先月、『イコライザー』の続編が公開されたにともないCS放送でも第1作目の『イコライザー』が放送されました。以前なら地上波放送で放映されたんでしょうけど、最近はCSの専門チャンネルがその任をもってあたっている感じがします。
『Who are you?』(お前は誰だ?)
ということでこの『イコライザー』劇場公開時、観に行きました。で久しぶりに観たんですがやっぱり好きな映画ですね。ホームセンターに勤める男、マッコール。ちょっと世話好きで、同じ店で働くアルバイトのラルフィが店の警備員の採用試験のためのダイエットに口うるさく世話をしたり、パートの女性店員を気遣ったり、同僚と冗談を言い合う。しかし彼はアパートメントに帰ると飾り気のない恐ろしく素っ気ない整頓され部屋に一人。そして眠れない夜を読書をし、深夜営業のダイナーへお茶を飲みに行くという生活の繰り返し。
そんな彼が同じダイナーの常連である娼婦であるアリーナ(クロエ・グレース・モリッツ)と少ないながらも言葉を交わして心を通わせるんですが、彼女をアメリカに連れてきたのはロシアンマフィア。そして乱暴する客相手に抵抗した彼女を見せしめのために半殺しにした元締めの元に彼女を解放するように「頼み」にいくマッコール。しかしそれを一蹴する元締め。おもむろに部屋に鍵をかけたマッコールはその場にいた5人の男たちを20秒ちょっとで全員、殺害してしまうのです。
『舐めた相手が実は殺人マシーン』みたいな作品は数あれど、いい人役が多かったデンゼル・ワシントン。その彼に強烈な悪役をあてがい、ワシントンはその作品でアカデミー主演男優賞を受賞した、その『トレーニングデイ』の監督アントワーン・フークア監督の手腕が光るシークエンスでした。その後、元締めをはじめ構成員が皆殺しにされたことでロシアンマフィアの始末屋テディ(マートン・チョーカシュ)が送り込まれてきます。彼は元スペツナズの凄腕。対抗組織への探りを入れる場合もいきなり相手を殴りつけ、殺しが姿を消したアリーナに関係するとみるや仲の良かったマンディ(ヘイリー・ベネット)から情報を聞き出した後に首の骨を折って殺してしまうほど凶暴な男です。
しかしマッコールも負けていません。彼らの資金洗浄のアジトを潰し、繋がっていた悪徳刑事をFBIへ引き渡すなど徐々にテディたちを追い詰めていきます。そして隠れ蓑である石油会社の工場を吹き飛ばした事で後が無くなったテディはマッコールの職場であるホームセンターで彼の同僚たちを人質をとり決着を付ける事になったのですが…というあらすじなんですが、ともかくマッコールは手近なモノを使って相手を倒すんですが、この映画を観た後でホームセンターに行くと周りが全部凶器に見えて危ないかもしれません(笑)
画像はAmazonより|イコライザー (字幕版)|Columbia Pictures| |主演/デンゼル・ワシントン, マートン・チョーカシュ, クロエ・グレース・モレッツ |監督/アントワーン・フークア |
主演/デンゼル・ワシントン
デンゼル・ワシントンはそれまで、映画に出てくるロールモデルとして所謂、良心あふれる人物を演じることが多かったんですが『マルコムX』でマルコムXを演じて以来演じる事の幅を拡げつづけて、そしてとうとう悪役として出演した『トレーニングデイ』で2度目のアカデミー賞を受賞するに至りました。そんな彼がアクション系の作品のしかも主役というのは年齢から考えるとちょっと無理があるのではと思う人も多いかもしれません。ですが『96時間』のリーアム・ニーソンなど、高齢でもアクションは出来るという映画はありますし、ベテランとして、目で語る事で、そのアクション演技が作品に深みを与えるという事も出来ます。
『イコライザー』も若いキャストならばもっと荒々しい、そして雑な映画になっていたかもしれません。ですがベテランであるデンゼル・ワシントンが普通の男に身をやつしてはいるけれど、その身に叩き込まれたスキルは衰えておらず、その時が来たらもっとも危険な男として爆ぜる。そういう映画に仕上がっています。
監督/アントワーン・フークア
元々、MVなどを作っていたのですが香港からハリウッドに進出したチョウ・ユンファの主演作『リプレイスメント・キラー』で映画監督デビューした、アクション作品を得意とする人です。そういえば同じようなバックボーンをもつ監督としてF・ゲイリー・グレイがいますね。近作ではデンゼル・ワシントンと組んだ『荒野の七人』のリメイク『マグニフィセント・セブン』があります。激しいアクションの中でもしっかりとしたドラマの描ける人で、それはジェラルド・バトラーの『エンド・オブ・ホワイトハウス』と『エンド・オブ・キングダム』を見比べればよく分かります。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』『エンド・オブ・キングダム』はほぼアクションばかりがつながる作品ではあるんですが、『エンド・オブ・ホワイトハウス』にはいろいろな挿話が差し込まれて作品の滋味になっているんですけれど『エンド・オブ・キングダム』は挿話があるけれどそこまで機能しておらずバトラー無双にだけになっているんですよね。アクション映画でもキャラクターを立たせていくのがアントワーン・フークアという人です。なので一定の信頼感というか安定感があるのです。
デスウィッシュ
マッコールはある意味、『狼よさらば』のポール・カージーにも近しい人物なんです。妻を亡くし生きる意味が見いだせなくなった時、彼はCIAの特殊工作員という裏稼業の一切から手を引くため死を偽装しました。妻がいるから、そこが寄る辺だったのにそれを無くしてしまった今無限とも思える時を生きているだけ。身に付いた習性は消せないけれど、静かに消えてしまうはずだった。しかし彼の中にある正しい事をするスイッチが入ってしまう。
もうその後は身の回りで起こる理不尽な暴力に対して理不尽に応酬する。最初は身の回りの人のためだけだった。いやもっと言えば娼婦だけど夢があるロシアから出てきた田舎娘のためだけに、破れ傘刀舟先生ばりに相手を殺す。考えようによっては、実は妻を亡くした後、人付き合いはちゃんとしていても、どこかぽっかり空虚な虚があって、その側面では死人に近い感じになってたマッコールが生気を取り戻す話になってたんですよね。でもそれは危険な事でもあるわけで。イコライザーとは調律者、不公平を正すものという意味だそうですが、計らずも妻と娘の仇を討ってたら町のヒーローとなってしまったポール・カージーとだぶるのです。もっともマッコールの場合はもっと自覚的ですが。
彼は強迫観念的に物事をきっちりとします。規則正しくモノを並べるし角は合わせる。スプーンをきっちりと置くし、作業をする時も手順と決められたとおりに。常に相手の先を行き手を読む。身に付いた習性なんでしょうがそこはどこかとはなくランボーのようにも思えます。身に付いた習性は消すことが出来ない。それと付き合っていかなければならない。しかし無用な争いは避けたいけれど困っている人見ると放っておけないのがマッコールなのです。例えそこが死地であっても。ただ卓越したスキルは相手を凌駕している。そういう話です。そして根は完全に断ち切る。そういうプロのスキルも背筋が凍るところではありますが、アクション映画ではしばしば雑に終わってしまう部分をきっちりと片付ける辺り、至れり尽くせりな作りになっています。
イコライザー誕生
この作品はマッコールがイコライザーになるという話でした。(前作の最後ではネットに広告だしていましたけれど)この作品を経て、それまでの技を使って贖罪の意味も込めて人助けをすると決めたマッコール。その道程を描いた映画だったと思います。彼の活躍は現在公開中の2でも描かれているようですが、『敵はイコライザー』というコピー。昔の出来事が今になってパターンなのか?気になるところです。
ですので映画サービスデイに観に行ってきました。それについてはまた別に書かせていただきますが、なるほどそう来たかと。マッコール2部作として(3作目があるかどうかは分かりません。ただデンゼル・ワシントンは続編に出ない人として有名です。)さらに抑えたビターな作品となっています。ということで『イコライザー』かなりおススメです。
0 件のコメント:
コメントを投稿
お読みいただきありがとうございました。ご意見、ご感想などございましたら、コメントをよろしくお願いいたします。【なおコメント出来る方をGoogleアカウントをお持ちの方に現在限定させて頂いております。】