序章|『DUEN/デューン 砂の惑星』感想/考察【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

序章|『DUEN/デューン 砂の惑星』感想/考察【ネタバレ注意】

2022年1月6日木曜日

movie SF VFX

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 『エターナルズ』前に本来なら感想エントリを書くはずだったんですが『エターナルズ』を先に書いちゃって落ち着いてしまったので今頃の感想エントリとなりました。多分去年で一番、映像と雰囲気では最高クオリティな作品でした。そして大いに興味をひいたけど反面この映画で語られた事が序章なだけに本編だけでは評価しづらいなというところもある作品でした。ただドゥニ・ヴィルヌーブにより解釈されたデューンの世界観が余すところなく描かれた作品世界はIMAXで観るに相応しい映画であったように思います。以下あらすじに続き思った事を書いていきたいと思います。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』日本版本予告/YouTubeより/ワーナー ブラザース 公式チャンネル

アトレイデス家の没落

 人類は宇宙に進出し長い年月が過ぎた。人類の版図を劇的に拡げたのは砂の惑星/デューンと呼ばれるアラキスで産出するメランジという香料(スパイス)それを使って勢力を拡大していったのだ。10190年、レト・アトレイデス率いるアトレイデス家は皇帝よりそれまで圧政をもってアラキスを治めていたハルコンネン家に代わりその領土を統治せよとの命が下った。これはアトレイデス家の力を恐れた皇帝の罠であった。裏ではアトレイデス家と積年の恨みがたまり抗争を繰り返していたハルコンネン家と通じアトレイデス家を陥れようとしていたのである。レトはその事を見越した上でアラキスに赴任する。腹心の部下であるダンカンを先遣隊として送り込みアラキスの先住民フレメンと接触させ彼らと共にその企みを覆そうと考えていた。


 レトの一人息子で跡継ぎであるポールは毎夜不思議な夢を視ていた。師であり友であるダンカンの死、そして青い目の少女。その事を母であるレトの側室レディ・ジェシカに相談していたが夢はますますビジョンとして彼の脳裏につきまとうようになっていった。そしてアラキスの出立前のある晩にある訪問者がやってくる。母ジェシカの属していた皇帝の諮問機関ベネ・ゲセリットの教母ガイウスはジェシカにポールを案内させある試練を与える。それを乗り越えたポール。ガイウスはジェシカにこの先どうなっても2人の命は保証することを約束し去った。


 一方ハルコンネン家当主ウラディミール男爵は甥のラッバーン、メンタート(計算人間)バイターに命じて皇帝の近衛部隊でその凶暴さで銀河に名を響かせるサーダカーとともにアトレイデス家襲撃の計画を進めさせていた。内通者の手引きによりレトは殺され脱出時にジェシカとポールを守るためにダンカンも命を落としてしまった。そして絶体絶命の危機に陥った彼らの前に現れたのはフレメンの一団であった。敵か味方か?ポールはレトの後を引き継ぎハルコンネン家の企みを打ち破ることが出来るのか?今アラキスに動乱の火ぶたが切って落とされる。

砂の惑星に佇んで

 フランク・ハーバートの『デューン/砂の惑星』は一度デヴィット・リンチにより映画化されており、その後ドラマシリーズとして作られた事もありますがその広大な世界観により映像化は困難を極めると思われていました。何故ならば原作の長大な話を1本の映画にまとめるには無理があるからです。そのためその後に制作されたドラマシリーズは一定の評価を得ているようです。(ロッテントマト調べ)

Dune - Rotten Tomatoes(デューン/ドラマ版/オーディエンススコアのみ)


 とは言え映画はまた別の話になる訳なんですがリンチの前にはカルトムービー『エル・トポ』の監督アレハンドロ・ホドロフスキーが制作に着手したものの頓挫し、リンチが監督する前にもリドリー・スコットにオファーがあった事がリンチ版の『デューン/砂の惑星』のWikipediaに書いてありました。話半分としてもホドロフスキーの話はあちこちで映画ライターや評論家の方々がおっしゃっているので事実なのだと思います。でもうまくいかなかったのは一重にその壮大で長大なストーリーにありましたが近年『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ハリーポッター』シリーズの成功を受けスタジオ側にもそういう長編にかかっても良いだろうという機運があったのか?どうかは分かりませんが『ブレードランナー』の続編を手がけたドゥニ・ヴィルヌーブがこの作品に取り掛かった訳です。

IMAXで観るべき作品

 なんといってもこの作品はそのスケール感が圧倒的でした。こういうビジュアル面での完成度の高さはリドリー・スコットの十八番と思っていましたが、それにもましてのスケール感。そして原作をドゥニ・ヴィルヌーブの解釈で描ききる構成。いやもう感服いたしました。その映像は真、IMAXで観るに相応しい作品でしたね。これまでも『ブレードランナー2046』や『メッセージ』でもSFを描いたドゥニ・ヴィルヌーブでしたが今回は架空の星間国家群を圧倒的なスケール感で描いています。そしてそれはIMAXでないとその迫力が味わえないのですよね。そのため皆観てくれよなっていうのは本来劇場公開時に言うべきだったとは思うんですが実は去年の一番の映画なんですがおススメ出来かねる理由もありました。

俺たちの戦いはこれからだ

 映画が始まって直ぐに「PART1」の文字が出てくるんですよ。つまりこれは続きがありますよと宣言しているんですね。それはまだいいんですがポールがジェシカと逃避行を続けフレメンの部族と出会うんですがクライマックスとでもいうべきシーンがそこなのかと。ダメじゃないけど大きな戦いで何かがというシーンはその前段にあり、オチをつけるには確かにそこしかないポイントではあるんですが物語が小さくまとまってみえてしまうのではないか?と感じたからなんです。なのでうーんと思ってるうちに上映回数は減って(それでもギリギリまでIMAXでやっていたところもあったようですが)終映を迎えてしまいました。


 あとで知ったんですが公開時まだグリーンライト(制作開始のゴーサイン)は点いていなくて興行成績や評価を勘案してからという事だったそうですがドゥニ・ヴィルヌーブは続編を切望していたそうです。そりゃそうです、映像化されたのはこの作品の原作前半でしかないんですから。でも監督は最初からこの作品は続編をもってしないと映像化は無理と考えており製作陣にもそれを伝えてはいたそうです。とは言えここまでの超大作をそのまま映像化するのはリスキーな企画でありそりゃスタジオ側としてはリスクを取りたくないのは当然ですが結果はPART2の製作は無事決定しました。それは素直に喜びたいんですがそうなると一作目を観ないとPART2は楽しめないのかとなります。答はイエス…なんですがそこで問題となるのはやっぱりIMAXで鑑賞できないという事。つまり自宅のテレビで鑑賞してその圧倒的なビジュアルを感じる事が出来るのか?ディテールを汲み取る事が出来るのか?という問題です。公開前にリバイバルっていう話があればいいんですがあまり現実的ではありません。そこを考えると色々悩んでしまうのです。

細部に神が宿る

 押井守監督はよく細部に神が宿るとおっしゃるんですけど『DUEN/デューン 砂の惑星』はそれを愚直に実践している作品でもありましたね。フレメンのスティル・スーツはいうに及ばず宇宙船、オーニソプター、軍服から戦闘服に至るまで。ちゃんとデザインされている。これは簡単なようで難しい。しかも先発作品が(リンチ版だけではなく幻に終わったホドロフスキー版。そして影響を受けているSTARWARSや『風の谷のナウシカ』などなど。)あるために観たな?ってなってしまうのに敢えて直球なのも良かった。なんでも奇をてらえば良いってもんじゃありませんから。

キャスト

 キャストについても少し触れておきたいと思います。主人公ポールはティモシー・シャラメ。初ティモシーかと思ったら『インターステラー』に主人公の息子の若い頃の役で出演していたとか…全然気が付きませんでした。線が細い感じですがその細さが運命に翻弄される序章ではよく出ていてその後、アラキスに立つであろうPART2でどう変化していくのか。予知夢で観た装甲スーツでのポージングではなく彼の内面の変化をどう表現してくれるのか楽しみです。


 ポールの父、レトをオスカー・アイザック、その側室レディ・ジェシカはレベッカ・ファーガソン(正しくは側室ではなく愛妾らしいですが)レベッカ・ファーガソンはこの中では一番印象に残る活躍をしています。この作品でのポールのメンター(導師)は何人かおり、その中でも大きなファクターを担っているのが彼女でファーガソンはその役割によく応えていると思いました。


 ポールの武術の師であり軍の司令官であるガーニー・ハレックにはジョシュ・ブローリン、この作品では武骨な笑わない男でしたが原作では楽器を嗜む面もありどうもそれは最初はあったもののカットされた模様です…残念。とは言えこれはポールの物語なので致し方ないかなと。その部下で同じくポールの武術の指南役であり友であるダンカン・アイダホには「アクアマン」ジェイソン・モモア。弁慶ですよね。義経を守る弁慶ってイメージ。またモモア良い顔をして笑うんですよ。そこがまたいい。帝国の監察官で逃亡の手助けするリエト・カインズ博士はリンチ版では男性でしたが女性として登場。演じたシャロン・ダンカン=ブルースターは英国の俳優で『ローグ・ワン』などに出演しているそうですがシーンは短いながらもこの作品で一番印象に残った方です。


 敵役のハルコンネン男爵はステラン・スカルスガルド、特殊メイクでぶよぶよに太った男爵を怪演していました。リンチ版とはまた違った意味で恐ろしい人物を体現していました。その甥のラッバーンにはディヴ・バウティスタ。ドゥニ・ヴィルヌーブとは『ブレードランナー2049』と組んでいます。そしてハルコンネン家のメンタート(計算人間)役で「ポルカドットマン」デヴィッド・ダストマルチャンが出演。ハルコンネン家は典型的な悪役として描かれていますがこの後も様々な奸計を巡らしそうですしリンチ版でスティングが演じたフェイド・ラウサが登場していないのでそのキャストも楽しみなところです。


 フレメンの部族長、スティルガーはバビエル・バルデム。そしてポールの夢に出てくるフレメンの女性チャニをゼンデイヤが演じています。ここで面白いのはポールの夢ではまるでヤマトのスターシャのような導き手みたいな感じなのに出会うと如何にもタフな砂漠の民って感じなんですよね。そしてどちらも似合うゼンデイヤ、MCU『スパイダーマン』シリーズでも思ってたんですがやっぱり雰囲気をパッと纏える凄い才能の持ち主だなと思いましたね。他にも印象的なキャストが揃っていたんですが主要なところだけでもオールスター感がある重厚なキャスト陣だと思います。

映像の叙事詩

 一言で言えばこの『DUNE/砂の惑星』は映像の叙事詩ということが出来ると思います。遥か未来の出来事でありながら遠い過去に起こった出来事を今紐解いている感覚。そう言う作品でした。思い出したのは昔に観た『火星年代記』というドラマです。これもまた有名なレイ・ブラッドベリのSF小説で観たときは正直辛気臭いドラマだなと思いつつ何故か目が離せませんでした。『DUNE/砂の惑星』にもそういう感覚を感じるのです。架空の歴史を観ながら現実に想いを馳せる。先に待つのは希望か?絶望か?そういうある種の感覚です。諦観と達観、そして運命に抗う人の営みといったものを映像から感じ取る。そういう作品だと思います。但しこれはまだその運命の「序章」に過ぎません。これから語られる事が本質。そう言う意味でもこれは欠けた物語であるのでPART2を鑑賞してから改めてこの作品に対する評価をしたいと思います。

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