『真に美しい人形があるなら それは魂の無い生身の人間のことだ』/劇中の台詞
ここ数年(当時2004年)で観たアニメーション映画の中では非常に濃密な画面設計で、しかも人によっては難解であると思われる作品だ。
『イノセンス』|監督:押井守/プロダクションI.G/ロゴはイメージです |
かなり監督の中の心の澱のようなダークな部分を引き出していると思われるので観る人によっては拒否反応をしめすかもしれない。何故なら人形をモチーフにしてこれほどまでに人との関わりとフェチに通ずる唯物観を提示しているのだから。冒頭のバトーと対峙する暴走アンドロイド「ハダリ」の自壊シーンからハラウェイの語る人形について語るシークェンスなどはそれが如実に現れている。バトーとバセットハウンドとのシーンはまるで押井監督の「アヴァロン」を彷彿させるが主人公がバトーなだけにそれが監督自身が投射されているとは考えすぎか?
ファーストインプレッション
『ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけではない』/劇中の台詞より
監督自身は女性を主人公に据えたいとどこかで語っていた気がするが、前作「GOSHTINTHESHELL」で人形使いと融合しマトリックスの裂け目に消え去り電脳の海へ漂う草薙を主人公に据えることは出来ないし、いやしてもいいのだろうが、あえてバトーをメインに持ってきたのは監督のたまりに溜まった虚を吐き出すようなものだったのかもしれない。そこで「Followme」を主題歌に持ってきた鈴木Pには恐れ入るがキャストを実写から引っ張るのはいかがなものか?ってこれは別の作品の話か(笑)
これについてはパンフに押井サンのちょっといい話が載っているのでもし読めるなら読んで欲しいものである。声優さんをつかうにはちゃんとした訳がある。もちろん宮さんや鈴Pが声優でない人をつかうにも理由があるけれど(ちなみにジブリの宮崎駿作品でも舞台経験者は上手い芝居をされる。)それともにこれだけの映像を作りこんだのも驚嘆に値するがあまりにも情報量が多すぎて頭がついていかなかった。だがこれを実写ですると引く人は多いと思う。
それは「ブレードランナー」よりも業が深いからであちらはレプリカントという人が作りし写し身だがこれは本当のボディだけでゴーストが無いのだから。だがそれさえもなにかが宿っている。正確にいうと込められたというべきか。だからこそこの作品では狂言回しにあたるトグサが必要なわけで実はバトーとトグサはコインの表裏でもあるという2層構造になっていると思う。しかしつくづく信者と言われる熱狂的ファンがつく監督さんだなと思った。その込められたものに対し監督は今もバセットに餌をやりながら自問自答しているのかもしれない。あらゆる意味で濃く深い映画。
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元記事と改稿掲載
2004.3.21別館ブログにアップ。 20180803タイトルを改題。『イノセンス』ファーストインプレッションとしました。文章には手を入れていません。
20190303:少しだけ見出しとタイトル改題と文章を変更しました。
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