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『ガンマー第3号宇宙大作戦』、『キングコングの逆襲』、『緯度0大作戦』|tonbori堂特撮映画語り【ネタバレ注意】

2018年7月15日日曜日

movie SF 特撮

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 日本映画専門チャンネルの東宝特撮映画企画『東宝特撮王国』で『キングコングの逆襲』をやっていたんですが、この頃の特撮映画ってのは未来への憧れともに行き過ぎた先端科学による歪みやその技術を利己的に利用する者たちをも併せて描いているなと感じました。そんな空想科学冒険譚である特撮映画の印象や思い出深い作品たちの事を今回は書いてみたいと思います。

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 ちょうど書いている時期も夏、夏と言えば子ども映画大会、まあ70年代はそういうプログラムが高校野球が始まる前にはよく組まれていました。という事もちょっとあります(笑)

※ご注意:それぞれの作品についてストーリーのネタバレしています。このエントリをお読みになる方は鑑賞された前提で書いておりますので何卒宜しくお願い致します。

60年代末空想科学特撮映画/懐かしの科学冒険譚

 『キングコングの逆襲』はメカニ・コングって凄く印象深いロボットだし、死神博士で有名な天本英世が稀代のマッドサイエンティスト、ドクター・フーを怪演しているんですが、ちゃんと観た記憶がないんですよね。だけど、あれ?なんかここは観たことあるなとか、古い映画を観る時はそういう事がたまにありますが、例えば構図が同じだったり、役者が同じだったり、今回はメカニ・コングはそれこそ書籍などでよく取り上げられるロボット怪獣。それもあるかもしれません。


 それでも60年代から70年代はこういった空想科学特撮映画が元気な時代で大人も観れる作品も多くありました。今回はそういう作品の中から『ゴジラ』以外で印象深いものをとりあげてみたいと思います。まずTVで観た中で印象深いのは『海底軍艦』『緯度0大作戦』『ガンマー第3号宇宙大作戦』『宇宙大怪獣ギララ』辺りでしょうか。このうち2本は東宝作品ではありません。東宝の作品群を観て、うちでも!となった作品たちで『ガンマー第3号宇宙大作戦』はオール外国人キャストによる(監督は深作欣二)作品です。今回はこの『ガンマー第3号宇宙大作戦』と東宝の『キングコングの逆襲』、そして『緯度0大作戦』を取り上げみたいと思います。


『ガンマー第3号宇宙大作戦』

 今観ると脱力ものだという人もいますけれど当時めちゃくちゃ怖かった思い出があります。そのため今に至るまで2回くらいしか鑑賞していないのにタイトルだけはよく覚えている作品でもあります。

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 ちなみに吹き替え作品なので英語字幕ってわけではないです。物語は地球に近づいた小惑星かなんだかを接近する前に爆破して危機を回避するのですが、爆破チームの作業中に小惑星に居た原生生物の細胞が混入し、前線基地だった宇宙ステーション、ガンマー第3号で大増殖してパニックになるという。今リメイクしたら面白い作品になると思うんですけどどうでしょうか。舞台は宇宙だし、『メテオ』や『アルマゲドン』の前に、飛来する天体を爆破するとか既に先をいって、なおかつそこに『エイリアン2』風味も。ってこう書くと凄いなって思われそうですが実際凄いと思いましたよ。っていうか外国映画だと暫くは思ってたし。


 ただネットの評を見ると特撮がしょぼいとかいろいろ書いてあって、分かってないなあって思う事しきりです。先にあった東宝の『妖星ゴラス』っぽさがあるのに序盤だけであっさりと、その後はバトル・オブ・マタンゴな作品に(笑)東宝がやってたことを合体させながらも宇宙ステーションなどを組み合わせた部分などは慧眼であったなと思います。特撮は当時最高を誇る東宝(円谷プロ)にはさすがに譲りますが、結構大掛かりかつ、それに迫るものを作ろうという気概が感じられるものでした。なによりストーリーの骨格などは非常に面白いものがある作品でしたし、今ならもっと細かくディテールを積み上げ面白くできる作品かもしれません。ただ深作欣二節ってものは弱いかも。ですが後年これが『宇宙からのメッセージ』につながったのかなと思うと面白いものですよね。

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『キングコングの逆襲』

 先にも書きましたけど、実はメカニ・コングだけなんですよ。この作品(笑)いや今回観た時も、ああこの映画そういう話だったのかと。多分幼少期にTVで観ているはずなのに記憶にないけどメカニ・コングだけはブルマァクの玩具か小学生雑誌の特集かなにかのせいで凄く記憶に刷り込まれているんですよね。


キングコングの逆襲/©1968東宝/監督 本多猪四郎
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 そういえば東宝の特撮ロボの系譜でいえば『地球防衛軍』のモゲラ。そしてこのメカニ・コング。そして『ゴジラ対メカゴジラ』のメカゴジラがマストになると思うんですが、モゲラやメカゴジラは平成VSシリーズで復活を遂げましたがメカニ・コングは元がキングコングってこともあってこの作品だけですよね。レジェンダリーのモンスターバースで復活は出来ないでしょうかね。何せガチでゴジラ対キングコングが計画されているので人間側のイェーガーっぽい対抗兵器としてキングコングをモデルに造られたメカニコング、そして真打メカゴジラと対決などとこれは脱線でした(^^;


科学の力、自然の驚異

 この作品、今回しっかりと鑑賞したんですが、科学冒険譚ですよね。地球上にある秘境。南海の孤島に棲む魔神。文明の最先端である科学調査隊と母艦である原子力潜水艦。これはゴジラシリーズの『怪獣島の決闘 ゴジラの息子』にも色濃くでているんですが、南海の孤島が前人未到の秘境だったという時代感覚の元に作られている事は明白です。また『ゴジラの息子』ではゾルゲル島で調査隊がやっているのは気象コントロールという、今後の食糧難を見越した農作物の収穫安定化を図る実験というのも科学万能主義的ですがその結果、島の原生生物が巨大化、凶暴化するなど自然の猛威というのも描かれています。


 元々キングコングも南海の孤島で現地人からあがめられているという設定で、『キングコングの逆襲』では島には一人しか(しかも老人)いないという(現地人メイクの人間をたくさん用意すると、それ以外にキャストも多いのにということでしょう。ちなみに『怪獣島の決闘 ゴジラの息子』と『キングコングの逆襲』は1967年の公開です。やはり時代の感覚が科学万能時代への礼賛もありながらも、それでいいのか?というエクスキューズがあったのだなと思わせる内容であったように思います。それは70年代も顕著で『ゴジラ対ヘドラ』はその最たるものでした。

『緯度0大作戦』

 これは1969年に製作された日米合作特撮映画です。劇場での鑑賞ではなくTVで観ましたが、日曜洋画劇場でかかるような外国人が日本語を喋っている(これは『怪獣大戦争』などのアメリカ人キャストが出演している場合そういう措置がなされていました。)けれど日本人も出演している不思議な映画としてよく覚えています。

緯度0大作戦
緯度0大作戦/©1969東宝/監督 本多猪四郎/Amazonプライムビデオ


 雰囲気としてはジュール・ベルヌの『海底2万海里(リーグ)』をさらに未来タッチにしたものと感じましたが今回、周辺情報のためググってみるとWikipediaにこんな記述がありました。

ソース|緯度0大作戦 - Wikipedia

  1. この作品は1940年代に米のNBCラジオにて放送されたテッド・シャードマン原作の『緯度0の物語』("Tales of Latitude Zero")が原作である。
  2. 原作者シャードマンが実写映画化を目論み、米のドン・シャーププロに持ち込み1967年に東宝の重役が渡米した際に合作を持ちかけ実現した。|以上Wikipediaより引用

びっくりしましたね。てっきりジュール・ベルヌの翻案かなと思っていたので。でもよくよく考えるとそうでもない部分も多いんですよね。

まず緯度0の住人達は外との関わりは極力避けているし(ネモも関りは避けている一方、軍艦などを沈めている)緯度0の科学力をもってして悪い事を企むマリクと戦ってたりとかなど、古典的SFの『ドクター・モローの島』や童話のリップ・ヴァン・ウィンクルの話などが混ざった(緯度0度は社会と切り離されたユートピアで各国の天才が死んだ事や行方不明として滞在している)感じがあります。いわゆるごった煮感覚ですが、SF冒険譚としては要素が全て入ってる感じですね。


 出てくる怪獣もグリホン(多分グリフォンなんでしょうが表記はグリホン)というライオンの身体で翼を持つ改造獣(キメラ)(部下である黒い蛾という女性が失敗続きのため人体実験され脳を移植されてしまった)など、いわゆる東宝特撮怪獣ではないラインや、潜水艦どうしの戦いなど、今リメイクするとSFとして面白いものが出来るんじゃないでしょうか。緯度0の設定もシャングリラやヴァルハラのようで面白いし。メカニックも緯度0のマッケンジー艦長が指揮するアルファ号の万能戦艦ぶりは後年の『マイティジャック』にも取り入れられているだろうし(『マイティジャック』の元企画は『空飛ぶ戦艦』という没になった東宝特撮映画ですが)敵役の黒鮫号などメカ戦も充実しています。実はこの映画、それほどヒットはしなかったけれど合作な上に製作費の殆どを東宝がもったために回収できずその後合作作品が途絶えてしまったそうですが、なんとももったいない…とも言えないんですよね。


 作品のカラーがあまりにも独特なのでよく覚えていたんですけれど、面白いかどうかで言うと…微妙でした。日本映画専門チャンネルでの東宝特撮王国のラインナップにはいっているので再見しようと思うんですが、あきらかに日本映画なんだけど海外の則を再現しようと試みている感があったように思います。いわば007のような荒唐無稽なアクションと科学冒険譚がミックスされているようなそんな感じです。でもそれが上手くマッチングしていないというか…当然当時の水準で考えれば東宝特撮としてなかなかの出来であったとは思うし、海外キャストを配した事による国際色豊かなSFムービーとはなりましたが反面、押しが弱い感じがしました。『マイティジャック』もそうなんですがガジェットやその撮影、国際謀略モノとして志の高いのは分かるけれど反面、弾けていないというか。勢いが足りないというか。


 『緯度0大作戦』はまだ勢いというものもある感じなんですが、基本的にドキュメンタリータッチを得意とする本多猪四郎監督。ゴジラのような淡々と日常にやってくる災厄を描くわけでもなく、三大怪獣が富士を背景に豪快に戦う訳でもなく、難しい感じです。せめて脚本がもうちょっと跳ねてる感じであれば…。とはいえ万能潜水艦同士の戦いというのはやはり燃えます。今後どこかでリメイクして欲しい1作です。

今回は

 この3作品を取り上げてみましたが、それぞれに面白い作品だと思います。当然当時の技術なので今のCGなどに慣れた人にはチャチだと思われるかもしれませんが、ストーリーなど当時の空気が充満していて、科学の急速な発展とそれに対する警鐘などがないまぜになりながらも冒険活劇をという部分がそれぞれの作品に感じられます。既に観られた人もそういった視点で観てみてはいかがでしょうか。次は『海底軍艦』『地球防衛軍』などをとりあげてみたいなと思います。あの決定的な敗戦からの復興のための映画という感じで切り取ってみたいと思います。

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