ただ世の平穏を望む男/「イコライザーTHE FINAL」感想-Web-tonbori堂アネックス

ただ世の平穏を望む男/「イコライザーTHE FINAL」感想

2023年11月19日日曜日

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 まさか今年は2本の「舐めた相手が凄腕だった」映画が時間差とは言えガッツリ被る形で公開されるとは思いも寄りませんでした。本国でも公開時期が半年のスパンが空いたとはいえ同年公開ってのも縁を感じる話ですが描かれ方、スタイルは全く違います。ジョン・ウィックは言わば裏社会の犯罪者側の人間ですがイコライザーシリーズのマッコールは元は政府の工作員。裏社会でも権力側の走狗だった人物。とは言えどちらも怒らせると怖い男というのは同じですがその立ち位置は微妙に異なります。几帳面な必殺仕事人、マッコールもまたジョン・ウィックと同じく妻の死で平穏を望んだ人なんですが、どうしてもその強迫観念的な部分で世の悪をほっとけない。そしてまず平穏に事を収めようとするけれど、大概の悪を成すものはそれを受け入れない。なのでどうしても衝突することになり、やる時は徹底的にやる男がマッコールなのですが、その道行には屍累々です。そのためやり過ぎだのサイコパスだの散々な言われようですが禍根を残さず一切を綺麗に掃除する。それがマッコールという人物です。

『イコライザー THE FINAL』日本版予告 10月6日(金)全国の映画館で公開 <予告2>/YouTube/ソニーピクチャーズ公式chより



そんなマッコールが前回同様、海外まで出張しての世直しで心の平安を見つけ神様への赦しを乞うのですが、そこにもやはり悪は居たという話。ということで『イコライザー THE FINAL』の感想を粗筋の後にざっと書いてみようかと思います。

9秒で終わらせる男/STORY

 シチリア島のあるワイナリー、物騒な男達の屍があちこちにある中、銃を突き付けられボスと対峙しているのはマッコール。ある物を返してもらいに来たという。しかし銃を突き付けたお前に何が出来るというボスに9秒で終わらせると宣言したマッコールは鮮やかに手下を倒しボスを葬った。目的の物を取り返しワイナリーを後にしようとしたが見逃した少年がライフルでマッコールを撃ち重傷を負ってしまう。なんとかイタリア本土に戻ったものの路肩に止めた車の中で気を失うマッコール。そこを通りかかったジオが町医者エンゾに運び込む。銃創だと気が付いたエンゾはジオに口止めしてマッコールを治療する。マッコールは傷のことを深く追求しないエンゾや助けれくれたジオも職業は国家憲兵隊の隊員であったが上層部に報告せずエンゾの計らいに感謝してかの地、アマルフィ海岸の小さな町、アルタモンテで療養する事になる。

 マッコールはCIAの調査官であるエマ・コリンズに件のワイナリーを通報する。ある物を見かけたので調査した方が良いとシークレットの電話番号に名指しで電話をかけてきたマッコールを訝しむエマだったが当のワイナリーへ上司と現地警察とで踏み込むとボスたちの遺骸とともに大量の紙幣と薬物を発見し組織とテロリストのつながりを見つけ通報者の件とともにテロリストを追跡を開始する事に。

 アルタモンテで療養しているマッコールはカフェの店員、アミーナや魚屋の主人など、町の人たちの優しさに触れ次第に心に平穏を覚えるようになってくる。何時しか自らのルールとしていた時計をも外していたマッコールだが、そんな町にも不穏な空気が。地元を仕切る犯罪組織カモッラのボスの弟、マルコが手下とともにオートバイで町に乗りつけ、みかじめ料の取り立てを目撃する。そして少し待ってくれと懇願する魚屋を見せしめのために放火したのだ。人知れず町を去ろうとしていたマッコールだったが、平穏を与えてくれた町のために立ち上がる事を決めた。しかしマルコの兄でカモッラのボス、ビンセントはアルタモンテのリゾート化を企んでおりマルコらに住民を立ち退かせる地上げを目論んでいたのだ。両者の激突は避けられない状態となりマッコールはビンセントたちと対決する事となる。果たしてマッコールはビンセントたちを退ける事が出来るのか?

善人か?悪人か?

 アルタモンテの医師エンゾがマッコールに尋ねた言葉です。エンゾはマッコールの受けた銃創から只者ではないと感じましたがそのまま治療しジオの所属するカラビニエリに突き出す事もしませんでした。懐が深いというだけではないんでしょうけど、多分この問い次第ではというのはあったのかもしれません。その時マッコールは「どちらか分からない」と答えました。善人であろうとしたけれど、してきた事を考えるととても善人とは言えないし今も悪党とは言え命を奪っている。そういう事を自覚しているので、子どもに撃たれた後、一旦は自分で命を絶とうと引き金を引きましたが銃は撃ち尽くし弾切れでした。そのまま走り去ったのもそれで命を落としてしまったらそれは受け入れようと思っていたのかもしれません。

 それが奇縁かもしれないけれど命が助かり、静かな田舎町での療養生活や町の人との付き合いがマッコールに人としての感情を少しだけ取り戻させた。だからこそ町を侵す者に対してこれまで以上に峻烈かつ慈悲なく瞬殺していったようにも思うのです。


 その激烈で容赦ないやり方でサイコパスだの色々言われほうだいな(主にTwitter(X)で)マッコールさんですが、実際『イコライザー』の時には不眠症であり、第1作から印象的なマッコールの行動、ナプキンを几帳面に折り畳み敷くのは強迫性障害と捉える事が出来るかと思います。完全に他者とのコミュニケーションが出来ない訳ではないのですが、そういった他者との関わりは最低限にしているのがマッコールという人です。でも今回は成り行きとは言え町の人たちとの関わりによって完全に良くなった訳じゃないですがある程度の心の平穏を得るに至った訳で、それは彼のとった行動でも明らかです。迷惑が掛かる前にそっと町を出ようとした晩に魚屋が放火されそのまま事態が酷くなるのであれば自分が対処するというのは何時ものマッコールさんなんですが、最後の危機の時に姿を晒した時に町で得た平穏を破る者は許さないという決意。この時、町の人々も立ち上がる事も有り町で血の雨が降る事は避けられましたが、全てにおいて先手を打つ男マッコールさんは敢えて単身乗り込んでいく訳です。


 そこで思ったのは「破れ傘刀舟悪人狩り」の叶刀舟先生ですね。もっとも刀舟先生は揉め事に積極的関わるのではなく行きがかりでほっとけないという感じですが。マッコールも最初はそんなスタンスから2ではLyftという配車サービスのドライバーとして生活しながら、困っている人を影ながら助ける事をしています。今回のワイナリーでの襲撃も言わばそれで知ったインターネットの投資詐欺でお金を巻き上げられた人のために動いたものでした。で刀舟先生は乗り込むときはほぼ全員ヤる気ですが、一応マッコールは選ばせるんですよね。もっとも悪人は選ばないんですけれど。これまでの悪党はほぼそれで身を滅ぼしています。これはマカロニウエスタンでクリント・イーストウッドが演じた名無しの男にも通じるものがあり、死の使いペイルライダーも感じます。だからこそカトリックの総本山もあるイタリアで教会のシーンが効いてくるんですよね。マッコールは死の使いなのか?それとも守護天使なのか。そういった問いかけも、結局のところ彼が自らは咎人と思っているけれど、それを償うための善き人達のための盾と矛になるという選択をしたのではないかと中盤までは思っていましたが…、まさかここに安住を見つけるとは。それだけ色々すり減っていたのかもしれません。とくに前作では闇落ちした自分の分身とも言える元の仲間とやりあった訳ですから。『汝、殺すなかれ』じゃないけれど、一時は自死を考えながらも生き延びたからこそ、そういう心境に至ったのかもしれないなと思いました。

FINALなのか?

 生まれ変わってアルタモンテの守護天使となったマッコールは骨を埋めそうなんで確かに邦題の『THE FINAL』な感じはあるんですが、今回登場したCIAのエマ(ダコタ・ファニング)の事もありますし、世に悪の種の尽きまじという事もありますから誰かが泣いているとそこにマッコールは現れるなんてことも思ってしまいますね。実際アントワーン・フークア監督とデンゼル・ワシントンはウマがあうのか幾つもの作品でコンビを組んでいますし。もしかすると『帰ってきたイコライザー』あるかもしれません(笑)

余談『燃える男再び』

 続編という話で言うとCIAのエマ・コリンズを演じたのはダコタ・ファニング、デンゼル・ワシントンとは『マイ・ボディガード』で当時子役だった彼女を守るボディガード役で共演していたんですが、影ながら見守る役を別の形で再びというのがちょっと胸熱な展開でしたね。いや本当に。エマを助ける助っ人のマッコールさんというシリーズが立ち上がりそうな気もしたのでやっぱり続編あるかも(笑) 

※1作目『イコライザー』と『イコライザー2』はAmazonプライムビデオで配信中。

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※『イコライザーTHE FINAL』も配信はじまっています。

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