やはり深作版は越えられないのか|『魔界転生』(2003公開|「魔界転生」製作委員会)|tonbori堂映画語り-Web-tonbori堂アネックス

やはり深作版は越えられないのか|『魔界転生』(2003公開|「魔界転生」製作委員会)|tonbori堂映画語り

2011年6月2日木曜日

book movie 時代劇

X f B! P L
「十兵衛、この世に争いがある限り、必ず還ってくるぞ。フハハハハハ!」
『魔界転生』(1981)深作欣二監督版/天草四郎の台詞より

 いや22年前に深作監督によって撮られた「魔界転生」が監督の逝去された年に公開されたのも、因縁めいている。そういえばあの深作版の最後に天草四郎がこういった、「また必ず還ってくるぞ」と。

魔界転生/ロゴはイメージです
魔界転生/ロゴはイメージです

 それを考えるとこの再映画化は必然だったのかも知れないが、前回の「魔界転生」が甦った天草四郎が、自ら天下に騒乱を起こし島原の乱を再現させ徳川四代将軍を転生させた細川ガラシャ夫人に籠絡させ江戸城を炎上させるといった作りだったに対し、今回は徳川御三家の一つ紀州藩の藩主頼宣を使い天下を混乱させようとする原作に近くなった作りに変化している。そういった違いはあるにせよ目玉は剣豪同士の戦いである事には違いない。

スーパー剣豪対決映画として

殺陣は?

 正直なところ各チャンバラシーンのウチVS武蔵戦とVS但馬守戦だけが及第点。惜しいのは長塚さんの立ち回り。悪くはなかったけど十兵衛vs武蔵には迫力不足。ここは時代劇の血脈の人を使って欲しかった。長塚さんは田宮坊太郎とかの出番を作ってそこでやるとか、ともかく武蔵は強烈且つ、技巧が無いと。


 嘉葎雄さんは流石萬屋の血を引いていらっしゃるっていう具合。旧作の若山富三郎さんとは違うけど同じ流れだなと思わす殺陣。そこは時代劇を知っている人の呼吸を感じられる。胤舜戦は古田さん熱演なのに引きの映像はダメでしょう(笑)あれは寄っていかないと!古田さんは舞台で鍛えているのに勿体無い。雅也アニキの荒木又右衛門も出番短すぎ。というか1時間46分かなりダイジェストって感じで駆け足な気が?いたずらに長いのもかなわないが。どうにももっさり感が抜けきらないしスペクタクル感とギラついたものが感じられない。武蔵の出現は結構唐突でそれを匂わす発言はあるにせよ長塚さんをつかっているならそこらへんもうすこしなんとかして欲しいと思う。全体的にはTVの尺割だな?と思ったけどもしかしてこれって日テレが時間決めてるとしたらいかんぞう(怒)


 そして物語のキーマン窪塚四郎?どうなのよ??どうにも雰囲気重視で軽い。と文で書くと全否定みたいだけど窪塚くんにかんしてはちょっと起用が違うんじゃない?もしかして勘違い?と思うけどなぁ・・・まじ難しいよ四郎は・・・。

柳生十兵衛映画として

 柳生十兵衛に関しては佐藤浩市頑張っていたんではと思う?千葉真一の影響はでかいけど千葉真一だけの十兵衛じゃないと思う人なんで。そういえば旧作で武蔵役の緒方拳とガチンコ勝負の「激突」でのチャンバラは凄かったけど話はへろへろだったもんな。ただくりかえしになるが佐藤版柳生十兵衛は悪くない、ホンの問題じゃないかな。あと演出のパワー不足。


 ちなみに私の時代劇ベストバウトは旧作「魔界転生」の十兵衛vs宗矩でした。まあそれはかなり頑張ってたけど総合的に言うとかなりオヨヨな出来としか言うしかない。折角風太郎先生ラインに沿って女性要素を増やしているにも関わらず!女優陣はけっこう趣味がいい。それだけにもっと緊張感を持たせる演出が欲しかった。それだけにガッカリ度も高し(爆)

 いやしようとしているのが空回り。流れがうまくないんだな、これが。もっとも旧態依然とした時代劇もどうかと思うけど古きものから新しいものへうまくいれかえていかなくちゃ。キャッチとトレーラーだけでは客はこないよ、いやマジで。ただ周りを企んでのせるってのもあるけどさぁ…。いや時代劇の中でも魔界転生はやっぱり特別だから、やはりここは決定版をどこかつくってくれないかなあ、おどろおどろしく妖しく、凄惨に美しく、そして十三人の刺客も真っ青な殺陣。三池サンにお願いしたい。

蛇足として

 深作版は完全に原作から逸脱している(っていうかほぼオリジナル展開)けど異様な迫力に満ちている。傑作。そして原作はさらに凄い。妖しく凄惨って上に書いたことがそのまま展開される。伝奇モノが好き、忍者モノが好き、剣豪モノが好きなら超オススメです。

Amazon.co.jp: 魔界転生(2003年)を観る | Prime Video 

Amazon.co.jp: 魔界転生(1981年)を観る | Prime Video 

ファイブスター物語/F.S.S第17巻絶賛発売中

ファイブスター物語/F.S.S第17巻絶賛発売中
永野護著/KADOKAWA刊月刊ニュータイプ連載『ファイブスター物語/F.S.S』第17巻絶賛発売中(リンクはAmazon)

このブログを検索

アーカイブ

QooQ