今回は『ワンダーウーマン』に出てきた武器類をちょっと解説してみます。「拳銃は最後の武器」シリーズです(笑)ワンダーウーマンことダイアナの故郷、セミッシラには全知全能の神ゼウスから与えられた軍神アレスを倒せる唯一の武器があります。それがゴッドキラーという剣です。ダイアナはセミッシラから世界を巻き込む戦い(第1次世界大戦)の裏にアレスの影を感じ取りゴッドキラーを手にしてセミッシラを後にします。とは言え、スティーブたち人間は超絶な身体能力があるわけでもなく、基本的には普通の武器を使います。それは後述します。
神殺し、ゴッドキラー
ちなみに劇中、ダイアナの使う武器はゴッドキラーを含め3つあります。
- 『真実の投げ縄』これに捕らわれた者は嘘がつけない真実のみを語る。投擲し相手を振り回したり、鞭のように使う事も出来る。
- 『銀の腕輪』腕輪というよりはガントレット(籠手)で両腕にはめている。銃弾をはじき返しクロスさせると衝撃波を発することが出来る。
- 『ゴッドキラー』軍神アレスを倒せる唯一の武器。セミッシラに保管されていた剣。
これにセミッシラのアマゾネスが使っていた楯(銃弾を通さないゼウスの加護のある楯)を使います。ダイアナはそれをもってアレスの影を追って戦場を駆け巡る事になります。当然ゴッドキラーは最強の武器ですが、実は最大の武器はそれだけではありません。…それは劇中で明らかになります。
第一次世界大戦
ダイアナが軍神アレスを止めるために戦場へ向かう欧州ではそれまでの戦争と武器も方法も劇的に変化していました。騎兵による突撃、剣と槍の時代から火砲と銃に、そしてさらに兵器は発展していきます。特に当時の西部戦線では各国の新兵器が投入されました。スティーブが阻止しようとしたドクター・ポイズンの開発したマスタードガスもその一つで毒ガスが最初に使われた戦争はこの第一次世界大戦です。この事により戦術は劇的に変化を見せましたが、同時に強力すぎる兵器の使用を禁止する条約などを結ぶなど人類は自ら作った兵器の威力に恐怖したのです。
装甲車
他にも機関銃、戦車、飛行機など新兵器が続々と投入されました。劇中でも西部戦線に配備された戦車がちらりと映っていましたが、ダイアナにものの見事に吹き飛ばされたりしていましたね。自動車に防弾版で銃手を守り旋回できる回転式銃座をつけた装甲車もでていました。これはダイアナ持ち上げられて放り投げられていました😅見たところBüssingA5Pか、Ehrhardt E-V/4のように見えます。どちらも第一次世界大戦時のドイツの装甲車です。
ソース|Wikipedia|ドイツ|BüssingA5P|Ehrhardt E-V/4
どちらかといえば車輪がむきだしだったように思うのでEhrhardt E-V/4ではないかと思っています。(ここらへんは詳しい方にご教授願いたいところですね。)
[[File:Ehrhardt 1.jpg|thumb|Ehrhardt 1|alt=Ehrhardt 1.jpg]Ehrhardt E-V/4 |
飛行機
飛行機も第一次世界大戦で飛躍的な発展を遂げたものの一つとして挙げられます。ライト兄弟も当然、これは戦場で役に立つと思い軍に売り込んだという事は知られている話です。軍もまた動力付きで空を飛ぶ機械を欲していました。『ワンダーウーマン』ではスティーブがトルコのドイツの秘密基地に到着した時に、複葉機フォッカー D.VIIが基地の前の簡易飛行場に駐機してありました。フォッカーは第一次世界大戦中のドイツの飛行機メーカーで撃墜王であるリヒトホーフェンが搭乗した三葉機、フォッカー Dr.Iが有名です。スティーブが基地から逃亡する時に分捕った機体は単葉機のフォッカーE.III。プロペラの後ろにある機銃は同調装置が組み込まれプロペラを傷つけることなく発射できる優れもので、当時敵対していた連合軍から恐れられた戦闘機でした。
[[File:Fokker EIII 210-16.jpg|thumb|Fokker E.III(1916年、ウィルトシャー)]] ソース|Wikipedia|フォッカーE.III |
ラストに出てきた大型機はちょっと映画オリジナルな判別がつきかねる形状ですが、第一次世界大戦中にユンカースが製作したG.38っぽい気がします。あくまで気がするだけで別の機体かもしれませんが。ちなみにG.38は旅客機/輸送機として製作されたものの日本では爆撃機として九二式重爆撃機として6機がライセンス生産された飛行機でもあります。
[[File:Bundesarchiv Bild 146-1980-085-32, Flugzeuge Junkers G-38.jpg|thumb |D-2500機と飛行中のD-AZUR機(1933年)|alt=D-2500機と飛行中のD-AZUR機(1933年)]] ソース|Wikipedia|ユンカースG.38 |
他にもドイツには巨人機ツエッペリン・シュターケンという複葉の大型機体があり航空機に関しては他国よりほんの少し先をいってた感があります。
小火器
スティーブがダイアナを連れてロンドンに戻った時、ドイツの諜報員に囲まれた時に諜報員が手にしていたのは古めかしいリボルバー(回転式拳銃)でした。それまでの映画でめったにお目にかからない銃なのでなんだろうと調べてみると、帝政ドイツ軍でモーゼルやルガーの前に使用されていた正式拳銃、ライヒスリボルバーという拳銃というのが分かりました。
[[File:Germany revolver, Model 1879 - National World War I Museum - Kansas City, MO - DSC07464.JPG|thumb|Germany revolver, Model 1879 - National World War I Museum - Kansas City, MO - DSC07464|alt=Germany revolver, Model 1879 - National World War I Museum - Kansas City, MO - DSC07464.JPG]]ソース|Wikipedia|ライヒスリボルバー |
頑丈なため第二次世界大戦でも使用例があるとありますが、ロシアのナガンにもにたシルエットを持つ無骨な拳銃でした。また如何にも旧式なシルエットで装弾するのも今どきのリボルバーのようにシリンダーをサイドにスイングや中折れという機構は無く空薬莢を押し出すという原始的なものです。それでも.44口径に相当する10mm口径弾は強力であったことは想像に難くありません。それを至近距離で跳ね返すダイアナの腕輪もたいしたものですが(笑)もっとも西部戦線では小銃弾も跳ね返していましたね。
トレンチガン
最後に紹介するのは大詰めにルーデンドルフの秘密基地に乗り込む際、スティーブのもっていたショットガンです。塹壕での戦いが主な戦闘であった第1次世界大戦で、散弾銃は有効な武器と認められ、採用された正式な軍用散弾銃でした。ウィンチェスターM1897は第一次世界大戦前にアメリカで製造販売された散弾銃で現在ライアット(暴徒鎮圧)ショットガンでもお馴染みのポンプアクション(西部警察の大門部長刑事が使用している散弾銃も同じポンプアクションです。)です。
このショットガンの開発は銃器の天才ブローニングの手によるものでした。彼が設計したポンプアクションリピーターは完成度が高く今でもその基本設計は使われ続けているほどです。アメリカが第一次世界大戦に参戦し、塹壕の中での銃撃戦で速射に優れ圧倒的火力で制圧できる武装として導入されたこのM1897は他のバージョンとは違い短めの銃身に連射による熱を放熱できる放熱板。そして銃身下部とチューブマガジンの前方に銃剣を装備できるように改良が施されトレンチガンという名称で使用されました。
[[File:97 and Norinco.JPG|thumb| オリジナルのM1897トレンチガン(上)とそのコピー品ノリンコM97Wライオットガン(下)]] ソース|Wikipedia|ウィンチェスターM1897 |
最後に
ミリオタ的にも『ワンダーウーマン』はけっこう見どころが多くて、スティーブの愉快な仲間たち、サミーアはリー・エンフィールド小銃に、ネイティブアメリカンのチーフはウィンチェスターM1866イエローボーイという渋いチョイスをしていました。チャーリーはM1917エンフィールドにスコープを装備したものを所持。それぞれのキャラに合わせたチョイスです。西部戦線ではドイツ軍がマキシム重機関銃にモーゼルGew98(第二次世界大戦のドイツの主力小銃Kar98Kの原型)などなど。再度鑑賞なされるならそういったところに目を凝らしてみるのも面白いかもしれませんよ。
参考資料|Internet movie Firearms Database|Wonder Woman(2017)
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