独立愚連隊地獄へ|『ザ・スーサイド・スクワッド”極”悪党、集結』感想【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

独立愚連隊地獄へ|『ザ・スーサイド・スクワッド”極”悪党、集結』感想【ネタバレ注意】

2021年8月31日火曜日

DC movie

X f B! P L

 まさにそんな内容。いや『独立愚連隊西へ』(岡本喜八監督作品/1960東宝|リンクはAmazon)という映画でははぐれ者の札付き部隊独立左文字隊も大概ですがこの『ザ・スーサイド・スクワッド』(新スースク)では”極”が付くほどの悪党ども。いや中には悪党?って感じもあるけど激ヤバって感じなので一緒の括りで超危険物な連中が一体何をやらかすのか?一度はディズニー(あえてマーベルではなくこう言いたい)から放逐されたジェームズ・ガンをワーナー=DCが迎えて完全フリーハンドで製作したR+15指定の激ヤバアクション映画がこの『ザ・スーサイド・スクワッド”極”悪党、終結』です。ということでさらっとあらすじのあとに感想を書いていきたいと思います。


映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』劇場版予告(フル尺ver.)2021年8月13日(金)全国公開|ワーナーブラザーズ公式チャンネル/YouTubeより

※ネタバレっていうかまあ書いていると誰がどうなってこうなっていうのが分かってしまうのでネタバレとさせていただきますのでよしなに。是非ともご覧になってからお読みいただきますれば幸いです。

特攻野郎Bチーム|STORY

 スーサイド・スクワッド、それは特殊能力や戦闘能力に秀でたヴィランを集め、刑期軽減などを条件に自殺的な任務につかせる秘密部隊。頭部にマイクロ爆弾を埋め込み、作戦失敗や逃亡したら即処分という行くも地獄、帰るも地獄の命知らずの特攻野郎なチーム、正式名称タスクフォースX。チームを作ったのは政府の秘密組織の責任者アマンダ・ウォラー。彼女が今回下したミッションは南米にある小さい独立国のある島、コルト・マルテーゼ。そこにあるヨトゥンヘイムの破壊と秘密裏に進められている『スターフィッシュ計画』の阻止。しかし隊長のフラッグ大佐が率いるチームは上陸早々壊滅状態、フラッグとハーレイクインを残し全滅。しかしそれを見越してウォラーは暗殺者にして傭兵のブラッドスポート、過激過剰な平和主義者ピースメイカー、魚の神の末裔キング・シャークことナナウエ、ネズミを操るラットキャッチャー2、水玉模様で攻撃するポルカドットマンからなるBチームが密かに上陸していた。彼らは反政府勢力に匿われていたフラッグと合流『スターフィッシュ計画』の阻止に挑むがその作戦にはまだ裏があった。四方八方敵だらけの状況で果たして作戦は成功するのか?

独立愚連隊地獄へ

 『ザ・スーサイド・スクワッド』(以下新スースク)は待っていた作品だったしジェームズ・ガンの最新作でこのCOVID-19感染拡大の中、感染対策に厳を成し朝一番の回を選択して鑑賞。いや観てきて良かった。現状では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.1』と同じキターって感じです。いやこれはもっといっちゃったかもしれません(笑)

 飛び散る血しぶきや死体の山が築かれていく中、魅力的なと言っていいキャラクターがあがき騒ぎそして死に物狂いで戦う。死んで屍拾う者無しって誰かが言ってたけどまさにそれ、そしてどこにいっても敵だらけ!な独立愚連隊。これで燃えない訳がありません。tonbori堂はこういう「独立愚連隊」スタイルな作品が大好きで例えば『機動警察パトレイバー』でも後藤隊長自らが独立愚連隊というように組織に属していてても員数外、または癖のある面子を集めた作品が大好きなんです。なのでそこにド・ストライクな新スースクはジェームズ・ガンの最高傑作じゃないか?とも思いました。


 ベースとしては敵地に潜入し実現不可能とされた任務に挑む『特攻大作戦』に影響を受けているとされていますがこちらもなかなかの作品です。監督はロバート・アルドリッチ、主演はリー・マービン、共演にチャールズ・ブロンソン、アーネスト・ボーグナイン他。戦争映画のみならず犯罪映画や多方面のアクション映画などに影響を与えています。そもそもがデヴィット・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』でもエアー監督自身が『特攻大作戦』の影響を公言しているぐらいですから。


 今回の新スースクでもその影響はあって序盤の上陸作戦での火薬の量とか泡を食ったチームが次から次へとやられていくところなどは『特攻大作戦』の影響が見て取れます。その後の潜入や『スターフィッシュ計画』のシンカーを地元のクラブで捕らえるところは『荒鷲の要塞』、コルト・マルテーゼの市街戦は『戦略大作戦』。『戦略大作戦』は作中の馬鹿馬鹿しいやりとりなどにも影響があると思います。これジェームズ・ガン監督がパンフレットで影響を受けたと挙げてた映画なんですね。これらの作品も『荒鷲の要塞』は少人数の部隊で要人の救出任務が実はというどんでん返しがあり、『戦略大作戦』は戦争中に正規部隊からはぐれた連中がある街に残された金塊を強奪するという米版独立愚連隊な映画です。この3本ともにtonbori堂大好きでしてそこからも新スースクが最高なのは言うまでもありません。

過剰なまでに突っ走るジェームズ・ガン

 今回の作品でのインタビューで彼は事あるごとにワーナー側に対して謝辞を述べ、製作上のフリーハンドを与えてくれたと言ってます。この映画を作る前、彼はマーベル・スタジオの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でマーベル・シネマティック・ユニバースの中心人物、キーマンとなり他の作品でもガーディアンズ・オブ・ギャラクシー関係での演出などにも関わるなど深くかかっていました。ですがTwitterで日頃リベラルな言動とトランプ大統領(当時)に対して批判的な態度がオルタライト(トランプ大統領を支持するネット極右勢力)によって疎まれTwitterでの過去の発言が掘り起こされた事があります。その発言については酷いものでしたし容認できないものでした。そしてそれについて彼は発言を謝罪し真摯な態度を見せたと思いますが当時のマーベル・スタジオの上、ディズニー上層部は即座に彼を解雇するという態度に出ました。(やがて彼の謝罪を受け入れ再雇用をしました。)ガンはこの件についてインタビューで問われ非常にショックを受けたという事を話しています。


 そのタイミングでDC側が即座に彼にオファーをかけたのはクレバーだったし、ジャスティスリーグの件でゴタ付きながらも、ワンダーウーマン、そしてアクアマン、シャザムのヒットで盛り返しつつあるDCにとっても渡りに船だったと思います。結果ジェームズ・ガンの命運を救ったのはDCだし彼はそのキャリアの全てをつぎ込んだ1作を創り出したと思います。そのためR指定も飲んでくれたし、セットへのこだわりにも対応してくれたという話もしています。冒頭の上陸作戦は巨大なオープンセットが組まれあのド派手な戦闘を撮ったそうですしともかく最大級なサポートがあったようです。うんマーベルは大きな魚を逃がしたんじゃないかと心配です。

命知らずの14人

 今回のスーサイド・スクワッド(タスクフォースX)のメンツは14人、全員魅力的なんですがまあダラダラ書くのもなんなので14人の中でもtonbori堂が気に入った面子だけをちょっとご紹介したいと思います。

クリストファー・スミス / ピースメイカー

 演じるはワイスピ/ジェット・ブレイクでドムの弟ジェイコブを演じたジョン・シナ。元プロレスラー、バウティスタやロック様と同じ系譜の人で古くはジェシー・ベンチュラって人もいましたね(シュワルツェネッガーとバトルランナーで対戦したりプレデターで一緒に戦った人)このジョン・シナがまたいいんですよ。平和主義者だが平和のためなら子ども殺すサイコパス。それがまたジョン・シナのために書かれたぐらいパッチリはまってるんですよね。(実際のシナがどういう思想信条の人かは知らないんですが)おかしなヘルメット(便器と言われている)自信過剰で尊大な人物ですが腕は立つ兵士で銃火器や格闘術、その他の武器を使い手でもあります。完全な悪党ではない面もみせたりはするんですがやはり己の信条を最優先する自己中心的なところはジェームズ・ガンがシナに「感じの悪いキャプテン・アメリカ」と伝えたそうでそれを読んで納得しました。劇中tonbori堂の一番のお気に入りキャラクターです。

アブナー・クリル / ポルカドットマン

 息子をヒーローにしたい科学者の母親のエゴにより亜空間ウイルスに蝕まれており、1日一回それを吐かないと死んでしまう虚弱なヒーローからは程遠い男。しかし腕に付けられた腕輪のスリットからそのウイルス由来の水玉を放出し相手を崩壊させる超強力な能力を持つんですが、とにかく自信なさげだしその母親を殺したトラウマで周りの人間が全て母親に見えているんですがその攻撃力は強力で下手をするとメンバーの中で超危険。そして母親を殺したことからの贖罪か自殺願望もあるようです。そんな彼が何故か終盤覚醒していく様が若干分かりにくいのが残念。モブキャラにミルトンという反政府ゲリラの協力者がいるんですが急に彼の名前が出てくるシークエンスがあるんですがそこが唐突で?ってなっちゃうんですよね。あそこもう少し拾ってくれてれば良かったんですが。

クレオ・カゾ / ラットキャッチャー2

 彼女に関してはみんな大好きっていうより、ジェームズ・ガンが惚れた感があるキャラですね。心底の悪党というよりは環境がそうさせたというか。そうやって生きていくしかなかった。ラットキャッチャー1である父親役のタイカ・ワイティティとの回想シーンなど作中でハーレイなみにいいシーンが与えられていると思います。うん、関係ないけどガーディアンズオブギャラクシーでも彼女なにか新しいキャラ、もしかすると今度はハイテンションなヴィランをするかもしれないですよね。いやクレオを演じたダニエラ・メルシオールは本当に素晴らしいので是非とも彼女もMCUへっていうだけなんですけどね(ヲイヲイヲイ)あ、ヒーローサイドでもいいです(笑)

リック・フラッグ&アマンダ・ウォラー

 フラッグは前作のジューン・ムーン/エンチャントレスとの事はどうなったんやっていうのは置いといて今作でもわりかしブレないキャラですよね。でもそのブレなさ加減がウォラーの悪辣さ加減をまた際だ出せる感じがいいのです。ウォラーは敢えてフラッグのチームを囮にして内通者込みで潜入させるとは。ただハーレイや他のメンバーの戦闘力に期待して敵兵力を大幅削減は狙っていたようでメンバーのサバントが戦線離脱しようとしたらあっさり頭を吹き飛ばし「使えない」と吐き捨てさせるなど前作も大概でしたけど今回も。そういう意味では彼女も前作からブレてない。つまりこの2人は前作からのブレてないコンビと思います(笑)

ハーリーン・クインゼル/ハーレイ・クイン

 彼女に関してはブレるとかブレないとかそういう以前の話でハーレイはハーレイであるという感じで、そこは演じるマーゴット・ロビーによるものが大きいかなという気がします。実は『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』観て無くてこの後に急きょ鑑賞しました。細かいところを言えば性格破綻者なんででも彼女なりの則があってそこは演じているマーゴットが凄く分かっているというか。ある意味元カレのジョーカーを越えちゃってます。もの凄く即物的な行動と自己中心的な部分がハーレイの根幹なんですが今回もぴったりでしたね。

ロバート・デュボア / ブラッドスポート

 今回チームを率いる立場であるブラッドスポートが一番割りを喰ったポジションになったかなと思いましたが何かと世話焼きだしある小動物が苦手だし、一夜を共にしただけのような女性との間に生まれた娘を疎む素振りをみせながらも結局は娘のために自殺的任務を引き受ける。分かりやすいキャラクターではありますがイドリス・エルバが演じるとやはり色気がでてきますよね。ワイスピスピンオフのスーパーコンボのヴィラン、マイティ・ソーのビフロストの守護者ヘイムダル、そしてパシフィックリムのペントコスト司令官。彼が演じると色気や矜持が凄く伝わるんです。ブラッドスポート自体は前回のデッドショットを比べられるでしょうがギミックに関して言えばデッドショットよりブラッドスポートの方が断然いい。あちこちから暗器よろしく銃や腕にはクロスボウなど兵器満載でまさに武器人間といっても中から出すわけじゃないですが(笑)

ナナウエ / キング・シャーク

 3歳児なみの知能と野性の本能。本作のアイドルでみんな大好きキング・シャークです。前回だとキラー・クロックがいましたが彼よりも純粋無垢であり欲望に忠実という点で全く対極にいるキャラクターです。おかげでキング・シャーク、ナナウエファンが続出、Twitterの#新スースクTLでも評判は上々です。tonbori堂も最初はこれは飛び道具やなぁと思いつつ観てましたけどやっぱり動かしやすいのか、ほんわかするいいシーンが多いし、そしてうぇってなる残酷シーンも割り当てられている全く持ってジェームズ・ガンらしいキャラだと思います。

他の皆さん

 いやキャプテン・ブーメラン、前回も出てたのに出落ちっていう点では、こりゃ誰が生き残るか物凄く緊張感を増すし、サバントなんか狭い運動のための塀に囲まれたところで小鳥をヤってしまうからのあのシーンは物凄く上手い。TDKやジャベリン、モンガル、ウィーゼルなどチョイだけどちゃんとシーンを持たされている。特にウィーゼルってイタチ人間?なんだけどコミュニケーションとれてるの?ってフラッグが一応言葉は分かっているはずだって物凄くいい加減でその具合も前作と違うスーサイド・スクワッドなんですよっていう。そのウィーゼルの顛末もまたジェームズ・ガンらしくて多分キング・シャークとウィーゼル、ラットキャッチャー2が彼のお気に入りなんだろうなと思っていましたが、パンフを読むとポルカドットマンもそうだったのか。でも彼の結末はラットキャッチャー2と入れ替わったそうでうーんなるほどなぁって思いましたね。本来のジェームズ・ガンの持ち味で言えば確かにポルカドットマンってピタリとはまる感じがあるんです。なんというか囚われていてそこから脱しようともがくキャラで『スーパー!』の主人公クリムゾンボルトに通じるものがあります。また「椅子に座ってる人たち」として出てくるウォラーの部下のオペレーターも使命感が薄いというかなんというかちょっとギークをディフォルメ?いやカリカチュアライズし過ぎやないかと思ったけど見せ場ありましたよね。普通の人っていうのはああいう事をいうのかもしれません。台詞のある人物は一応に気を配っているジェームズ・ガンの才を見た感じがします。

最期の大一番

 で、そこまでは特攻大作戦チックな話が進んでいたのに『スターフィッシュ計画』の根幹だった大王の登場で急に怪獣映画の様相を呈してくるのはもうズルいとしか言いようがありません(誉め言葉)いや怪獣でるのは予告編バレしてるし分かっていてもああいうやつだってのは原作知らなかったから余計に(笑)DC原作にいるんですねあのスターロ大王。見た目は凶暴そうに見えないけど小型のスターロを放出して人間を操るというのも凶悪エイリアンいや「宇宙怪獣」。ゾンビとかコケミドロとかその線のヤバさも兼ね備えた最凶宇宙怪獣はラスボスに相応しいです。そんな宇宙怪獣に対するのは生き残った悪党ども。いやもうここからはスクリーンで楽しんで欲しいですね。そこまでも楽しんで欲しいですが(笑)ちなみに大王、『宇宙人東京に現わる』のパイラ人にデザインが似てるんですがシンクロニシティなんでしょうか。パイラ人のデザインはかの岡本太郎氏なんですが。ちょっとそこは気になりました。

ザ・スーサイド・スクワッドは終わらない

 実はピースメーカーを主人公にしたドラマシリーズが作られる事は決定しておりHBOmaxで配信決定、日本では独占契約結んだU-NEXTさんになるのかな?興行成績は残念ながら振るわなかったんですがまだまだスーサイド・スクワッドの冒険は終わらないしドラマシリーズの人気如何によってはその先もあるかもしれません。実際この面子の座組みでまた観たいですし。ともかくtonbori堂は大満足の1本でした。そしてここまで書いてきた内容、参考にしたのは殆どパンフレットからです。今回のパンフレットは充実していてお値段以上の価値があります。おサイフに余裕があれば是非ともというモノでした。

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※ハーレイ・クインが暴れまわる『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(AmazonPrimeビデオ)これはこれで面白い1本。ハーレイ・クインだけではなく様々な身分の女性が団結して過激に悪党退治に乗り出す映画です。

※インスパイア元『特攻大作戦』(AmazonPrimeビデオ)これは1作目もそうです。

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