黄色の13|エースコンバット04シャッタードスカイ|tonbori堂『ACE COMBAT』語り-Web-tonbori堂アネックス

黄色の13|エースコンバット04シャッタードスカイ|tonbori堂『ACE COMBAT』語り

2020年11月24日火曜日

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 エースコンバット04のライバルといえば、彼しかいません「黄色の13」。彼については名前は明かされません。その後に至るまで殆どのキャラクターにははっきりとした固有名詞が設定されないままなんですが、それがこのエースコンバット04の独特な空気を産みだしているのかもしれません。ということで今回のACECOMBAT語りはエルジアの絶対的エース「黄色の13」についてです。

黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share
黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share

※スクリーンショットはエースコンバット04ではなくACECOMBAT7でのyellow13スキンです。

絶対的エース「黄色の13」

 エルジア空軍がストーンヘンジ防衛のためにエースを集めた黄色中隊(正式名称はエルジア空軍第156戦術戦闘航空団アクィラ中隊)の中隊長でありエルジア軍をとおしてみても絶対的なエース(撃墜王)が「黄色の13」です。乗機はSu-37テルミナートル(ターミネーター)で開戦初期からパイロットして多数の敵機を撃破その栄誉をもってエルジアが接収した対ユリシーズ(隕石)迎撃用超巨大レールガン「ストーンヘンジ」の防衛部隊「黄色中隊」の隊長となりました。正式名称のアクィラは星座の鷲座という意味があり部隊エンブレムにもその意匠があります。エースコンバット04のサイドストーリーは彼が撃墜した機体が家族の住む家に墜落し天涯孤独になってしまった少年と彼が身を寄せ想う酒場の娘と関わっていく事になり、ただの憎い相手から生きている人間としての姿が描き出される事になります。

黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share
黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share


 地上に降りた彼はやはり一人だけ違う空気を纏った人物として描写されていますが酒場で部隊員に奢り、興がのればギターをつま弾くなど口数は少ないものの、とげとげしい感じや荒々しい感じではなく頼れる兄貴分な空気を持っています。時には酒場で少年のハーモニカに併せてギターを弾き、酒場の娘が歌うなど人気者でもあり少年は徐々に彼に惹かれていきます。しかし一方で家族を奪った仇でもあるため二律背反な気持ちになっていきます。シャッタードスカイの幕間のストーリーは少年の目を通して語られる大陸戦争(エルジア軍対独立国家連合軍)の話ですが殆どは彼と黄色の13と酒場の娘に振り分けられています。しかしちょっとしか出番のないキャラクターまでしっかりとバックボーンが感じられる作りになっているのは『アリーテ姫』『この世界の片隅に』の監督、片渕須直の手腕によるものです。止め絵と呼ばれるイラストで構成されたストーリーもまた結果的に奥行きを出す事に貢献しており、少年、酒場の娘、黄色の13の歪な関係が浮かび上がる切ないストーリーになっています。

想い人「黄色の4」

 そんな「黄色の13」は出撃時、5人を選び毎回5機で上がります。そして一斉に同じ旋回機動を行ってもその鋭さから彼だけ翼端から飛行機雲が発生する。そんな凄腕の「黄色の13」ですが、なによりも僚機の生還を最も誇りとしています。そんな彼のチェック6(後方)を任せるのは何時も決まったパイロット。「黄色の4」です。女性であり、地上に降りた後も13の後ろに控え前に出過ぎず、そっと彼に寄り添うように護るポジションにいる、空でも地上でもパートナーである黄色の4。もうこれだけでいろいろ話が膨らみますよね。でも本筋ではないので影のように寄り添う姿だけが描写されそれが深い陰影を残しています。

やがてストーンヘンジ防衛戦で劣勢続くエルジア軍では補給も途絶えがちとなり整備もままならない機体で出撃し「黄色の4」が帰らぬ人になってしまいます。つまりストーリー的にも中盤でいなくなってしまうんですが「黄色の13」と言えば「黄色の4」とセットになってるところがあります。出過ぎず、さりとて下がりすぎず。存在感を発揮する彼女。遺したものが「黄色の13」に差し出したハンカチというのもまた脳裏に余韻として残るんですよね…。

「黄色の13」のモデル

 エースコンバット04では登場人物で固有の名前があるキャラクターがいません。いや裏設定ではエルジアからの亡命者を載せたジャンボのコパイロットがケイ・ナガセという話はありましたけど、殆どTACネームや通り名。少年にしても酒場の娘にしても名前で呼ばれる事はありませんがそれでもそれぞれが強烈に印象に残っています。そんな「黄色の13」ではありますがモデルではないか?と言われる人物がいます。

 それが「黄色の14」ことハンス=ヨアヒム・マルセイユです。彼はジェット機のパイロットではありません。第2次世界大戦時のドイツ空軍のエースパイロットです。乗機はメッサーシュミット Bf109。メッサーシュミットを駆りアフリカ戦線で活躍し通称は「アフリカの星」と呼ばれていたそうです。「黄色の14」は第3中隊の14号機を意味する黄文字で14が機体に記されていたからという事から呼ばれる事になったそうです。

ハンス=ヨアヒム・マルセイユのメッサーシュミットBf109
マルセイユの乗機/Herbert Ringlstetter - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1243071による


 マルセイユは魅力的な人物でそこは「黄色の13」と似ているところだとは思いますが軍規違反の常習者でプレイボーイだったそうで、「黄色の13」は軍規違反はともかくプレイボーイ?だったかなという感じなのですが一方でその偏差射撃(予め敵機の動きを予想して着弾点を少し前に置く射撃方法、一般的な空戦では重要なテクニック)は天才的であったとも称されています。そこは「黄色の13」っぽいところがありますよね。しかし空戦の天才も機体の故障によりその命を落としてしまいます…。最後がちょっと「黄色の4」(彼女も整備不良の機体で出撃し帰らぬ人となった)とだぶる感じもあります。

Su-37テルミナートル

 「黄色の13」といえばこちらの機体も人気です。スホーイのSu-27の実験機なんですがエースコンバットのストレンジリアル世界では量産されエースの乗機として度々プレイヤーの前に立ちはだかる機体です。双発の推力偏向エンジンを備え、易々とクルビット機動をこなすその機動性はエースコンバットでも後の6以降のハイGターンを経て7で実装されましたが、残念ながらまだ04の時はプレイヤーではそこまでの機動を用いる事が出来ませんでした。ただ「黄色の13」は近い機動でミサイルを躱しまくりますが(それはエースコンバット・インフィニティでも敵機がクルクル周ってた事を思い出します)

黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share
黄色の13(Su-37yellow13スキン/ACECOMBAT7)#PS4Share


 スホーイのSu-27系列の機体はエスコン開発陣、PROJECT ACESでも人気があるとのことで2ではイメージリーダー機だったしその後もずっとシリーズに登場し続けている機体ですがやはり「黄色の13」の機体が一番人気で「黄色の13」仕様デカールが付属したプラモデルも発売されました。見た目にもスマートかつパワフルという相反した魅力を兼ね備えている戦闘機です。エースコンバット・インフィニティのイベントの報酬として特別機体が出た時もメビウスラプター、ナイトバーン(ワイバーンの特別機体)とともに熾烈な戦いが繰り広げられました。

黄色の13と7のミハイ

 04のサイドストーリーを脚本、演出したのは片渕須直。先にも触れましたが『この世界の片隅に』『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』を監督したアニメーション演出家です。片渕監督はエースコンバット5のシナリオも担当されたそうですが04の当時、当時のスタッフがアニメーションスタジオSTUDIO 4℃に制作を依頼、紹介されたのが片渕監督だったそうです。そして最新作7でもシナリオ担当されました。その7に登場したライバルエースにしてエルジアのベテランパイロット、ミハイ。彼を創造した片渕監督はエースコンバット7のデラックスエディションに付属している特典であるブックレット。というには読み応えのあるエースコンバットヒストリーとでも言うべき書籍でアサルトホライズンのデラックスエディションについてきた副読本をさらに増加補填した「ACESatWAR A HISTORY」に書き下ろしされた「白いノート」というショートストーリー、敗戦後のエルジアで「黄色の13」を追う元映画監督の話があります。その中で訓練生時代の「黄色の13」はその教官であったミハイと思しき人物と共に白い影のような実体のない虚像のような存在、天空にしか居場所の無いかのような描かれ方をしていました。


 ミハイはまだエースコンバット7でその名前と孫娘2人がいることでなんとか現実との接点がありますが「黄色の13」は「黄色の4」を失い、そして少年から銃を向けられた時、完全に地上との接点を無くしてしまった。メビウス1と対峙した孤高のエースは結局は空にしか居場所のない虚像としてその生を終えたのではないだろうか…そんな気がします。そして残ったのは黄色中隊の「黄色の13」という伝説だけが後に残った…。ゲームもそうなんですがゲームに直接関係ないストーリーでも心に残るエース。やはりエースコンバットを語るうえで外せないライバルキャラクターとして今後も04プレイヤーの心に深く残り続けていくのではないでしょうか。

(リンク)【ACE COMBAT 25周年記念】朗読劇:白いノート/ACE COMBAT Channel /YouTube

こぼれ話

 これは黄色の13関連の話を検索していた時にエースコンバット公式アカウントで04の事をつぶやいたのをまとめたものを見つけまして、エースコンバット公式アカウントはtonbori堂もフォローはしているんですけれど完全にノーチェックなものでしてこれはびっくりな情報がありました。それはこの幕間のサイドストーリーの発注はフランス映画の『ラ・ジュテ』にインスパイアされているという話です。


 この『ラ・ジュテ』という作品は押井監督も大好きな作品として知られており、『12モンキーズ』の原案にもなっている時間旅行が主題になっている作品ですが、まさか04の事を調べていると『ラ・ジュテ』に行き当たるとは…ちょっとびっくりしました。押井守監督は映画『スカイ・クロラ』を元にしたエースコンバットシリーズを手がけるPROJECT ACESが任天堂Wiiでリリースされた『スカイ・クロラ イノセン・テイセス』という番外編ゲームがあるのですが何かしらつながりがでてくるもんだなとちょっと驚いたので「黄色の13」からは外れますが記しておきます。リンク先のツイートまとめには04幕間ストーリー秘話がまとめられているので一度ご覧になってはどうでしょう。興味深いツイート群でした。


※再販かかっても人気が高くすぐに売り切れSu-33黄色の13仕様byハセガワ。Amazonでは高値のマケプレ品でした。模型屋さん巡りの方がいいかもしれませんね。

プラモデル 1 72 Su-33 フランカーD ”エースコンバット 黄色の13” エースコンバットシリーズ [SP312]/Amazon

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