リターン・トゥ・ザ・デンジャーゾーン/『トップガン マーヴェリック』感想【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

リターン・トゥ・ザ・デンジャーゾーン/『トップガン マーヴェリック』感想【ネタバレ】

2022年6月5日日曜日

ACE COMBAT airplain movie

X f B! P L

 まさか36年越しに『TOP GUN』の続編を観る事が出来ようとは。実際続編の話が出てきた時にも前作を監督したトニー・スコットが亡くなり、ええっこれどうするのとなりましたがジョセフ・コシンスキー監督加わり2年前に完成。しかしCOVID-19パンデミックにより公開が2年も延期され、やっとの公開です。ですが待ち続けた甲斐のある作品でした。まさに「続編かくあるべき」のような映画で、前作から歳を経た主人公、相変わらず若々しいトム・クルーズですがその風貌には前作の若々しさではなく年輪を刻んだ男の貌がそこにあります。そして導師として亡きグースの息子やトップガンの精鋭たちを鍛えるだけでなく、自らも限界に挑み続ける。ストーリーは一本道の簡単なものですが奇をてらわず正攻法であとは本物の迫力と演者で見せる、これこそがブロックバスター大作という映画に仕上がっていました。では大きなところから細かいところまで色々と書いてみます。

※映画『トップガン マーヴェリック』ファイナル予告/YouTube/パラマウント・ピクチャーズ(日本版)ch/

帰ってきたマーヴェリック/STORY

 ピート・”マーヴェリック”・ミッチェル、かつて米海軍戦闘機兵器学校「トップガン」に選抜されたパイロットであり教官も務めたエースパイロット。昇進を拒み未だ大佐として現役パイロットの彼は現在極秘プロジェクトである実験機ダークスターのテストパイロットとして音速マッハ10の壁を目指していた。しかし計画の監督者であるケイン少将は無人機への開発を進めるため有人機計画の中止をスタッフに通知していた。しかし直々にケインが中止を言い渡しに来る前にマーヴェリックはダークスターでマッハ10を目指す。基地にやってきたケインを横目に離陸したマーヴェリックは成層圏で飛行速度試験に移りマッハ10を達成、さらなる記録を目指して加速するが機体は空中分解してしまった。無事脱出し生還したマーヴェリックに対しケインは不名誉除隊または飛行禁止任務で僻地の基地へ飛ばすと宣告する代わりにノースアイランド基地へ向かうように命令する。


 マーヴェリックはノースアイランド基地に集められたトップガン卒業生の中でもさらに成績優秀者を集めた精鋭の訓練を任されたのだ。精鋭たちに課せられた任務はならず者国家による核兵器開発施設破壊。山中の窪地に設けられた堅固な地下施設で周りはSAM(地対空ミサイル)で守られた鉄壁の要塞でもある施設をピンポイント爆撃で破壊する。この高難易度のミッションを達成するためにマーヴェリックは呼ばれたのだ。しかし集められたパイロットの中にかつての自分の後席RIO士官であったグースの息子、ブラッドリー・”ルースター”・ブラッドショーがいた。ルースターがいることで戸惑うマーヴェリックだったがこの任務は今は大将まで昇進しているマーヴェリックのトップガン同期だったトム・”アイスマン”・カザンスキーの推薦だと作戦の司令官であるボー・”サイクロン”・シンプソン中将は告げる。マーヴェリックは意を決し誰一人欠ける事無く生還できるように過酷な訓練を彼らに課していくのだが果たして任務は無事に達成されるのであろうか?

デンジャーゾーン

 いきなりオープニングからこれですよ。トップガン・アンセム。あの幾度も使われているトップガン風な映像に使われる定番サウンドトラック。もちろんオリジナルのハロルド・フォルターメイヤーのあのサウンドトラック「トップガン・アンセム」からのケニー・ロギンス『デンジャーゾーン』、正直言いますとtonbori堂はこのオープニング、思わず失笑かつ「本気か?」と思いました。前作『トップガン』と同じ始まり方って36年後もこれか?と。音楽だけならノスタルジックなオマージュとも思えますが何一つ新しさを感じられなかったのです(映っている戦闘機はF-14トムキャットからF/A-18スーパーホーネットなどに更新はされていましたが。)。ここで号泣した人も多いとTwitterやネットの感想でも見たんですが本当にえっ?としか思えなくて…でもOP後、マーヴェリックが現役パイロットとして最新鋭の実験機のテストパイロットであり、そのプロジェクトが中止に追い込まれそうになっているという事。そしてその命令を下しに司令官が来るまでの間にマッハ10の壁を越えようとする事が描かれます。もうここでやられてしまいましたね。


 実際にはこのシーン、架空機ってこともありCGも使われセット撮影ではあるんですが偉大なる先人『ライトスタッフ』のチャック・イェーガーを思い出すシークエンスでした。そして『ファースト・マン』で機体に異常が出ながらも飛行して宇宙の底に魅せられたアームストロング。マーヴェリックもまた未だ空にあることに自分の存在意義を見出したベテランという事を示したいいシークエンスだと思います。その後、本来ならば責任を取って飛行禁止ないしは不名誉除隊もありえたマーヴェリックは今は大将になっているアイスマンの手回しで再び教官として現役の精鋭を鍛えるという流れも凄く納得できるんですよね。いきなりマーヴェリックがトップガンの精鋭たちの前に現れ彼らを困難なミッションに導くのではなく、あれから30余年が過ぎても未だ現役で空を飛ぶことにこだわり続けている一匹狼の凄腕パイロット。それが十二分によく分かるシークエンスです。

リアリティ&リアル

 今回の作品のインタビューやプロダクションでの話でも彼がスーパーホーネットに登場するための訓練プログラムを考え一緒にトレーニングに臨んだことが語られています。トム・クルーズは映画のためなら出来る事はなんでもやるし本物にこだわる。でも一般のお客にFCSやらなんやらをクドクド説明はしないまず画の快感原則を優先するそれが映画製作者としてのトム・クルーズの凄いところです。マーヴェリックの所有物であるP-51マスタングも実はトムの私物であり彼はそれで曲芸飛行もやるとか。作品に説得力を上げるならなんでもやるのがトム・クルーズの流儀なのがよく分かります。


 もっと凄いのは出演者で戦闘機パイロットであるキャストはなんと撮影までも担当。そりゃ前席にカメラマンが入ればいいけれど前席はスーパーホーネットを操縦する本職のパイロット。ならばコックピットのキャストを撮影するのは本人しかいません。そんな前代未聞の撮影を行えたのもやっぱり全ては作品のために粉骨砕身するトム・クルーズがスタッフ・キャストを引っ張っているからだと思います。というか前作ではみんな吐いて(トムだけ吐かなかったとか)コクピット周りが使えずセット撮影に切り替えたという逸話もあるんですがあれから36年でここまで来たかと。今後はそんな危険な撮影をしなくともセットで実機と見紛う如きのとなるかもしれないけれど実際のF/A-18が持つ凄みそして搭乗員にとっては棺桶になるかもしれない空間を生で観れるのはやはり迫力が違います。(ちなみに今作でもトムとフェニックス役のモニカ・バルバロ以外は吐いてしまったそうです。)


 ただ全てがリアルって訳ではありません。任務内容の敵である「ならず者国家」、字幕ではそう出ていましたが劇中でもどこそこの国とはっきり明言されてはいません。この物語は何か現実の反映ではなくマーヴェリックの物語であり彼の訓練生の物語だからです。そこがもし気になるならば多分この作品は楽しめないかと思います。ただこの「ならず者国家」にはモデルがあります。F-14を今現在装備しているのはイランだけなのです。とは言え東側の最新鋭機第5世代戦闘機と呼称されていたSu-57が出てくるあたりいろいろミックスされてはいます。(イランはSu-57は導入しておらず自国開発のステルス機を開発している。)そしてパイロットは真っ黒なパイロットスーツに黒のヘルメット、バイザーで匿名性が高い恰好。この辺りは前作同様雅に映画の「敵国(仮想の)」としての入れ物のようなものと考えた方が良いでしょう。そこはまるでエースコンバットのようです。だけど本物のコックピットで撮影された映像があるからこそこのシークエンスにリアリティが産まれているのです。

トップガン・ミーツ・エースコンバット

 マーヴェリックは今回、困難かつ危険ななミッションに全員生還を期するため集められた現役パイロットのトップガン卒業生たちに過酷な訓練を彼らに施す訳ですが、そのミッション内容はエースコンバットファンにはお馴染みのものでした。高度制限のある中で谷底を這うように制限時間内で飛行する。そして目標地点に到着したらピンポイントで爆弾を投下する。ブリーフィングシーンで「これエースコンバットのミッションだ!」と心の中で叫んでしまいました(笑)


 エースコンバットの方も『トップガン マーヴェリック』とコラボしてDLCを発売。まあスーパーホーネットのマーヴェリック機はモデルはそのままスキンを変更(後で見ると単座のため新規モデルっぽいです😅プロジェクトACES、気合の入り方がやっぱり違います。)、マーヴェリックに合うようなピーキーなセッティングにしているんでしょう(未だ購入していない)し、F-14Aも想定内でした。第5世代戦闘機もSu-57あるしこれも想定内です。しかしダーク・スターはびっくりですよ。まさか実装されるとは思いもよりませんでした。エースコンバットファンとしてはトップガンマーヴェリックとは直接関係ないけれど嬉しいニュースでしたね。


 ちなみに先日読んだwebの記事によるとダーク・スターはロッキードの航空機設計チーム「スカンクワークス」が協力していると明かされていました。スカンクワークスは戦闘機F-104や偵察機SR-71ブラックバードを設計したチームとしてしられ近年ではステルス戦闘機F-177が上げられます。スクラムエアジェットを装備した超高速実験機であるダーク・スターのシルエットはなるほどSR-71のようでもありますね。また劇中でも機体にスカンクワークスのエンブレムが描かれていました。その時はもしかしてと思っていたんですが記事で裏が取れた格好です。

ソース|‘Top Gun: Maverick’s’ “Darkstar” Mystery Plane Has Real-World Relative – Deadline

 それとトレンチ(溝)→谷を高速で飛行して小さな排気口に爆弾を投下して破壊するというのは『スターウォーズ』1作目のデススター破壊ミッションにも通じるのでスターウォーズファンがそこで盛り上がっているというのもTwitterで散見しました。でもtonbori堂はエースコンバットファンなのでまずエスコンでしたね(笑)(スターウォーズも大好きですよ。特にオリジナル・トリロジーは共に歩んできたと言っても過言ではありません。)でも言われてみるとスターウォーズではあるんですが、いわばこれは戦争映画定番のミッションなんですよね。特に重要目標をピンポイントで攻撃するというのは。古い戦争映画で『633爆撃隊』というのがあります。ノルウェーのフィヨルドの奥にあるV2ロケットの燃料工場を爆撃するべく英空軍のモスキート爆撃機隊とノルウェーのレジスタンスとの共同作戦を描いた映画です。デススター攻撃もこれが下敷きになっているとか。古い映画ですが優れた戦争映画として名作として知られています。ある意味トップガン マーヴェリックは航空機アクション映画の系譜もしっかりと受け継いでいると言ってもいいのかもしれません。

マーヴェリック

 『トップガン』の続編である本作ですが再びマーヴェリックに同じ役を再演させるのではなくその役を他の若いキャストに割り振ってその彼を見守る役割を振るのではなく、未だ空にしがみついているマーヴェリックに時代遅れと突き付けても「でも今じゃない」と何時かは降りる時が来るとしてもそれまでまだやれるというシンプルなメッセージが多くの人の心を揺さぶるんだと思います。それとともに時に弱気になるマーヴェリックを励ますアイスマン、ヴァル・キルマーが咽頭がんからカムバックし彼の声はAIで作られたものですが役もアイスマンはがんにおかされ余命いくばくもないのにマーヴェリックに再び道を指し示すなんてもう前作からのファンにしてみればぐっときますし、何も知らないで観てもマーヴェリックとアイスマンの関係性は伝わる名シーンです。最後にどっちの腕がってアイスマンが聞くのもまたいいんですよね。アイスマンの出番は短いですが作中では非常に重要な役回りでした。その分ケイン少将役エド・ハリス(ハリスは『ライトスタッフ』のオリジナルキャストでそのオマージュはあるなと思いました。)はちょっと無駄遣いな感じがしましたがマーベリックとのやり取りで無人機の降りではエースコンバット7を思い出してしまいましたね。


 トニー・スコットはマーヴェリックは滅びゆく最後の種族のようなパイロットとして描こうとして無人機vs有人機というような話を考えていたとか。(ブラッカイマーのインタビューから)これは映画『ステルス』でも自律制御のAI搭載機が出てきますし、アニメ『マクロスプラス』でも描かれた話ではあるんですが、どうしても直近の『ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWN』での自律制御AIの無人機とのバトルを思い出してしまいます。トニー・スコットが死んでしまったのでどういった帰着点を夢想していたのかは分からないのですが今後もし同種の作品が作られるとして『ステルス』や『マクロスプラス』とは違う面を出してこれるのか?ってのは航空機アクション映画好きとしては気になるところです。と脱線してしまいましたが今回のストーリーはマーヴェリックを立てるものとしてはもうパーフェクトじゃないのかなと思います。


 一方でマイルズ・テラー演じるグースの息子ルースターやジェニファー・コネリー演じるバーオーナーで昔馴染みのペニーという重要キャストに目を向けるとマイルズ・テラーは「セッション」の鬼気迫る演技をみせた若手俳優ですがひげをはやしていると前作のグースに似てるんですよ。すごく納得できるキャスティングでした。そしてペニー。前作でマーベリック(前作準拠)が手を出してヤバい事になった将軍の娘というセリフのみの女性を出してくるのも驚きましたね。でもこれ覚えてなくともマーヴェリックとペニーが昔馴染みであるというのは観ていれば分かるしこれ前作ファンも新しいお客様にもよい塩梅です。子連れのシングルマザーで海軍の兵士が集うバーのオーナーってのも、もっともらしい設定だし。マーヴェリックの相手として自立しており彼が最大の理解者アイスマンを失った時に背中を押す役としてこれ以上ないポジション。出来すぎなんだけどパッチリはまっているのでぐうの音も出ないんですよね。


 それに対して集まってきたトップガンパイロットたちの描写が薄い事は否めません。それでもグレン・パウエル演じるハングマンやモニカ・バルバロ演じるフェニックスといった印象に残るポイントがあるキャストも。ハングマン役パウエルは『トップガン』のアイスマンの役回りで飛行技術に関してはマーヴェリックという美味しい役でしたがやっぱりマーヴェリックにつながっていくという。またそれの対比としてここでも自立したフェニックスというパイロットがいるというのも良かった。ここはアンサンブルキャストというよりマーヴェリックの周りを彩るアンサンブルとしてなんだと思います。さじ加減は難しいとは思うんですが全体的にいいバランスになっていましたね。

 振り返ってみると徹頭徹尾、マーヴェリックのお話となっており、達成するべき任務もシンプル、登場人物もシンプル、ストーリーもシンプル、まさにシンプル・イズ・ベスト。前作への過剰ではなく、でもOPタイトルシークエンスはいささか過剰になんですが、思えばあれもトップガンの続編であるというファンファーレであり、そこからは前作をなぞりながらもちゃんと「マーヴェリック」の話ですという抑制が効いているというバランス。からのクライマックスびっくり3段オチ、そこが良かったのだと思います。今劇場で、スクリーンで、堪能して良かったと思えた1本です。

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