2018夏クール、注目ドラマ初回雑感|『絶対零度』、『刑事7人』、『遺留捜査』、『この世界の片隅に』|tonbori堂ドラマ語り-Web-tonbori堂アネックス

2018夏クール、注目ドラマ初回雑感|『絶対零度』、『刑事7人』、『遺留捜査』、『この世界の片隅に』|tonbori堂ドラマ語り

2018年7月18日水曜日

drama

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 暑い夏が、夏クールはじまりました。tonbori堂はテレビっ子な上に刑事ドラマ番長(といってもぬるいのですが)なので刑事ドラマ3本を中心に観るつもりですが、TBSの日曜劇場のドラマ『この世界の片隅に』も視聴することにしています。『この世界の片隅に』はご存知の方も多い通り一昨年に公開された劇場用アニメ映画で、こうの史代さん原作の漫画です。実は一度特番として実写ドラマ化されており、その時は北川景子が主演を務めたとか。実は観ていないのですが。

 『この世界の片隅に』のアニメ映画はtonbori堂はスタッフロールに名前が掲載されないものの下から2番目くらいのリターンのあるクラウドファンディングに参加していまして、それなりに宣伝活動も行いました。なので実写ドラマも気になるという次第です。ではそれぞれの番組のファーストインプレッションをしていきたいと思います。

この世界の片隅に/ロゴはイメージです
この世界の片隅に/ロゴはイメージです



『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』

 シリーズ3作目となる『絶対零度』、1作目は明らかに米ドラマ『コールドケース』を意識したものでした。迷宮入りした事件を捜査する刑事ドラマとして2010年日本でも時効が撤廃された事で製作されたものだったように思います。

絶対零度~未然犯罪潜入捜査~/ロゴはイメージです
絶対零度~未然犯罪潜入捜査~/ロゴはイメージです



 実際の警視庁刑事部に設置された特命捜査対策室は前クールの『未解決の女』でも取り上げられたように刑事モノの小説やドラマでもお馴染みのものになってきました。いわばそのトップバッターでもあったわけです。全11話放送され平均視聴率も14%ほどだったようです。

ソース|絶対零度 (テレビドラマ) - Wikipedia

 その後、翌年にスペシャルをまたいで新シリーズが放送開始。これは潜入捜査という前作からの『コールドケース』のような過去の事件を掘り起こすものから現在進行形の犯罪へとなぜかカラーをガラッと変えてリスタートしました。何故このようになったのかは知りません。ですが、ただ当時米ドラマ海軍の兵士が絡む犯罪を捜査する『NCIS』からスピンオフした潜入捜査を専門とするチームを描いた『NCIS:LA~極秘潜入捜査』から着想を得たのかもしれません。また香港映画『天使の眼、野獣の街』(尾行のテクニック、監視の方法など)の影響も見られました。


 これらの作品のエッセンスを使って前作『絶対零度』の主人公、桜木泉の成長譚としても観れるのがこの『絶対零度』シリーズだったのですが(ちなみに2作目『絶対零度~特殊潜入犯罪捜査』も平均視聴率は13.1%と良い数字を残しています)主演の上戸彩のスケジュールが押さえれなかったのか、それとも別の理由があったのか、あまりゴシップに興味はないので分からないのですが、今回の作品まで時間が空いてしまいました。

ミハンシステム

 そして3作目の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』は前作から7年の月日が流れた現在を舞台に、AIによるビッグデータ解析で割り出される危険人物の犯罪を未然に防ぎ、やがてこのシステムを中心とした犯罪捜査を行う部署に配属された桜木泉の元相棒、山内と現場指揮を執る元公安の井沢、ミハンシステムの統括をしている東堂、そして捜査を離れ失踪した桜木(第一話の最後で衝撃的な話がありました)の行方が絡んでくるという内容がアナウンスされていました。


 このミハンシステム、某所にある倉庫のコンテナ群に設置されたスーパーコンピューターシステムからなるAIで、どうしたって『パーソン・オブ・インタレスト』を思い出します。死んだはずの元CIA工作員ジョン・リース、そしてある日突然彼をスカウトし、政府の対テロ監視のためフィンチが構築したシステムから吐き出された社会保障番号(アメリカにおけるマイナンバーのようなもの)犯罪に巻き込まれる、ないしはその関係者、犯罪者か分からないけれど必ず犯罪に関わる人物をその番号から探りあて、その犯罪を阻止する。というドラマでした。『パーソン・オブ・インタレスト』はNY市警の裏に潜む結社やロシアンマフィアとの暗闘を複線に置いていましたが、そのうちにシステムとは別の監視システム同士の暗闘などが出てきて進化したAIテーマまで取り込んでいった傑作アクションサスペンスでした。シーズン5で完結しています。

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 スタート当初からそれを指摘する声も多く、ミハンシステム自体はそれっぽいんですが、それプラス、SF映画『マイノリティ・リポート』の影響もあるかなと。原作はフィリップ・K・ディックの短編でスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で映画化されたSFサスペンスアクションですが、未来の犯罪捜査は、超能力を持った3人の予知能力で殺人事件を予知しる「プレコグ」というシステムを採用。ワシントンDCでは殺人発生率0%を達成。しかしそのプレコグを運用する犯罪予防局の刑事ジョン・アンダートンが殺人を犯すという予知が。しかしアンダートンはその場から脱走しプレコグは3人の合議により予知が決定されるが合致しない場合「マイノリティ・リポート(少数意見)」として廃棄されることを知る。またプレコグの子どもたちにも重大な秘密があり…という話でした。

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 プレコグは予知能力というものを使ったもので3人の超能力者は3賢者を想起させます。とはいえその予知も完璧なものではないんですが、科学は進みビッグデータ解析からAIがその責を担うという展開は『パーソン・オブ・インタレスト』などが出てきました。その流れにそっていると思います。その中でも冤罪を産む可能性と人間の不可知の部分は『マイノリティ・リポート』を十分想起させるのです。(ちなみに『マイノリティ・リポート』はドラマにもなりましたがあえなく1シーズンで打ち切りだそうです。その後のプレコグを描く話だそうです。)


初回は

 そのミハンシステムがいきなり加害者としてはじき出した危険人物が既に被害者であったという展開で、システム自体がまだまだ危ないものであると印象付け、またベトナムに潜伏している桜木のノートにはイザワノリトと主人公、井沢の名前が。そしてアバンタイトルではいきなり井沢は拳銃をもって追跡した犯人がビルの屋上に追い詰められ投降したにも関わらず手足を撃ち抜き、口に銃口をねじ込み、その後、引きの映像で銃声(だから射殺したかどうかは不明のまま)ただ東堂が面会に行ったのはあきらかに拘置所。そして手錠までされていた井沢は何故か刑務所にはいることなく刑事のままで、表向き警視庁の資料課勤務。その資料課がミハンシステムの隠れ蓑なわけですがいささか剣呑な雰囲気でスタートしています。

 同局で放送された刑事ドラマ『CRISIS』では稲見は過去に自衛隊の特殊部隊として任務として処理(殺人)を行った事がありましたが、あきらかに私情で殺した感のあるオープニング。過去映像でもなくあったことして描写されている以上、井沢の過去やベトナムで焼死体で発見された桜木との経緯。そして明らかに危うい代物であるミハンシステム。今後が気になる部分でした。

今後は?

 既に第2話も放送済みですが、今回はルーティンの犯罪を未然に防ぐという部分がメインでしたが、事件の結末や、チームの中の事も少しずつ描かれてきだしました。井沢という男、危険人物としてミハンシステムにはじき出されている?かのような描写もあり今後のフックになっています…ですが、やっぱり前作までとキャストを総交代させるなら新規ドラマとしてやった方が良かったのでは?今回の『絶対零度』シリーズ推しはちょっと意味が不明ですよね。面白いからいいじゃないとなりますが、前作でもいいキャストがいたんですが、そのメンツは関わってこないのかとか特殊犯罪捜査対策室解散はいいけど他メンバーが気になってしまうのです。ここは明らかにマイナスポイントだと思います。まさか海外ドラマ辺りのネタを引いているのでそのコードとして『絶対零度』が必要だった?まさか…?まあそこを差っ引けば翌週も観たいなとなる出来でした。

『刑事7人』

 こちらもビッグデータ解析ですが、人力です(笑)いわゆるカンピューターです。前シーズンでの真のラスボスであった山下が「未来犯罪予測センター」といういわゆる島流し状態にあったことを考えると『絶対零度』とも関係が…(^^;まあそれはさておいても実はこちらも刑事総務課資料係が。資料課、資料係というのは一つのトレンドにでもなっているんでしょうか。『未解決の女』はそれこそ文書捜査官という「資料」が一つのフックになっていたんでしすが、『絶対零度』にしろ『刑事7人』にしろ過去の犯罪データやそういう部分の精査、分析に主眼が移ってきているのか。ちょっと面白い傾向ですね。


刑事7人第4シリーズ(2018)

しかし今回残念なのは熱い男、沙村が登場しない事です。でも天樹たちは警視庁、沙村は所轄なんでなんらかの形でゲスト出演…いやするとだいたい殉職しそうなんでしなくていいです(ヲイ)それ以外は水田と青山の新コンビはなかなか良さそうなので今後もこの路線でいけそうだなと。とあまり特筆するべき点もないんですが安定しており、今回の流れ次第では2足の草鞋刑事シリーズとして未解決事件から現在進行形の事件まで縦横無尽に活躍出来そうです。


 初回で(実は回をまたいでいるので第2回解決篇となる感じです)『事件を過去完了形にしてはならない』と天樹が啖呵を切っているのでこれが作品のテーマになりそうですね。過去の事件が今を動かす。みたいな。安定の水9に定着してきた『刑事7人』前クールでは大転換ありましたが今回はどんな展開がまっているのか?楽しみです。

『遺留捜査』

 糸村は糸村でしたねー終わり(ヲイ。いやこちらも人員に変化がありました。段田安則が演じる桧山室長が警察庁に出向。戸田恵子演じる佐倉が室長代理となりました。そして捜査員として梶原善演じる岩田が加わっても糸村は糸村(笑)


遺留捜査第5シリーズ(2018)



 まあいきなり糸村が大門みたいな感じになっても戸惑いますけどね(笑)犯人逮捕よりも遺留品の声のみに執着し、その声を届ける事だけに執心する。うん変わらなくてもいいと思います。桧山室長はいい味あったんで残念だけど、カラーとしては前Seasonの流れのまま。あとは脇がどれくらい味を出せるか、佐倉室長代理の手腕に期待です。初回は容疑者?被害者?な役で松下由樹、美術品Gメンに中村俊介、そして京都の美術界の腹黒な鑑定の大家を柄本明に松下由樹の父親役で平泉成と初回SPらしい豪華な配役でした。まあこちらは安定しているので普段通りだとは思います。

『この世界の片隅に』

 TBSの日曜劇場、池井戸作品の『半沢直樹』などヒットドラマの多い枠でもあります。そして前クールはジャニーズ事務所『嵐』に所属している二宮和也主演の『ブラックペアン』、その前は同じく『嵐』所属の松本潤主演の『99.9刑事専門弁護士』Season2、どちらも好調だった作品です。そこに『この世界の片隅に』はある意味、冒険してきたなという印象です。何故なら、数々の賞を取り、評価も高く、今なお上映しているアニメ映画『この世界の片隅に』と比較されることは必至だからです。ちなみに実写化の話が出てきた時には、もしかしたらアニメ版ですずさんを演じたのん(能年玲奈)が主演するかもという憶測も出ましたが、オーディションの末に松本穂香に決定。北條周作には松坂桃李がキャスティングされました。

この世界の片隅に/ロゴはイメージです
この世界の片隅に/ロゴはイメージです



初回を観て

 で、初回を観たわけなんですが初回子ども時代のエピソードも拾いつつ出来る範囲で誠実にやろうとしているのは伝わりました。あと放送前にアナウンスされた現代編ってのは一見さん用に物語に入りやすいように現代から、あの時代を見る、感じるという事で配されたんだろうなと思ったんですが、まあその通りで、ただ現状ではすずさん(スズさん)と佳代(演じるは榮倉奈々)のと接点とすずさんはどうなったんだろうという部分はアニメ、原作漫画ファンともに気になる部分です。


 一つ間違えばここはいろいろ物議を醸す部分で、アニメ版の片渕須直監督はすずさんは今もご存命で(公開前の特別上映での監督のお話でそうおっしゃられていました。その当時で92歳、うちのおばあちゃんが亡くなった歳です。ちなみにすずさんより産まれは早かったので上でした。)は無いかとおっしゃっていてアニメ版のファンでは共通した意識としてすずさんは今も元気で、呉にいらっさるという事になっています(オフィシャルなものではないです。)ですが初回の呉のお家には誰も住んでいなかったという事に一抹の不安をちょっと感じてしまったんですよね。実写は漫画でもないしアニメでもないから同じところでは勝負できないですが実写ならではの表現ができるし、そこはけっこう頑張っているなと感じただけに気になります。

アニメと実写

 アニメと実写は違うという事を書いたのでもう少し突っ込むと、実は実写でもさらに突っ込めるところはあるんですが、実はアニメでは細緻描かれていたものでも実写では再現が難しいという事で簡略化してあったりとかもあるわけで。そこは重箱の隅をつついてしまってもしょうがないんですがやはりアニメ版はそこが素晴らしく掘り下げられているのが今更ながらに分かってしまいます。天候一つとってもあの日はどうだったとか。これ現代で撮影するドラマではよっぽどのものでないと難しいんじゃないでしょうか。でも史実を扱うドラマどなればそこはやっぱりある程度詰めて頂きたいと思う次第なのであります。


 いや、すずさんたちはフィクショナルな存在ですが、生きた時代はは確実にあった時代なのです。神は細部に宿ると申しますが、気になった部分その2はそういったところですね。ただ脚本は岡田恵和。このドラマ夜の『朝ドラ』を狙っているとかなんとか聞いておりますけれど、『ひよっこ』で宗男おじさんでインパール作戦を語らせてラブ&ピースをした、その手腕には期待しています。

あの日

 ある意味、このドラマに関してはネタバレしている状態ではあるんですが、そもそもアニメ版も漫画ファンからはネタバレしている状態からで、尺の関係でカットされたエピソードがありながらも素晴らしい出来映え(当然カットされたエピソードを指摘された方もいらっしゃいます)でした。ドラマでは尺がとれるのでその部分もしっかりと描いていく事になるでしょう。実はアニメ版もそのエピソードを入れた長尺版が今製作中です。そのため競作というとあれなんですけど先にドラマ版がそこを描くことになるわけです。そして呉の空襲、そして広島への原爆投下。それを来ることを知っているオーディエンスに対してどういう球を投げてくるのか。今はその投げられるであろう球を粛々と待ちたいと思わせる初回でした。

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