最近、映画関係のニュースだけではなく一般の記事でも取り上げられるようになったハリウッドの一大スキャンダルの中心人物ハーヴェイ・ワインスタイン(英語発音からこのように表記されることも:ワインスティーン)です。彼は女優にセクシャルハラスメントを行い、自身の持つ力で恫喝しレイプを行ったというところまで告発されました。司法当局も動いていますが、本人は心の病として療養施設にはいりリハビリ中だとか。ここ一週間だけでも数多くの彼と仕事をした女優たちが次々と証言を始めハリウッドでは映画芸術科学アカデミー(アカデミー賞の主催団体)が彼を追放するに至りました。
ハリウッド大物プロデューサーを追放 セクハラ疑惑報道 https://t.co/ol5EThrBPA— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2017年10月15日
※この件を伝えるTwitterの朝日新聞公式アカウント
彼は民主党の支持者としてヒラリー・クリントンに献金などもしていたため他方面にスキャンダルが飛び火しており、収拾がつかなくなってきている部分もありますがそういった証言のまとめや、考察はそういったことが得意なジャーナリストさんやブログさんにおまかせしたいと思います。ここからは私見というか一映画好きとして少し思った事を書き記しておきたいと思います。
ハーヴェイ・ワインスタインとは何者か?
tonbori堂は、ハーヴェイ・ワインスタイン(ワインスティーン)ってなんてことをやらかしたんやというのもあるし、この件が公然の秘密であったというのも酷いなと思うし、いやこれ規模は小さいけど日本でもあるし、それこそ映画や小説のネタになるような話でもあるなと思ったんですが、何故これが今まで問題にならなかったのかというと彼の仕事が一方では高い評価を受けてきたからというのもあると思います。それが免罪符になるとは思えませんが。
それだけにワインスタインのしでかしたことは(しかもずっとほぼ常習的に)最悪だなというしかないのです。何せ関わった作品は数知れず、アカデミー賞や賞レース常連作品をつくってきた実績が全て泥まみれになったということですから。当然作品は関係ないという見方もあります。実際ワインスタインがやったことが糞だからといって彼の関わった作品を糞とは言いたくないし、好きなものは好きなんですが…それでも彼の名前がロールに出るたびに残念な気分にさせられるこの憤懣をどこにぶつければいいのかという気分になります。
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ハーヴェイ・ワインスタインの興亡
彼の関わった作品の中で有名な作品
ハリウッドの大物プロデューサーであったワインスタインは無名に近い新人や俳優を発掘するのも上手いという評価を受けていました。事件後にこれを思い返すとまたいやな気分になるのですが…。またアカデミー賞や著名な映画賞を獲らせて箔を付けるという手法もとっており、この手法については物議を醸したこともあります。
クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲスがメジャーシーンに出てきたときに製作総指揮を執ったのも彼です。またミラマックスという制作会社を立ち上げヒットメーカーとして名を売り、それを売却後もワインスタイン・カンパニーを設立そのフィルモグラフィーは膨大です。彼が関わった作品を少しだけ書き出してみると、最近の作品ではマイケル・キートン主演の『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』、ブルース・ウィリスやジェシカ・アルバが出演したフランク・ミラーとロバート・ロドリゲスの『シン・シティ』などなど下にフィルモグラフィーを貼り付けみました。
- ソード・オブ・デスティニー (2016)<未> 製作
- ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ (2016) 製作総指揮
- ヘイトフル・エイト (2015) 製作総指揮
- パディントン (2014) 製作総指揮
- ヴィンセントが教えてくれたこと (2014) 製作総指揮
- シン・シティ 復讐の女神 (2014) 製作総指揮
- 大統領の執事の涙 (2013) 製作総指揮
- ジャッキー・コーガン (2012) 製作総指揮
- ジャンゴ 繋がれざる者 (2012) 製作総指揮
- 世界にひとつのプレイブック (2012) 製作総指揮
- ピラニア3D (2010) 製作総指揮
- 英国王のスピーチ (2010) 製作総指揮
- イングロリアス・バスターズ (2009) 製作総指揮
- 正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 (2009) 製作総指揮
- 愛を読むひと (2008) 製作総指揮
- ミスト (2007) 製作総指揮
- プラネット・テラー in グラインドハウス (2007) 製作総指揮
- デス・プルーフ in グラインドハウス (2007) 製作総指揮
- プルーフ・オブ・マイ・ライフ (2005) 製作総指揮
- ブラザーズ・グリム (2005) 製作総指揮
- シン・シティ (2005) 製作総指揮
- Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス? (2004) 製作総指揮
- アビエイター (2004) 製作総指揮
- キル・ビル Vol.2 (2004) 製作総指揮
- 最‘狂’絶叫計画 (2003) 製作総指揮
- コールド マウンテン (2003) 製作総指揮
- ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 (2003) 製作総指揮
- フル・フロンタル (2003) 製作総指揮
- キル・ビル (2003) 製作総指揮
- スパイキッズ3-D:ゲームオーバー (2003) 製作総指揮
- シカゴ (2002) 製作総指揮
- リベリオン (2002) 製作総指揮
- ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 (2002) 製作総指揮
- ビロウ (2002) 製作総指揮
- スパイキッズ2 失われた夢の島 (2002) 製作総指揮
- ギャング・オブ・ニューヨーク (2001) 製作総指揮
- 最‘新’絶叫計画 (2001) 製作総指揮
- シッピング・ニュース (2001) 製作総指揮
- ロード・オブ・ザ・リング (2001) 製作総指揮
- スパイキッズ (2001) 製作総指揮
- ショコラ (2000) 製作総指揮
- 最終絶叫計画 (2000) 製作総指揮
- サイダーハウス・ルール (1999) 製作総指揮
- パラサイト (1998) 製作総指揮
- 恋におちたシェイクスピア (1998) 製作
- スクリーム2 (1997) 製作総指揮
- ジャッキー・ブラウン (1997) 製作総指揮
- コップランド (1997) 製作総指揮
- もののけ姫 (1997) Anime 英語版・製作総指揮
- スクリーム (1996) 製作総指揮
- デンバーに死す時 (1995) 製作総指揮
- スモーク (1995) 製作総指揮
- トゥルー・ロマンス (1993) 製作総指揮
以上作品タイトルデータはallcinemaONLINEより
ソース|ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein) のプロフィール - allcinema
tonbori堂が観た作品を中心にピックアップしてみました。この他にまだあります。とくに『ジャッキー・ブラウン』以後のクエンティン・タランティーノ作品にはすべて関わっているし(『パルプ・フィクション』もワインスタインの会社ミラマックスが配給してました。)、一部のファンから絶大な人気を誇る『リベリオン』、ホラーコメディの『最終絶叫計画』シリーズやキッズ・アクションの『スパイキッズ』シリーズなど。他にもハーヴェイ・カイテル主演の『スモーク』、ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』3部作。アカデミー賞を受賞した『英国王のスピーチ』なども彼の手がけた作品です。
これらの作品の魅力や輝きが完全に失せることは無いのですが、どうしても玉に傷という感じが否めないのも事実です。それでもtonbori堂は『リベリオン』が大好きだし、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスの『グラインドハウス』も好きです。『ヘイトフルエイト』も面白かったし、『シン・シティ』だって好きです、まあ続編はちょっと微妙でしたけど。アカデミー賞に輝いた『英国王のスピーチ』も名作でした。映画は監督、キャスト、脚本、スタッフがつくりあげたものですが、それでも製作総指揮したという事はある種の決定権をもって作品に参画、金策もして作品を作り上げたのはまちがいありません。となるとやはりこれらの作品もまったくの無関係とはいえないのです。それだけに物凄く腹が立つんですが、彼のそういう性癖はほぼ公然の秘密で、それを考えるとなにかやるせない気持ちにもなります。
嫌われ者ハーベイ・ワインスタインに対する本音、あちこちで炸裂(猿渡由紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
ワインスタインの凋落後、声を上げる人が続々出ているという現地映画ジャーナリストの猿渡さんのレポートです。
何故声が上げれなかったのか、もっと早くにという声もあるでしょうが仕事を失うのは皆怖いものです。それだけ彼が権力者だったのですが、団結して声を上げた人たちの乾坤一擲がワインスタインの牙城を崩したと見るべきなのでしょう。
『ザ・プレイヤー』ワインスタインの罪
彼の関わった作品ではないですがこういう映画がありました。あるハリウッドのスタジオの重役であるプロデューサーに一通の手紙を受け取ります。そこには「お前を殺す」と書いてありました。心当たりが多すぎるプロデューサーでしたが、大方自分が却下した脚本家ではないかと見当を付けます。そして彼と直接話をしましたがはずみで彼を殺してしまいます。これはロバート・アルトマンの『ザ・プレイヤー』のあらすじですが、基本的にはスタジオのプロデューサーである主人公の日常をおっかけていき、殺しが起こってしまったことでのドタバタや映画ビジネス群がる有象無象を活写した1本です。今回の騒動でまず思い出したのはこの映画でした。ハーヴェイ・ワインスタインもまさか殺人まではしていない…とはいいきれないのがこの世界の恐ろしいところです。そしてこの一件もすぐには無理でも何れは映画化されるような気がします。それが映画ビジネスという仁義なき世界なのでしょう。この先の展開までを含めて多分そうなる予感がします。
最後にワインスタイン(ワインスティーン)を擁護する気はさらさらないし、なんとすれば永久追放でもいいと思うのですが、彼の関わった作品まで黒歴史化するのだけはちょっとと思っています。今のところそういう動きは出ていませんが彼の行為を正当化する理由にはしてはならないし、だからといって作品をお蔵入りにしてしまうのも避けて欲しいというのはわがままでしょうか…。かかわった全ての人を想いを踏みにじった彼は本当に罪深き男だと思います。
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