『ひそねとまそたん』全12話が先日放送終了しました。女性自衛官とドラゴンというなんとも不思議な取り合わせ。とは言え飛行機好き、ドラゴン好き(と言うか『パンツァー・ドラグーン』好き)なtonbori堂としては見逃せないアニメでした。
お話はある少女がドラゴンと心を通わせ、ちょっとだけ成長する物語…なんて言うとファンタジックでロマンチックなと思われますが実際には日常の中の非日常とお仕事と人生に迷いながらも進むというストーリーだったように思います。今回は最終回を迎えての雑感を最終回のサブタイトル『無敵の私たち』からキーワード『無敵』というのをネットスラングの『無敵の人』とかけて考察してみました。
『無敵の人』
タイトルにした「無敵の人」ってインターネットのスラングとしては定着した感のある、巨大掲示板サイト「2ちゃんねる」の元管理人西村博之氏がブログで書いた言葉が元になっている、「失うものがない人間」ですが、主人公のひそねは失いたくない人なんです。ですが無敵なんです。何も失わない選択をした。つまりある意味最近のネット世相へのカウンターも感じるお話でした。だから最終話のタイトル『無敵の私たち』はすごく納得できるものなんですよね。
※ちなみにストーリーの重要なところを書いておりますのでご鑑賞の上お読みいただくかもしくはそれでもかまわないという方だけお読みくださいませ。
甘粕ひそね
彼女は、いわゆるノンポリで、でも思ったことはつい口にしてしまうデリカシーの無さで世の中がちょっと生きづらい、そんな少女でした。夢見がちというわけでもなく、どこか所在無さげ。高校三年生の就職活動の時期に、どこにしたいかもわからない時にふと空を見て、どこまで飛んでいけたらと、航空自衛隊へ入隊する事を決めてしまう迂闊さ。独り言の多さを押し殺していたけれどある時、配属先の岐阜基地において聞きなれない第八格納庫へ書類を届けにいったことから彼女の運命は思いがけない方向へ転がりだします。
第八格納庫にて変態飛翔生体(略称OTF)のまそたんに飲み込まれたことからOTFに選ばれたDパイ(ドラゴンパイロットの略)として新たな世界が開けた!といささか、前のめり的になるものの元が引っ込み思案のマジレッサー(マジでなんでも返してしまう)のため、その道は平坦ではありませんでした。それでも他の基地が担当しているOTFとの合同訓練、そしてそのDパイたちとの交流。指導役の柿保飛行班長やひそねの前にDパイ候補生として着任していた名緒、OTF機付長小此木、実験飛行団の団司令、曽々田、そして岐阜基地の個性豊かな面々と交わる事で少しだけど生活に変化が出てきたひそね。
しかしOTF4体が超巨大OTFミタツ様を臥所に誘導する大事な任務の前に恋を知ったひそねは隊を辞めてしまいます。Dパイになれなかった柿保の怒り、痛みが伝わる最終回前の11話は本当に観ていて、ひそねいくらなんでもそれはアカンやろーってなりました。そこからのスーパー土下座にはなんともはや呆れるを通り越して一種清々しさも感じました。とは言え結局マジレッサーっていうのは他者と上手く関わり合う事が出来ない(それは他のDパイも多かれ少なかれそういう性質をもっていますが、というかDパイは殆どそういう性質でないと選ばれないとか)ひそねはそれが度を越しておりなんというか「極端」なんですよね。
だからこそ「無敵の人」なんです。失うものが無いのではなくその性質が極端が故に後先を考えない行動に出る。あとで悩むけれど、とにかく行動は極端になってしまう。そういう性質がラストのお寝返りに対する楔女の代わりを買って出る事になったのかと思いました。前後の事を本人はよく考えてはいるんでしょうけど、極端に走ってしまう。だから「えいやっ」と飛べるのかなと思ったのですが、どうでしょうか。はからずも名緒がマツリゴトの後に「あいつはまそたんといれば無敵だからな」といったのは正しいのです。彼女の極端な性格はそれまではマイナスにしか作用してきませんでした。だけどDパイに選ばれまそたんといるうちにそれがプラスに作用する。いや必ずしもプラスじゃないかもしれないけれど、道を違えず進めるようになった。それは過去のDパイで樋本貞が進めなかった道でもあります。だからひそねは戻ってこれた、まそたんとともに。そしてその後もDパイとしての任務を全うできる。そんな気がします。
まそたん
「まそたん」はひそねが付けた名前ですが、第2話でまそたんの体内(Dパイはドラゴンの胃袋、内臓にてドラゴンをコントロールします。)にあった碑文で難しい字で間祖譚とあるようです。これで検索するとこの名前「まそたん」で色々考察されている人がいらっしゃいました。これがまそたんの真名のようですがtonbori堂は正直チンプンカンプンです。ちなみに「まそたん 漢字」で検索すると道教の神様(女神)媽祖(まそ)がでてきます。航海、漁業の神様でその位は高く則天武后と同じく天后と称されるとか。中国の沿岸部を中心に信仰されている女神様です。
間は、門の間から月の光が差し込んでいる様を現したものです。転じてあいだ、人と人の空間や形而上なへだたり、時間、空間、またはつながりの意味を指すそうです(仲間など
祖は物事の初め、開祖、元祖など、まだは父親の父親、祖父などにも使われる最初という意味があるようです。
譚は奇譚などにもつかわれていることから分かるように物語を語る、またはお話という意味です。
些か不思議な文字が充てられていますが、あの文字を即、まそたんと読めたひそねの方が凄いと思います。名は体を表すともいいますが、彼(彼女)がそういった名前を与えられているのは、まそたんが語り継ぐ者であり、最初であり人とのつながりをもったものなのかもしれません。まあ推測でしかないんですが。
ちなみに擬装時F形態はF-15Jでありますが擬装をといたH形態ではちょっとパンツァードラグーンのドラゴンっぽいところもあって、そこがけっこうtonbori堂はお気に入りでした。
脇役の方々
まそたん以外のOTFはF2に擬態しているノーマ。C-1に擬態しているフトモモ、E-2に擬態しているあけみの3体がいます。そしてノーマのDパイ、星野絵瑠(築城基地所属)、フトモモのDパイ、日登美真弓(入間基地所属)、あけみのDパイ、絹番莉々子(三沢基地所属)。脇役とは書いていますが、それぞれに、面白いキャラクターであり、F2に憧れ、初の女性ファイターパイロットを目指していた絵瑠、元動物園の飼育員でおっとりしているけれど、一方で内に秘めたる激情をもつ日登美。視線恐怖症ながらどんな時もマイペースを崩さず冷静、客観的に過ぎるものの見方をする漫画『キングダム』好きの絹番。ひそねとは別の意味であがいていた絵瑠と、状況を受け入れている日登美と絹番という対比、チームアップとしても非常に面白い取り合わせでした。
岐阜基地での面々も重要です。元Dパイ候補であった柿保、Dパイの母を持ち、Dパイになれなかった名緒。そして飄々としているけれど気配りの人、曽々田団司令。そして物語当初から登場し謎のジョアおばさんとして物語のキーパーソンで先の大戦時のDパイだった貞。それぞれの物語もひそねのメインストリームに絡みながらも徐々に昇華されていく部分。いやまぁ曽々田司令は傍観者ポジションなんですけれど(笑)基本的には女性の視点、女性たちのストーリーでしたね。
大きくストーリーに関わるというか昇華された男キャラは2人、小此木と財投。特に小此木はマツリゴトのため宮内庁から遣わされ自衛隊に出向の身の上ながらも、徐々に不器用ながらもひそねと距離を縮めその結果が最終章というかマツリゴトでのごたごたを引き起こしたんですが、絵瑠と財投との流れがスタンダードとすればひそねと小此木はお子ちゃまなんだけど、なんだろうほっこりするというか。これは12話かけてじっくりと描いてきたからでしょう。そこに後半から登場の棗も巻き込んでの三角関係もいいアクセントになっていたと思います。
財投さんもつかみどころのない人だったけど普通に面白い人(フィクサー然としているけど)ただのお茶目なおじさんになっていったのも「ひそねとまそたん」という無敵の私たちのおかげではないでしょうか(笑)そこには当然、貞の想いが昇華されたこともつながっていると思います。
少女はあの空を渡る
主題歌は後半『少女はあの空を渡る』から『少女はあの空に惑う』となっていてOPも棗が登場するパターンとなり変化を持たしたものでしたがストーリーに密接にリンクしており、相当練られた展開だったのだなと思います。
自衛隊で非日常の日常を描くドタバタ劇かなと最初は思っていましたが、やはり自衛隊が搭乗するならば最後は運用を描かないと締まらない。そこをマツリゴトとしてOTFの存在をしっかりと腑に落ちるようにして、ひそねにクローズアップさせていく『ひそねとまそたん』3か月しっかりと楽しませていただきました。望むならこの先をちょっと見せて欲しいかな。そんな気分にさせてくれるアニメだったと思います。
という事で実はネットフリックスで全話配信中です。見直しなどにいかがでしょう。私もまた観直そうと思っています。そうですね、あとはエースコンバットとコラボしてくれれば何もいう事はありません(笑)
こんな傑作だと思わんかった。
返信削除お読みいただきありがとうございます。
削除良いアニメでしたよね。今でもネトフリなどでちょくちょく見返しております('◇')ゞ