・チーというニューヒーローを描くのに香港映画の則を用いたというのが一番大きかったなと感じました。しかも立ちはだかるヴィランにトニー・レオン(梁朝偉)を起用するなどなんとそこを突いてきますかと感心しっぱなしでした。ということでざっくりとあらすじのあとに感想などを書いていきたいと思います。
Marvel Studios’ Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings | Official Trailer|YouTube|Marvel Entertainment
宿命の親子/テン・リングス|STORY
サンフランシスコでホテルの駐車係をしているショーンは今日も同じ駐車係のケイティと共に平凡だがつつましい生活を送っていた。ある日ケイティと共に出勤途中のバスで屈強な男達に母の形見のペンダントを狙われる。男達を見事なマーシャルアーツで叩き伏せるショーンだったが男達のボスは片腕にソードを仕込んだ男でショーンに襲い掛かる。ソードを振り回す男をなんとかしのいだショーンだったがペンダントは奪われてしまった。ショーンは急に旅支度をしてマカオに行かねばならないとケイティに告げるが何か大変な事になってるショーンを放っておけない彼女はマカオに同行する事にする。
飛行機の中でケイティに自分の父親がある組織の首領であり自分は暗殺者として育ったこと。しかし初仕事の時に父の元を逃げ出しアメリカに渡った事。そして本当の名前はシャン・チーであると告げる。マカオにはシャン・チーの疎遠になっていた妹シャーリーンがいる。彼女から届いた手紙を元に彼女へ警告しにやってきたショーン達だったが手紙の住所は秘密の闘技場で裏社会の人気の場所だった。成り行きでバスの男(先の戦いを乗客が生配信しており全世界に流れていたのだ)としてリングに上がるシャン・チー。しかしその相手はシャーリーンだった。シャーリーンに叩き伏せられるシャン・チー。その後オフィスに通される。この闇闘技場はシャーリーンが独力で作ったものだった。そしてシャーリーンは幼い日に置き去りにされたことでわだかまりを抱いていおり手紙など出さないというと爆音が響く。あのサンフランシスコのソードマンも襲撃者たちもシャン・チーの父が率いるテンリングスの手の者だった。シャン・チーは迫るテンリングスと父の企みを打ち破る事が出来るのだろうか?
マーベル・ミーツ・香港電影
マーベル・シネマティック・ユニバースに功夫(クンフー)の達人が入るとなればルックや則(のり)としてベースを香港電影に置くのは大正解だと思いました。最初はジャッキー映画(ジャッキー・チェン)のポリスストーリーシリーズへのオマージュのようなバスアクション。そしてテンリングスでの幼き日や少年時代のシャン・チーの訓練シーンは酔拳や少林寺を舞台にした作品でよく観られる武侠モノのような趣きがありました。こう言った則はそれを観てきた世代。ブルース・リーの頃からのクンフーモノ(カンフー)のスタイルが随所に散りばめられ観ていてニヤニヤしていました。また中盤前のマカオのシーンではお馴染みのビルの竹の足場があるのもこれまた定番でこれもジャッキーの映画ではむちゃくちゃ多いですよね。しなる竹を使っているのは中華圏では定番中の定番。そういう部分も良かったです。
この事からこの作品、実は『カンフーハッスル』(チャウ・シンチー監督/主演|2004)説を唱えました。ストーリーや描かれている事は違うんですがそれこそ昔沢山作られたクンフー映画へのオマージュというべき部分やその則が非常に近いものがあると思うのです。それはシャン・チーが暮らす部屋(ガレージですよねあれ)の壁に貼ってある『カンフーハッスル』のポスター。それと直接関係があるかどうかは分かりませんがキャストの中に『カンフーハッスル』の大きな舞台の一つ、豚小屋砦というアパートの大家夫婦の夫で実は妻と共に武林(武術界)の達人であった夫を演じたユン・ワー(元華/ジャッキー・チェン、サモ・ハンやユンピョウとともに七小福の一人でもある香港映画界のレジェンド)が出演しているところもなかなかににくいキャスティング。そのユン・ワーに向かってトニー・レオン演じるウェンウーが「小僧」呼ばわりするわけです。そこだけでニヤニヤが止まりませんよ。
後半、舞台がファンタジー仕立てになっていくんですがその舞台となるター・ロー(秘境にある別世界)。ワカンダのようにシールドで隠すのではなくある意味封印された仙界のようなところなんですがこれも香港映画とは無縁ではなく神仙といえば封神演義の世界ですからね。最近ではCGを使った西遊記の映画も作られているしそういう意味でもマーベル・スタジオがそこに向いてきたかって感じを強く受けました。
ただ少し残念な点もあってあまり血を見ない感じですよね。いや血がドバドバってのと違ってなんというか香港映画でクンフーモノといえば殴ると血を吐くみたいなそういう則が無かったかなと。何をって感じですけどそういう部分が実は客演であるウォンとアボミネーションとの闘いに感じられたのが😅まあそれと後半の神仙の村ター・ローまでの道行からが若干雑な展開だったかなと思いました。もっともいきなりなあの人の登場(プレミアのYouTube動画見たんで知ってたんですけど)がいいアクセントになってたんで面白かったですけれどね。まあそれも含めて香港映画っぽさがあると言えばそうなんですが。それでもキャストの魅力や熱演で引っ張ってもらったかなと。次はそのキャストの話をしてみようかなと思います。
キャスト
『シャン・チー』はハリウッド(米資本)の映画でアジア系アメリカ人は重要な役を演じアジア系スタッフやアジア人が参加して作られました。これは凄い事ですが『ブラックパンサー』があった事だからこそだと思います。(『ブラックパンサー』は主役のみならず脇役、そして製作スタッフもアフリカ系アメリカ人をはじめとする黒人と言われる人々が中心になって製作)そして先にも書いたようにヴィランであり重要な役としてテン・リングスの首領ウェンウーにトニー・レオンを起用出来た事は大きいと思います。
ウェンウー/トニー・レオン
親子の相克っていうのはマーベル・シネマティック・ユニバースの定番(アイアンマン、ブラックパンサーなど)のストーリーですが武侠モノでも親子でありながらも技の継承を巡って争ったり、跡目争いなどなど香港電影でも定番です。そのキーとなる父親役にトニー・レオンを持ってくるのはもうズルいとしか言い様がありません。tonbori堂は『インファナル・アフェア』でアンディ・ラウと共に主役を張ったトニー・レオンが初めてでしたが既に人気スター俳優であり、ウォン・カーウァイ監督と組んだ『恋する惑星』や『楽園の瑕』で評価も高い俳優でした。ジャッキーやジェット・リーのようにクンフースターって訳ではないですがチャン・イーモウの武侠映画『HERO~英雄』ではジェット・リー演じる無名と渡り合う書家でありながら高名な剣士である残剣を演じていました。そんなトニー・レオンがマーベル・シネマティック・ユニバースに出る!ってのは楽しみだったし期待大でしたが果たしてその期待に違わぬ存在感っぷりで主人公シャン・チーを喰ってましたね(ヲイ
でも引くとこはちゃんと引いて戦うシーンではしっかりシャン・チーを立たせる部分も長い映画俳優のキャリアを持つトニー・レオンらしいなと思いました。それでもオープニングのアバンタイトルでは完全にウェンウーのターンを見せたり中盤でも回想シーンや非情なボス、狂気と妄想に絡めとられた弱さなど見せ場たっぷりで堪能いたしました。
シャン・チー/シム・リウ
超が付くほどのシンデレラボーイいやこのシンデレラってつけるのどうなんでしょうかという話はまたするとして、ラッキーな俳優さんです。それまで目だった仕事は殆どない(ドラマの仕事はある)けれど映画界では完全無名な青年があるツイートがきっかけでオーディションからこの役を掴むまでこれはディズニープラスのマーベルスタジオのドキュメンタリーとして放送して欲しいぐらい凄い話です。そしてどんどん格が出てくるのもいいですね。この映画はシャン・チーのオリジン(誕生)を描く物語でもあるんですがまさにそれとシンクロしていると思います。
ケイティ/オークワフィナ
実は初オークワフィナでした。でもめちゃくちゃいいですね。なんというか親しみやすい。アレだけ喋りまくってる人が実際近くにいたらうっとおしいと思う人もいるかもしれませんけどなんかふと影を見せたり凄く奥深いところをさっと出せる凄い俳優さんです。ショーンがマカオに行くと言うとじゃあ一緒にと行動力も無駄にあるしそうとうなドライビンテクニックもあるけどなんでも「そこそこ」出来るんだけどそれがあって道が分からなくなってるってのも若い人にありがちな万能感と道が見えて無くて悶々としてるという部分がぱっちりはまるんじゃないでしょうか。今後もチェックしておきたい俳優さんです。
&more
全員書いてると無駄に文章伸びちゃうんで、まだまだ書き足りませんが簡単に他のキャストの事を。シャーリーン役のメンガー・チャン、ウェンウーの妻リーのファラ・チャン、メンガー・チャンもこれまで大きな役で映画などに出た事は無いとか。でもその堂々とした演技は凄いもんです。リー役ファラ・チャンはパンフレットに北京語、英語の他広東語(これは分る)日本語を使い分けられるマルチリンガルとあり、いや凄いなと思ったら日本でモデル活動していたそうです(Twitter調べ)
シャン・チーの母リーの姉でありシャン・チー、シャーリーンの叔母になるナンにミシェール・ヨー。『ポリス・ストーリー3』や『007トゥモロー・ネバ―・ダイ』がまず上がるでしょうけどここは『グリーン・ディスティニー』ユー・シューリンを思い浮かべてしまいますね。そしてミシェールは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2(リミックス)』ではヨンドゥが率いるラヴェジャーズとは別のラヴェジャー本隊の一人として出演していました。あちらも初期ラヴェジャーズのスピンオフの話があったんだけどジェームズ・ガンの一時離脱もありどうなったんでしょう。その企画も復活して欲しいものなんですが。
そしてこれもTwitterで知ったんですがケイティのおばあちゃん役の方はツァイ・チンという俳優さんで『007は2度死ぬ』や『怪人フー・マンチュー』でフー・マンチューの妹を演じた方で、最近でも『007カジノ・ロワイヤル』にも御出演のこれまたレジェンドな俳優さんでありました。ちなみに先にご紹介したユン・ワーはター・ローの守護者の一人でケイティに弓は早いという武人の役でした。あっさりやられてしまったのが残念でしたが彼の活躍は『カンフーハッスル』でどうぞ(笑)
そして『アイアンマン3』でマンダリン(偽)を演じたトレバーを演じていたベン・キングズレーが同じ役を再演。彼だけが心を通わせているモーリス(中国の伝説上の生き物、帝江)でター・ローの抜け道(動く迷路)突破シーンなど結構な活躍ぶりでした。
テン・リングスは帰ってくる
ということでポストクレジットについてはまた『シャン・チーついて知ってる2,3の事柄』として考察、小ネタエントリとしてアップするつもりですが全体的に香港映画への目配せ凄いなと思ってみてました。もちろん最近の映画としてのアップデートされたものやハリウッド映画としてのビッグバジェットもありますけれど。その上で父と子というパーソナルな物語が展開されるのもMCUらしい展開です。何よりトニー・レオンがハリウッド映画に出演というのはこれはやっぱり思うところがありますよね。そしてタイトルロールのシャン・チー、演じるシム・リウとともに今後のMCUを大いに盛り立てて欲しいですね。あとケイティはルイス(アントマン、スコットの友人)とマシンガントークを繰り広げて欲しいですね。サンフランシスコ在住設定だしこれはめちゃくちゃアリじゃないですか?『シャン・チー/テンリングスの伝説』今後もキャラクターたちが楽しみな真のフェイズ4のスタート作(『ブラック・ウィドウ』はメインのお話がエンドゲーム前なので)だと思います。
※『シャン・チーついて知ってる2,3の事柄』アップしました。
※シャン・チートリビュートアルバム。配信もあるそうです。Spotifyで聴いてますけどなかなか良いです。星野源も参加しています。(リンクはAmazon)
※Spotifyリンク|シャン・チー/テン・リングスの伝説:ザ・アルバム
追記:文章修正→「苦労人でもある(下積み時代もある人なので)」を「長い映画俳優のキャリアを持つ」に変更しました。(トニー・レオンはデビュー当時から主役クラスを演じていたとのご指摘をいただきましたので。)
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