原作は小説で80年代を中心としたポップカルチャーや当時の映画、音楽、アニメ、ゲームを内包した小説でウルトラマンや東映の特撮ヒーロー『スパイダーマン』に出てきたロボット、レオパルドンまで登場するという話を実写化。監督はスティーブン・スピルバーグ。彼が世界中のオタク(ギーク)やゲーマー向けたビッグプレゼントといってもいい映画でした。
『ゲームウォーズ』
残念ながら今回はウルトラマンの登板はなりませんでしたが、ガンダムやメカゴジラの登場は既にアナウンスされています。また映画内あるイースターエッグ(いわゆる隠しキャラやネタ)は300とも。作品自体が仮想空間にある財宝イースターエッグを手に入れるという宝さがしになっているストーリーで、そのゲームフィールドが現実社会にも影響を及ぼすほどのものとして認知されているちょっと先の未来。自分たちの居場所を管理する側から解放するためにそのフィールドを受け継ぎ会社の資産を継承するイースターエッグを争奪する。RPGやネットゲーム、FPSをしたことがある者ならちょっとは覚えのある、空想を映像化したものといっても過言ではありません。
ストーリー
時に西暦2045年、ウェイド・ワッツはオハイオ州コロンバスのスタックと呼ばれる集合住宅があつまるスラムに住む青年。両親を早くに亡くし、叔母と彼女と同棲しているヒモ同然の男と暮らしている。彼の唯一でそれが全てと言ってもいい楽しみ、いや生きがいは、天才と呼ばれた開発者ジェームズ・ハリデーが創造したVR空間「オアシス」で彼の死去後、遺言でその世界のプレイヤーたちへ投げかけられたイースターエッグ探しである。
オアシスの全権利とハリデーの遺産5000億ドルを相続できる3つの鍵を手に入れるため5年間沢山のイースターエッグハンター「ガンサー」たちがチャレンジしたが未だにランキング表示は空欄のまま。しかも第1の鍵への扉は分かっているが、未だ誰もそのゲームを突破することはかなわなかった。ウェイドもパーシヴァルというハンドルネームとアバターでイースターエッグに挑むガンサーの一人であった。
そしてウェイドはハリデーの記憶アーカイヴからヒントを見つけ出し第一の鍵を見事に獲得することに成功する。その事でオアシスの管理権を獲得したい企業IOIを率いるソレントはパーシヴァル=ウェイドの正体を探りなんとしても鍵を手に入れようと陰謀をめぐらす。IOIの横暴に抵抗しているレジスタンスゲームプレイヤー、アルテミスやオンラインフレンドのエイチ、ダイトウ、ショウたちの助けを借りながらウェイドはソレントたちに対抗し、鍵を集めてオアシスを解放しようとするが、彼らの攻撃も激しくなってくる。そして3つ目鍵の在りかをかけて決戦がゲーム・フィールド惑星ドゥームで始まろうとしていた。
巨大なゲーム空間「オアシス」
名前はベタですけれど、この「オアシス」の凄いところはどんなアバターをまとっても自由で好きなゲームキャラになるのもOKだし、オリジナルのアバターを作ることも可能。自由度が高く、何をするのもフリーダムな本当にゲーマーなら夢の世界です。VRギアを装着すればたちまちゲームの中に没頭できる。まさにゲーム天国。それぞれ好きなゲームができるフィールドの惑星があって、ゲートや移動してそこで楽しむみたいな感じのようです。セガ/パンツァードラグーン/ツヴァイとAZEL |
ACECOMBAT04シャッタードスカイ/ナムコ |
そんなオアシスに入り浸って日々を過ごしているウェイドはようするにニートで現実社会では叔母さんのヒモに殴られて、辛酸をなめてるわけです。それでもイースターエッグ探しに没頭するのは、そりゃ一発逆転もあるでしょうけど、それ以上に、それをしている間は現実の嫌なことを見なくて済むから。ウェイドはオアシスではパーシヴァルという別の人格を纏い、自由を謳歌していたわけです。そこにいわば自由であるオアシスで権力を(資金力にモノに言わして、またネットへの接続料で相手を縛る)振りかざすIOI、その手下たちシクサーズ(6桁番号)はようするに居心地のいい仮想空間を窮屈にする大人たちという図式だったんじゃないでしょうか…原作では。
でもハリウッド映画で、ゲームの世界にずっといてもいいんやでというのはやはり難しい。君たちはそこに居てもいいんだよ、でも現実にも素敵な事はあるんだよっていう風にもっていかなくちゃならない。そこに説教臭さが入り込むと萎えてしまいます。いやサミュエル・L・ジャクソンがクライマックスで長台詞を吐くなら、アル・パチーノが突然独白するとか、そういうのも有りなんですけど、やはりここはプリンセスを助ける。これにつきますよね。
原作タイトル
原作タイトルが『ゲーム・ウォーズ』なんだそうですが、映画はそのタイトルから想起されるあの作品をようするになぞっているわけです。そうスピルバーグの盟友にしてあのサーガを産み出した男。ジョージ・ルーカスの『STAR WARS』です。ウェイドはルーク。アルテミスはレイア、そしてまあハン・ソロ他はサブキャラとしてそれぞれが割り振った感じで。それだけにソレントがミレニアムファルコンの名前を出した時は無茶苦茶色めき立ちましたが…出ませんでしたね。っていうかエアプレーン系のゲームガジェット、プレイヤー機が出なかったような。最後の戦闘の時に空を飛ぶ系がいればなあっていうのはないものねだりかもしれませんけど、ちょっとだけ残念ポイントでした。
ゲーム空間からの帰還。
ハリデーは後悔があったわけで、その想いをイースターエッグに込めました。そして死に際して自分の意識をアップロードしたのかもしれません。これは明言はされていませんが、彼のアバターが彼の姿になって現れたときにウェイドが尋ねたときの顔がその答えだと思います。ウェイドはハリデーからオアシスを継承し火曜と木曜を休みにしました。まあこれはゲームもいいけどリアルもちゃんとしとけよっていうお話なんですが、それは現実でもちゃんとそういう地に足の着いた寄る辺を得たからですよね。彼はゲームの中でそれを得た。そして紆余曲折があったけれどその寄る辺をちゃんとしっかりと掴んだわけです。それとは反対にゲームフィールドのその上、さらに戻れないところまで到達したのが押井守の『アヴァロン』です。『アヴァロン』ではあるキリングフィールドがあり、そこを超えたものだけが行きつけるハイクラスのフィールドがあるとされています。
|Amazon.co.jp: アヴァロンを観る | Prime Video/監督 押井守
寄る辺を捕まえられなかった者たちの墓場とそこからの帰還が『アヴァロン』の根幹をなしているんですが、今を去る事17年前に既に描かれていたのです。実は観たときに、ああこれ『アヴァロン』やなと。ただ『アヴァロン』は基本FPSというかVRでミリタリー装備で攻略するシミュレーションゲームなんで、『レディ・プレイヤー1』のようなロボットやカートゥーン、ゲームのキャラが詰め込まれたものではないけど遠くはない話です。ただしベクトルが逆方向ですが。気になる方は是非ご覧になっていただきたいと思います。
イースターエッグ
この作品自体がイースターエッグとなっていてその数なんと300。もっともtonbori堂はハローキティとか分かりやすいものしか分かりませんでしたがエイチの持ってるコレクション、ギャラクティカやその搭載戦闘機バイパーなどはやっぱりうぉーってなりますよね。アルテミスの金田のバイクもカネダバイクとして認知されているのはおかしかったけど、あの冒頭のレースシーンでマッハ号があるらしいです。全然気が付きませんでした。ただしシクサーズのマシンが何とはなしにマッドマックスのインターセプターっぽいんですが、エイチのバギーにこつんと橋から落とされるのは60年代に放映された『バットマン』のバットモービルってのはすぐに分かりました。(追記:あの街並みはNYっぽいけれどロボコップのデルタシティなんだとか。あとインターセプターもあのシクサーズの車にまじってあるそうです。)
あとハリデーの葬儀、というかイースターエッグの争奪戦を宣言するところの花輪は『スタートレック』の連邦マークになってたり花でつくられたエンタープライズがあったり、でもあの棺がまさかスポックの納められた棺と同じとは。Twitter経由のYouTubeの解説動画で知りました。てかギーク恐るべしですよね。あるシーンではキューブリックのあの映画をまるまるやるという部分。あの作品を原作者スティーブン・キングが嫌ってるというのはキューブリックがキングに君は神を信じているかと問うて、信じているといったキングに対して、その部分をばっさり切り落とすような作品に仕上げたからというのは有名な話です。あ、『シャイニング』の事なんですが。他にも山のようにありますがメカゴジラとガンダムの戦闘が見られるなんて、しかもハリウッド映画で。いやメカゴジラとガンダム出るのは知ってたけどあそこまで絡むとは思っていなかったから、返す返すも原作に出ていたウルトラマンやレオパルドンが登場しなかったのは惜しい。いやまあそれぞれいろいろな理由があったんでしょうが。
あとこれはイースターエッグというわけではないんですが『ブレードランナー2049』のラヴにそっくりな髪型の人がIOIの現実社会での裏事担当でいろいろ笑ってしまいました。いや笑うとこじゃないんですが。
素敵な時間は永遠には続かない
『アヴァロン』ではそうでした。ただ『レディ・プレイヤー1』は続かないけど友を得、現実に寄る辺があれば希望は続く。圧政は続かない。反抗を続ければという、分かりやすいメッセージと、ギークへの優しいまなざしが感じられた、自身もギークでありそこから映画産業に食い込んで今の地位を築いたスピルバーグらしい映画でした。ただ、これはtonbori堂の私見なんですが、オアシスにしか寄る辺を見いだせない人もいたりするわけで、ちょっとそこだけがひっかかりましたかね。でも出ている人たちでそこまでいっちゃってる人ってウェイドだったんだけど結局彼は帰還してきたわけだし。でも楽しくなる映画であったことは間違いありません。若干話が端折られてる感ありますが、そこは原作を読んで補完せよって感じがします(笑)
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こんにちは。
返信削除すごい映画でしたね。スピルバーグ監督が20世紀少年少女に送ってきた宝箱のような、「君たち、こんなのが好きだったね?」と話しかけてくるうような感じでですね。
あの結末は庵野さんがエヴァ劇場版「Air」の結末でやった『オタク共め、こんなの見て逃げてばかりしないでリアルに戻りやがれ!』と暴力的に言っていたのと本質的に同じ内容なんだけどもっと優しく、暖かく諭すように言っている、そんな感じがしました。
(同じことを富野監督ならインタービューでやっちまうw)
カンさん>
削除どうもです。いやまったく。でも実は昨日『インフィニティ・ウォー』を観てその衝撃でくらくらしちゃって、でもその前に下書きしておいたのでなんとかアップできました(笑)
ゲームもいいけどほどほどにってのがなんとも優しいなと。こういうのは廃人になるまでやるか、それともすっぱり辞めるかのどちらかを選びなさいパターンが多いような気がしますが、あえて休みをいれようねってのが。
富野監督は作ったものは全力で。でそれを観る大きなお友達は全力でディスるのが基本ですから(笑)