「剣聖の娘」｜『ファイブスター物語/FSS』考察/月刊NT2018.6月号連載分『二羽の小鳥』より｜【ネタバレ注意！】

　今回はアルル・フォルティシモ・メロディ４についての考察です。実際2018年6月号の連載扉にあるフンフトの解説文によりさらに謎多き姫君になってしまった感があり、初登場時の明らかにエルガイムの面影を残す剣聖ハリコンの神騎エンゲージSR1を駆る流浪の傭兵騎士であり亡国の姫君という、如何にもファンタジーラノベに多そうな設定なアルルでしたが（当時でもそういうのあったかも）濃いキャラが多いファイブスター物語/FSSでも、なかなか外連味を持つキャラクターでした。

　そして物語のもう一方の主人公コーラス側のかなり重要人物であることが今回、示唆されたわけです。もっともコーラス王家（分家）ってことで最初から重要人物ではあったんですが、まかさここまで謎が深まるとは思ってもみませんでした。（剣聖の娘というだけではなく「呪い」を背負っているという部分、そして超帝国とのつながりという部分）そこをちょっと考えてみたいと思います。

｜ファイブスター物語リブート6巻「THE CHIVALRIES」｜永野護 著｜KADOKAWA刊｜アルル初登場エピソード収蔵巻。（リンクはAmazon）

懐園剣を持つ女

　初登場のその後、バルンガに連れられハスハの王宮へ上がり、魔導大戦ではネイパーとのオージェとの遭遇戦、そして乱入してきたセイレイとのやりとりで実は悲劇のヒロインぶりっ子キャラだったのが、実はヤンキー気質であったりもありました。そこも含めてのコーラスの血を引くものではあるなとは思っていましたが、しかしそれ以上に謎が深まる話でした。実はtonbori堂、アルルが懐園剣を背負っているのは、単純に祖父であるハリコンから伝わった剣を受け継いだからだと思っていましたが（苦笑）懐園剣というものは天照とラキシスの娘カレンが産み出しものでこの世では斬れないものを斬る剣。アルルがこれを使うということはないのでしょうが、次の持ち主への継承というのがあるのかもと思っていました。でもそれだけではないのかも知れません。

　懐園剣がマキシに受け継がれていくという意味ではアルルはコーラス、ハスハ、A.K.Dをつなげる役割はあるんだろうなっていうくらいの認識があったんですが、ここに来て本当にアルルという人物はその出生からしてのその土台が崩れるような展開が連載でありました。ハリコンの神騎とよばれるエンゲージ（GTM名HL1SR1アハメス）を駆る姫騎士はいったい何者なのか？少し考えてみたいと思います。

アルルの女

　『アルルの女』と言えばゴッホの絵を思い出す人なんですが、戯曲で『アルルの女』という作品があるそうです。双方に関係はありませんが戯曲『アルルの女』は名も知らぬ女性に心奪われた男の悲劇だそうです。現在、アルルに心を奪われているのは…セイレイだけですが、ベラ国攻防戦の一件以降、轡を並べてマロリーとともに暴風３王女としてハスハ解放戦に参加する事になりました。そういうわけですが彼女の背負ってる懐園剣に心奪われている集団もいます。そんな彼女自身の事が語られるのはその前になりそうな気がします。というかそういう予告もありましたし、今考察するよりはそれを待つのがいいのでしょうが、やはり断片的な情報を得られるといろいろ妄想してしまうのです。という事で暫くお付き合いのほどよしなに。

フォルティシモ・メロディ4

　アルルの下に付く名前は長いものですが、メロディ家４代目にして長子であり王女、お姫様なわけですよね。メロディ家というのはコーラス分家であったハリコンの家でありコーラス・ディス・バイス19世から数えて３代後の21世、コーラス・ファーストの長女ソプラノがメロディ家初代当主です。彼女の子がハリコンで本来ならば彼が継ぐはずが若くして亡くなったために妹フォルテがメロディ２世として家を継ぎ、ピアノが３代目にというのが系図から分かる事でした。

　そのピアノが実はハリコンであったというのが第６話時の詩女アクト4-9『パルスエット～二羽の小鳥』エピソードにてフォルテの手引きにより子としてカモン・ピアノとなりメロディ家を継いだという展開にはあっけにとられました。さすが斜め上の展開をもってくるクリス（永野護）。もっとも書かれていることが全て真実ではないというのは歴史を少しかじっていればよく分かる話です。当然系図というのは後世の人間が書くものと考えれば公式にはそうだったという話で納得…本編読んでいると難しいけどしなければなりません（苦笑）いやそれだけじゃありません。

　アルルと桜子は異母姉妹とDESIGNS２のコーラスの系図には書いてあるのに、実はアルルもフンフトが産んだとなれば、桜子と姉妹になるのか？いや同時に胎内にいるとなればそれは双子？一卵性ではないですよね、二卵性？と思ったらフンフト様の解説に別の受精した胚を胎内にという事が書いてありました。なるほどそれなら仮の母胎で…ってサロゲート・マザー（代理母）にしても同時ってそんなことの出来るの？と、この辺りジョーカーの科学力（医学）と詩女の力ということが書かれてはいましたが…全くもって凄い話です。しかしジョーカーの科学力はそういう事が出来てもクローンは出来ないのかってなりそうなんですがそこはやらないんですよね。なんでもありだけどそこだけは枷をはめているというか。

　昔クローンが世の中に出てきたころ、完全なヒトクローンを作ると脳共鳴が起こり発狂するという話がまことしやかに流れていました。真偽は不明なれど、F.S.Sもその話を沿った設定で、血の継承やログナーだけがドウターチップによりクローンとして代を重ねているという設定になっています。超人、神様が跋扈する世界観ですが、そこはなんでもありだけど幾つかの枷の一つなんではないかなと思っています。余談でしたが。

　で、2018年5月号の描写では二人ともにフンフトの産んだ子と見る事ができるんですが…、まったく謎の系譜を持つに至った2人。そして桜子も実はハリコンの血を引くものということが分かったわけですが別の受精卵っていったい誰の？ここでtonbori堂はまさかの超帝国の騎士？の胚ではと思いましたが、今のところ、アルルはそこまで超絶な強さを見せていません。十分強い騎士で天位クラスであろうとは思いますし、そもそもブレイクダウン・タイフォーンの使い手（コーラスの騎士の剣聖剣技）である事は分かっていますが、しかしネイパーのオージェとの戦いを見る限り、剣聖のような圧倒的なものではない感じです。まさか力を抑えている？詩女の力があれば…不可能ではない話ではありますが（プロミネンス＝マドラ＝スパークの事もありますし）

　そしてこれはちょっと恐ろしい話なんですがハリコンの因子を持つファティマかもしれないということ。バランシェなのか母親のアルセニックが作ったのかは分からないんですが。でも見た感じファティマって感じではないですよね。先にも書いたけどジョーカーのクローンはログナーのみってことで、最初はハリコンのクローンか？とも思ったんですが…。もっと言うとフォルティシモという名を（真名）を持つ誰かがいるかもしれない…というのは…さらに無いとは思うんですが…。

　そして同時に生年についての謎が浮上しました。何故ならどう見てもアルルとセイレイの年齢が合わない感じになってくるわけでして、となればさらにアルルに対する謎かけが。ますます彼女の正体は？ってなってしまうほどです。いったい何歳なのか、取り潰しはフンフトとカモン・ピアノの不義が分かった後の話で、2989前の話でしょうから2980の頃にはアルルは既にコーラスを出ていたはず。

　ここで時系列を整理しておきたいと思います。これは連載から抜き出したタイムライン、

2972ショーカムとリリが出会う。アルルと桜子はフンフト様のお腹に。

2974桜子産まれる。その事によりフンフトは詩女剝奪。リリ、ジークを出産。

　ですがDESIGNS４ではフンフトの在位は2920～2961となっており、桜子の誕生で詩女剝奪とあります。でその後のP130では桜子は2974の産まれとなっているのです。連載の時の流れを考えればジョーカーの人たちは地球人よりも長命ですが出産に関しては地球人と同じなら（リリの事を考えても）十月十日と考えればアルルと桜子は1年ちょっとしか離れていない事になります。（出産コントロールで誕生としても）

　そうなるとセイレイよりも若いってことになる。DESIGNS５リッターピクトによればアルルはコーラス王朝ウィンド高等学校を「卒業」とあります。そしてセイレイは在籍のままボォスへ（ただし落第の可能性も）年齢的にはセイレイは公式では幾つという話がありましたでしょうか。あまり出てないと思うんですが多分桜子かちゃあの間くらいの年齢ではないかと考えています。（2989時、多分18歳から20歳とすれば地球人年齢で7歳前後）となればすくなくともちゃあよりも先に産まれている（ちゃあは2968生まれ）ヨーンは2952生まれなので2961がアルルの生年とすればしっくりきますが…

　この年代のトリックはまともに考えると頭が痛いですが、懐園剣が意思をもって望む時間へ時空を跳ぶのなら、カモンより託されたアルルがその力により2961に跳んだと考えるしかありません。まあファイブスター物語はおとぎ話ですから、それはいいんですが…その意味はってところですよね。でもそれだけ彼女の設定っていうのは込み入っているのかもしれません。