ルパン三世1stシリーズ『魔術師と呼ばれた男』|tonbori堂アニメ話り【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

ルパン三世1stシリーズ『魔術師と呼ばれた男』|tonbori堂アニメ話り【ネタバレ注意!】

2020年11月28日土曜日

anime car

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 金曜ロードショーがルパン三世祭り(2020.11.20がカリオストロの城、11.27が初CGアニメTHE FIRST地上波初放送)ってなことで便乗してtonbori堂でもルパン祭りとしてエントリをあげてみました(ヲイヲイ。)と言ってもルパン三世と言っても色々あります。緑の背広の通称1stシリーズ。赤い背広の2ndシリーズ。そしてピンクの背広のPARTⅢ。そして21世紀になって始まった4thシリーズにPART5。番外編として「LUPIN the Third」シリーズもあります。また数々のTVスペシャルに映画も作られていてまさに数多くのルパン三世が存在している事になるし、原作者モンキー・パンチ先生の原作があればこその話ですが今回はその中でもtonbori堂が大好きな1stシリーズの第2話「魔術師と呼ばれた男」の話を、本編の内容に触れつつしてみたいと思います。(なので【ネタバレ】となります。何卒ご容赦を)

ルパン三世オリジナルサウンドトラック「魔術師と呼ばれた男/脱獄のチャンスは一度」/コロムビアレコード
ルパン三世オリジナルサウンドトラック「魔術師と呼ばれた男/脱獄のチャンスは一度」/コロムビアレコード

 画像はルパン三世オリジナルサウンドトラックとして本編が2話収められたレコードです。ルパン三世が2ndシリーズの盛り上がりを受け1stシリーズの再評価も高まり、この2話が収められたレコードが発売されました。その前に実は「じゃじゃ馬娘を助け出せ」と「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」が収められたレコードも発売されていたんですがこれはその後に出たものです。

魔術師と呼ばれた男/STORY

 ある日ルパンと相棒の次元は燃え盛る森の中で炎に巻かれた峰不二子を発見、アジトに連れ帰り介抱する。すっかり回復した不二子とディナーの用意をしているルパン達に招かれざる訪問者が現れる。男は白乾児(パイカル)と名乗り不二子を探しにアジトへ入り込む。軽い脅しのつもりでルパン達はパイカルに銃を向けるが素手のパイカルが指を向けるとその先から炎が吹き出しルパンを焼け焦がす。埒が明かないと悟った次元はパイカルの頭に狙いを付けるがなんとマグナムの銃弾をも受け付けないパイカル。部屋で待ち構えた不二子のサブマシンガンの洗礼にも全く異を介さず彼女を連れ去るのであった。

ルパン三世オリジナルサウンドトラック「魔術師と呼ばれた男/脱獄のチャンスは一度」/コロムビアレコード
ルパン三世オリジナルサウンドトラック「魔術師と呼ばれた男/脱獄のチャンスは一度」/コロムビアレコード


 不二子はパイカルの大事なフィルムを彼から盗みだした。暗黒街の魔術師と呼ばれる彼の秘密がそこに記されているはずだった。パイカルはそれを取り返しにやってきたのだった。彼女を痛めつけるパイカル。しかし不二子はそれをルパンの車に隠した。不二子を探し回るものの手がかりがないままアジトへ戻る2人。その車中で次元がフィルムを発見する。しかしフィルムを映写してもまったく意味が分からないルパン達。そこにパイカルが再び来襲する。機関銃にバズーカ砲を喰らってもまったくきかないパイカルに対し打つ手が無くなった2人はベンツSSKでその場を逃げ出すが、何故か逃げた先にパイカルが。しかも空中に浮かんでいた。「暗黒街の魔術師」と呼ばれるパイカルに対してルパンたちはどう立ち向かうのか?

パイカルという男

 あらすじはAパートまででこの後ルパンによるパイカルの魔術のタネの解明、そして決着が描かれる訳なんですがこの物語、実はパイカルという男のストーリーでもあるんですよね。無口で必要なこと以外は全く喋らない。そして自分の力に対して絶対的なまでの自信がある。だから不二子を痛めつけて(死なない程度に火炎放射で燃やした後に)ルパン三世のアジトにかくまわれたと知ってもたった一人で乗り込んでくる。そりゃそうです、暗黒街の刺客にマシンガンでハチの巣にされても傷一つないんだから。


 不死身の魔術師、しかし魔術にはタネがある。それを不二子に盗まれたために取り返そうとするわけですが彼女を火をかけたり、拷問しても殺そうとはしない。不二子は不二子でルパンのクルマにワザとフィルムを残し彼に解読をさせようとしました。そして決着をつけようとしたルパンがパイカルの元に向かった時に彼にその事実を伝えました。その時に「同時に2人の人を愛してしまったから」と言いました。ここでは不二子が魔性の女とか裏切りは女のアクセサリーとかは置いといて実はルパンも不二子のそういうトコも含めて好きなんだけど、パイカルもまた不二子が好きだったということです。

ルパン、不二子、パイカルの三角関係

 そうこの話は視点を変えてみると男二人と女一人の三角関係の縺れのようなストーリーでもあるんです。でもそれだけでは終わらない。不二子の目的はパイカルの暗黒街の魔術師と呼ばれる魔術のタネを盗み出すこと。だからルパンを巻き込んだ、当然暗黒街の魔術師と互角に戦えるのは「世界一強い男」と呼ばれる程の腕利きでないと。ルパン自身が自分ことをそう言う事は劇中では一回もありません。ただしパイカルを含め1stシリーズの五エ門登場回「十三代石川五エ門登場」とかでも百地にもいわれるし、「狼は狼をよぶ」なんかでもそうだけどルパンは暗黒街の中でもトップクラスの賞金首であり、ナンバー1であり、商売敵も多くその首を狙っている者が多いのです。


 この頃のルパン三世はカリオストロの城の泥棒の叔父様なんかじゃなく、まあ回想で語られる突っ張ってた頃…いやいやそれよりもパイロットフィルムで使われたクールタッチのゲバルト。そういうイメージのあるまさに暗黒街の住人。殺しのナンバー1であり世界一強い男、ルパン三世はそういう暴力と闇が渦巻くアンダーグラウンドな世界で生きており、パイカルもまたその力をして自らがルパン三世を超える「世界一強い男」と思っている訳です。だから不二子のテープに吹き込んだメッセージ「ルパンに勝つ自信はあって?」という問いかけに「俺が勝つ。世界一強い男は一人だけだ。」と自信満々で独白する。パイカルは無表情で口調もほぼ平坦で感情を抑えた喋り方が基本なんですが不二子に迫った時、そしてこの時、ルパンにタネを明かされた時、感情を露わにしています。それだけ彼は自信家であり自ら力を信じている男。一方のルパンは起伏に富んだ感情を何時もぶつけて計算も無しに挑んでいるように思えますが実はずっと頭は回転していてピンチの時でも逆転の目を探している。その差が勝負の決め手になった…。


 また不二子も勝負に行くルパンを止めないし、パイカルに問いかけるそこに愛情はあるのかないのか?ものすごく曖昧にぼかされていますが後半はもうフィルムより2人の決着が気になって仕方がない。それは愛した男達のうち強いのは誰?そんな想いもあったのでは?そういうエピソードでした。ニヒルな暗黒街の魔術師はこれっきりのゲストキャラクターではありましたが今でも思い返すごとに観たくなる、奇妙な三角関係と男達の矜持の物語。そんな心に残るエピソードです。

魔術師のクルマ/メッサーシュミット

 パイカルは劇中で珍しいクルマにのっています。小さな2人乗りのクルマでなんというか小っちゃい船のようなシルエットをもったクルマなんですがこれは架空のクルマではなく実際にあったクルマなんです。ドイツの第二次世界大戦で有名な戦闘機Bf109を製作したメッサーシュミット社が戦後に作ったバブルカー(2人乗りの小型車)です。テリー・ギリアムの映画「未来世紀ブラジル」でも登場しており日本でも愛好家が乗っています。とはいえtonbori堂も町で直で見たのは1度きりで、イベントでもそんなにお目にかかれない…事もないかもしれないけれど(バブルカーの集まりなどならば多分沢山?来てるかも。)基本的にはレアなクルマです。当然昔のクルマだから安全性やもろもろは現代のクルマとは比べ物にならないけれど不思議な魅力のあるクルマです。暗黒街の魔術師が乗るにはちと可愛らしいかもしれませんが(笑)ちなみにスリーホイーラー、3輪車です。(前2輪の後部1輪)

{{Information |Description=1955 Messerschmitt KR200 |Source=Own work |Date=9 December 2006 |Author=User:Asterion |Permission= |other_versions= }}
画像はWikipediaより|メッサーシュミットKR200/


生きていた魔術師

 敗れたパイカルは生死不明で、上では本編ではこれっきりと書きましたがそれはTVシリーズでのこと。実は続編OVAが製作されています。ルパンとの対決に敗れたパイカルは生きていてルパンへの復讐の機会をうかがっていたという筋立てです。ルパンは担当していた山田康雄が逝去後なのでクリカンこと栗田貫一が担当。それ以外は2ndシリーズのオリジナルメンバーですがパイカルの声は最初に担当した江角英明ではなく野沢那智でした。内容は一度観たのですが…うーん残念ながら最初のエピソードを超えられるようなものでは無かったように思います。難しいですよね。でも野沢さんのパイカルは良かったですね。今となっては貴重だと思います。あとこのエントリを書くためにちょっとググったらルパン三世PART5のBlu-ray&DVDに特典としてついている50周年記念アニメとして「ルパンは今も燃えているか?」にも登場しているそうです。そちらは未見なんですがいつか見て観たいですね。


 でも続編は正直蛇足かなという気がします。それだけこのエピソード「魔術師と呼ばれた男」ってのは完成しているんですよ。しかもこのエピソードはルパンと次元そして不二子とパイカルしか出ていないんです。そうむちゃくちゃソリッドなんです。これは押井守監督がカリオストロの城の後のルパン三世の監督に宮崎駿監督から推されてた事があるんですけれど(押井監督本人もこれはよくネタにしている)その時だったか関連で宮崎駿監督がルパン三世ってのは基本ルパンと次元だけでも話が成立するという事を言ってたように思います。物語を転がす不二子。魅力的なライバルキャラクター。全部そろっている訳で、これだけで1時間の話にしてもいいぐらいの物語を30分に詰め込んでいるので決着の付き方が性急すぎたりもしますが非常に濃い、「カリオストロの城」でも「VS複製人間」でもないルパン三世が見れます。アンニュイでクールでそしてバイオレンスなルパン三世をぜひ味わってほしい、そう思います。


※ルパン三世は配信サービスであちこちで巡回しつつ配信されているのでお好みのサービスでご覧ください。Huluはルパン三世放送の日テレ系列なので入っていると思われます。

※AmazonではPrimeビデオでもdアニメストアチャンネルに加入すれば見放題になっています。(初月は無料、以後月/¥440)
ルパン三世/©モンキー・パンチ トムスエンタテインメント/AmazonPrimeビデオ

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