『カネが悲劇を産む』/ファイブスター物語/FSS/ 月刊ニュータイプ2022年8月号/第6話時の詩女アクト5-1緋色の雫|まとめ【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

『カネが悲劇を産む』/ファイブスター物語/FSS/ 月刊ニュータイプ2022年8月号/第6話時の詩女アクト5-1緋色の雫|まとめ【ネタバレ注意!】

2022年7月19日火曜日

FSS manga

X f B! P L

 まさかF.S.Sで戦費と経済、中央銀行の話が出てくるとは。でも戦争を真面目に書こうと思ったらその点も確かに一側面として描いておく事は重要です。例えばマーベルの『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でも米軍初の強化人間となったスティーブ・ロジャースは強化人間の軍隊を作り出す事が出来なくなったため駆り出されたのは戦時国債の宣伝でしたし本邦も日清戦争から始まり戦時国債を発行し戦後それが元で過大なインフレを起こしました。ノンナが他国が戦争をするために戦費が足りない分はまた別の国に引き受けてもらう。当然債券である以上期限が来たら償還せねばならない。なので膨らんだ利子を払い続ける事で相手国の首根っこを掴む。それは今スリランカで起こっている事にもつながってきます。そんな話がなんともタイムリーにファイブスター物語/F.S.Sでされるというのもある程度は展開上、仕込まれていたとはしてもウクライナ侵攻に合わせてクリス(永野護)の戦争論を語っているようにも思えました。ということで幾つかのポイントを整理(まとめ)してみたいと思います。ちなみにタイトルにしたのはNHKで放送された『ハゲタカ』というドラマの冒頭のモノローグで主人公の鷲津(大森南朋)が独白する台詞です。面白いドラマなので良かったらこちらも是非。(テレ朝でも綾野剛主演で製作されています。原作は真山仁の小説です。)

『ハゲタカ』(リンクはAmazon Blu-rayBoX/primeVideoは映画版)NHKオンデマンドでも配信されているようです。(但し配信期限があるようです)

月刊ニュータイプ2022年8月号/KADOKAWA刊
月刊ニュータイプ2022年8月号/KADOKAWA刊


※このエントリは月刊ニュータイプ(NT)2022年8月号掲載/連載分の「F.S.S/ファイブスター物語」の内容に触れておりますので【ネタバレ注意】です。何卒よしなに😌

今月号の感想はこちら。(リンク先は2022年8月号の感想です)

ユーコン財団/バッハトマ

 バッハトマはビューティー・ペール会長率いるユーコン財団が麻薬(ディバインウィスパーなどブリッツェンバイターの力を使った合成麻薬)などの非合法な手段を稼いだカネを元手にして戦費を賄っていると説明がありましたがこれマネーロンダリングも兼ねているんですよね?非合法のシノギで戦費を稼ぐとはなんとも恐ろしい話ですけれど、一時は国家予算を超えるほどのカネを南米の麻薬カルテルは動かしておりそれが元で抗争も紛争なみの規模になっていたり、反政府勢力がカルテル化していたりすることも。でもそれらとは桁が違うのがこのユーコン財団でしょう。枢軸各国の戦費をも同時に賄う能力があるのですから。でもそこと互角に(今はそうでもないけれど)やり合ってたローゼンクロイツってどんだけヤバいねんとか。キュキィの実家、ザンダ財団もまたしかり。カステポー近郊の裏の有力者が色々な経緯があるとはいえA.K.Dにというのもこれまたとんでもない話ではありますね…。

元老院/フィルモア

 フィルモアの財布を握っているのは元老院、そしてその元老院を率いるバシル・バルバロッサ。フィルモアも中央銀行の所有する公債、国債の利息のみで戦費が賄えるため基本的に軍を動かすにしても元老院の意向は無視できないというのは財布に紐をがっちり握っているからという事なのです。そして今回の魔導大戦でも十分な戦費が調達されているようですが、とは言え戦時下ではそれなりに引き締められている訳で、ミヤザが最初の頃にクドクド言っていたのは行政といっても現場を回す官僚に過ぎず財布を握っている元老院が一番上なのが分かっているからこそなのでしょう。


 そしてフィルモアの本拠である惑星カラミティがいずれは、(この時点で何時かははっきりしていないはずですが分かっているのはそう遠くない未来に星が崩壊していくという事だけははっきりしている。)とは言え我々は年表でその時を知っていますが分からなくとも新たなフィルモア帝国の地を得なければならないという事ははっきりしている。そういう意味ではこの戦はその勝敗というよりもナカカラを獲る事が至上命題になっています。そのため元老院ではこの戦いに金に糸目を付けぬ感じにはなっているでしょう。当然それは数多くの傭兵(騎士)を雇入れるだけでなく、カリギュラを介してバッハトマを中心とする枢軸とも取引をしナカカラを獲るための大義名分を得るための戦いが今本編で描かれている訳です。(そういえばカリギュラとの契約にはどれほどのカネがかかるのかってのはまた別に気になりますね。それぞれが別に稼ぐ手段があるとマウザー言ってたし。マウザー教授やツバンツヒ姐さんはパテント料が入るとなっていましたがそれ何年前の?とか名義貸しがあるにしてもカリギュラも相当ヤバいシノギを持っていると思われます。)


 しかしバルバロッサ王家はサイレンの忠実な腹心であったボットバルトの王家でフィルモア成立時にその立ち位置からサイレンのブラウ・フィルモア王家と太陽王国側のボルカ・レーダー王家の間に立ち調停する役割を持たされていたはず。それが元老院という合議制の長をするようになりやがてバシルの代には合議制の元老院システムがフィルモアの経済中枢さえもコントロールするに至った。フィルモアは直接、間接的に支配している領土も多く戦費に関しても現状では殆ど問題は無いようですが、とは言えカラミティは何れ崩壊してしまう事を考えると安泰ではないためこのナカカラの一件は改めてフィルモアのターニングポイントになりそうです。

天照家/A.K.D

 A.K.Dは天照の独裁国家であるため当然国の中央銀行も彼が掌握しており戦費、国債を含めて全てそうであると。そのため手を出せば抹殺、または消される(文字通り)というのはツバンツヒ姐さんが過去カリギュラのメンバーがA.K.Dに近づき文字通り「消された」と言っていましたよね。でもジョーカー星団では統一通貨フェザーを使っておりこの通貨を流通させ星団でコントロールする組織があるはずなんですがそれはなんだろうか?というのも気になるところです。もしかすると惑星単位、もしくは国家単位での為替変動があるかもしれないのですがジョーカー星団の企業体もそれなりに力を持っているので通貨は星団会議で共通としているとすると、それを管理する国際銀行や国際通貨基金のようなものが必要になるのでは?と思いましたが何せtonbori堂は経済音痴でございますし素人なのですがそれぞれの太陽系を結ぶ決済システムが無いとやり取りが大変なのではないかと。実際クレジットのブラックカードがあるという事はそういうもので決済されているであるはずなので。


 でも大侵攻後はそのくびきからA.K.Dは外れていくので、結局A.K.Dがジョーカー星団の全ての太陽系を制覇すれば(最後まで残ったのはジュノーのコーラスとなりますが)経済圏としてA.K.Dが全てをコントロールする事になり特段不都合は起きない訳です。もっともそんな事は「誰もが」不可能と思っていた訳でいざ侵攻されたら例えばアドラーでは歓迎されたというのは魔導大戦の余波で起こる次なる火の手からの話で、それぞれが疲弊したから安定した強国の支配を受け入れたという事でしょう。もちろんフィルモアをはじめカラミティの列強は星の寿命が無くとも超帝國からの歴史をもってA.K.Dという新参者に対して面子、矜持をかけて対峙した訳ですが。その後ボォスもカステポー近郊、聖都ラーンは治外法権とされましたがミノグシアもその手に落ち、残るジュノーの命運も年表の通りなのですが結局人というものは…いやそれはまだ先のお話でしたね。脱線しました。

ストラウス家/クバルカン法国

 クバルカン法国はフィルモア帝国を含むグレート・ショルティ国家連合の一部でもあり基本的にはフィルモア帝国と同じ経済圏の中で活動しているんですが、今回のギーレルの件に関してはギーレルを第2のクバルカンとする事になる訳ですよね。そのためにまずギーレルの経済を掌握するためにジャスタカークと組んでギーレルを襲わせる事まで行ったという(ちなみにジャスタカークはギーレルに領土を過去に持っていたのでその領土奪還という大義名分がたっていたとのこと。)多かれ少なかれカラミティの諸国家は今後の事を考えて魔導大戦に参加しているのは分かっていましたが(それはウモスやロッゾも同様でしょうが)ボスヤスフォートは単純に星団に混乱をまき散らす事だけが目的ですがカラミティの諸国家は今までの単純な紛争介入や資源確保の領土目的の戦争や紛争ではなく深刻な事情があります。その中でもクバルカンはルーン騎士団をはじめとする法と徳で治める法治国家でありながらその闇の部分はカネで相手を支配するという。まさに大国のやり方。しかしノンナはクバルカンのルーン中央銀行を支配するストラウス家の人間としてその暗部を法と徳をもったミューズに代わり汚れ仕事を遂行していく覚悟です。


カネはやはり悲劇を産む

 経済の事に関しては素人なんでいや本当に書いてあることをまとめただけなんですが実際の戦争は相手の経済を握っただけでいう事を聞かせても結局は上手く行かなったりするものです。それは歴史が証明しています。と言ってもそれはこの国の歴史の話なんですが図らずもノンナはラピスにこう言っています「戦争に正義も徳もあるものか!」と。クバルカン法国は徳と法を持って内外を治めて来た騎士国家です。ですが王が騎士という国よりそうでない国も多いのも事実。ロッゾ、ウモス、新興国コーネラも王は騎士ではありません。騎士は力を持つが故に羨望されていますが今の星団では超帝國の頃と違い力はあるけれど少数派なのです。となればクバルカンが力押しだけで周辺国家を抑えようとしても上手くいくはずもありません。だからクバルカンの徳や法というのはようするに建前でありスパンダ法王もミューズをカステポーに送り出したのはそういう建前だけでは通らぬ事を判断できるように俗世に揉まれて成長せよという親心だったんですが、そこから考えるとノンナは汚れ役を引き受けるというのは些か過保護な気もします。もしかするとミューズは今後法王としてルーン騎士団を動かすかもしれませんが…まだ未熟かな…とは言えこの2人の未来も気になるところですね。ということで最後はノンナとミューズの事になっちゃいましたが次回はどうなるのか?そろそろ何か動き出すかもしれないですね。

月刊ニュータイプ 2022年8月号(Amazon)

F.S.S. DESIGNS 3 KALAMITY GODDERS:BOTH(Amazon)カラミティの諸国家やボォスの状況を知るには良いテキストです。ただこの頃はまだGTMではなくMHでしたが。その後のリッターピクトやクロスジャマーと併せて読めば既にもう書いてあったか!となる事も多いです。

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