20世紀FOX(FOX)がディズニーに買収され、現体制で制作される最後のX-MENシリーズと謳われて宣伝されていたのがこの『X-MEN:ダーク・フェニックス』です。X-MENシリーズも永らく作られたスーパーヒーロー映画で、最初のX-MENから数えて7本目。スピンオフであるウルヴァリンにフォーカスしたシリーズもあるFOXのドル箱シリーズでした。
X-MENは元々マーベルの看板キャラクターたちのグループでしたがマーベルが経営危機に陥った時に映像化権をFOXに売却したものです。元々有名なヒーローチームはFOXの目論み通りスーパーヒーロー映画のメインシリーズとなりましたし、『ファーストジェネレーション』のリブートを経てこれから先の展開も考えられていたはず。しかしディズニーの買収でFOXは買収され、その事により宣伝文句として『最後のX-MEN』という事になったのです。
最後のX-MENまでの軌跡(承前)
この作品は今後のX-MENへの橋渡し役を担うはずでした。でしたというのもどういうプロジェクトがあったかどうかは全く知らないんですが『X-MEN』は3作目となる2006年公開の『ファイナルデシジョン』で一旦終了。その後人気キャラクターであるウルヴァリンを主役に据え彼のオリジンを語る『ウルヴァリン X-MEN ZERO』が2009年に公開された後に今作に出演しているジェームズ・マカヴォイがチャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)を演じ、メインヴィランであるマグニートー(エリック・レーンシャー)をマイケル・ファスベンダーが演じる事となりX-MENのオリジンが語られる『ファーストジェネレーション』が2011年に公開されました。その後ウルヴァリンが日本を舞台にその重要な要素であるヒーリングファクターを失いピンチに陥る『ウルヴァリン:SAMURAI』が2013年に、その『ウルヴァリン:SAMURAI』の最後に『X-MEN:フューチャー&パスト』へのポストクレジットシーンが挿入されたのです。
2014年の『フューチャー&パスト』はざっくりいうと「タイム泥棒」じゃなかった「世界線を改変」でした。現代の「SAMURAI」の時間軸ははっきりと明言されていませんが『フューチャー&パスト』の始まりは2023年、センチネルという対ミュータントロボットがミュータントを狩り出している未来に、このままでは全滅してしまうと過去へ精神を飛ばすことが出来るミュータント、キティ・ブライドの力で全ての発端であるセンチネル開発者であるトラスク博士暗殺阻止のため1973年へ現在のウルヴァリンの精神を飛ばすという荒業にでるのです。
そこに登場するのは『ファーストジェネレーション』で登場した若いチャールズ達でした。そしてトラスクを暗殺しようとするミスティーク(レイブン・ダークホルム)を止め、センチネル開発も止めるというなかなかに荒業な作品でしたがtonbori堂は割と好きな作品です。こういった作品は同じマーベルの『エンドゲーム』以外でも『永遠の0』や『ALWAYS三丁目の夕日』の山崎貴監督が撮った『リターナー』、キャメロンの『ターミネーター』もそうですよね。で結局時間軸どうなったの?という問題は残ったんですけど最後のポストクレジットで次作のヴィランであるアポカリプスが登場ということで『ファーストクラス』メンバーでのX-MENとしての戦いが描かれたのが『アポカリプス』でした。1983年を舞台に古代に君臨した最初のミュータントであるアポカリプスが配下となる黙示録の四騎士とともに世界を再構築しようと目論むストーリーです。実はtonbori堂はこれあまり面白く無かったなと思ってましていやツイートではシンガー上手くまとめたなと(当初アナウンスされていたのはファーストジェネレーションから数えて3部作だった)とアゲなツイートしてましたが、なんかもやもやするなってのはあったのです。
でもハル・ベリーが演じたストームを見事に引き継いだアレクサンドラ・シップやサイロックを演じたオリヴィア・マンが最高なため、いやまあチャールズが坊主になったのもそういう事かという事でまあやっとサイクロップス(演じるは『レディ・プレイヤー1』のパーシヴァルを演じたタイ・シェリダン)も登場したし、ローガンもチョイ出したしとまあまあですよねってなってました。その後ウルヴァリンを務めたヒュー・ジャックマンが『ローガン』をもってウルヴァリンから卒業を明言。そのため次のX-MENではファーストジェネレーション(クラス)メンバーに新たなウルヴァリンが登場して新たなストーリーが紡がれるのではと思っていたのですが…。ということでダークフェニックスの雑感と行きましょうか。ちょっとクリティカルなネタバレをしますので何卒ご了承ください。
不死鳥の力/STORY
『フューチャー&パスト』で改変された歴史もはや10年が経ち1993年。スペースシャトルが成層圏と宇宙のはざまで太陽フレアによる故障で乗員の宇宙飛行士たちに危機が迫る。危機を知ったプロフェッサーXことチャールズは大統領からの要請もあり、ハンク(ビースト)が改良したXジェットにレイブンをリーダーにハンク、スコット(サイクロップス)、カート(ナイトクローラー)、ピーター(クイックシルバー)そしてジーン・グレイが宇宙飛行士たちの救出に向かう。
機体の故障でスピンしているシャトルをスコットのオプティックブラストでバーニアを撃ち強制的に止めてカートとピーターが飛行士たちを超高速移動とテレポートで救い出すがエアロックに船長が修理のため残留していた。フレアが迫る中ジーンの力でシャトルを支えカートがテレポートするが船長を連れ出すのが精一杯でジーンが船内に取り残される。フレアがジーンの身体をつつみ込みエネルギーが膨れ上がった途端シャトルは爆発。だが間一髪でカートがジーンをXジェットに連れ戻した。戻ったX-MENたちは歓喜の声に出迎えられるがレイブンはチャールズのこのところの変節ぶりに不安を抱いていた。彼に直接その疑問をぶつけるが、彼はミュータントの未来のためだと頑なだ。
一方身体に異常は無いか検査を受けていたジーンだったが、ハンクは彼女に全ての能力が最高値を超えていると告げる。高揚するジーンだったが、次第に自らの感情がコントロールできなくなっている事に気が付く。しかし迸る力を抑えられない。そんなジーンの心が覗けなくなってしまったチャールズはセレブロ(テレパシー増幅装置)を使いジーンの深層意識に潜る。
ジーンは幼い頃力が制御出来ず両親を死なせてしまった過去があったが、その力を見出したチャールズが引き取り、「恵まれし子らの学園」で育ったのだが、その事故のトラウマが残らないように彼女の心の一部にシールドをかけたのだ。しかし増大する力は彼女の壁を崩しチャールズが隠していた真実を知り学園を出ていってしまう。そしてある町で探しに来たX-MENと対峙するが騒ぎになってやってきたパトカーを粉砕しピーターに重傷を負わせ、説得しようとしたレイブンを吹き飛ばしてしまう。レイブンの胸を折れた柱が貫き彼女は亡くなってしまう。衝撃を受けるメンバーたち。一方取引を行って小さなコミュニティで隠遁生活を送っているエリック(マグニートー)の元に現れるジーンだったがそこでも拒絶されてしまう。そこに運悪く追手が現れるがヘリを一蹴し皆殺しにしようとするジーンを寸前で止めたのはエリックだった。だがエリックも彼女のパワーを止める事は出来なかった。そのまままた姿をくらますジーンだったが、謎の女が接近する。
女は地球人の格好をしているがこの星の住人ではなくジーンを包んだフレアを追ってきたと告げる。あれは太陽フレアなどではなくエネルギーであり彼女たちの星を破壊した。触れるもの全てを破壊してきたエネルギーだったが、ジーンを器として選んだのだと。そしてその力の使い方を教えようというのだ。女に誘われるままに力を使って地球を破壊してしまうのか?一方政府はジーンを危険人物として追い、ハンクからレイヴンを殺したのはジーンと聞いたエリックも彼女を殺すために探し始める。そして残ったチャールズ、スコット、カート、ストームたちもジーンの元へ急ぐ。果たしてジーンを助けることが出来るのか?X-MENの運命は?
この後かなりクリティカルなネタバレです、ご注意ください。
良いですか?それでは行きますよ?
ミスティーク【ネタバレ注意】
今回レイブン/ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)の死はちょっと衝撃でしたね。予感はあったけど…。にしても冒頭に女にばかり危機を救われているとレイブンからチャールズにキツイ一言があったのに…。ここで死ぬのはビーストじゃないかとも思ったりしたんですが…うんキツかった。ただこの話はジーンの話でジーンが結局自分で解決しなければならないストーリーなので彼女が死んだという事実は物語のエンジンとなりまた物語の重しとしては重要なのだろうなというのは分かります…分かるけど…なんで今なのかと。
好意的に見るなら、元々ファーストクラス(ジェネレーション)のトリロジーに最後にメンバーに加わったいわゆるX-MENのよく知られたメンバーであるサイクロップス、ジーン・グレイ、オロロ・マンロー(ストーム)が登場した事により、新たなトリロジーが構想されていたはず。それはパンフレットのサイモン・キンバーグ監督のインタビューでも明らかです。(彼は『ダーク・フェニックス・サーガ』をやるのは3本目と明言してました。なので必然はあるのだけれど唐突に感じてしまったのがこの映画の最大の弱点ではないかと思うのです。ただジーンの内面にスポットを当て力を持て余し、信じたものに裏切られ、誰も信じられないジーンがそれでも自分を助けだそうとしてくれるチャールズやレイブンが死んでもなお信じてくれているスコットたちを見てというのも分かるのですが…。
とは言えレイブンが殺されたことで暗い復讐の炎を燃やすハンクとエリックがあの護送列車であっさり宗旨替えしちゃうのはチャールズがテレパスで伝えたとしても…。まああの宇宙人結構ヤバい感じでしたけどね。M.C.Uでいうと洒落の通じない冷酷なスクラルっぽいから彼らを真の敵認定するというのもまあ分かることは分かるんですが…もう一つツイストが欲しかったかな。
フェニックス【ネタバレ注意】
そしてジーンは最終的に自由となるというのは凄い話なんだけども、にしてもなあ…どうなんでしょうか。いやまあ画は凄かったから観てた時はけっこう凄いなって思ったんですけども…。っていうか観終わった後はジーンの物語として筋は通ってるなと思ったんですが、帰宅して1日経って『フューチャー&パスト』でウルヴァリンが目覚めた未来の初代チャールズを演じたパトリック・スチュワートや初代ジーンのファムケ・ヤンセンがいる平和な未来はあれどこの世界線?って凄くもやってしまったんですよ😓なわけで承前につらつらと過去作の事をかくはめになってしまった訳でして、そこももやもやしましたね。
渋い評価
実際のところロッテントマトでは結構渋い(評論家もオーディエンスも)評価だし興行もふるっていないと聞きます。うーんどうなんでしょう。X-MENはM.C.Uと違って単独シリーズです。なので『エンドゲーム』と比べちゃうと厳しいなってところもあるんですが、やっぱり『X-MEN:ファイナルデシジョン』のやり直し(ストーリーは違うけどジーン=フェニックスが重要になってきます)感もあるし(重要キャラがあっさり死ぬとか)そこがマニアに受けなかったのか。
それともジーンの苦悩が独りよがりに映ってしまったのか。なんかそっちの気がしないでもないんですけれど…。X-MENファーストクラス(ジェネレーションの原題名)とデイ・オブ・フューチャー&パスト(フューチャー&パストの原題名)は新生というかリブートX-MENとしてプリクエルとして楽しんだのでなんでしょうね、ここは1作目につながっていく大事なところだったと思うし新しいローガンは誰がというお楽しみもあった訳だろうし(それは製作陣、想定していたはず)でもディズニーの買収で結局今後マーベル・スタジオがコントロールしていく中で最後の意地ってのはあったはず。Twitterでも指摘があったけどNYでジーンたちを捕らえた武装集団は対ミュータント部隊(大統領はチャールズを利用しながらも裏ではそういう組織を作っていて何かがあったら即というのが伺える部分でした。)の頭文字がMCU。そして列車でそちらへ連れていくとなれば想像できるのはただ一つ。FOX制作チームの意地を見せたところだと思います。
そしてマーベル・シネマティック・ユニバースへ
とは言えまだM.C.Uに組み込まれるかどうかと言えば組み込まれるけど日程は不明。何時も言われる事だけど割とそこらへんは秘密主義だし、扱えるとなったのも最近の話なのでM.C.Uの世界線にミュータントが登場するにしてもまだ先の話でしょう。しかしFOXマーベルではX-MENスピンオフ『デッドプール』というスマッシュヒットがあり、こちらが先に参戦するのでは?という噂もありますが…この面子、この作品ではちょっともやもやするなってのはあったものの、マカヴォイやファスベンダーが演じたチャールズとエリック、その関係性。今作で死んでしまったもののレイブンとチャールズ、エリック、ハンクなどの関係性などまだまだ先が観たいし、ジーンやサイクロップス、そして新しいウルヴァリン。これらがM.C.Uに現れるとなれば凄い事だし実現して欲しいなと思っているんですが…。
ただこのシリーズでの最終作ということでの話なのでまた新たなキャストを組むことも十分にあり得ます。それはまだ『フューチャー』の話です。ただこの話はまだ語りつくせぬパストがある、それがちょっともったいないなと思う『ダークフェニックス』はそんな映画でした。
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