その国は今もそこにある。|tonbori堂映画語り『ノー・マンズ・ランド』

これは戦争映画というくくりでくくれないしブラックユーモアなコメディでもない。
しかも風刺映画でもない。ヒューマンドラマって言う言葉は陳腐すぎるので使いたくも無い。だけど心にトゲが刺さってしまう映画だった。

『ノー・マンズ・ランド』
画像はamazonより DVDジャケット



戦争を起こすのは人間だ。

この映画はボスニア紛争の状況下での出来事を描いている。セルビアとボスニアの戦いというのは、それまで同じ国ユーゴスラビアだったのが、第二次世界大戦の英雄で建国の父だったチトー大統領が死んだ途端に民族主義が台頭し、おまけにイスラム問題(ボスニアはイスラム教を信仰している人がいてキリスト教カトリックの人たちとの宗教対立も民族対立とともにあった。)とまさに混沌としていた中に起こった。

ヨーロッパにとっては地理的に地中海を挟んで近い隣の国の火の粉がいつかかるか解らない、そんな状況ではあるがそれを知らなくても戦争のいやな部分をこれだけしっかり描いた映画はあまりお目にかからない。

特にオープニングでボスニアの民兵達が交代のため陣地へ向かうが朝靄に巻かれ気が付けば敵陣と自陣の中間。そこで次々と撃たれるのだが風景が綺麗なのが印象に残る。そこで人の愚かさが際立つように撮られていると思う。

そして難を逃れたボスニア民兵のチキが、偵察に来たセルビア兵のニノを捕まえるくだりは、他の映画ならなんか仲良くなったりして最後撃てなくなったりしたり、結果的には助けたりしたりして片方が死んじゃったりしてヒロイックな結末を用意したりするのがセオリーだったりするが、「ノーマンズランド」は違う。

確かに二人は生まれ故郷も近いし共通の知人がいたり。死んだと思っていたチキの戦友(死体だと思われブービートラップに利用され動けない)ツェラを助けるためなんとか手だてを考えたりとかあるけど二人はやはり敵なのだ、それも悲しいくらいに。真剣に相手を殺そうとするぐらいに!

汝、隣人を愛せるか?

やはり敵対する2人は真から互いを許すことは無いのだ。それがボスニア・ヘルツェゴビナの置かれた状況を私達が解らなくても分かり合えない2人を見て解るようになっているというところがまた心に刺さる。

そして国連防護軍、彼らは紛争に介入することは許されない。しかし最前線でなにかが起こっているのは解っている。傍観者に絶えられないフランス軍の兵士がチキらのいる塹壕へ向かう。それを追うマスコミ。記者のジェーンはスクープを狙って名声を上げようとフランス軍のPKFにくっついていく。

最終的には誰もなにも出来ない。それがラストで特に色濃く出ている。今イラクでの占領下でのテロ、パレスチナでの自爆。憎しみは連鎖するが行き着く果てはこの映画のラストのようだとしたら・・・・・・・・。正直ウルトラセブンの「超兵器R-7号」の回でのモロボシダンの有名なセリフが頭をよぎる。
「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」 /ウルトラセブン第26話『超兵器R-7号』よりモロボシダンのセリフ

正直褒めるのは簡単だけど、なんだろう・・・・・心が暗くなる。だけど観ない事のほうがさらに拙い気がする。

もしあなたがまだ観ていないとしたら、ともかくDVDでもいいので是非とも観るべき1本じゃないだろうか。この映画はニュース番組でキャスターが解説する平和よりこの映画の方が数倍真実を語っていると僕は思う。



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