そんなにウルトラマンが好きなのか?『シン・ウルトラマン』雑感|感想/考察【ネタバレ】-Web-tonbori堂アネックス

そんなにウルトラマンが好きなのか?『シン・ウルトラマン』雑感|感想/考察【ネタバレ】

2022年5月16日月曜日

movie SF 特撮

X f B! P L

 ということで初日のIMAX上映に滑り込んで観てきました。ほぼ心の中では前半は100兆点、そして後半はマイナス点もあるものの75点な感じでした。いや本当は数値化するのいやなんですけれどね。だって「いいものもいい、わるいものはわるい」が信条なのでダメだったら素直にスルーするだけです。もちろんエントリ掲載はしますけど(ヲイヲイ)で『シン・ウルトラマン』、『シン・ゴジラ』の作法で『ウルトラマン』をやりました。でもTV用のプロットを連作仕立てにして一本の連続構造に見えるようにしましたというものでした。これ自体は悪くないと思いましたし怪獣が登場する作品として何故出現するのか?具体的ではなくとも出自が分るようにする事への掴みやそれに対処するスペシャリスト集団、ウルトラマンとは何者か?という部分も盛り込まれていたと思うのです。ただ実際にはここは残念だな思うところと表現にも気になる部分があり、以下良かったところやその気になったところを書いていこうと思います。

映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】/YouTube/東宝MOVIEチャンネル/©2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©円谷プロ

空想特撮映画『シン・ウルトラマン』の内容に触れておりますので未鑑賞の方は鑑賞後にお読みください。

タイトルバック

 『ウルトラマン』は印象的なOPが有名です。絵の具のようなペンキのような液体のようなタイトルが回転しゆっくりと文字が現れてくるお馴染みのやつです。当然あのBGMが鳴ればそう来るだろうなと予想が付きますがそこで出てくるのは「シン・ゴジラ」そう来たか!って特撮好きの琴線をくすぐって来る演出ですがここからがまた怒涛の展開、『ウルトラマン』の前に放送された『ウルトラQ』で登場した怪獣たちが「巨大不明生物」から「敵性巨大生物」「禍威獣」へと変化していきその対応のため設立されたのが防災庁、禍威獣特設対策室という流れ。そして対応に苦慮しつつもこれまでの6体については1体は行方不明になるものの5体を駆除に成功している世界が説明されます。


 これは上手いし、21世紀にウルトラマンをアップデートしてTVシリーズとするなら理想の方法だし見せ方でした。もうこれだけで多幸感に溢れていましたね。ようするに『シン・ゴジラ』の則で「ウルトラマン」をやりますと言ったも同然なんですから。なのでOPタイトルを含む前半は100兆点な訳です。

科特隊not禍特対

 この世界は怪獣いや禍威獣が出現する世界でありそれを災害として対処する官庁として防災庁が設立、禍威獣対策の専門家として各省庁から人員を招集した禍威獣特設対策室専従班、略して「禍特対」は科特隊と違って国家機関です。科特隊は国際的な組織であるのに対し禍特対が国家機関であるのは図らずも登場人物の一人、禍威獣特設対策室の室長である宗像が禍威獣は「何故かこの国しか出現しないんだ」と語るシーンが予告編にあります。


 怪獣特撮好きが一度はぶち当たる何故か地球のしかも日本だけでしか怪獣が出現しない問題。初代ウルトラマンは「バラ―ジの青い石」や「故郷は地球」などのエピソードで日本だけではない海外とのつながりを感じさせるエピソードがありました。それでも上部組織の影は普段は殆ど感じません。これは一応考えられてはいてもエピソードとしてそういう感じですという事で直接的に世界につながってはいきませんでした。今回の『シン・ウルトラマン』では舞台は日本から出ません。だから国際的組織の下部組織である科特隊では、怪獣は世界で猛威をふるっている事になりますが日本だけに出現する現象であれば日本だけで対処するのが自然です。(米などの諸外国からの干渉はあるでしょう。実際それはセリフで示唆されているし米軍の協力といっても武器購入からの運用委託ですけれど描写もありました。)だから禍特対を国家機関にしたのは『シン・ゴジラ』で主人公が政府の内閣官房副長官でありいち早く巨大不明生物に対しての災害対策を立てるために関係各省庁から集めた巨災対と同じ則だというのが分かります。ここでまた『シン・ゴジラ』の則な訳です。期待値がMAXな訳です。そこで禍威獣ネロンガ出現で禍特対出動となるのです。ここでウルトラマンはどう登場するか?でまた期待値上がる訳です。

銀色の巨人、飛来す

 透明禍威獣ネロンガに対して万策尽きた禍特対、そこに突如大気圏外より飛来する物体。それは銀色の巨人としか形容できない生命体でした。外星人(この世界での異星人の呼び名)であろうその巨人はネロンガに対し徐に腕をクロスすると手から超強力な熱光線が放射されネロンガを撃破しました。その時に威容を現したウルトラマンが、いわゆるAタイプと呼ばれるマスクに近い形状なんですよ。銀色も、そこは銀色なのか!ってなったし後々、あの特徴的なツートンカラーの銀と赤、そして赤から緑という体色変化でカラータイマーの代わりをする事になるんですがもう、なんならこのまま銀色で最後にあの赤のラインが入るでもいいんですよ!って思いました。でもそこからがちょっと?ってなる部分も入ってきます。

ウルトラQからウルトラシリーズの手触り

 冒頭でウルトラQを掬い上げたかと思えば禍威獣ガボラを撃退した辺りから明らかにウルトラマンというよりウルトラセブン的な展開を見せていきます。地球外の異星人、といった意味でしょうか外星人と呼ばれる生命体として初代ウルトラマンから登場するザラブはウルトラマン抹殺計画を立案し日本政府に持ちかけるしメフィラスはベータカプセルと同じ仕組みであるベータシステムを地球人に与え干渉し支配(コントロール)しようとします。そして同じく外星人であるウルトラマンと接触し彼もまた「光の星」と呼ばれているところから地球を観察するためにやってきた事が分かってきます。これってウルトラセブンに近いですよね。今のようなM78星雲の光の国からやってきたウルトラマン設定が産まれてくるのは『帰ってきたウルトラマン』から端を発したウルトラ兄弟というところのように記憶しています。それまで『ウルトラセブン』ってウルトラマンへの言及も無いし科特隊は警察的な組織で強力な武器を持っていますが、あくまでも軍隊ではないという位置づけでした。それが『ウルトラセブン』では地球防衛軍という軍事組織となり地球は遊星間戦争の只中にあり地球は多くの宇宙人から狙われており侵略者から地球を守る軍隊のエリート部隊がウルトラ警備隊なのです。


 後半の展開で地球人はまだ外星系へ進出出来る力はないもののそのポテンシャルを秘めており危険視され一旦は光の星の裁定者であるゾーフィにより刈り取る決定がなされましたがこの話はウルトラシリーズではまだなかったように思います。侵略者は何故か地球に魅力を感じ地球を欲した者たちでそれこそメフィラスのような者から死にゆく母星を救うため地球人の生命力を欲したもの、帰るべき星を無くし地球へ強引に移住しようとしたもの。色々な理由がありましたが地球は危険なので星系ごと破壊するというのは庵野監督の脚本らしいなと思いました。1兆度の熱球で地球と太陽系を焼却するというのもゼットンの1兆度の火球なら実際には太陽系を破壊しつくすのに十分すぎる力があるのでそれを持ってきたのも納得の描写ではありました。


 でも最初『シン・ウルトラマン』って勝手にビギンズと思っていたのが最終回なエピソードまで駆け抜けたという事が中盤で?えっこれどこまでいくのって思ったんですよね。しかもザラブの奸計で神永がウルトラマンというのは早々にばらされてしまう事態になってしまうのも、えっ?もうなの?ってなったしただこれそれぞれエピソードを圧縮していたので性急に感じたもののマイナス点とまでは思っていません。どちらかというとマイナス点は個々の描写でしょうか…。

劇中描写

 気になったのは浅見(長澤まさみ)が気合を入れる時に尻を叩く描写。別にそういう人がいてもいいんですけど今どきそういうアクションをする人いるのかな?と気になりました。もっと言えばいやそれ昭和初期ではないかと。確かに初代ウルトラマンは昭和40年の作品ですが(劇中で明言はされていませんが近未来だという事が示唆されていたはずです)うーんどうなんだろうと。それとメフィラスのデモンストレーションで巨大浅見が東京に出現するという時に足元から下を見上げるアングル。スカートの中身は映らなかったものの、これもどうかなと気になりました。正直なところこれが5年前なら気にしなかったと思います。そして今でもいわゆる意識のアップデートはまだちゃんと出来ているとは思っていません。失礼な事を自分でしてしまう感覚はどこかにあります。そんな中でもこのシーンはちょっとどうなんだろうと思ってしまったし、指摘されてしまうのではと観ている最中思ってしまった訳です。浅見が巨大化して虚ろな目で街を闊歩しビルを叩き壊す、蹴り倒すというシークエンスはいいと思うのですが…。これに関しては世代でちょっと意見が分かれるようで、Twitterを見ているところではそう見えました。(もっと違った意見もありましたが)tonbori堂としては観ている時に気になったポイントです。(ちなみにtonbori堂の世代はどちらかというと気にならない世代のようです。)


 初代の『ウルトラマン』から5つストーリーのプロットを再構築した手腕はお見事と思いましたがゼットンの使われ方とその対処に関しては少し残念な感じを抱きました。それは物語としてあくまでも地球側はウルトラマンのベータシステムを解析したサポートに留まり実行に関してはウルトラマン頼みになってるところです。ここはベータシステムを解析しロケットに無重力状態を発生させ空間の歪みを作って対消滅させるシステムを打ち上げてウルトラマンがそれを守ってというような、禍特対、そこからの日本政府だけでなく世界を巻き込んだ展開だったら?もっとtonbori堂としては盛り上がったかもしれません。えっ?そこも最後ウルトラマンに頼むの?ってなったのは事実ですんで。但し最後のウルトラマンとゾフィーの会話をリスペクトしたあのリピアいやウルトラマンとゾーフィの会話は良かったと思います。オチとしても納得できるものでした。


 良かったところは他にもあります。これはTwitterでも多くの人が言ってるメフィラス。山本耕史のメフィラスは慇懃無礼というのはメフィラスのためにあるというぐらいのはまり役。彼とのエピソードだけで2時間でも面白いものが作れるのではないかというほどのポテンシャルがあります。ザラブの津田健次郎のあの喋り方もNetflixの『ULTRAMAN』でも異星人アダドを演じてますけどザラブ星人のいやらしさっぽいところを上手く演じてますよね。でもメフィラスはいやこれはちょっとズルいだろっていうぐらい良かったです。ウルトラマン、神永新二役の斎藤工も不思議な役を不思議な感じで彼もまたこのウルトラマンという外星人と神永新二という公安警察官という謎めいた人物を演じるに適役だったなと思いました。ちなみに他のキャストも悪くなかったと思いますが今回もまた役者の無駄遣いが凄い(褒めてる?のか?)政府関係者で利重剛や堀内正美、そして『シン・ゴジラ』の竹野内豊。竹野内豊はもう完全シークレットゲストですよね。tonbori堂としては『ウルトラマンネクサス』にも御出演し円谷プロにも縁が深くウルトラマンやウルトラセブンのエピソードを監督した実相寺昭雄監督とも縁が深い堀内さんにうわ、出てはる!ってなりましたけども。長澤まさみも気になるショットがあったけど彼女自身はやっぱり良いなと思うシークエンスはありました。何気ない所作がいいんですね。それと船縁を演じた早見あかりはともすればモブになってると言われそうなんだけど潤滑油になっているんですよ。有岡大貴演じる滝も船縁に助けられる場面が多くて早見あかりの良さがあったと思います。その他…西島秀俊と田中哲司は何時もの西島秀俊と田中哲司でした(ヲイヲイ。でもこの2人って場面を作れる人なんですよね。踏んでる場数と胆力がやっぱりあるなって思うんですよ。バッジをクルクルする宗像やブラインドから外をうかがう田村なんかはもう別のドラマでも何回もやってそうなのに、場面にはまる演技してるんですよ。やっぱり上手い人たちです。

これが最後のウルトラマンとは思えない…

 実際のところ「シン・ウルトラマンデザインワークス」には3部作構成であったことが記されています。もちろんそれがそのままその通りになるというのは現時点では未定かつ掲載されているのもあくまでも企画でありますから実現するかどうかも不明です。その中で『シン・ウルトラマン』の次は『続・シン・ウルトラマン』とされ3部作の最後は『シン・ウルトラセブン』とされていました。ちなみに(仮題)ですが。もし実現すれば続では地球人類を狙ってくる外星人やザラブのよう地球人を先に滅ぼすために暗躍する外星人など様々な外星人とともに彼らの生物兵器としての禍威獣との戦いが描かれる事になるでしょう。そして当然禍特対も外星人相手の防衛組織として防災庁ではなく防衛省への再編もあり得るかもしれません。またその後の展開では国連主導の防衛組織となれば、『地球防衛軍』と『ウルトラセブン』という夢のコラボレーション的リメイク版があり得る可能性も…。とは言え何も決まってはいませんが『シン・ウルトラマン』気になるところはあっても『シン』ユニバースとしてはこの先の展開を妄想させてくれる世界観のリアリティがありました。幾つかのポイントで気になったもののこの世界観は好きです。これは突飛な話かもしれないけれどエヴァも庵野監督は自由に引き継いでほしいと公言していたように思います。庵野監督はこの後『シン・仮面ライダー』が控えていますし、抱えているプロジェクトもまだあるでしょう。そして作るたびに消耗しているのはカラーの公式アカウントにあった「大きなカブ」でも明らかです。なのでこの『シン・ウルトラマン』も新しい才能がその世界観を引き継いで是非新しい物語を紡ぎだしてもらえないだろうか…なるべく早く…そんな事を夢想しています。


 実は未知の生命体としてのファーストコンタクトの話や『トップをねらえ!』との話。エヴァの話もあるんですがそれは短めにまとめてまた書きます。ということで『シン・ウルトラマン』…ドラマシリーズで観たかった!それも夜10時ぐらいの1時間物で!って事でお後がよろしいようで😅

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