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「腐った日本を買い叩く!」のか?それとも「叩き壊す!」のか?|『ハゲタカ』初回レビュー【ネタバレ】|tonbori堂ドラマ語り

2018年7月21日土曜日

drama

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 テレビ朝日で始まった真島仁原作小説の実写化ドラマ『ハゲタカ』、綾野剛主演、共演に渡部篤郎、小林薫、沢尻エリカなど共演もしっかりしている布陣で、力の入ったドラマという事が伺えます。実は『ハゲタカ』ご存知の方も多いでしょうがNHKで既にドラマ化されているのです。tonbori堂は当時けっこう入れ込んで観ていた口でして、今回はどうなんだろうなあと思っていました。それで第1話を視聴したわけです。

ハゲタカ/ロゴはイメージです
ハゲタカ/ロゴはイメージです




ハゲタカファンド

 「失われた20年」それはこの『ハゲタカ』放映後に言われた言葉でしたが、既にそれを予見した、バブル崩壊から金に踊らされた人たちを鋭く描いたドラマとして放送され、外資投資ファンドの尖兵として日本に帰国した鷲津。そしてやがてはメガバンクとして肥大化していく三葉銀行と、そのエリート行員だった芝野を軸に物語は進み、バルクセール、ゴールデン・パラシュート、ホワイト・ナイト。そういった経済用語はNHK版ドラマで知りました。テレビ朝日版はNHK版では映像化しなかった原作要素も加えてということですが基本的にはドラマはドラマの展開が待ち受けているようです。その上で今の時代にもつながるのは第1話のアバンタイトルではっきりしています。


 芝野が経団連の会長から帝都重工(どうしたって池井戸潤作品に出てくる帝国重工を想起するネーミング!)が不祥事から多額の不良債権を抱え込み、企業再生家、ターンアラウンドマネージャーとなった芝野にCEOとして再生を打診されるシーンは明らかに現代の話で、芝野がかつての敵であった男とならと、町工場にいる鷲津の元に出向くシーン。つまり最終章か、最終回のラストシーンはそこへつながるんでしょうけど、その中身はどうなるのか?と本編に入ります。

バルクセール

 初回はNHK版でも最初にやった三葉銀行の不良債権処理、バルクセールです。その初めてのバルクセールに外資ファンド「ホライズン・ジャパンパートナーズ」の代表として乗り込んできたのが鷲津でした。NHK版とは違い芝野と鷲津はこの時は初見です。そういった意味での鷲津を突き動かしている衝動はなんなのか?この日本を叩き壊して作り直そうとしている原点もほんの少し垣間見える作りになっており、まずます掴みはOKかなと。


 今回は日光みやびホテルの二代目社長の娘で東京のクラウンセンチュリーホテルのマネージャーである松平貴子が登場。原作にも登場する(ホテル名は違いますが)登場人物で、今回、鷲津が買収し、日光をスクラップ&ビルドを目論む中で自身も巻き込まれていくという事になるようです。そのためNHK版では初回のバルクセールで債権を買い叩かれた西乃屋エピソードは鬼怒川の高級料亭「金色庵」となり社長は自殺とも取れる事故死はしなかったものの、鷲津がくわっと睨んで、啖呵を切るという感じになっていました。


 当然それだと、ええっそれだけってなりますがそこはちゃんと別の仕掛けが。三葉の暗部を仕切る男、飯島がホライズンにしてやられた1回目の結果をみて、2回目のバルクセールを仕切るといいだし、競争入札を提案。さらには参加資格を拡げてオークション形式にして価格を吊り上げようとしましたが、それは鷲津らの工作で失敗。その結果、競争入札に落ち着きました。とは言えホライズンのライバルも多い中ギリギリまで資金調達に走り、最後、鷲津は1本の電話をずっとまち、右腕のアランを三葉銀行前で待機させていました。そして残り時間が少なくなった時に待っていた電話が。


 そして入札の結果はギリギリのところでホライズンが勝ち取りました。でもそれは内部密告があったから、その時点での最高額が芝野の同期、沼田の手によってもたらされたためだったのです。(競争相手の最終見積額を内通者が盗み見る事を「ラストルック」というそうです。)何故密告をと問う芝野に、母親が認知症で妻が介護疲れで家庭がもう限界だったこと。そしてそこに救いの手を差し伸べたのが鷲津だったことを告げます。「銀行は助けてくれなかった。手遅れになる前に家族を大事にしろ」と言い残し彼は銀行を依願退職しました。


 全体的にみて、鷲津は窮した日本の救世主か?それとも破壊者か?まだ判然としないものの、大きな野望と大蔵省で割腹自殺を遂げた人物と何か関係があるように思われます。(ここは原作展開に沿っているとか)そしてNHK版と同じく冷徹かつ、手段を選ばないファンドマネージャーとして辣腕をふるう事になりそうです。

むむっと思った点

 もっとも不満点が無かったわけではありません。特にBGM。BGM自体は良いものですが、かなりベタなものが用意され、(こういうのはクライアントの指示もあると思うんですが)その上ベタな使い方。そう土曜ワイド劇場やテレ朝刑事ドラマのような。刑事ドラマならそれでもいいんですけどNHK版はやっぱり音楽の使い方が凄く良かったんですよね。ラストにヘイリーの歌唱によるテーマも良かったし。ミスチルはミスチルでいいんですけど…ハゲタカって感じではないですよね、残念ながら。

次回はゴールデン・パラシュート

 NHK版ではサンデートイズになってた一族経営の会社は寝具メーカーの「太陽ベッド」として出てくるようです。そしてその話と複線で走るのが松平貴子の日光みやびホテルの問題のようで、放漫経営だった2代目の引退と3代目社長は?貴子の妹とその夫も絡んで骨肉の争いに鷲津が絡んでくるのは中盤あたり?ここも気になる所ですね。

追記20180727

 第3話で第一部完となっております。これは3部構成か?全体9話とすればきれいに収まる気はしますが。(テレ朝木9は9話で完結が多いので)ちなみに2話はNHK版では2回に分けたサンデートイズ≠太陽ベッドのストーリーをゴールデン・パラシュートから終わりなき入札までやりました。コンパクト感は半端ないしやはりこれはTBSの池井戸作品の向うをはりつつドクターXタッチにもっていこうとしているのか?と気になりました。なんにせよ貴子のホテルに乗り込んで買収しますと啖呵をきったところで飯島との泥仕合も含めての第一部完結、見届けさせて頂きます。

追記20180830

原作をサッと読んでみましたので鷲津の出自というか因縁に関しても1か所付け加えておきました。

キャスト

 主人公、鷲津政彦には綾野剛、大森南朋が演じたNHK版を意識しているとの意見もありましたけどまだ初回、綾野鷲津はこれからどんどん形作られていくと信じています。芝野健夫には渡部篤郎。前クールの『シグナル』では政界と癒着した警視庁刑事部長で腹黒いところを演じていましたが、硬軟できる渡部篤郎ですのでここは安心できる配役かなと。松平貴子には沢尻エリカ。「別に」ですったもんだございましたが、最近はすっかり安定して役者業に励んでおられるようで。やはり華があります。日光みやびホテルで鷲津と対峙することになるそうですが、初回はいい雰囲気つくったりとか、そこを入れ込んでくるだねという感じですね。西乃屋エピソードからの西野明とは違う骨太感が出せるかどうか。そこは民放の意地みせてもらいたいですね。飯島常務(のちに頭取)は小林薫。関西弁を使う強面だったNHK版の中尾彬に対して、こちらは強面ではないけれど商売人としての嗅覚が鋭いタイプを醸しだす小林薫だからこその飯島常務を期待しています。ホライズンのメンバー、アランは前回は白人キャストを起用していましたが今回は池内博之を起用。彼は海外作品への出演もあり、またフジの『人間の証明』では事件の被害者で重要なキーマンとなるジョニー・ヘイワード役をしていました。驚いたのがリン・ハットフォード、前回もリンを演じた太田緑ロランス。これはTwitterでフォロワーさんが言っててちょっと驚きました。やっぱり意識しているのかNHK版を…。

『ハゲタカ』の金髪美女は? - エンタメ - 朝日新聞デジタル&w

 NHK版では志賀廣太郎、嶋田久作だったポジションにはバイプレーヤー光石研と杉本哲太が。この辺りは手堅く来たなって感じです。そして芝野の妻に堀内敬子。今回は娘も登場し、NHK版では芝野の家庭描写は殆どありませんでしたが、仕事人間で家庭をかえりみなかった芝野がそちらで問題を抱え込むことも予告されています。こちらもNHKとは違う芝野像を描くのに期待です。(この辺りも原作準拠です。)

今何故『ハゲタカ』なのか?

 キャスト的にはほぼ問題の無い感じなので、どこまで今の時代に『ハゲタカ』を問う意味を感じさせてくれるのか。池井戸潤作品とは違う視点でぐいっと抉ってくれるのか?期待と不安を抱きつつも、キャストの芝居はいいので(若干不安が無いわけでもないけど、綾野剛が低めのドスをきかせているところとか。イヌワシを見るためのバードウオッチングの時のようなテンションでいいのになってちょっと思いました)あとはどう脚本がまとめ、監督が演出してくるのか?その着地点を見守りたいと思います。

 あ、ちなみにNHK版もNHKオンデマンドで好評配信中だそうですよ。お時間と余裕があればぜひぜひ。

NHKオンデマンド|アーカイヴ|土曜ドラマ ハゲタカ 

テレビ朝日版はテレ朝動画でよろしく。

第1話|[キャッチアップ]ハゲタカ|テレ朝動画

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