「インファナル・アフェアⅢ(無間道3)終極無間」全ての謎が明かされ、Ⅰでのラウ・キンミンのその後が描かれた今作。物語の終末を迎えるのに充分な出来だった。
インファナル・アフェアⅢ終極無間/ロゴはイメージです |
全てが無間道に閉じる終極へ
最近のトリロジーものとしては「ロード・オブ・ザ・リング」のように拍手をもって迎えられるか?それとも「マトリックストリロジー」のようにこきおろされるのか?というのがどっちかなのだがこの「インファナル・アフェア」はⅠの撮影前にはⅢの構想がありⅡは撮影時に産まれたと言う。輪廻や因果応報という仏教的な死生観が一本の筋を通しているこの映画。「インファナル・アフェア」を観た人は是非観たほうがいい。その上でⅡを観なかったという人はⅡをDVDで観てから観て欲しい。全てがこの終極に至る無間道へ繋がっているのだから。
あらすじ
ヤン(トニー・レオン)の殉職から10ヶ月、一時的に庶務課へ回されたラウ(アンディ・ラウ)はあの日自分が射殺したもう一人の潜入マフィア、ラムの言葉により残りの潜入マフィアが気にかかっていた。「潜入したのは自分を含め5名」と。この半年自分の警察官の立場を危うくする彼らの存在を始末してきたラウ。そんなある日保安部のヨン警視(レオン・ライ)のオフィスで暗黒街での潜入捜査を行ってきたチャン巡査部長が自殺する。その現場に居合わせたラウはヨンが潜入では?と疑念を抱く。庶務から内務調査課に復帰したラウは早速ヨンを調べることに。
自殺したチャンのデスクには死んだサム(エリック・ツァン)との会話テープが残されていた。そしてチャンと接触していた中国本土の大物シェン(チェン・ダオミン)そのシェンとヨンが一緒に写っている写真が残されていた。ヨンに対する疑惑がますます膨らむラウは一人で保安部に監視カメラを仕掛けヨンを監視する。一方生前ヤンを診ていたリー医師(ケリー・チャン)にも接近。彼女のPCからヤンのカルテを盗みだす。そしてヤンとリーの過去を垣間見それを自分に重ね合わせる。マフィアに潜入した警察官、警察に潜入したマフィア。善人だった男と善人になろうとした男。虚実がない交ぜになっていくその時、ラウは一体なにを掴もうとしたのか?
『おれは警察官だ』
物語は殉職する前のヤンの行動と現在のラウの行動が描かれており少なくとも1作目『インファナル・アフェア』は観てから観て欲しい。そういう意味では一本の映画としては失格かもしれない。しかし男達の矜持や誇りというものが描かれたこのシリーズ。この映画もその部分はしっかり描き出されている。
特にラウ。彼の日の当たる場所へ出たいともがいた末の終極がここで示されるという意味ではきれいにトリロジーとして完結していると思う。だからこそ1本の映画としては酷くバランスを崩しているがラウの地獄(無間道)めぐりの最終局面としては納得できるつくりなのだ。
事件後、ほとぼりを冷ますために庶務へ一時配属されたときから徐々に壊れていくラウ。『インファナル・アフェア』で妻のマリーが真実を知り家庭も崩壊。彼に残されたものは警官である自分。善なる者としての自分。そして時系列がヤンのその死までの行動をトレースし徐々にだぶっていく。その部分が2人の心情を描き出す。潜入捜査官だったヤンは警察官で、ラウはやはり組織のモグラ、潜入でしかない。善き人であろうとしても過去に犯したことがずっと追ってくる。まさに出口のない無間道に落ち込んだラウの無間道をもって第3作目の幕が閉じるというのがこの作品の本懐なのではないだろうか。
新キャストについて
今回新しく登場した保安部のヨン警視のレオン・ライ(黎明)不気味な微笑をたたえたエリートを演じており、その佇まいといい、まさに死んだヤンが取り憑いた感があるが、ヤンとの友情が差し込まれるシーンが彼とのつながりの深さを感じさせる。そして今作で推したいのはシェンを演じたチェン・ダオミン(陳道明)彼の演じる本土の大物シェンがこれまた良かった。とくに頭をこする仕草。これが非常に心に残る。
最後に
ここまでしっかりとトリロジーを結実させたアンドリュー・ラウ(劉偉強)とアラン・マック(麥兆輝)には拍手そして2人の主演俳優トニー・レオン(梁朝偉)とアンディ・ラウ(劉徳華)にも贈りたい。無間道『インファナル・アフェア』があそこまでしっかりとつくられていたからこの作品は成立なしえていると思うし、だからこそラウの無間道の深さが迫ってくるのだから。
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※エキサイトブログに掲載したエントリを加筆修正しました。
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