疾走!|『ベイビー・ドライバー』|感想【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

疾走!|『ベイビー・ドライバー』|感想【ネタバレ注意!】

2017年8月30日水曜日

car movie

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 『ベイビー・ドライバー』観ました。ともかくファーストインプレッションを書いてみたいと思いますが、これ本当にエドガー・ライト監督の今までの作品の蓄積もあってこそで、短くカットをテンポよく音も(効果音、BGM)も併せて繋いでいくやり方はコルネット3部作でも多用されていましたが、今回はさらに進化させた形を見せてきました。主人公が聴いている音楽をBGMとして使う、そして音楽と出来事をシンクロさせる。これがものすごいドライブ感を産みだしているのです。

動画はYouTube|公式SonyPicturesJapanチャンネルより

彼の名は「ベイビー」/あらすじ

 銀行の前に止まった赤いスバル・インプレッサ。中には緊張の面持ちの黒ずくめの3人の男女とスタジャンを着た幼なさが残る青年。青年はイヤホンから音楽を聴いている。男女は3人はマスクをして銀行の押し入り、大金を掴んで車に飛び乗ります。と、同時にアクセルを踏み込み急発進する青年。驚くべきドライビングテクニックで細い路地、交差点、高速道路のジャンクションを巧みに使い追っ手をまきました。彼の名前はベイビー。プランナー(計画屋)のドクの子飼いの逃がし屋です。どんな状況でもその卓越したテクニックで警察の追跡を振り切ってきました。

 幼い頃に両親が目の前で交通事故で死亡。自らもその時の事故の後遺症で耳鳴りが。その耳鳴りを消すために普段から音楽を聴いているのですが、好きな音楽を聴いている時は恐ろしいまでの集中力が発揮され超絶のドライビングが出来るという才能をもっていました。ドクの所有する麻薬を隠した自動車を盗んだためにその損害をそのテクニックで返すように言われて彼のもとで働くようになりました。今回、バディ、ダーリンのカップル、と乱暴者のグリフと組んだ仕事で、ドクへの負債は後1回までになりました。

彼女の名はデボラ

 仕事の後は、家に帰ってみんなの声を録音したテープとお気に入りの音楽をつなげてスペシャルミックスのテープをつくりながら里親で耳が聞こえず足が悪くて車椅子生活のジョーと2人暮らし。ベイビーの裏の仕事を心配するジョーにあと1回で終わるというベイビー。何時ものいきつけのダイナー、ボーの店で歌を口ずさむ女の子に合出会うベイビー。彼女の声を録音したことがきっかけで急速に接近する2人。しかしその前に最後の仕事を片付けないといけないベイビー。ドクの呼び出しに打ち合わせ場所に向かうと今度のチームが待っていました。またまた根っからの犯罪者で凶暴そうなバッツ。ちょっとトロそうなエディと全身タトゥーのアジア人JD。彼らと銀行からの現金輸送車を襲う仕事を命じられるベイビー。運悪く非番の海兵隊員と出くわすなどトラブルが起こりつつもなんとかその仕事をやり遂げます。


 ドクに負債は完済したと告げられこれで仕事は終わりとなったベイビーはジョーが見つけたピザ屋の配達口で働き始めデボラとも仲を深めていきます。ある日デボラを誘って高級レストランで食事するベイビー。そこにドクが現れ会計を払ってくれました。デボラを置いてドクを問い詰めるベイビー。お前は俺の幸運のお守りだ。それにちんけな仕事でどれだけ稼げる?お前には才能があると囁くドク。ベイビーは自分は自由ではなかったと打ちのめされますが、ドクの一世一代の大仕事、合衆国郵便局への強盗を最後のチャンスとしてデボラとともに生きる事を決心します。果たしてベイビーの目論見は?そしてこの大仕事に集められた狂暴なバッツ、イカれたカップル強盗のバディとダーリン。そしてドクの運命が交錯するその瞬間に向かってそれぞれがアクセルを踏み込んでいきます。果たしてどういう運命が待ち受けているのか?

『HEAT』『トゥルー・ロマンス』with『ザ・ドライバー』

 tonbori堂は『ベイビー・ドライバー』の印象を聞かれたらこう答えます。『HEAT』『トゥルー・ロマンス』with『ザ・ドライバー』かなと。『HEAT』はマイケル・マン監督の映画でプロの強盗犯とそれを追う警察官の息詰まる攻防戦というあらすじの映画ですが、そういう攻防戦というより、男たちの生き様を描いた映画です。『ベイビー・ドライバー』とはその部分が似通っています。犯罪者なんだけど己を律してルールを設ける者。根っからの犯罪者などそういった描写は多分『HEAT』からではないかなと推察します。


 『トゥルー・ロマンス』は若い男女のトラブルつづきの逃避行で、狂暴なラブロマンスです。でも完全にこれを範にとったわけじゃなくて、『ベイビー・ドライバー』のストーリーラインだと、皆がどうしても『トゥルー・ロマンス』っぽいと思うんですが…これ以上は【ネタバレ】と書いてても書けないんで本編を観て確認してください。別の映画も思い出したんだけど(そのタイトルは劇中、台詞ででてきます)あまりにもベタなのでやめました。


 『ザ・ドライバー』は同じような寡黙なドライバーの話ですがあちらは完全にストレンジャーでアウトローなプロなのでドクみたいなプロとなら互いを信用しないけど長く続いたんじゃないでしょうかね。あと同じウォルター・ヒルの『ストリート・オブ・ファイヤー』な感じもあります。どこが?って言われそうだけど、音楽を画面にシンクロさせようとしたのは多分この映画からだと思っています。


 って、いや『ラ・ラ・ランド』観てないんで正直分かんないですがこの辺りだと思うんですよね。『ザ・ドライバー』についてはエドガー本人もそうだと語っているわけだし。

エドガー・ライト監督が告白、あの巨匠が「ベイビー・ドライバー」を見にこなかった理由とは? : 映画ニュース - 映画.com

 あとベン・アフレックの『ザ・タウン』も『HEAT』オマージュあふれた強盗映画でしたけど『ベイビー・ドライバー』は『HEAT』への変奏曲にもなってて『ダークナイト』より分かりやすいしすごく腑に落ちるオチになってるのもいいですね。

キャストについての余談。

 ジョン・バーンサルが出オチじゃないけどそれに近い感じでした、どこに出てるかは…まあ予告編にも出てるけど本編観たら分かるんで割愛します(ヲイ!)アンセル・エルゴート。顔つきがtonbori堂の大学の同期に似てるんですよ。観てるときはどっかでこの顔見たなと思ってたんですが帰宅してから、あーあいつやんって(苦笑)いや全然本編とは関係ないんですがジョー、デボラ、そしてドクたちとの見せる表情が違ってて良かったですね。


 ケヴィン・スペイシーと言えばカイザーソゼ!いやまあ今回そこまでのアレじゃないけど本人すごく楽しんでやってるのが伝わってきましたね。手抜きじゃないけどいろいろ余裕のある芝居っぷりで。あっさりと人を殺すけど、情もある、でもビジネスライクというまさにTHE犯罪者っていう役を小気味よく演じていました。

 ジョン・ハム。まあぶっちゃけ『マッドメン』の人なんだけど髭を生やすとクライヴ・オーウェン味あります。あとジェフリー・ディーン・モーガンにもちょっと似てます。チョイ悪オヤジ顔というんでしょうか。今回髭生やしてたからっていうのも大きいんでしょうけど。ジョン・ハムは『ザ・タウン』ではFBI役で出演して今回は強盗犯とかこのキャスト狙ってた?と思ったのはtonbori堂だけでしょうか。

 ジェイミー・フォックスはキレる男バッツ。すぐキレるけど知恵も回る感じをこれまたうまい感じで。ジェイミー、最近敵役が多いですよね。上手い人ほど敵役をしたがるっていいますけれどね(笑)短気で思慮無しだけど狡猾で生まれついての犯罪者っていうのを醸しだしていました。

 デボラを演じたリリ・ジェームズは『ダウントンアビー』のシーズン4にメインキャストとして出演していたそうで…観て無かったので全然知りませんでしたが、こういうお話にぴったりなキャラクターをしっかりと演じていて観ていて気持ちが良かったですねえ。わめき過ぎない、デレデレしない感じで。いやデレデレはしてましたけどね(笑)

 ダーリン役のエイザ・ゴンザレスはロバート・ロドリゲス組の最近のミューズらしく、キャメロンからロドリゲスにスイッチした『銃夢』の実写映画『Alita:BattleAngel』に出演が決まっているとか。今後の活躍にも期待できる女優さんです。

最後に

 エドガー・ライトのフィルモグラフィーでもこの『ベイビー・ドライバー』は多分最高ランクの映画だと思います。(いや『ホットファズ』とか他のも好きですよ)カーチェイスと強盗(犯罪)映画とラブロマンスと青春とこんだけ要素をぶっこんでるのにきっちりと着地しているのは脱帽でしかありませんでした。時間があればぜひ劇場でご覧になって欲しい作品です。

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※参考映画もAmazonのリンクを貼っておきますね。

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