リドリーが描く叙事詩。『エイリアン:コヴェナント』|感想【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

リドリーが描く叙事詩。『エイリアン:コヴェナント』|感想【ネタバレ注意!】

2017年10月3日火曜日

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 リドリー・スコットは『ブレードランナー』『ブラック・レイン』『グラディエーター』『ブラックホーク・ダウン』など数々の作品を作り続け、御年79歳にして未だに制作意欲が旺盛な映画監督です。最近も『プロメテウス』『悪の法則』『エクソダス:神と王』『オデッセイ』とジャンルもカラーも違う映画を撮っています。

映画『エイリアン:コヴェナント』TVCM(オリジン編 30秒)/20世紀スタジオ公式Ch/YouTube

ダニエルズ

彼女が所謂「エイリアン」シリーズ伝統の女性主人公で、1作目のリプリー、2作目のショウに続くヒロインな訳ですが、かなりリプリーに寄せた造詣となっている気がします。いや、ショウも前作では大概どえらいことをやらかしていますが。だいたいリドリーはベイよりも画面的に主人公をじわじわ追い詰めるのが好きなようでガチのサディストじゃないかと思う事があります。

今回のダニエルズも目の前で愛する夫が死ぬ様も見せつけられ、信頼しているクルーもどんどん減らされ、挙句の果てにはということで、どんだけ苦労をしょいこませるんだよと。そういえばキャメロンの2ではリプリーは女性ヒーローとしての地位を確立しましたが、ショウはこの作品ではキーパーソンでありながら既にいない存在ですし、3はどうなるのか?リドリーの年齢を考えると続編を早くにとりかかっていただきたいところです。

ALIEN・SPACE・ODYSSEY

この『エイリアン:コヴェナント』を観て『プロメテウス』を観た時に思ったことを思い出しました。リドリー・スコットは『エイリアン』で『2001年宇宙の旅』をやりたいんじゃないかと。リドリー・スコットは『エイリアン』撮影当時、SFは『2001年宇宙の旅』にしか関心が無かったという風な話も聞きます。(1)

これが風聞でしかないとしても、リドリーが『2001年宇宙の旅』を意識しているのはエンジニアが生物の進化に関わり地球の生き物を創造したということと、彼らが己の遺伝子をばらけさせてこの星へ干渉する際につかった物体が黒い液体ということからも明らかです。(2001年のモノリスは漆黒の石板でした)

またコヴェナントの形状も前方にコクピットがあり細長く後部にエンジンのある『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号と構成が似ています。ディスカバリーは発見。コヴェナントは契約という意味がありますが船名にも謎かけがあるとすればここも意識していると言ってもいいのではないでしょうか。。

本人は『エイリアン』をA級のキャストとAA級のデザインのB級映画と言ってはばかりませんが(2)エイリアンの起源を描くにあたり、自らのヒット作を、進化させて自らのスペース・オデッセイを作ろうとしているのではないかという気がします。今回はその2幕目と考えれば非常に腑に落ちるところばかりなのです。例えばラストシーンのデヴィットがワーグナーをかけてコヴェナントのカーゴエリアに堂々と入っていくシーンや、オープニングの誕生シーンなど。3幕劇としてこのオデッセイを描き切るつもりなのではないかと(当然はみ出る事も予想は出来ますが)そう考えるとリドリーの『火星の人』が邦題『オデッセイ』ってつけられたのは非常にシンクロニシティを感じる出来事になりそうなんですがさて、どうでしょうか。

疑問も実はあってショウとデヴィッドの顛末もまだ語り切られてない気がします。ただしここは多くを語らずそのまま流しそうな気もします。それとあの星がエンジニアの母星という説明で、エンジニアの宇宙船とドッキングする浮遊する大型のゲートのようなシステムや街をみると納得しそうですが…実は入植地の一つとも考えられるんですよね。真の母星ではないと。ただそこもメインではないのでちゃんと語られることは無いですが3幕目のデウスエクスマキナとしてエンジニアが再登場する余地はあるかもしれないなと見ています。

今回は2幕目というのは誰の目にも明らかなので3幕目で真の結末が語られると思います。デヴィッドの長い航海の最後に何が待ち受けているのか?今はただその時を待ちたいと思います。

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