とうとう終わってしまいました『刑事ゆがみ』木曜の楽しみが終わってしまい来年の冬クールにこれくらい楽しませてくれる刑事ドラマやサスペンス系のドラマはあるのかなと早くも「ゆがみロス」なtonbori堂です。タイトルは『無間道』(インファナル・アフェア)のヤンの台詞ですが、弓神の最後の決断がちょっとかかわっています。そして完全に【ネタバレ】しておりますのでドラマを未見の方は申し訳ございませんがご遠慮願います。
刑事ゆがみ/ロゴはイメージです |
切ない10件の事件簿
思えば犯人が女性という率が高い。そして人の闇は深い。優しさや正義のために犯罪を犯してしまうというメインフレームがあって、そこに筋が乗ってきているドラマでした。そしてロイコ事件に関して、弓神自身が最初の包丁爺さんの時に見逃してやれよというのが実は伏線になっていたとは…。いや重箱の隅つつきするなら、爺さん、送検してもいいんだけど厳重注意でもあれ有りな案件ですよね。でもそこを「見逃してやれよ」というのが…深い。そして初回から女性の想いが動機になる事件が確信犯的に中心に据えられていました。これに関しては指摘しているニュースサイトのTVレビュアーさんも多くそこからひも解いてる方も多く、事件の影に女有りかなと最初は思ったんですが、そうではなく人の闇を浮かび上がらせるためと最終回への筋をつけるためだったのだなと最終回まで観て感じました。
ロイコ事件の真相
小説に見立てた見立て殺人…は無かった。全ては弓神が面倒を見ているハッカーのヒズミ、氷川和美の犯した罪を隠すための弓神の狂言だったという衝撃の事実。それが7年後に巡り廻って本当の殺人が起こってしまった。ある意味弓神が第3話で捕まえた元警察官の犯罪を暴いた事件に被ってくるわけですが、弓神が真下の犯罪を見破ったのは自分も隠していることがあるからと思うと、そこまで考えてたのかと。そして実は夫が妻を刺殺し、その夫を子どもである和美が殺してしまった(未成年)ためショックで茫然自失となり記憶喪失となったヒズミの過去を封じ込めるために自殺した青年の死を、鬱になり入院加療中への妻へのため息子の死を隠そうとした医師へ、弓神がその自殺を利用し殺人事件の犯人は焼死という筋書きを描いたのです。
まさかそれが7年後に当の本人である横島の鬱屈さが破裂して凶悪な殺人犯を産みだすとは思ってもいなかった弓神は相当に責任を感じているに違いありません。だから普通、処分を受けて、そして降格処分になったら羽生が言ったように依願退職するはずです。だけど警官を辞めなかったのは、最後のケリを付けるためなんでしょうね。
正義の行方
弓神は名前の通り適当だし、いい加減な人間ですが、情が深く実は人の闇を見通すのは自分も闇を抱えた人間に他ならないというのが浮かび上がった全10話だったわけですが、刑事で正義を信じ、時には法を破るものの細かい法より正義を重んじるといえば、『相棒』の杉下右京警部がいます。杉下警部なら弓神に、例えつらい真実でも、真実は本人に伝えるべきですというでしょう。それが杉下警部の絶対正義だから。だけど弓神はいい加減な刑事ですが、とてつもなく優しいのです。それは第2話の処理を観ても明らかです。いや杉下警部も見逃すでしょ、あれなら?いえ杉下警部なら追い詰めるだけ追い詰めておいて自首をおすすめしますとかいいそうです。そういう意味ではかなり対極にいる2人です。
実は『刑事ゆがみ』は当初から弓神と羽生のバディものとして企画されています。それは担当プロデューサーのインタビューからも明らかで、そこから考えると『相棒』を意識していたのかなと思う事もあります。直接打倒『相棒』とかそういうのではないけれど、『相棒』の杉下警部へのエクスキューズとして捉えられるようなケースが多かったかなというのと弓神の事件解決への導き方などにちょっとその気配を感じることがあるんですよね。そういう意味では最終回の弓神の行動や警官を辞めないというのも凄く納得できるのです。泥をすすっても自分のけりは自分で付けるというのもあるけれど、間違ったことをしても人としてこれは間違っているのか?というエクスキューズをつきつけた格好です。追い詰めるだけじゃないというところでしょうか。
ロイコはどこへ
ロイコというのは「ロイコクロリディウム」という寄生虫でカタツムリに寄生して操る虫です。このロイコ事件も氷川が横島のゴーストライターとして雇われたところから始まっています。でもその時点ではまだ怪物になっていなかったはず。鬱屈している小説家で、強姦罪で刑務所に送られていたら…犯罪者にはなっていただろうけど…いや分かりませんね。ただ今回の事件をきっかけに越境したものとして目覚めてしまった絶対悪というのは間違いありません。しかも逃走中なわけです。これはどうしたって決着を付けて欲しいのが人情だしスタッフも次につなげたいからこそのあの結末だったとは思うんですが…正直数字が厳しかったとは聞いています。横島との完全決着は難しいのでしょうか…
平の警官となった弓神が横島を追う『制服捜査』みたいな重厚なのもちょっと観てみたい気がしますが…どうでしょうね。フジはネットフリックスと組んだりしているからネットフリックスの邦画ドラマ強化するなら『刑事ゆがみ』は丁度いい素材と思うんですけどね。
キャスト
弓神役の浅野忠信が普通に連ドラのしかも主演キャストって珍しいですよね。本人も映画もよく出るし、NHKのハードボイルドなドラマ『ロング・グッドバイ』(レイモンド・チャンドラーの名作探偵小説を日本の1950年代に置き換えてドラマ化したもの)のような一種の絵空事にリアルな肌触りと持ち込む。そういう存在感をもつ役者さんなんですが、この刑事ゆがみでもそれが十分に発揮されていました。やっぱり存在感あるんですよね。唯一無二の。いろんなタイプの役者さんがいるけど色気があるというか。ハリウッドにも進出しているし今後も楽しみです。
虎夫役の神木隆之介は未だ童顔君なので高校生でもいける感じだけどそれが新米刑事、しかも上昇志向が高いってのにマッチしていましたね。これはナイスキャスティングでした。神木君うまいし、なんというかこの小生意気感とか。でもゆがみにそれとなく影響されていくところとか。さすが巨匠に愛される役者です( ✧Д✧)(笑)うきよ署の面々、菅能係長、多々木、町尾の強行犯係のメンバーもそれぞれ味があって最初は菅能係長以外はモブかなーと思っていましたが、ちゃんと自己主張しているシーンというか芝居も多く久々に安心して観れる刑事ドラマでしたね。しかもホンに筋が通っているのが大きかったと思います。原作からはちょっと外れたものになっているのですがドラマはドラマとしての筋を付けた感じでしょうか。
菅能係長役の稲森いずみ、最近また色々な役をするようになりましたがこの人と長谷川京子っていろいろ迷いもあっただろうけど今いいキャリアを作っている感じがします。タイプキャストにも怯まず挑む、いや挑んでいる感じではなく肩の力が抜けている感じで。そういうのもこのキャスト陣からはかんじられていましたね。ヒズミ役、山本美月は声が出ないという役を演じていましたが、最終章の単純な悲劇のヒロインにとどまらない魅力を作るのに役だったと思います。まあtonbori堂としては『アオイホノオ』の時のトンコさんが好みではあるんですが。彼女も今後幅を拡げていって欲しいですね。
最後に
『ガリレオ』の西谷監督に、女性脚本家で固めたってのは冒険だったと思いますがすごく上手く言ってたと思います。ただ結果に結びついていなかったのが残念で、キャストも浅野忠信、神木隆之介のコンビ感がここまでベストマッチとは考えてもみませんでしたが、このコンビで別のでもいいからよろしくお願いいたしますって思うぐらいです。ただ原作ファンにはこの改変はいろいろ(ロイコ事件の真相やオリジナルキャラクターのヒズミも含めて)どうなのかなってのはあります。でもゆがみの浅野忠信、虎夫の神木隆之介、菅能係長の稲森いずみ、ヒズミの山本美月は本当にいい仕事をしてたし多々木の仁科貴、町尾の橋本淳もこのうきよ署の面々このままおさらばは残念です。是非ともシーズン2を。ハードルは高いかもしれませんが本当によく出来ているのでなんとかならないかなって切に願います。
※原作は漫画でドラマと展開が違うそうです。
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