ということで今年最後の映画はこの作品を観てきました。本邦の最大のヒット作は来年へ持ち越しです(笑)
とは言え全世界注目の的の作品であり、中国を含めたロードショーはこのCOVID-19パンデミックでは久々のハリウッド映画という事で期待値は主に興行主の方にもあるでしょう。ただしジェームズ・キャメロンがその持てる力を全て投入した映像はCGだけではなく映像フォーマットにも及んでいて最初の頃のIMAX3Dからさらに4K映像そしてハイフレームレート(HFR)というまさにお重を重ねててんこ盛りといった風情です。そしてその映像は確かに現状での一つの到達点に達しているといっても過言ではありません。また『ターミネーター2』『エイリアン2』で見せたアクション巧者っぷりやガジェット偏愛も堪能できる作品となっていました。という事でざっくりストーリーの後にあれこれ思った事をネタバレ?してるかもしれないけれど書いてみようかと思います。
映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』本予告編【異次元の”没入型”映像体験】/YouTube/20世紀スタジオ 公式チャンネル
STORY/全ては海へ
アルファ・ケンタウリ星系にある惑星ポリフェマスの衛星パンドラ。豊富な自然を持つこの星は豊富な資源をも有しており危機に瀕した地球を救うアンオブタニウムという希少鉱物があった。しかし資源採掘は鉱床の上にある巨大樹を神聖視する原住民族ナヴィの部族が居住しており、ようとして進まなかった。資源開発を行うRDA社は原住民のDNAと地球人類のDNAをかけ合わせた「アバター」を創り出しナビィたちと接触、交渉しそれがうまくいかない場合には実力行使を行うための偵察を計画していたがそのアバター計画の隊員の一人であった元海兵隊のジェイク・サリーはナヴィたちと心を通わせ仲間たちとRDAに反旗を翻し彼らを撃退した。
それから10年以上の時が流れナヴィの部族オマティカヤ族族長の娘で戦士であるネイティリと幸せな家族を築いていたジェイクは2人の息子ネテヤム、ロアク、娘のトゥク、そしてRDAの戦闘部隊を率いるクオリッチ大佐の銃弾に倒れたグレイスの娘であるキリを養女に迎えていた。しかしまたもやスカイ・ピープル(地球人)が大船団でパンドラに戻ってきた。彼らは既に滅亡しつつある地球から大気組成は地球とは違うものの自然が残り資源が豊富なパンドラを植民地化するためにやってきたのだ。ジェイクは部族を率いてレジスタンスとして活動していたがそんなジェイクを討伐するためにアバターの技術を使ったナヴィの身体に元の地球人の人格を持つリコンビナントとして復活したクオリッチが彼をつけ狙う。
このままでは部族を危機に晒すと考えたジェイクはオマティカヤ族の居住地を離れ遠い群島の沿岸に住むナヴィの海洋民族メトカイナ族の居住地へ向かう。しかし執念深いクオリッチはオマティカヤ族と行動を共にしてジェイクたちサリー家と一緒に育った自身の息子である少年スパイダーを通訳に彼らを追うのであった。そして海洋に住む巨大生物トゥルクンを捕獲する捕鯨船ともに群島周辺へと向かったクオリッチたちの事をメトカイナの族長トノワリから聞かされるジェイク。果たしてジェイクは家族を守りきれるのだろうか?
驚異の星パンドラ
前回は森林部であり、巨大な岩石が空中に浮いているラピュタ+ロストワールドな世界でしたが今回は多分キャメロンが最も描きたかったであろう水、海の世界です。もちろん最初は元の密林地帯から始まりRDAの追手としてクオリッチがナヴィの身体で復活してジェイクたちを執拗に追い詰めるために部族と家族を守るため逃避行を選びその先でまた新たなという話は前回がいわゆる「白人酋長」と呼ばれる作品パターンであれば今回は西部劇などでよくある安住の地を追われ新しい土地へと移り住む一家の物語になっています。なのでストーリーとしては単純明快ですし、ヴィランというか敵も資源を乱獲し相手へのリスペクトも共感も無い連中として描かれています。とは言えその植民地化問題や資源の話も今後重要になってくるとは思うんですが今回はあくまでもジェイクたちサリー一家の話としてストーリーを転がして、パンドラという星の前回から打って変わった海の描写にむちゃくちゃ力を入れています。前回もストーリーは敵と教えられた者たちが実は純粋で澄んだ心を持ち、自分の属する勢力はただの侵略者であるという一種類型的なパターンで進めながらパンドラという不思議な世界を描くことに注力していたのが今回はさらに炸裂していて特に海中でのシーンはBBCやナショナルジオグラフィックの番組で良く観る海中ドキュメンタリーを観てるようでCGでその種のフェイク映像作られてもパッと見て分からなくなるんじゃないかなって思いました。また海中での動きもぬるぬる動いてさすがハイフレームレートと関心することしきりです。とにかく自らの考えた(というかコンセプトを伝えてデザインさせたと思うんですけど)世界を構築する事に全振りしているかのようなパンドラの海の描写はまさに一見の価値ありです。
それとともに人類側が再度のパンドラ来訪時に森を焼き海辺に前進基地として既に街規模のベースを作りだし精力的に支配地域を拡げる様にキャメロンの乱開発批判が今回も含まれているのですがそれとともにたった少しの資源のためにトゥルクンを捕獲する(トゥルクンの髄液は「アムリタ」と言われる不老長寿のエキスとなるという説明がある)様はどう考えても捕鯨批判ですよね。それに関してはかつての欧米諸国の捕鯨が鯨油を取るためだけのものだった事への批判であると思うんですがそれとともにトゥルクンとメトカイナ族が心を通わせ交流し、RDAの海洋学者がトゥルクンは高度に発達した脳を持ち文化を持つというに辺り彼の思想が感じられましたね。特に捕鯨船のキャッチャーボートの捕鯨砲(銛を発射する砲)に日本語と思わしき文字が(TwitterでアバターWoWを観た人があれは確かに日本語だったという話もありました)あり、そうかと思ったんですがそんなキャメロン監督が日本でのプレミアの時のイベントでイルカのショーが幕間にあったそうです…ディズニージャパン大丈夫ですか?と気になって調べると案の定突っ込まれて、いや知らなかったとキャメロン監督が釈明したりとかあったそうです😅
ソース|『アバター2』の日本イベントで「イルカショー」…「アバターの悪役たちがやること」(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース
メカニック
というよりパンドラの豊かな自然をこれでもかと映すのは地球上でこのような風景、景観はどんどん減ってるんだぞというキャメロンの警告であり彼の自然礼賛なんですよね。一方でそれに対抗するメカニック描写もキレキレでキャメロンはメカニック大好き人間なんだよなって分かってしまうんですよ。曰く『エイリアン2』でのスコラ号、パワーローダー、ドロップシップ(揚陸艇)、スマートガン。前作『アバター』AMPスーツ、ティルトローターヘリなど。今回は前作に出てきたAMPスーツだけではなくエクソスケルトンスーツ(パワーローダー)も活躍しているし、なによりその自然というか共存しているトゥルクンを捕獲するRDAの捕鯨船がこれまたカッコよく描写されているのがキャメロンの業の深さです。ハイドロフォイル、水中翼船だと思うんですがホバークラフトのようなダクテッドファン4発でキャッチャーボートや水中作業用のメカ(これが攻殻機動隊のタチコマっぽいんですよ)に2人乗りのミゼットサブなど水中メカ好きには堪りませんでしたね。そしてクライマックスは主にその捕鯨船が舞台になるのですが…そこはスクリーンでご確認を。今回は前回のような大規模戦闘感は若干薄い気がしないでもないんですがコッポラの『地獄の黙示録』を逆になぞっている感もあり、あちらは海から内陸でしたけどアバターは陸から海辺なのでベトナム戦争の暗喩も実は入っているのか?とも思いました。
青き身体とナウシカ
これはTwitterのふせったーでつぶやいたんですが誰かがナウシカ実写化するならキャメロンにお願いしたいという内容だったように思います。でもこれは勘違いかもしれません。というのも前作アバターを4Kリマスターしたものを先ごろリバイバル上映して世界興行収入をエンドゲームから抜き返しましたよね(笑)それは置いといてその事についてのインタビュー映像でアバターについて何にインスピレーションを受けましたかという質問でスタジオ・ジブリの作品と答えているのです。キャメロン監督が宮崎駿のファンだという話もあるぐらいですがそこでなるほどそれでそういう発言を見た気になったのかもしれませんが何故tonbori堂がそう思ったのか?それは前作でパンドラのナヴィ族と植物や動物との共感能力を調べていたグレイスの娘であるキリの存在です。キリはグレイスのアバターが出産した子どもでジェイクとネイティリが養子として育てましたが明らかに他の子どもとは違います。前作で瀕死のグレイスはエイワ(惑星全体に張り巡らされたネットワークであり世界樹のような魂の木というものに後頭部にあるフィーラーという部位を接続することでネットワークに接続する事が出来る。これはパンドラの全生命体が備えているものである)と繋がりエイワと一体化しました。)そのグレイスの娘であるキリの父親は不明です。そのキリ、度々不思議な力を使います。繋がりもっていない状況でも自由にその力を使える様はまるで『風の谷のナウシカ』いや基本的にナヴィという種はエイワと繋がっていれば全てとアクセス出来るのと違うのかとかそのための巫女ツァヒク(ネイティリの母もそうだしメトカイナ族の族長トノワリの妻ロナルもそうです)もいるやんってなるんですがだからといって指図するというのとも違う。今回はサリー一家の話としてシンプルにまとめていたためクローズアップされただけに留まりましたが今後話が進むとキリがナウシカのように「青き衣の者」みたくなるのか?と思ったからです。
もちろんキリが所謂救世主になるかどうかは分かりません。実際にナウシカだって漫画では救世主ではなく穢れた土地に救世を求める人々と生きる事を選択しました。キリの運命がどうなるかは分からないのですが今回の物語は父が語り部となりサリー家の息子たちの話であるとともにキリという少女がやがてはパンドラの運命を背負う言わば『ロード・オブ・ザ・リング』で言うところの第1章「旅の仲間」みたいなもんかなとは思いました。にしてもそのキリを母親であるグレイスを演じたシガニー・ウィーバーが演じているというのがかなりキてるなと。キリは設定14歳、シガニーは御年、73歳です。でも流石全CGキャラ、なんでも出来るなって感心しましたが、だけど母親であるグレイスとエイワの中で対面シーンとか色々ちょっと思うところありましたね(^^;でもこの親子まだ2でもその関係性やその他秘密が持ち越しなってるからまだまだ出番はこれから感がありました(^^;
ソース(動画)|(1) 『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』ジェームズ・キャメロン監督インタビュー映像|9月23日(金・祝)より2週間限定で公開! - YouTube
キャメロン監督は何処に行くのか?
さてこの物語パンドラとナヴィ、そしてスカイ・ピープルであるところの地球人がこの後どうするのかという話もそうなんですが映像技術もIMAX、4K、3D、HFRなど贅の限りをつくしている訳ですよね。もちろんそれは「映画」スクリーンで観るためのものに全てを投入している訳なんですが今回はそこまでやっているから良いとしてもじゃあ3で何を今度は語るのか?ってのは気になるところです。というのも家族が核になるのか?植民地化なのか?資源枯渇?とこういうストーリーになっていくのであればヴィルヌーブ監督の『DUNE/デューン砂の惑星』とも確実に被ってくる訳です。もうこうなってくるとどちらが言い悪いとかじゃないけれど例えばどこまで切り込むのか?今回のストーリーって多分ワイスピでやれる話ではあるんですよ。前回のワイスピなんか父の遺志、兄、弟の話だったし、そもそも血縁の無い者も含めてのファミリーの話だし。キャメロン監督が凄い当代随一の映画監督なのは間違いないけど事アバター、いやタイタニックもそうだけど語るべきはストーリーではなく映像である!ってなってる感はあるかなあって3時間観てる間そう思っていました。もう映像は凄いです、これはスクリーンで観るものだと思います。そして出来うる限り監督の意図したIMAXで3Dで4KHFR対応で観るべきものだと思うんですけれど…というエクスキューズがどうしてもついてしまうんですよね…。それはtonbori堂がTVっ子だからかもしれません。それは最近の大作に凄く感じてしまう事なんですが…。それでも架空の星の生態系を含めてそれを映像化したキャメロン監督の一大事業を見逃す手はないと思います。上映時間も含めて凄い作品でした。
※正直TVサイズで観ても凄さが確かに伝わらないってのはあるんですがとにもかくにも前作です。(Amazon)プライムビデオはこちら。→『アバター』
※登場するメカニックのトイも発売中。
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