前回の感想と考察ではタスクマスターに触れていなかったなと思い、改めてタスクマスターについても書いておく事にしました。しかしながらタスクマスターの正体は最後まで伏せられていたんですが勘のいい人はOPロールで正体に気が付いた人もいたそうです。(Twitter調べ)実はtonbori堂もある人物の名前に注目して、ええっ?出ているのか?どこで出てくるんだろうと思って中盤に差し掛かりあれ?もしかするとってなったらそうだったという。いやでも前半の描写だと別の線もあり得たんですけれどね。ということでいってみましょう。
※ということで今回も【ネタバレ】とさせていただきます。何卒『ブラック・ウィドウ』を観た上でお読みいただければ幸いです。
Taskmaster Breakdown Featurette | Marvel Studios’ Black Widow|YouTube|Marvel Entertainment ch
※前回のエントリです。↓
タスクマスターの正体
実はマーベル・シネマティック・ユニバースではヴィランにアレンジをくわえてくる事が多いです。なのでその前に原典を知っておいた方が良いかなと思いまずはググってみました。
ウィキペディアでは英語版でしか項目がありませんがいきなり映画版の正体についてのネタバレがあるので要注意です。
ソース|https://marvel.fandom.com/wiki/Anthony_Masters_(Earth-616)
ということでかいつまんで説明するとコミックス(原典版)のタスクマスターはトニー(アントニオ)・マスターズという人物がその正体であり、まるで鏡に映したように相手の動きをトレースできる能力を持った(その代償に短期、中期の記憶を失う)傭兵です。雇われればどこの勢力にも付くので基本はヴィランの立ち位置ですがSHIELDの戦闘教官を務めたりすることもあるようです。
で今回のタスクマスターはロキが『アベンジャーズ』で言った「ドレイコフの娘」からのその人、アントニア・ドレイコフ(アントニオの女性名)だった訳ですが、『アベンジャーズ』でジョス・ウェドンがあの台詞を言わせたのは、コミック原典からのナターシャの複雑な背景から(それは当然バートンとの過去を含む)ロキが人の痛いところを突くキャラとしてその過去をついてナターシャをやり込めるシーンに挟んできたものでした。その時ざっくりとしたものかもしれませんけどウェドンはウェドンで彼なりの詳細なバックグラウンドを設定していたかもしれません。
しかし今回はこういう事になったという訳です。それはナターシャがSHIELD入りするための最終試験としてのドレイコフ暗殺(これは裏切りの二重スパイではないかどうかの踏み絵でもあったと考えられます)。しかしビルごと爆殺ってのはちょっと引っかかる部分ですがあのビルにいたのがドレイコフの娘であるアントニア以外はドレイコフの部下であるならば鉄壁の防御を固めているならば爆殺という手しかなかったのかなとか…。こういう時はゴルゴ13に頼みたいところではありますが(^^;結果ナターシャはドレイコフが無事に生き延びアントニアが重傷を負ったものの改造人間になってしまったというさらに重荷を背負ってしまう結果となった訳です。
M.C.Uではヴィランをそのまま登場させるのではなく時にはアレンジを加えて来ますが性別変更というのはこれが初めてではありません。『アントマン&ワスプ』のヴィランであったゴーストもコミックス(原典)では男性だったのが女性に変更になりました。もちろんコミックスのような出で立ちだったり同じような性格をもったヴィランもいますがそういった原典の要素も残しつつ時には大胆に、そしてなにより作品に寄り添う形で登場させる事がまたM.C.Uのオリジナリティなのかなと思います。
レッドルームの主
ドレイコフが今までのヴィランと比べてしょぼいっていう話がありましたが…巷間で言われているのはドレイコフは悪名高き映画プロデューサーをモチーフにしているのではという話が多くされています。スカーレット・ヨハンソンもその映画プロデューサーの作品に出演している過去もあり、多数の女性を操る男としてのドレイコフはどうみてもかのプロデューサーを想起させるのは間違いないところだと思います。だからこそドレイコフは如何にもなルックで、しかもいやらしくまとわりつくようなああいうヴィランになったんだと思います。まあぶっちゃけその映画プロデューサーってハーヴェイ・ワインスタインの事なんですけれどね。(tonbori堂も以前ワインスタインについて書いたエントリがあります。|リンクはそのエントリ)
だからこそ見た目もああいう映画プロデューサー的な出で立ちでデカいデスクにふんぞり返り指先だけで人をこき使う。自由意志は無視し曰く「効率的な洗脳技術」でウィドウたちを操る。ナターシャやメリーナたちの世代のウィドウはまだその技術は使われていなかったのですが(その他のコントロール方法で支配していた模様)オハイオでの潜入任務で奪取された技術が使われ冒頭のアバンでレッドルーム支配を抜け出した前世代のウィドウが作り上げた解除薬を奪取する任務中にエレーナがその支配から脱出し、組織に残った姉妹たちを開放するためにナターシャとエレーナは立ち上がるのは明らかに古い体質が残る業界や世界に向けてそういう意図があるのは明白です。そういう視点で見るとさらにこの作品の深みが増すと思います。
そして自らの巻き添えになった娘を殺人マシーンにかえても顔色一つかえないサイコパスっぷりには、ネトフリマーベルドラマの『ジェシカ・ジョーンズ』に出てきたキルグレイブ(パープルマン)なみに性質が悪いです。まあキルグレイブは普通の人も支配出来ちゃうんでその系統では今でも最悪ヴィランと思っているんですけども。そしてタスクマスターの正体がアントニアであるからこそこのヴィランの性質の悪さと醜悪さがよけいに際立つっているのです。そう思うとこのタスクマスターの正体変更は有りではないかなとtonbori堂は考えるのですが。(当然オリジナルのタスクマスターがいいという話も分からないではないけれど今回のストーリーを考えるとこの変更は納得できるという意味で。)
ウィドウたち
ウィドウたちはナターシャが偽りだけど幸せな家族から引き離されたアバンからOPのバックであきらかに人身売買、誘拐ビジネスと思われるショットが挿入されていきます。そしてTVモニターの前で何かを教育されるかのようなショットも示唆するようにウィドウは最近問題になっている人身売買(これは我が国でも問題になっている技能実習生制度だけではなく例えばフィリピンパブなどの風俗関係でも以前から問題となっています。)をも含んでいると思います。エレーナは先に抜けたナターシャがレッドルームを潰したと思い込んでいたところに現れその解放を促すというのはそういった問題のメタファーにもなっているところで非常にクレバーだし、エンタテインメントにそういう部分を込めてくるのはMCUでは『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』の流れも感じますよね。
そしてウィドウたちを解放し、再び家族と別れもう一つの家族(アベンジャーズ)を立て直そうと奔走するナターシャが、サノスのブリップによるデシメーションを元に戻すインフィニティ・ストーン強奪作戦においてヴォーミアであの決断をしたのはもしかするとデシメーションでエレーナたちが消えていた…のか?もしそうならその辺りは今後『ホークアイ』で語られる事があるんでしょうか。ともかくナターシャのアイデンティティに深く関わるストーリーの組み立てとそのヴィランズというのがあってこその『ブラック・ウィドウ』だったと思うのです。それだけに今ディズニーとスカーレット・ヨハンソンと間で起こっている訴訟は本当に残念です。もともとディズニーは映画の公開とともに配信することでディズニープラスの加入者を増やしたいという考えがありマーベル・スタジオ側は映画は映画として公開としていましたがディズニー側に押し切られた形でプレミアム配信となってしまった事から今回のケースは訴訟となってしまいました。その後のディズニー側の声明もスカーレット・ヨハンソンにはちゃんと報酬が入るという話をして彼女がお金のために訴訟を起したかのような流れを作っているのは本当に残念で、これは当初の契約を違えたディズニー側に非があるのになんとも拙い物言いでさらに悪化させた感じがあります。今後のMCUにこの一件が響かないと良いのですが。
それでも『ブラック・ウィドウ』は風変わりなスパイ映画であり家族の話であり、抑圧された人の話として優れたストーリーと演技がある作品です。マーベルシネマティックユニバースの作品、特に『アベンジャーズ』シリーズを観たならば是非ご覧になって欲しいと思います。
追記:20210812|タスクマスターの章、文章が分かりにくいので改稿いたしました。何卒宜しくお願い致します。
追記:20210831|さらに文節などを直しております。
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