オーバーマインドの黄昏『ファイブスター物語第18巻/TheFiveStarStoriesVol.18』スリーブノートより-Web-tonbori堂アネックス

オーバーマインドの黄昏『ファイブスター物語第18巻/TheFiveStarStoriesVol.18』スリーブノートより

2025年3月29日土曜日

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 前回のファーストインプレッションの時にスリーブノートとか書いてて結局スルーしているような感じになっているので改めて。巻末のスリーブノートに書かれているのは完全情報共有生命体オーバーマインドであるファティマの解説と昨今の生成AIを含めた話に絡めてのテキストとDESIGNS永野護デザイン展で展示されていない初期イラスト(永野護カレンダーブック1986)から解説付きでDESIGNSでは展示されなかったもののその内容とDESIGNS展示作品を見ればまた味わい深くなる内容になっていました。ということで幾つか思った事を項目別に書き留めておこうかと思います。

『ファイブスター物語/F.S.S』第18巻/永野護著/KADOKAWA刊
『ファイブスター物語/F.S.S』第18巻/永野護著/KADOKAWA刊

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完全情報「共有」生命体/オーバーマインド

 「真に美しい人形があるとすれば、それは魂を持たない生身のことだ。」と言ったのは映画『イノセンス』で登場人物の1人が主人公の義眼の完全義体(サイボーグ)であるバトーに語った言葉ですが、度々作中でも人形とも言われるファティマは人と同じく生きているけれど魂(ゴースト)があるのか?と言われると、さてそれはどうだろうかという話にもなるかもしれません。ファティマは言わば仕組まれた生命体でありながも人の持つ能力以上を持たされた生命体、それがファティマだとすれば特にクローム・バランシェのファティマたちは彼のその飽くなきアマテラスを理解しようとする欲望の産物でありながらも馬鹿馬鹿しい制約のために本来の力を発揮できないのを嫌い一切のリミッターを外された(ダムゲートコントロールなど)クーンを産み出し、以後も突出したファティマを作り続けています。そんなクローム・バランシェのファティマが今回のバランシェファティマ同士リンケージで星団ネットワークを支配下に置いた事はまさに星団史に残る大罪以上に危険な事だった事は作中でも語られているし「我が名はレギオン、我々は大勢であるがゆえに」じゃないけれど、人が自ら創り出したものながらその存在さえも脅かす者になりかねない事態を招きそうな話は古今東西キリがありません。だからこそのクーンとか一部のファティマは別としてファティマにはダムゲートコントロールが施されているのです。その写し身たる人形を恐れるがあまりにそうしていると言ってもいいのですが一旦、それが行われてしまった以上引き返せないのが常なんではないかなと思いました。ああ、ちなみに今回AIに作者永野護(くりす)が触れていましたけどファティマの別称がAF(オートマチック・フラワーズ)となったのは人工知能がAIならばIより先のFである(ファティマにもかかっている)という事なのかな?とぼんやりと思いました(ヲイヲイ)

ファティマの誕生/情報伝達の不正確さ/ラーニング

 物語のファティマの誕生について現在のAIについての事も交えながら少し長めのテキストが掲載されていますが、情報伝達の不正確さは日々Xでのポストや動画配信でのデマ情報の流布も絡んで身につまされる話でもあるし、こうやって物語の感想を書くこともある意味不確かな情報ではあるんですよね。これは作者の考えたことではなく読者であるtonbori堂が思った(考えた)ことでもあるので。しかしテキストではもっと根本的な基本情報の不正確さについても言及されており、AIのラーニングがどこまで許されるのか?とかファティマの戸籍捏造ではないけれど、そこまで行きついた先は実はどうなんだろうかという事も含めて考えさせられる内容でした。それでもファティマの誕生がスーパーアシスタントというのはエルガイムの頃にサポートアンドロイドのマリアとして設定された頃からそうは変わっていない(物語のキャラクター設定としては当然変わっているし持たされた意味合いも変化していると思いますが)なと思わせる内容だと思います。優れた道具としてつかいこなせるかどうか?フィルモアのノイエシルチスはファティマはパートナーではあるけれど道具として使いこなす事を要求されます。他方でトリオ騎士団のプルース・ランダースは自らのファティマに結婚を申し込もうとしていました。またコーラスⅢ(サード)とウリクルの間には(サードにはエルメラという后がいますが)やはりそういう感情があったようにも見受けられます。作者自身もそこは分かっているからこその両サイドを提示している。そのように見ています。とは言えダスニカの人造騎士とファティマはさらにオーバードーズ、カスタマイズされた存在としてこの先物語をどこに導くのかは気になるところですよね。

無人兵器の憂鬱

 情報の不正確さはアニメ『ゴジラS.P(シンギュラポイント)』でも主人公の有川ユンが警察に不法侵入の疑いで捕まった時の事情聴取のシーンで自らのスマホに入れた自作AI「ユング」に応答させる描写がありました。その時ユンは人の記憶など不確かなものでそいつのいう事の方が正確といいました。ここで肝なのは「正確」という点で不確かか正確というのは判断をするときに有効な材料になるものであり、不確かな情報は判断の誤りを招きます。だからこそ「情報」というのは価値もあるし武器にもなる。ただそこで描かれているAIはあくまで道具、自分で考え行動し絶えず周りの情報を元に自らを更新をするというもので、最終的にはそれが切り札となりました(詳しくはネタバレとなるので割愛します)くりす自身も今後現実社会では無人兵器が主流になると書いていますが、tonbori堂の好きなゲーム、ACECOMBAT7はまさにその無人兵器と人が一つのテーマになっていましたね。(ACECOMBAT7は別にエントリがありますのでこちらからどうぞ>タグACECOMBAT)反応速度も人を凌駕し、人には耐えられない機動を易々とこなす、だから力技(人の反応速度を上回る騎士がAIよりも素早く計算しえるAFとコンビを組んでGTMを動かす)でやってるといい悔しいと語っていました。今後SFロボットアクションアニメが作られるとき『蒼き流星SPTレイズナー』に出てきたスカルガンナーや映画『ターミネーター』のようなスカイネットのターミネーター軍団より洗練されたものが出てくるのか。それに対抗する生身はそれこそニュータイプとなるのか?鉄人のように道具を遠隔操作するのか(鉄人だけでなくジャイアンツロボもでしたね)?ただ実際の戦場では感情のない兵器が稼働している事を考えるといろいろ複雑な思いになります。くりす自身はそれをテキストのタイトルとして「架空兵器のイメージの創作の限界」と現していましたが。

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ファイヤーウィッチ

 これは初期イメージデザインがDESIGNS永野護デザイン展で展示されているのですが(当時の日本サンライズ、現サンライズに面談時提出したもの)それについての解説があってそもそものイメージはキングクリムゾンの「帰ってきた炎の魔女」からインスパイアされたものだそうです。実際作中やカレンダーブックなどなどそのイメージは登場しています。このページを読みながらデザイン展福岡会場で見るのも良いかもしれませんね。そしてこのデザイン、よくよく見るとナ・イ・ンだけではなくモルフォにも通じてくるからあら不思議(笑)もう少し言えばアトロポスのオージェ・アルスキュルもです。そういうのを探すのも面白いのではないでしょうか。

オーバーマインドの黄昏

 バランシェファティマ数珠つなぎで他のファティマに情報が直に届かなかったのはコード配列(DNAの塩基配列ではなく素粒子結合のコード)だそうで???なんですが零・零が語った素粒子運動から生まれたFネームを考えるとまさにバランス一族は神を知ろうとして、その結果、クローム・バランシェはある意味神になったと言ってもいいかもしれません。ただあくまでバランシェは人として生を終えましたけどね。そこもこの物語が「おとぎ話」たる所以で神様が主人公なのに神の御業を人として成す者がというところがなんともへそ曲がりなくりすらしくておもしろいなと思います。それとともにだからこそまだまだ終わらないけど既に提示された終わりに向かっている物語なんだなというのが改めて分かりました。黒騎士グラードのダッカスがカーレルにZ.A.Pで倒されるその瞬間まで。(これは新規イメージでまた描いてほしいですね)。しかしくりすのキングクリムゾン好きはよく分かりましたけど、それとともにアーサー・C・クラークも大好きじゃないか疑惑が(笑)オーバーロード、ヴィーキュルの次はオーバーマインドですもの。もちろん使いどころは違うけどおとぎ話にこういうSFマインドを入れてくるのは本当に好きじゃないと出来ません。そしてまだまだ描きたい事はあるというくりすが描くジョーカー星団世界の人々が見る星団の最後を見守ることになるクローソーとアトロポス、そして星団を後にするバランシェファティマたちを思い、読者として星団の黄昏までを見守っていき今後も『ファイブスター物語/F.S.S』を楽しみたいと思います。

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