難攻不落の要塞に潜入せよ!|『荒鷲の要塞』(1968公開|英/米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

難攻不落の要塞に潜入せよ!|『荒鷲の要塞』(1968公開|英/米)|tonbori堂映画語り【ネタバレ注意】

2021年5月19日水曜日

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 tonbori堂が不定期にお送りする、好きな映画についてあれこれ語るエントリ。「tonbori堂映画語り」ですが、今回取り上げるのは『荒鷲の要塞』です。ドリパスから一掴み企画戦争映画5選でもご紹介したこの作品、何と言っても英米の2大スター共演、かつ原作小説がベストセラー小説家の作品でその原作者が脚本を手掛けているというところがポイントです。第2次世界大戦での冒険活劇は小説でも映画でも幾つもありますが、そのうちの1本として長く記憶される作品でもあります。tonbori堂が好きな映画なので今回1本のエントリとして解説してみようかなと思います。

YouTubeムービーより|提供元Warner Bros Japan
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「鷲の城」へ潜入せよ/ストーリー

 アルプス上空を山間を縫うように飛行する輸送機。ドイツ軍のマークを付けているが中にはパイロットと副操縦士、輸送員以外に7人の連合軍のコマンド隊員たち。彼らはドイツ軍に偽装してアルプスの深奥部にある「鷲の城」(Schloss Adler)と呼ばれるドイツ軍の要塞から前線視察中に飛行機の不時着によりドイツ軍の捕虜となったアメリカ軍のカーナビ―将軍救出の命を受けていた。カーナビ―将軍はヨーロッパにおける第2戦線の重要な反攻作戦の立案者であり彼が反攻作戦をドイツ軍の尋問により自白させられる前に彼を救出し情報漏洩を防ぐため、英国情報部のローランド提督とターナー大佐は情報部のスミス少佐以下、ドイツ語の出来る兵士を集め敵地に潜入、ドイツ軍人になりすまし潜入、将軍を奪還するという大胆な作戦を計画した。またカーナビ―はアメリカ軍の要人であるため米レンジャー部隊からシェーファー中尉も加わる事になる。

7人は落下傘で「鷲の城」付近へ降下するが隊員の一人が着地時に首の骨を折り死亡する。しかしスミスはシェーファーに隊員の首の骨が折られていると告げる。いきなり作戦は波乱含みとなってきたが、先行して潜入している連絡員のメリーと無事接触、武装や装備を受け取りドイツ軍軍人として将軍が囚われている「鷲の城」を目指す事に。果たしてスミスたちは無事にカーナビ―将軍を救出できるのか?裏切り者は誰なのか?難攻不落の城への前代未聞の救出作戦が始まる。

原作者アリステア・マクリーン

 アリステア・マクリーンはご存知の方なら説明は不要でしょうが、知らない方のためにご説明しますと『ナヴァロンの要塞』『女王陛下のユリシーズ号』などの軍事冒険小説の名作を世にはなった小説家です。そんな人気作家の彼が原作/脚本を担当したのがこの『荒鷲の要塞』です。『荒鷲の要塞』以外にも映画化された『ナヴァロンの要塞』(映画は『ナバロンの要塞』)ではギリシャのケロス島からの連合軍の撤退作戦の障害になる難攻不落のナヴァロン要塞に設置された要塞砲を少数の精鋭による潜入作戦で撃破するというものでした。同じく敵地に潜入でもこちらは断崖絶壁に囲まれた島ではなく、中世の頃、山の頂きに築城された古城を改造した要塞、城に出入りするにはロープウェイかヘリコプターだけという、ナバロンの絶海の孤島から峻険な山岳へと舞台を移したかのようなプロットになっています。

『女王陛下のユリシーズ号』や島が舞台の『ナヴァロンの要塞』のようなマクリーンの得意な海から陸へ舞台を移しましたが、お話自体は、ちょっと癖のある精鋭たちが、ピンチを乗り越え思わぬ困難に合いながらも作戦を全うするという『ナヴァロンの要塞』と同じスタイル、王道中の王道なストーリーです。何と言っても敵地に侵入するため周りは全員敵、しかも裏切り者がチームに混じっておりその人物の裏切りであっという間に囚われ作戦が失敗するかもしれないサスペンスもあり一時も目が離せません。

2人のスター俳優

 主演のスミス少佐役リチャード・バートンは言うまでもなくイギリスの名優で『史上最大の作戦』でも英国軍のパイロット役として印象深い演技を残しています。また『ワイルド・ギース』ではリーダーのフォークナー大佐を演じており、渋い演技が持ち味の俳優でした。そしてもう一人、スミスの相棒シェーファー中尉役クリント・イーストウッドは今では誰もが知る名優で名監督ですがこの頃はまだアメリカのマカロニウエスタンで名を成した俳優とみなされていました。しかし主演はイギリス人で脚本もイギリス人というこの作品に出資しているそうです。その上イーストウッドはマクリーンの脚本は「怖ろしい脚本」といいなんと自身の台詞をカットして行動で見せるように変更したとか(ソース|Wikipedia海外版より)実際ペラペラとしゃべるキャラクターはイーストウッドのような人には似合わないと思いますがそれにしても台詞をカットさせるのは覚えるのが面倒…😓いやそんなことは…どうなんでしょうね😅

 もっとも喋る前にパンチをお見舞いするのがイーストウッド流といえます(笑)それは冗談ですが、彼のそれまでのフィルモグラフィとして考えると説明するより行動する人物の方がしっくりくるのは当然だと思われます。実際、説明はスミス/バートンの役割で(前半は殆ど説明はしませんけれど)、シェーファーはもっぱら実力行使の部分を担当。この分担は観ていて納得できるものでした。でもそういう変更が出来るのも出資している強みがあったからかなと思います。また後年映画製作者としての彼の萌芽のようなエピソードではないでしょうか。

 またそれを可能にした差配は職業監督でもあるブライアン・G・ハットンの手腕もあるでしょう。イーストウッドとハットンはこのあと『戦略大作戦』で再び組むことになります。この映画についてはまだ別の機会にとっておきますが、職人監督により手堅い潜入アクションに仕上がったこの作品は確かに今観ると若干テンポがとか規模がとかになりそうな気配もしますが、しかしCGもない時代に大掛かりなセットと現地で撮ったロケーション映像。そしてCGのモブではないエキストラ(一般民ばかりではなくドイツ兵)など、かなり力の入った映像は本物だから今も安心して観れる訳です。


 作中で、ドイツ軍に変装して潜入する訳ですがバートン、イーストウッドのドイツ軍軍服姿が観れるのもなかなか無いと思います。ドイツ軍の軍服はスマートで非常に目を引く格好というのはナチスの宣伝のためという話を聞いたことがありますが、ドイツ人の制服信仰もありその職人気質でしっかりと作られているものが多いので、やはり画になるんですね。そういった楽しみ方も出来ます。

ソース|Where Eagles Dare - Wikipedia(荒鷲の要塞(英語版)/Wikipedia)

潜入、そして脱出

 「鷹の城」へ潜入そして脱出には城へ設置されたロープウェイが主な手段になっています。このロープウェイもまたサスペンスを高めるのに役立っています。なにせロープウェイってロープ(ワイヤーロープ)に吊るされている籠なわけですから両方の駅を押さえられたら逃げ場がない。そのままでは一網打尽で、ともかく外に出るにはと屋根に出る、そして駅に着く前に屋根に飛び移る。または途中でロープで降下するなどアイデアを出して凌がなくてはなりません。この映画の前にそういうのを観た事が無かったので以後の同種のアクションの映画の自分の中の基本となりましたし、ロープウェイを観ると、これはどう使うのかなとワクワクします。


 ちなみに冒頭ではこの城に通じる道はロープウェイかヘリコプターしかないという話で脱出時はヘリ使うのかなと思ったら(映画冒頭でドイツ軍の司令部の人間がやってくるのにヘリコプターを使用してやってきます)それはありませんでした。ちなみに実際にドイツ軍はヘリコプターを真剣に考えていたようで試験機ながら輸送用に開発配備はしていたようです。但し映画は明らかにベルの旧式ヘリにハーケンクロイツとドイツ軍のような塗装したものでした(笑)しれっと普通に飛んできて将軍が降り立っていましたけど、さすがに今ならミリオタから突き上げられて炎上案件かも(^^;

フォッケ・アハゲリス - Wikipedia

ベル47 (航空機) - Wikipedia 


 また映画の冒頭と最後に登場する輸送機でドイツ軍も使用していたユンカースの傑作輸送機Ju52が登場しています。英軍が民間機を手に入れてドイツ空軍に偽装したという設定でした。これがタイトルバックとともにアルプスの山間部を縫うように飛行しテーマ音楽がかかるシークエンスは本当に痺れます。ちなみにこれは当時現役だった本物だそうです。

Ju 52 (航空機) - Wikipedia

この輸送機を飛ばした時、それを見た人は大戦中を思い出して驚いたとか。そういえば『空軍大戦略』でも同じような話があった気がします…あれ?どっちの話だったかな…?武器は当然ながら敵地のためドイツのものを使用。MP40サブマシンガンにワルサーP38、サイレンサー(消音器)を付けたワルサーPPKなど。シェイファー演じるイーストウッドがマグナムやコルト・リボルバーの代わりにMP40を撃ちまくるというのも多分この映画だけでしょう。変わったところでは本部からついてきた親衛隊(SS)の中尉がルガーP08を。女スパイのメリーが護身用にもっているのはベレッタのポケットピストル(ベストピストルとも、ベストのポケットに入るから)なんですが実はこれ戦後のモデルなのです(^^;まあそこは御愛嬌ってことで。見た目もクラシカルだから選ばれたんでしょうね(笑)

ベレッタM950 - Wikipedia

 ラストにスミスたちを迎えにJu52に搭乗してきたターナー大佐が所持しているのはステンMkVサブマシンガン。イギリスが戦時中に大量生産出来るように設計した短機関銃でまるでパイプのような銃です。これに比べると米軍のM3グリースガンの方がまだ銃っぽいですが第二次世界大戦を描いた映画では英国軍の武器はこれとエンフィールド小銃と相場が決まっています。ちなみに見た目からは想像できませんがドイツ軍のMP40を研究し徹底的に簡略化したものだそうです。ターナー大佐が使うのはバリエーションタイプのMk.Vで木製のグリップが装着されたモデルでした。

ステン短機関銃 - Wikipedia

 またワイヤートラップによる仕掛け爆弾を使ったアクションもこの映画の見どころです。ちゃんと設置しているシーンを描写しているおかげで何に使うんだと思ったら、ああこうなったのかという視覚で見せる面白さをtonbori堂が知ったのはこの作品でした。この辺りも是非ご覧いただきたいポイントです。この辺りのアクションは宮崎駿作品にも通じるものがあると秘かに思っています。

最後に

 ちゃんとしたプロット、そしてキャスティングの妙。戦争モノだけど、スパイアクションの趣もある潜入から脱出など冒険映画の要素も揃っている娯楽映画の手本のような作品で、もっと言えば今リメイクするとCGと実物大セットで実際のドイツ軍ヘリコプターに模する事も出来そうだし、火薬の量も増やせそうだとは思うんですがこの当時の空気をほどよく感じさせるというのは難しいかもしれません。その当時のまだこの戦争を知っていた人たちによる決してノスタルジーな部分だけでは出せない物語の面白さというものを感じて欲しい1本です。ときたまCSの映画専門チャンネルなどではイーストウッド特集や戦争アクション特集でもかかることがあるので是非ご覧になって欲しい作品です。

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