「ランボー」の合わせ鏡。｜『ハンテッド』（2003公開｜米）｜tonbori堂映画語り

　【師匠対最強の弟子】なんていうとどっかの漫画のようだが、こちらはどちらかというと映画『ランボー』よりな気がする。この作品を観たのはトミー・リーファンとまではいかないが彼の出ている映画でアクション系はよくチェックしているからだったからなんだけど、もちろんそれは「逃亡者」のサム・ジェラードがハリソンくん演じるキンブルより目立っていたしなによりカッコイイからってのが大きい(笑)

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アクション渋オヤジ、トミー・リー・ジョーンズ

　ジェラードはキャラが立ったのでスピンオフ「追跡者」が作られたが、ちょっとパワーダウン。話が無難な方に行こうとしているしウェズリーくんの描写かトミー・リーの描写かどちらかに絞れば良かったのにと悔やまれる出来だった。なんせウェズリーくんのワンマン映画「ブレイド」とか「パッセンジャー５７」は彼の独壇場で面白かったから。とこれは余談です（笑）しかしだ「スペースカウボーイ」でも魅せたオヤジ魂は健在でこーゆう偏屈で頑固だが切れる男をさせると途端に輝く人である。

　一方トミー・リーとがっぷり組んだオスカー俳優（つーてもトミー・リーもそうなんだけど）ベニチオ。正直「ユージュアル・サスペクツ」のときは全然ノーマークだったんだけどその後味のある演技と風貌（？）を買われた様であちこち引っ張りだこ。そして彼のキャリアはソダーバーグの「トラフィック」で決定的に高まりオスカー受賞となったんだけどパンフのインタビュー記事を読むとそれ以前にこの作品に出ることが決まっていたそうだ。

監督はあのウィリアム・フリードキン

　監督のフリードキンもオスカーを「フレンチコネクション」で受賞しているしそれだけ聞くと凄いが実は淡々と作られている小品（といっても日本だと充分大作レベルだけど）の趣がある。もっとも、正直盛り上がりに欠けるテンポで話は進むが、ドキュメントタッチが持ち味の監督だからそれに固執しているのかといえばそうでもないようだ。ただリアリズムにはこだわっている。トラッキング（野外での追跡術）というのは実際に見ていてもよく解らない技術。高度に構成されたものなのですこし説明カットを入れればと感じたがそれをやると途端に陳腐になるんだろうなぁ。こういう技術をビジュアル化するのは。足跡や擦れた跡、痕跡を分かるようにしては興ざめだし、ヒントはそこにあるという写し方ってのはまだまだ難しい。

トラッカー

　この作品伝説のトラッカー（追跡者）トム・ブラウンＪｒがテクニカルアドバイザーとして参加。主人公Ｔ．Ｊのモデルでもあるらしい。その筋では超有名人らしいけどそういった人がフリードキンとツレっていうのも凄い。ちなみに私の持っている冒険小説に出てくるトラッカーも明らかに彼をモデルにしている。その映画化はスタローンがするとかいう話があったけども、それよりはこっちの方が面白いと思うし、多分あとあとDVDになっても面白いんじゃないだろうか。あとこの映画での格闘術（マーシャル・アーツ）はカリという最近ハリウッド映画では引っ張りだこの（このフレーズ2回目だよ）格闘術が使われている。

　『キル・ビル』のルーシー・リューも学んでるらしいし、最近では日本のアクションでもぼちぼちと使われ始めている。最近ではジャニーズの岡田くんが主演しているドラマ『SP警視庁警備部警護課第四係』でフィーチャーしているとか。しかし驚くべきはベニチオである。彼の表情は語るより沢山のことを教えてくれるのだ。もっともなぜハラムがボスニアの体験でおかしくなったの説明がＯＰのシーンのみでしか語られないが、それ以前に彼は精神を病んでいたのでは？（と思わせる）顔を見せるのだ。ただ超級の俳優を揃え巨匠が撮った作品だけど地味でマニアックな印象は否めない。こういった映画の好きな人向けか。だがこの映画、実はスタローンの『ランボー』の合わせ鏡と思えばまた面白さも変わってくる。

　丁度、ハラムがランボーでＬ.Ｔがトラウトマン。訓練された兵士が戦場で心が死んでしまい、ランボーはまだそれでも戦友を探しに国に戻ったが、そういった友もなく、師匠に殺される事をある意味望んでいるハラムは、まさにランボーに近い存在。事実原作『ランボー』を読めばかなりこの作品のそういう部分がはっきりしてくる。そういう意味でもツウ向けの渋い映画だが漢ならとりあえず見とけの1作。

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