「どっちが勝つか?三代目vs3人組」/『ルパン三世VSキャッツ・アイ』感想-Web-tonbori堂アネックス

「どっちが勝つか?三代目vs3人組」/『ルパン三世VSキャッツ・アイ』感想

2023年2月19日日曜日

anime manga

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 Amazonプライムビデオ独占配信、『ルパン三世VSキャッツ・アイ』観ました。ルパン三世は好きだし『キャッツ♥アイ』も漫画も揃えてはいませんでしたが連載を読んだりアニメも観てました。当然その後の原作者の北条司先生の『シティーハンター』も含めてやっぱり思い出はあります。それに『キャッツ♥アイ』は主題歌もヒットしましたよね、ウチにはシングルレコードがありました(笑)そんな2作品がコラボレーションする事になったのはやはり年月を経たからこそだと思います。掲載誌も出版社もアニメ作品のカラーもまるで違う2作品がコラボレーションするのはファンの妄想の中でしか無かったのに実際に出来てしまう時代になったんだなと、まずそこに感慨深い想いを抱きました。という事で思った事とか気になったポイントをあらすじの後に幾つか追って行きましょうか。

※タイトルを「どっちが勝つか?泥棒vs怪盗」からルパン三世1stシリーズへのオマージュとして「どっちが勝つか三代目!」から「どっちが勝つか?三代目vs3人組」としました。2023.06.02

Amazon Original『ルパン三世VSキャッツ・アイ』PV第1弾/TMS公式ch/YouTube

3枚の絵と泥棒と怪盗|あらすじ

 隅田川に浮かぶ屋形船。中では屈強そうな男が怪しい色眼鏡の男とそのボディーガードと対峙していた。どうやら何かの絵を取引しているらしい。頑丈なケースにその絵を収めて屋形船でその場を立ち去るが入れ替わりにプレジャーボートが屋形船に近づく。その船上には先ほどとそっくりの男が。先の男が顔の変装マスクを剥ぎ取るとその下から現れた顔はルパン三世だった。ルパンが狙ったお宝はミケール・ハインツ作3連作「花束と少女」。同じころ2枚目の「花束と少女」はハインツ・コレクションを狙う怪盗キャッツ♥アイ、来生3姉妹、泪、瞳、愛のコンビネーションにより犬鳴署の刑事でキャッツを追う内海刑事を出し抜き見事に盗みだされる。残る3枚目の「花束と少女」と画に隠されたナチス・ドイツの秘宝の謎をめぐり謎の武装組織ファーデンとルパン一味、キャッツアイ、峰不二子を交えた乱戦の中、ハインツの3連作に秘められた謎が暴かれる。最後に笑うのはキャッツか?ルパンか?

ルパン三世という男

 今回、お話の時代設定が80年代というのは劇中で殊更に説明されていませんでしたが、ルパンも『ルパン三世PARTⅢ』のピンクのジャケットで、その頃であるなという感じを醸していました。他にも警官の姿や出てくる小道具などにそれらが現れておりましたが、そこは注意深く観ないと分からないでしょう。なので80年代の空気感はフィルム(モニターに映し出された作品映像)からは正直薄さがありました。それでもルパンファミリーが勢ぞろいすれば年代などには関係なくやっぱりそこは『ルパン三世』!ってなりますよね。ここでのルパン三世は相変わらずルパン三世ですが、盗みのプロでありそれに誇りを持ちつつ、今回は過去の後始末のために動いています。キャッツ・アイの来生三姉妹の父である画家ミケール・ハインツと接点があった事にするという事とナチスの収集した美術品(これも有名な話でそれを奪還するための話などが史実、フィクションともにあります。)を取り戻すという部分でルパンとキャッツを繋げたのも巧いなと思いました。


 ルパンが若い頃の売り出し中に色々やらかした縁で若い人を助けるというモチーフは『ルパン三世カリオストロの城』がその嚆矢に挙げられると思いますが今回も後半の展開を観て、やっぱりそこに収斂していくのかと思いました。これは山﨑監督のCGアニメ『ルパン三世THE FIRST』でも若いルパンのとは違いますが物語の構造がやっぱり若い人を助けるルパンという形で似通っているのはそれだけ『カリオストロの城』の持つ定型が強いのかなと今更ながらに思いました。それでも愛とルパンのやり取りは納得できるものだし、次元と五エ門が瞳と泪と同道するというのも納得できる展開です。その分、不二子は『名探偵コナン』とコラボしたときのようにワイルドカードになっちゃいましたけど、あれよりはまだ今回の敵組織ファーデンと関わっている事で不二子らしさが出ていたかなとは思いました。


 そのことでルパン三世というキャラクターの強度も改めて感じましたね。背広の色もだけどルパンっていう記号が揃っていればどんな展開でも『ルパン三世』になるんですよ。キャラクターデザインがそれぞれで少しづつ変っていたとしてもそれは揺るぎが無い。声は山田康雄から栗田貫一へ予期せぬ形でリレーされましたがキャスト、スタッフともにルパン三世ってこういうキャラクターだというコンセンサスが取れているから今回はここまでやろうとかそれをしてもちゃんとルパン三世になってくるのが凄いなと改めて感じました。

来生三姉妹と内海俊夫

 キャッツに関してはオープニングのキャッツのシークエンスでは完全にキャッツ・アイ・リターンズって趣きでしたよね。ルパン三世とキャッツ・アイのクロスオーバーではあるものの物語の最初はそれぞれの特徴的なシーンを出してルパンだなあっていうシーンとキャッツだなぁというシーンを交錯させていく。ここは凄く良かったしハインツの3連作への導入部からルパンが来生家の秘密基地というかアジトに俊夫に化けて侵入するところからシベリアでの列車急襲はルパン三世vsキャッツ・アイという感じで良かったんですが、やっぱり舞台が世界となるとキャッツ色は薄くなっていきますよね。キャッツは世界をまたにというよりは夜の街が似合う。闇に乗じて鮮やかに盗みだす。それをなんとか阻止してキャッツ・アイを捕えようとする内海刑事との攻防戦とキャッツ・アイである来生瞳と刑事である内海敏夫のラブコメチックな関係が肝な訳でして、そこはやっぱりルパン三世の枠に来るとルパンの手の内というかルパン三世の則になってしまっていましたね。


 『ルパン三世vs名探偵コナン』でもやっぱりそこはそうなってきそうなのをTVではコナン側で話を転がしつつも日本を飛び出し、2作目はコナンのホームでありつつコナン主導で話を進めてもやっぱりルパンが締めちゃう。これはもうルパン三世というキャラクターが長年のシリーズやTVスペシャル、映画で培った器の大きさにほかならないんで仕方がないんですがやっぱり瞳と俊夫の絡みはもっと観たかったし銭形警部と来生三姉妹の絡みがあっても面白かったんじゃないかなと思いましたね。お話の流れとして末っ子の愛がルパンと同道するというのも分かるんですけれど、ちと安易ではないかと。ここはやっぱり愛かなと思いますってのは分かるんですが折角の機会なんだからと思うんですが…これが最後のクロスオーバーとは思えないので次はシティーハンターも絡んで三姉妹がルパン一家とがっぷり組んで大暴れするのを期待します。

クロスオーバーの難しさとワクワク感とCGの不気味の谷

 総合すると面白いんですが、いやそこはもうちょっと足して欲しいとか、そこはそうじゃないでしょとかそういう部分が一杯あるかと思うんですよ。実際ネットで散見する感想もそういうのが多いですし。それでもルパン三世というアンチヒーローが同じく盗みを働く(事情があるにせよ)キャッツ・アイとクロスオーバーするという一点でワクワク出来るんですよね。実際面白かったところもあるし、キメるところはちゃんとキメたし。それでもこれは凄い!とまで行かなかったのは上に書いたようなルパン三世のスペシャルにありがちなテンプレートにのっかったドラマだったからだと人が指摘する点に全く同意するしかないのです。上手くやればもっと出来る素材なのに惜しいという感じでしょうか。それでもスペシャルだからこそ今後もカメオ的に登場していた新宿を根城にしているあの裏社会№1のスイーパーが絡んでくるスペシャルや次回があるならばルパンと瞳や泪ががっつり絡んでくるクロスオーバーを作って欲しいなとも思いました。


 それとよく言われるキャラクターデザインに関してはルパンってそれこそ沢山のルパンがいる訳で初見時は違和感あっても見慣れると、ああこれはルパン三世だねってなりますが、どちらというとキャッツ・アイの方が元のキャラデザインに併せながらもCGの硬さが見えちゃう感じがありましたね。なんというか色っぽさが、艶っぽさが足りない。もっともそこは後半、愛ちゃんのフォーカスしたので気にならなかったけど(ヲイヲイ)それとアクションは滑らかなのに通常の動きが若干固いところや服の質感などは気になったポイントでした。ルパンの背広の二の腕の辺りが左右同じように描写され何かのプロテクター?みたいに見えたのが凄く気になったんですよ。そこは「不気味の谷」と言われる事もあるCGの弱点なのかな。


 余談として今回、冒頭の盗みを終えた来生三姉妹がポルシェ928で花火見物にいったり、ロシアでルパンたちが乗っていたクルマがFIAT131ミラフィオーリだったり、パリでは懐かしのシトロエン・Hバン(1stなどでも時々出てくる特徴的なバン)アルピーヌA110などが登場し、やっぱりルパン三世っぽさがありましたね。ルパン三世1stは特に小道具にこだわりクルマは実際にある自動車が登場していたし第2シリーズではそこまで厳密ではないもののそのスタイルは踏襲されていました。やはり実際にある自動車などがあるとルパン三世感高まりますよね。いやキャッツ♥アイでもそれなりにリアルだしパトカーなどがありましたけどね(笑)そういった現実感は大事にしているのは物語が荒唐無稽だからこそ。なのでそこは評価しておきたいポイントでした。


 そして大塚明夫に次元が交代してからの初のスペシャル、しかもクロスオーバー作品。今度は明夫さんの次元大介メインの話が欲しいですね。小林清志の次元大介と言えば第2シリーズの「荒野に散ったコンバットマグナム」そして近作ですがLUPIN THE3RDシリーズの「次元大介の墓標」があるので、清志さんの次元の渋みとはまたちがうけれど次元を掴みつつある明夫さんの次元メインの話を観たいですね。

『ルパン三世vsキャッツ・アイ』はAmazonPrimeビデオ独占配信中。(リンクはAmazonプライムビデオ)

※ルパン三世との他作品のクロスオーバーと言えばこれ『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』Blu-ray(Amazon) 

※最初はTVスペシャルでした。『ルパン三世vs名探偵コナン』(Amazon)

この作品についても何時か語ってみたいですね。特にTVスペシャルは栗田貫一以外のルパンのレギュラーメンバーがPART2以来のメンバーで映画からは次元以外のメンバーの声優が交代した作品なので今観ると多分色々思うところがあると思います。

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