「さらばインディ」/『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

「さらばインディ」/『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想【ネタバレ注意】

2023年7月16日日曜日

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 インディ・シリーズは第1作目の『レイダース/失われたアーク/聖櫃』を観に行った頃からお付き合いになるのでこれが最後かという感慨もありますが、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』がどうにもピンと来なかったのも(もちろん劇場に観に行きましたけど)正直熱は冷めていました。ピークは3作目の『最後の聖戦』ですが一番好きなのは『レイダース』でしょうか。ただスペクタクルという点では何と言っても『魔宮の伝説』でしょう。敵の首領というまさに往年の冒険小説の手触りを持つインディ・ジョーンズの冒険は未だにファンを引き付けていると思います。翻って今回はシリーズを牽引してきたルーカスもスピルバーグも(製作に名を連ねてはいますが)手掛けていないインディ・シリーズの最新作にしてタイトルロールであるインディを演じてきたハリソン・フォードがこれがインディとしては最後の出演となると明言した最終作のインディアナ・ジョーンズ最後の冒険は如何なるものだったのか?あらすじのあとに思ったところを書いてみたいと思います。

「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」本予告編/YouTube/ディズニー・スタジオ公式

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の内容について触れておりますので【ネタバレ注意】とさせていただきます。

運命のダイヤル/STORY

 第2次世界大戦末期、ナチスは美術品や価値のある遺物を収集していた。ヘンリー・ジョーンズJr、通称インディアナ・ジョーンズ(インディ)は、またもやナチスが聖遺物ロンギヌスの槍を手に入れたという情報をもとに探索する彼らに潜入するが逆に捕らえられてしまった。しかし処刑される寸前に脱出。聖遺物を運ぶ列車に忍び込み聖遺物を発見するがそれは偽物だった。同じくインディに同行していた英国人考古学者バジル・ショー博士もナチの列車に囚われていたが偶然にナチスの協力者であるフォラー博士がある力を秘めたアンティキティラのダイヤルの話を耳にする。インディはバジル・ショー博士を助けだし列車からの脱出しダイヤルも持ち出しショー博士に託した。


 時は流れて1969年、ニューヨークの大学で教鞭をとっていたインディの元に亡くなったショー博士の娘ヘレナが現れる。ヘレナはアンティキティラのダイヤルの話を持ちだしその行方を探す協力をして欲しいとインディに依頼するが息子のヘンリー3rdがベトナムに出征し戦死したことでマリオンと別居し離婚協議中のインディにはその気はなく、またヘレナの父、ショー博士もアンティキティラの研究に没頭するあまり彼の元からダイヤルを半ば取り上げるように引き離したのもインディだった。しかし懇願するヘレナに根負けし定年退職したばかりの大学の書庫へ向かう。実はそこにショー博士から預かったアンティキティラのダイヤルを保管していたのだが、突如謎の男達に襲撃される。彼らはフォラ―の部下とCIAで、現在はシュミットと名乗るフォラ―が力を秘めたダイヤルを再度奪うために差し向けたものであった。ヘレナは混乱の中ダイヤルを持ち逃げし、インディはその行方を追うため旧友サラーに協力してもらってヘレナの行先だと思われるモロッコのタンジールへと向かう。果たしてダイヤルにはどんな力が秘められているのか?インディ最後の冒険が今始まる。

クローザーとしてのマンゴールド監督

 今回の監督は、ジェームズ・マンゴールド。tonbori堂はマンゴールド監督の作品では『3時10分、決断のとき』や近作では『フォードVSフェラーリ』そして忘れちゃいけない『ローガン/LOGAN』があります。中でも今回のインディ・ジョーンズ最終作監督としてなら『ローガン/LOGAN』の監督がやるというのはポイント高いところではありました。歳を重ね老い認知症になってしまったプロフェッサーXを介護しつつ、自らも長年の戦いの反動かそれとも加齢によるものか、治癒能力の低下で以前ほどの力を発揮できなくなり細々とリムジンの雇われ運転手をしているウルヴァリン=ローガン。その彼がある少女を託され最後の力を振り絞って立ち上がる当時は演じるヒュー・ジャックマン最後のウルヴァリンとしてもですが、老いたヒーローの矜持と最後の戦いを余すところなく描き切った作品として評価も高く、またtonbori堂も好きな映画の1本です。そんな『ローガン/LOGAN』の監督がメガホンをとるんだからこれは期待しても良いだろうと思っていたわけですが…。結論から申し上げますとインディ最後の映画としては結末は腑に落ちたし良かったと思うけれど...ちょっともやもやします。


 元々ルーカスの冒険活劇のアイデアをスピルバーグと組んで実現化したこのインディ・ジョーンズ・シリーズ。5部作っていう話はあったそうなんですが3作目以降良いアイデアが産まれずそのままとなりやっと出てきたアイデアを映画化したのが4作目『クリスタル・スカルの王国』でした。でも正直最後の宇宙人(異次元人とかいう話らしいんですが見た目が米の宇宙人、UFOで出てくるグレイなんですよね)には乗り切れず、1作目以来のマリオン再登場やその息子であるマット(ヘンリー・ジョーンズ3世)にKGBの敵役を演じたケイト・ブランシェットのインパクトは強かったものの話が雑だったなというイメージしか残っていません。(それでもスクリーンへ封切時に行きました。)それから5作目もあるという話も出ていたけれどアイデアは産まれずそうこうしているうちにルーカスがルーカス・フィルムをディズニーに売却、『スター・ウォーズ』を含めた作品はディズニーへ移り、当然のことながらドル箱作品を再度作るべく動きがあったものの結局監督からスピルバーグが降板。ハリソン・フォードも御歳80を越え、これが最後のインディとなると明言したことから以降の作品をリブートするにしてもハリソンのインディとして作品をクローズする必要がありそれを任されたのがジェームズ・マンゴールドという訳なのです。(実際にクローザーとして招へいされたかどうかは知りませんけど『ローガン/LOGAN』の事を考えればそれが自然な気がします。)


 何がもやもやするのかと言えば「お約束」です。そこまでインディ・シリーズのお約束しなくちゃとまで思うように丁寧にインディ・シリーズのお約束なチェイスやインディが鞭を振るうシーン。小ネタの数々。そしてそれが元で何かとテンポが阻害されているのでないかという点でしょうか。特に冒頭の1944年でのアクションシークエンスはもっとコンパクトに出来たのではないかと思うのですよね。言わば段取り通りではあるんですが、もっと詰めれたのではないかと。わざわざ敵中の車両を進むインディとか。ナチスの機銃が連合軍の空爆で列車を銃撃してしまうシーンはあるあるなんですけど、それもっと早くしてもいいんじゃないですか?と思いました。


 それでも、よる年波には勝てず、アパートの隣では若者たちがビートルズを大音量で流しそれに対して小言をいうインディや、やる気が無い生徒相手に空気に向かって喋っているかのような大学での授業シーン、あたかもNYでは月着陸成功を祝っての飛行士たちのパレードで浮かれている中、大学教授を定年退職するインディはまさにヒーローの晩年を容赦なく描いています。そこは『LOGUN/ローガン』で年老いたプロフェッサーXと治癒能力が低下したウルヴァリンを描いたヒーロー映画の傑作マンゴールド監督の手腕が光っているところです。とは言えやっぱり冒頭のナチスとインディのシークエンスは長いんですよね。これいるのか?って観てるとき思ったものですが最後まで観てなるほど必要ではあったけどもう少しテンポ良く出来なかったのかと。そう思った方はTwitterやネットでも散見されました。


 それとヒロインのヘレナ、どっちかというとルパン三世における峰不二子的な役割なんですが途中で次元大介的な部分を垣間見せるんです。そして父親とのあったであろう確執は匂わせだけなのももやもやします。いや匂わせ結構なんですよ。全部丁寧に説明する必要はないです。それよりは描写を丁寧にして理解させるのも必要だけど…今回この話のためだけに創造されたキャラだとしてもインディとの結び付きが薄い感じがしました。悪くないキャラクターだと思ったんですが。相棒の少年も露悪的だったりとか魔宮の伝説のショートラウンドとの差別化を図ろうとしているかのような感じはうーんってなってしまいますね。ヘレナだけでも良かった気がするんですがマンゴールド監督作品って大人と子どもが重要なのでヘレナだけなく子ども入れたかったのかな…。そうそう最初の方に出てきたCIAのエージェントの人がブラックスプロイテーション作品な出で立ちでキャラ立ち良かったのにあっさり退場するのももったいないなと思いました(ならなんで出したのよ?とか口から出そうに)


 ただこの作品がダメだったとは断じきれないのはクローズの仕方がそうであって欲しかったという、これも見方を変えると「お約束」でしかないんだけどそれをやるためにここまで引っ張ったのか!と。実はもうそれは無いのかなと思いつつラストのマリオン登場からレイダースの時の台詞をまた言わせるのは正直ズルいと思いつつありがとう!マンゴールド監督!ってなったんですよ。ちょろいファンかも知れないけど結局乗り切れてはいなくとも『クリスタル・スカルの王国』のラストの大団円で掉尾飾ったかのような引きがあった訳なんですよ。だからみんながみんなええ?5作目やんのと。それはもしかすると継承になるのかと思いきやそうはならなかった。だけどそれもいいのかもしれません。インディ・ジョーンズの一代記これにて幕という終わり方を今度こそちゃんと付けたのは単純に良かったと思います。

インディ・シリーズの想い出とともに。

 tonbori堂の一番好きなインディは1作目のインディである『レイダース/失われたアーク(聖櫃)』です。聖櫃という宝物を巡ってのナチスとの追っかけっこにアクション。そして人知を超えた力などなど、古い映画をその当時に蘇らせ、尚且つその後の作品にも影響を与え続ける印象的なシークエンスや映像表現を残した作品だと思っています。『魔宮の伝説』も嫌いじゃないし、あの作品は語り継がれる事も多いけど(トロッコアクションとか)ライド感とかが強気がするんですよね。そして『最後の聖戦』期待が爆上りしていたもののショーン・コネリーとの掛け合いが良かったかなぐらいの感じで乗り切れていませんでした。あの頃は定型のアクション映画にハマってたからかもしれません。その定型にハマってたのがまさに『レイダース』、『魔宮の伝説』で、『クリスタル・スカルの王国』はシャイア・ラブーフ演じるマットに今後は引き継がれていくのかと思いきや、彼のキャリアのまあ色々があって今回はマットは死んでいるという話に。だからこそのジョーンズ博士の一代記になったんだろうなと思います。でも「もし」が許されるなら最後はやっぱりスピルバーグ監督に締めて欲しかったかな。それとともに逆に監督しない時点で流しても良かったかもと少しだけ思いました。シリーズものの難しさを改めて感じたシリーズ最終作でした。

『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク(聖櫃) 4K Ultra HD+ブルーレイ』(Amazon)物語はここから始まりました。是非観て欲しい1本です。

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