観た人から面白かった、良かったという評判の多い『ダンジョンズ&ドラゴンズ』観ました。物凄い悲壮感を漂わせたり、運命に翻弄される選ばれた子という訳でもなく、元になったRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の細かいネタを知らなくてもファンタジー世界に馴染みがあればスッと入れるし、クドクド説明しないのもまた心地よく、楽しい冒険ファンタジー映画を久しぶりに観た気がします。そういったちょうど良い塩梅の映画でした。ではあらすじの後に思った事を書いてみたいと思います。
※結末とか詳しくは書いていませんけど読んでいるとなんとなくネタバレしている感じなので【ややバレ】といたします。何卒よしなに。もっともネタバレしていても楽しい映画です。ぜひご覧頂きたいです。
アウトローたちの誇り/STORY
盗賊のエドガンと戦士のホルガ、2人はハーパーの宝物庫に押し入った事で極寒の監獄レベルズ・エンドに収監されていた。エドガンは娘のキーラの元へ帰るためにホルガとともに脱獄不可能と謳われるレベルズ・エンドから知恵を絞って脱獄に成功する。住処に戻った2人だったがそこには誰もいなかった。ひょんなことから盗賊仲間でハーパーの宝物庫から逃げおおせたフォージがネヴァーウィンターの領主になっている事を知りネヴァーウィンターへ向かう。2人を出迎えたのはキーラとそしてフォージ。しかしフォージはキーラにエドガンはキーラを捨てたと嘘を吹き込んでいた。そして宝物庫を襲ったのもフォージの紹介で仲間に加えた魔法使いソフィーナと企てた企みだったのだ。2人はからくも城から脱出し、仲間を集めてフォージから娘を取り戻す算段を立てる。一方2人を追えとフォージに命令されるソフィーナだったが、実はソフィーナはレッド・ウィザードでありフォージとは別の目的を持ち、ネヴァーウィンターを含めたフェイルーン全土を支配する企みがあったのだ。エドガンとホルガはソフィーナの強力な魔法で守られたフォージの城に忍び入り彼の全財産を盗み出しキーラの誤解を解くためにかつて組んでいた偉大な魔法使いの子孫だが自信がなくこすっからい盗みで日々を凌いでいるサイモンと彼の紹介でシェイプシフター(変身能力)を持ち何処にでも入り込めるティーフリングのドリックを仲間に勧誘する。彼らはさっそくソフィーナを魔力を打ち破るための宝物、魔法破りの兜の探索に出かけるがその在処は聖騎士しか知らないという。その聖騎士ゼンクを探す一行はすぐにゼンクと出会うが堅物で正義漢のゼンクと世の中を斜に構えるエドガンはことごとく対立する。それでもゼンクは一時、正義の側にいたエドガンを信じ兜の隠し場所へと案内するがそこにはソフィーナの魔の手が伸びていた。果たしてエドガンたちは無事にキーラを取り戻しフォージに一杯食わせる事が出来るのであろうか?
冒険者たち
物語は分かりやすく面白いのが一番だと考えているならこの『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』は超が付くほどおススメ出来ます。何故ならお話は、娘と誇りを奪われた主人公が訳アリな仲間たちと悪党を懲らしめるという明快なお話だからです。でもそれだけだと単調ですよね。だけど『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』が面白いのはキャラクターたちの造形なんです。だから「上手く行くんだろうな?」とか「悪い奴はやっつけられるんだろうな」と予想出来ても飽きないんです。これが実は難しい。トム・クルーズのミッションインポッシブルシリーズはトムが身体を張ってビックリアクションをこなす事でテンションを保っていますがこの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はちゃんとキャラクターが「活きている」んです。だから面白いし最後まで観ていられる。
パーティのリーダー、エドガンは元はハーパーというグループにて人知れず悪と戦っていたという背景があるんですがそれが元で妻を亡くし転落人生を歩む吟遊詩人。戦士であるホルガは荒れていた頃のエドガンと知り合って意気投合しエドガンの娘のキーラの面倒を2人で見ながら頭脳労働(プランナー)のエドガンと腕っぷし担当のホルガで荒稼ぎをしていました。男女バディなんですがエドガンは亡くした妻を深く愛しており(監獄に放り込まれる事になったのもそれが遠因)ホルガは異民族の男を愛したため部族から放逐され今もその男に未練があります。それでも力を合わせて荒事稼業に精を出す辺りが見ていて清々しいくらいにいいんですよね。エドガン役はクリス・パイン、JJエイブラムスの『スター・トレック』リブートでカーク船長を務めたいましたが、それ相応に歳を重ねていい味を出せるようになってきたと思います。なんというかカーク船長の時は若き日の無茶をするカークってことで無鉄砲な部分が強調されたりしていたけど今回は妻を殺されたり、娘を育てるために盗賊風情なんかに身をやつしているけれど娘のためなら例え火の中水の中というお父さんをいい具合に肩の力が抜けた感じで演じています。
戦士ホルガはミシェル・ロドリゲス、『ワイスピ』シリーズのレティ役が有名ですが他にもアクション映画で名を売っています。ミシェル・ロドリゲスで戦士といえば、ああそうだよねってなるんですがこれがまたいいんですよ。途中でこのヤマはヤバいから最後に好きだった男と決着を付けておきたいと小人族の彼の家へ押しかけると同じタイプの女性と既に再婚していて、そこでは抑えていたけどその後、ヤマを成功させて見返してやる!とかタイプキャストを逆手に取ったあのシークエンスは凄く良かったですね。
パーティの魔法担当、サイモンを演じるのはジャスティス・スミス。『名探偵ピカチュウ』でピカチュウとともに父の事故を調べるティム役や『ジュラシックワールド』にも出演していました。サイモンは偉大な魔法使いの子孫なんですが自信がなく行う魔法もこけおどしやその類ばかり。でも時として大いなる力を発現したり素質はあるんですがどうにも自分の殻に閉じこもって突き抜けられない気弱な青年です。それがエドガンに巻き込まれる形で自らの弱さと対峙することになるのも定番展開ですがいいんですよね。そうそうそうでなくっちゃってなるんですよ。
パーティの潜入担当ドリックはちょっとぶっきらぼうだし、可愛げもない。サイモンには惚れられているけどけんもほろろにあしらっているし、ティーフリングという出自のために人間を信じないんだけれどパーティと行動を共にするうちに物凄く活躍するしそもそも彼女がいないとこの作戦成立しないやんっていうのも多く大活躍なドリックはみんなが好きになるキャラクターです。演じるはソフィア・リリス。ソフィアにリリスって妖精か!…すみませんちょっとふざけてしまいました。いや正直知らない方なんですけど『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に主要なキャラを演じていたとか。『IT』は残念ながらtonbori堂は観ていないのですがまだお若いようで今回の主要キャストの中では最年少かも。でも彼女が一番老成している感じなのが面白かったですね。もっとも実際の冒険時には年相応の反応もあったりとまさにチャーミングなキャラクター、ドリックをものにしていた演技でした。
そして忘れちゃならないセクシー・パラディン!聖騎士ゼンク。レッド・ウィザードと同じくサースの人であるけれどある事情があって光の側にいる物語の中で最強の力を持つ者であり、先導者にして傍観者という所謂RPGでいうところのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を映画の中で巧く顕現させた例になるかと思います。彼はパーティを宝物に導く存在なんだけど、ちゃんと見せ場も用意されているし主人公の行動のフックにもなっている。だから話題になるし演じたレゲ=ジャン・ペイジもまた完璧イケメンでこれまた漫画のようなキャラクターを全力で演じててこれまたはまってるんですよね。彼を最初に見たNerflixの『グレイマン』は陰険なCIAのパワーエリート役だったんですが今どきのイケメンは両方なのはその『グレイマン』でクリス・エヴァンスがMCUのキャップとは真逆の殺人狂の殺し屋をやってますから当然かと(笑)とくにエドガンとゼンクのやり取りはニヤニヤさせらっぱなしだしパーティから去り際も面白いんでそこは要チェックです。
敵役とドラゴン
面白い冒険譚は良い敵役が必須。ということで今作の敵役に目を向けると何と言ってもフォージなんですよね。ヒュー・グラントが天性の詐欺師を嬉々として演じているのもまたいいんですよ。若い頃は恋愛作品に多数出演した甘いマスクのハンサムだったヒュー。年齢を重ねて暗黒街のボスや喰えないスパイの上司などなどワンポイントで光る脇役として最近いい仕事っぷりを発揮していますけど今作ではナルシストの詐欺師という役を楽し気に演じています。もう一人の敵役はウィザードのソフィーナ。実はサースのレッド・ウィザードであり彼らのマスターであるザス・タムの僕で彼の悲願を果たさんと暗躍しているのですがソフィーナだけだと、「何時もの」とか「どこかで観たような」ファンタジー冒険譚になっていたと思います。そこにソフィーナの企みを知りつつ自らの欲望のためにそこに乗っかるフォージの器の小ささ、欲深さが人間臭く、あーいるいるこういう小悪人っていうのが実は作品を面白くしているんですよね。特に最後の辺りの間抜けさとかもういう事無しで映画的なクライマックスの対決はソフィーナとしてもそこに物語としての華をちゃんと添えているのが良かったですね。レッド・ウィザードとザス・タム、ゼンクらのサースの話も深入りはしないけど抑えるべきところはちゃんと抑えてくれる親切設計のおかげで最後の戦いも盛り上がるし伏線のおかげで余すところなく楽しめます。
おっと、それだけではなくドラゴン、そうこの映画は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』ドラゴンさんが出てこないといけませんよね。でもドラゴンの総数で言うとそこまでたくさん出てくる訳じゃないのですが…いやあのドラゴン、怖ろしいやつなんですが…それは本編を見て欲しいですね。ダンジョンズ&ドラゴンズなんでダンジョンズ成分は2つあるんでドラゴンもあと少しあればパーフェクトだったかもしれないけどいやもうこれぐらいはちょうどいい(笑)かも。多すぎると胸焼けを起こしますから(笑)
ちょうど良い塩梅
結局この映画の良いところは話がちゃんと終わっているというところです。もちろん『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界観に沿っているし話を続けようと思えば新キャラ導入してどんどん続編作れそうなんですが、M.C.UやDCのようでもなくいつの間にか世界の危機を救うべく活動しているミッションインポッシブルチームやワイスピ軍団でもなく、その世界のいわゆる落ちこぼれパーティが知恵と勇気でなんとかするというのが(ここが重要です)いいんですね。続編作品ではないのにここまで楽しいのは大層では無いけど大切なところはちゃんと抑えている。肩ひじ張らない楽しさ。異世界を冒険する楽しさ、キャストも含めそういうロールプレイをしっかり描いている『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はそういう楽しい映画でした。
※映画の原作というか原案『ダンジョンズ&ドラゴンズ』といえばTRPGですが、それをベースとした小説もあります。
※Blu-ray発売
※配信はじまっています。
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