この映画に関しては冷静に語れるかどうか?自信が無い。それぐらい映画を観て久々に感動してしまった。私はというと単純明快勧善懲悪、あまり考えない単純なお話が好きなんだけど、この映画はちょっと違う。だけど、深く情感の厚い色彩に彩られた素晴らしい映画だった。
『HERO』/監督チャン・イーモウ/出演ジェット・リー/トニー・レオン
武侠の精髄とは、誰もなしえぬ事をする事と知る。
正直チャン・イーモウ監督の「紅いコーリャン」とか「あの子をさがして」とか「初恋の来た道」とかは観ていないし、彼の作品にもさして興味が無かった。ただCMでのビジュアル。無数の矢がジェット・リー目掛けて飛び掛ってくる。そこだけを見て「この後一体どうなるんだ?」と思って観にいったのだ。
結論から言うとこれは予告編のマジックの一つだった。しかし、もしこの映画がダメだったら無茶苦茶怒っていたかもしれない。だがオープニングから異様な雰囲気が漂っていた。膨大なエキストラを駆使し撮ったと思われる城でのシーンから謁見の間でのシークェンスからもう既にイーモウの魔術にかかったように画面に見入ってしまった。最初の刺客長空と無名との対決シーンの語りから最後まで、この映画は語りがキーポイントになっている。それを際だたさせているのが映画雑誌でも語られている色。原色の赤、緑、青を場面ごとに使い分けシーンをより印象付けそれぞれのキャラクター達の心情をも表している。もちろんクンフーは名手ジェットが演じているので心配なのだがそれ以外のトニー・レオンやマギーも素晴らしい動きを魅せる。特にマギーはもっとちゃんとトレーニングしてから撮影に望みたかったとインタビューに答えていたがそれにしてもきれのいい動きをしていた。
ツィイーとの対決シーンはその動きといい赤い色が真っ赤に染まる瞬間(これもまたこの映画屈指の名シーン)まで息をもつかせない。イーモウ監督のほかの作品はどうかはしらないがこれは間違いなく名作である。それぞれの登場人物のとる行動がまさに胸を熱くさせてくれるのだ。
武士道と武狭は似ている
この映画は「オレがやらねば、誰がやる!」というそのタイトルどおりのヒロイズム全開な作品で、まさに武侠の精神を体現した映画だと思う。そしてそれは武士道にも通じる。そりゃあ次々と同じ事が別の視点から語られるってのは『羅生門』じゃね?と言う人もいるだろうけど、個人的にはラストシーンも余韻を残す感動の一本(ってほめすぎか?)だったと言っておこう。
但し勧善懲悪とかが好きな人とか派手なワイヤワークが好きな人には物足りないかもしれない。それと登場人物に思い入れれない人もいるかもしれない。そうこの最後を見て私は感動したがそうでない人もいるかもしれない。ただこの映画はこの夏結構スカスカだった頭をひさびさに満たしてくれた映画として私の記憶に長く残ることだろう。
Amazon.co.jp/英雄 ~HERO~ Blu-ray元記事を改稿掲載
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