大混乱|『LOKI(ロキ)』|感想と考察【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

大混乱|『LOKI(ロキ)』|感想と考察【ネタバレ】

2021年8月1日日曜日

drama MARVEL SF

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 ディズニープラスで配信されたマーベル・スタジオのドラマシリーズ。まずは3本の配信が終了しました。ワンダの物語『ワンダヴィジョン』、ファルコン(サム)とウィンター・ソルジャー(バッキー)の物語『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』、そしてロキの物語『LOKI(ロキ)』です。この『LOKI(ロキ)』に関しては色々最初から考察無いし予想、妄想があちこちで取り沙汰されており、『インフィニティ・ウォー』序盤でサノスの縊り殺されたロキが『エンドゲーム』で『アベンジャーズ』で捕らえられたその後に転がってきた四次元キューブを手にして逃走したところから始まると予告されていたため一体どのような展開を迎えるのか?本編への影響はという部分で非常に注目を集めていました。さてその『LOKI(ロキ)』ですがこのたび最終回を迎えてまさに大混乱としか言いようがない事態になりました。その辺りを考えつつ感想を綴ってみたいと思います。


※ディズニープラス配信中マーベル・スタジオ製作ドラマ『LOKI(ロキ)』(以下『ロキ』)の内容に触れております。【ネタバレ】


Marvel Studios' Loki | Official Trailer | Disney+/YouTube/Marvel Entertainment

悪戯の神、時のはざまでエンドロールを見る/STORY(あらすじ)

 サノスの尖兵となりチタウリを呼び寄せ地球を襲わせたロキはアベンジャーズにその企みを阻止された。スタークタワーから連行される時、サノスのデシメーション(指パッチン)に対抗すべく四次元キューブを一時的に奪取しに来たトニーたちの企みがハルクのひと暴れでキューブの入ったケースがロキの足下に転がってきた。それを拾いその場から行方をくらましたロキはモンゴルへとキューブの力で空間跳躍していた。しかしその場に現れた黒づくめの一団になんなく捕えられ連行されてしまう。


 黒づくめの集団はTVAと名乗り、ロキは「変異体」として彼らの管理する「神聖時間軸」を枝分かれさせる特異点として剪定される対象として捕らえられたのだった。TVAはこの時空の他に多数の平行世界があった時代。それぞれの世界が他の世界を侵略、または防衛のために戦争を引き起こし時空が消え去る危機があった時、タイムキーパーが現在の時間軸を「神聖時間軸」と定め争いの元になる時間の分岐を剪定し宇宙を護ってきた組織だったのだ。しかしそんなTVAへ攻撃を仕掛ける者がいた。その者を捕えるためにTVAの分析官メビウスは捕らえたロキを利用する事を思いつきTVAの判事で上司のラヴォーナに許可を求める。ラヴォーナは変異体であるロキを使う事に難色を示すがメビウスの説得によりロキはその変異体の追跡に加わる事に。ロキはメビウスに尋ねる。一体どんな変異体だと。メビウスは答えるその変異体は…「ロキ」そう別のロキだったのだ。果たしてロキはその変異体ロキを捕らえタイムキーパーの謎を暴くことが出来るのだろうか?

悪戯の神、大いに迷う

 ともかく1回目はほぼあらすじに書いたように話が進み、何も分からないままロキはTVAに捕らえられ虜囚となりました。TVAのコスチュームが何とはなしにファシストの警備隊を連想させるコスチューム。しかもヘルメットがご丁寧にフリッツタイプ(ドイツ軍のヘルメット、シュタールヘルムのような形)だし、剪定するためのバトン状の武器も警棒(実際に警棒のように使う)だしどう考えても悪の軍団。しかもTVAでの裁定に引き出されるまでの行程がこれまた不条理SFのようでまたシュールなのです。そこだけでもお腹いっぱいなビジュアルですが、この謎の多い組織のトップ、タイムキーパーというのがマルチバース(多元世界)間戦争を収めた者たちという設定もインフニティ・ストーンで指パッチンどころか多元世界を平定ってスケールが一挙に拡がってしまってTVの枠じゃないぞと驚きつつも確かにこれはTVでないと難しいかもと思ったものです。

TVA(時間変動機関Time Variance Authority)

 TVAがどこにあるかは結局最終回まで明言されませんでしたが、明らかに時間軸の枠外にあると思うんですよね。その風景はまるで未来都市のイラストを思い起こさせる多くの建造物と空を行きかう乗り物。チューブ状のトレインのようなものなど最先端のようでもありながら、クラシックなデザイン椅子、テーブル。エレベーターや職員のデスク、時間軸変動モニターまでクラシカルなブラウン管タイプ。まるで1960年代の人間が考え付いた未来の姿のようでした。で、最初に思ったのはインフニティ・サーガは実は一度通った道であり、過去の何者かがその道を逸脱しないように見張っている。それは誰なのかは分からないけど、そいつが今作の真のヴィランなんだろうなと思っていました。


 それでいろいろ予想をTwitterのTLで拾うとアントマン3に登場するとされている征服者カーンではないかという話が出ていました。というのもラヴォーナは征服者カーンとつながりのあるキャラクターでもしやとなっていたわけです。でもtonbori堂は実はこのTVAを作ったのはロキではないかという見立てを立てていました。後で色々感想や予想を見て回ると同じように思った人が多くて、ですよねーってなったんですけれどこれには理由があって、やっぱりロキって元々ヴィランですしというか基本ヴィランの立ち位置じゃないですか。それが『マイティ・ソー バトルロイヤル』で実の姉がヴィランとして登場して、悪い奴なんだけど憎めないキャラがもう一気にヒーローサイドにってなった訳ですよ。そこからの『インフニティ・ウォー』でいややっぱりそうなるかーってなったんだけど、やはり悪戯の神だからこそ輝くところがあるので完全ヒーローサイドに立たなくとも今のロキが経験を積んだ上でやはり己の敵は己って燃えないですか?でも結果は違いましたね…。

しかも吸血鬼からエイリアンの変異体を剪定しているにも拘わらずエイリアンがいるとしても人型というか人間しかいないのも不自然だなと思ったら実は人間の変異体で構成されているというのもディストピア世界を感じさせる不気味さ。そして極めつけは黒幕かと思われた(表面的に)タイムキーパーは機械仕掛けの人形だったということ。完全に悪い組織やないのって感じになってしまいましたが最終回のアレは…

シルヴィ

 今回のヴィランかとトレーラーで思わせておいて1話でも印象的にTVAの隊員を屠り、TVAに打撃を与え続けた性別の違うロキの変異体がシルヴィです。ロキが剪定されずにいたのは彼女を捕えるためにロキの行動をトレース出来るものが必要という事だったわけですが、メビウスによると色々なロキを剪定してきたということが明かされていきます。後にこれが伏線なるとは。当然有り得た展開ではあるんですがこの時は。そしてシルヴィについてもレディ・ロキが登場するかも!という話もあったのですが結局は変異体としてのシルヴィとして登場しました。


 シルヴィは原典コミックスでエンチャントレスと言う名を持つキャラの2代目でありロキと関りがあるとのことだそうです。しかしさすが8000体ものキャラがいるのでメジャーなところからではなくそういう変化球を投げてくるのがMCUですよね。

ソース|Enchantress (Marvel Comics)/Sylvie Lushton-Wikipedia 


 おかげで物語が非常に先の読めない展開となり、誰が敵なのかはっきりしない状態になったかと思えば後1日で崩壊する惑星にロキとシルヴィが放り出され、同じロキ同士なのに妙な感じになるという凄い展開になっていきました。(ちなみにこのドラマでロキのセクシュアリティはバイセクシュアルであると明言されました。これは映画に先駆けてMCUメインキャラがLGBTであるということになります。)この時、相手の性別は問わないものの相手は自分というのは「悪戯の神」であり、生来の嘘つきであり相手を信じきれない。崩壊する惑星から脱出するにはお互いの協力が不可欠なのにどうしても最後の最後で信じきれない。でも信じたい。第3話「ラメンティス」というストーリーは本当にどうなるんだろうとともにこの時の出来事が最終回まで物語に影響を及ぼした重大ストーリーだと思います。

でも普通に観てるとポーンと別の星の時間軸へ放り出されただけのロキとシルヴィの股旅ストーリーなんですけれどね。だからこそ非常に興味深く面白いエピソードでした。

虚無とロキ達

 剪定された者が行きつくのは消去されるのではなく(人の手により完全に消去するのは時間軸に影響を及ぼす?)ラヴォーナは剪定しても分岐は完全に破壊する事は不可能なため時間の動かない時の止まった場所、虚無へと送られるという説明でした。そこには3人のロキがいました。クラシック・ロキ、キッド・ロキ。そしてボーストフル・ロキ、あ、もう1人。ワニのアリゲーター・ロキ。ボーストフルは自慢したがりなんだそうで。この中でもキッド・ロキとクラシック・ロキは良い存在感を放ってましたけどアリゲーター・ロキはなんかまた出てくる気がします…いやなんとなく(ヲイ。


 製作側がインタビュー記事などで話している裏設定ではキッド・ロキが一番虚無にいる時間が長く、それ故に他のロキよりも格上なんだそうで、しかもソーを殺したことでここに送られてきたそう。クラシック・ロキはサノスに殺された時に得意の分身で自分を死んだように見せかけて名も知られないような星で隠棲していたのに人恋しさで出てきたところをTVAに捕まってしまったとか…(^^;そしてTVAの秘密を知ったメビウスや自ら飛び込んできたシルヴィが虚無に。

しかし虚無にはアライオスというガス状の生命体が棲んでおり、剪定されたものを有機物、無機物問わず食べてしまうのだそうです。しかしそのアライオスに触れたシルヴィは自身の力で操れるといい、ここから脱出するにはこの奥に潜む者を倒すしかないとロキと共闘します。キッド・ロキやクラシック・ロキは一笑に付しますがメビウスにタイムパッドを渡しTVAに真実を伝え自らの道を切り開くためそれぞれが行動を起すシーンはむちゃくちゃ燃えましたね。このあたりのシークエンスは第5話で最終回前のエピソードだったから余計そうかも。そして最後はクラシック・ロキの助力がまた熱かった。最後ロキとシルヴィのために時間を稼いたクラシック・ロキはアライオスに喰われてしまったけれど最後には顔に笑みが…あれはもう感動しますって。

在り続ける者

 そして虚無の先にアライオスが守っていたのは星に築かれた城。シタデルとよばれているそうですがその城の主は一見、普通の男でした。ただ斬りかかったシルヴィの攻撃を全て躱すなどやはり只者ではなく自らを幾つかの呼び名で呼ばれていたといい、ただそこに在り続ける者と称します。つまり『ロキ』の真の黒幕でヴィランは征服者カーンだったのです。tonbori堂は原典コミックスに明るくないんですがアントマン3のヴィランがカーンになるというニュースは目にしており、それを演じるのもジョナサン・メジャースというのも知っていました。なので「アレ?これはもしや?」と思ったところそうだったのですがアントマン3のカーンではなくあくまでもカーンの変異体の一人であり彼は元の時間軸である発見をし多元宇宙と行き来する事をはじめたものの最初は平和的でもやがて恐れや野心から他の宇宙を攻撃しはじめ大きな多元宇宙間戦争が巻き起こり、それを回避するため自分が見つけた虚無空間に棲む何でも食べてしまうアライオスに多元宇宙の剪定をさせ、メインの時間軸を神聖時間軸として保護する事を始めたといいます。

つまり彼は彼なりに悪手ではあるものの小さな犠牲で大を救おうとしたと。サノスっぽいけど遥かにスケールが大きい。なんせ多元宇宙、そして時間そのものですからね。でもドラマでそこまでやってアントマン3大丈夫かと思ったけど、そこはマーベル・スタジオ、概略とこのキャラはダメだけど後は自由にOKだからというのがこういう事になったのかと。まさかの展開過ぎてある意味『TENET』級に訳が分らくなってしまいました。(苦笑)


 結局在り続ける者はシルヴィに殺され結果彼が、アライオスに食べさせていたその他の分岐は無くなり膨大な可能性が拡がってしまった。まさかドラマシリーズでその大風呂敷を広げるのかとそこもびっくりしました。これは言わば『インフィニティ・ウォー』のブリップ(指パッチン)によるデシメーションよりとんでもない事ですから。そしてそれは多くの宇宙の時間軸ではそれを認識することは不可能(探知している存在はいても)今後のMCUの行く末に関わる大イベントを配信という形でリリースするとは思い切ったなというのが感想です。当然今後のMCUを追い続けるならば見逃せないし、それぞれ今後の映画が単独のイベントではあっても何故こうなったのかという部分で多分『ロキ』で起こった事の影響は計り知れないからです。MCUファンならやはりディズニープラスに加入はしておきたいなという作品でした。(ディズニープラス(日本版)については他に言いたい事があるんですがそれは以前のディズニープラスについて書いたエントリに追記しておきたいと思います。)

悪戯の神は何処へ行く

 シルヴィにより在り続ける者の使ったデバイスでタイムゲートで飛ばされたロキは違う時間軸に飛ばされました。そしてエンディングでのポストクレジットでシーズン2が告知。今後の注目点としては

  1. シルヴィはシタデルに留まるのか?それとも時を彷徨うのか?
  2. ロキは元の時間軸に戻れるのか?今の時間軸でのTVAと協力するのか?
  3. 拡がり続ける時間軸は今後TVAが剪定なりコントロールするのか?
  4. MCU単独映画作品への影響は?(例えばカーン以外の他作品への客演)
  5. ラヴォーナの目的は?
  6. メビウスは水上バイクに乗ることが出来るのか?

ですね。いや他にもあったかもしれないけど今のところはこの辺りだけどシルヴィとロキの今後については全く分からないです。シルヴィがエンチャントレスになるのかどうかも含めて不明すぎるしこの枝分かれの時間爆破状態がどうなるのか。一部では有り得たかもしれないMCUの歴史『WHAT IF…?』が実はという話もあるけれど、ウォッチャーの事も含め今後のマーベル・スタジオの動きにも目が離せない状況です。


 そして今回の『ロキ』はヴィランでありながら愛されキャラとして、そして『インフィニティウォー』一旦はシリーズを去ったのに『エンドゲーム』で別のタイムラインへ逃れたが故に自身の起源と心に向き合うことになったロキのオリジンでありシリーズ全てに彼の影響が拡がるというまさかのマルチバース特異点となった恐るべきシリーズだと思います。でもそんなに複雑にして大丈夫?と思うし今後の展開を見守りたいと思います。

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