永遠に|『エターナルズ』雑感【感想/考察】【ネタバレ注意】-Web-tonbori堂アネックス

永遠に|『エターナルズ』雑感【感想/考察】【ネタバレ注意】

2021年11月12日金曜日

MARVEL movie

X f B! P L

 マーベル・シネマティック・ユニバース(以下M.C.U)も作品を重ねてなんと26作目。それがこの『エターナルズ』です。tonbori堂はしつこいようですが原典コミックスを読んでいないためエターナルズについては全く知りませんでしたがマーベルの中でもメジャーなスパイダーマンやキャプテン・アメリカほどではないもののという感じのようです。(あくまでもTwitterでのアメコミに詳しい方々の映画化に際しての反応)とは言えそれまでの作品にもその姿をみせていたセレスティアルズという神の如き種族が深く関わっていることからまるで叙事詩のような作品となっていました。ある意味M.C.Uのゲームチェンジャーとも称されている作品。実はtonbori堂先に観た『DUEN/デューン 砂の惑星』のような断章を重ねた印象を受けたのです。ただあちらは壮大な序曲であったのに対しこちらは文字通りの叙事詩となっていた事。そして数多くの登場人物が織りなすタペストリーのような映画でした。ということで今回はそんな『エターナルズ』の気になるところや思った事をつらつらと書き留めてみたいと思います。


※そのものをズバリとネタバレしないように気を付けてはおりますが観た人前提で書いておりますので「ネタバレ注意」とさせていただきます。ご了承ください。



Marvel Studios’ Eternals | Official Teaser|Marvel Entertainment |YouTube

守護者たち|STORY

 紀元前5000年、地球に突如として現れた超常の者たち。リーダーのエイジャック以下セルシ、イカリス、キンゴ、スプライト、ファストス、マッカリ、ドルイグ、ギルガメッシュ、セナたちエターナルズは遥か彼方の宇宙からセレスティアルズから人類を脅かすディヴィアンツから護りディヴィアンツを根絶するため送り込まれた不死の種族。長きの戦いで最後のディヴィアンツを倒したあとそれぞれの人類への関わり方や考え方の違いでエイジャックは帰還までの間エターナルズを解散しそれぞれ人間社会で暮らす事になる。


 サノスのデシメーション(指パッチン)からアベンジャーズが再び人類を含む全世界を元に戻したことによりある事態が発生。バラバラだったエターナルズは再び結集することになる。地球の滅亡まであと7日。蘇ったディヴィアンツが襲い掛かる中エターナルズはこの危機を回避する事が出来るのだろうか?

幻魔大戦+サイボーグ009

 tonbori堂が最初に思ったのは幻魔大戦でした。石ノ森章太郎の幻魔大戦がスーパー幻魔大戦になった感じです。平井和正ではなく石ノ森章太郎の漫画版にサイボーグ009たちが登場して東丈の代わりに幻魔と戦う感じが一番近いかなと思いました。それはエターナルズの秘密関係があるのです。tonbori堂は原典コミックスに疎いのですがそれでも次作品が発表された時にエターナルズというのはディヴィアンツとともにセレスティアルズから作られた生命体であり、ディヴィアンツが失敗作であったためエターナルズを作りそのミスを修正しようとしたと聞いていました。


 でも今作ではエターナルズは惑星オリンポスからやってきた種族でありセレスティアルズより宿敵であるディヴィアンツを倒してその惑星の生命体を守るという使命を受けてきたとなっていて、M.C.Uの原典からの引用的改変かなと思っていたんですがさらに驚きの改変があったのです。詳しくは本作を観て欲しいと思うのですがエターナルズはやはりセレスティアルズが創り出したのでありその真の使命というものが地球の危機に直結しているという点で幻魔大戦+サイボーグ009を想像してしまったんですよね。

クロエ・ジャオの描き出す世界

 この作品の監督はクロエ・ジャオ。永きに渡る時間を手繰り寄せるストーリーをよくぞまとめあげたなクロエ・ジャオって思いました。ちなみにジャオ監督の作品はこれが初見です。今年のアカデミー賞で監督賞を受賞した『ノマドランド』は未見ですがスーパーヒーローの登場する映画を初監督とは思えない手腕でそれぞれの断章を上手くまとめ上げていたと思います。ロケーションも多用した画作りはブルーバック合成の多い作品ではありますが他の監督とはまた違った画と情感を醸していました。幾つかのシーンはそれまでのM.C.Uと同質な部分もあるのですが、メソポタミアやドルイグが隠棲している密林のコミュニティ、ファストスが広島の原爆投下後での慟哭。そのファストスが夫と彼らの子どもと暮らしている家。それぞれの断章がまとまり始める最終章までの流れなどは『DUEN/デューン砂の惑星』より腑に落ちる流れになっています。(『DUEN』の感想はまた別にエントリを上げますが)あちらは流れとしては一本道を時系列に追っているのに断章っぽいシーンが重ねられたものになって叙事詩を叙情的にみせようとしていましたけど、こちらは叙情的な断章を重ね合わせてレイヤーが合わさった感じになっていると感じました。『ノマドランド』はディズニープラスで鑑賞できるそうなのでまた観ようと思いますが、こういった超人だけど人間らしい感情を持つ不朽の時を生きる者たちの愛や苦悩を重ね合わせるためにこの156分が必要だったのだなと思います。

普遍的な多様性

 この作品は多様性が普通に存在しています。エイジャックは原典コミックスでは男性として設定されていましたがサルマ・ハエックが演じる女性と変更されました。またエイジャックが自らが命を落とした後にセレスティアルズとつながる事が出来る通信球を託したのは物質を変換する事が出来るセルシです。普通なら目から光線、そして自由に空を飛べる力の強いイカリスがリーダーと考えるところですがセルシにリーダーを託すという部分にも非常に力強いメッセージを感じます。そしてディヴィアンツを倒し地球を見守るという目的を持つエターナルズですがそれぞれに個性があり考え方も違う部分やメンバーの一人マッカリは耳が聞こえません。(演じるローレン・リドロフも聴覚障害者です)でも普通にいる。そこがいいんですね。否定から入らない。実はその気配が少し感じられるのはイカリスでありキンゴでありドルイグであり男性からなのです。そこもまたまだまだ多様性というものには困難があることも感じさせる作劇となっていると思います。だからこそギルガメッシュがセナを無償の愛で受け止める部分が尊いのです。ただただ傍にいる。セナが過去の記憶で我を見失って刃を向けても受け止める。それでいて恩着せがましくしない。ただ傍に寄り添うのみ。もっとそこは情感もっとっていう感じでも抑制しながらも演者にまかせるジャオ監督のスタイルが光っていましたね。

セレスティアルズ

 セレスティアルズがエイジャックに命じた真の目的がエターナルズを揺るがす事になるんですがセレスティアルズはインフィニティ・ストーンを使い星を砕いたり、その頭部の化石がノーウェアというアウトローの巣窟になっていたりとかエゴという一つの星が生命体として登場したりとしてきました。(ただしエゴは真のセレスティアルズかどうかはM.C.Uでは保留としたいところです。)しかし今回セレスティアルズという種族がはっきりと姿を現したのは『エターナルズ』が初です。M.C.Uはまた一つ大きな枠組みを観客の前に提示しました。今後このセレスティアルズが人類の敵となるのか?それとも味方となるかは分かりません。(地球を宿主として知的生命体のエネルギーで同族を育てるというのは彼らの種族保持のための行動であり人類を滅ぼそうとして滅ぼすのではなく同族を産みだす結果として滅んでしまうということでしかなく、人類とは別のスケールで動いている生命体なのです。ただそれさえも包括してクライマックスがあるのですが。)もちろんこのクラスとなれば単純に星を喰らうギャラクタスというヴィランもいます。(ファンタスティック・フォーの映画でもシルバーサーファーが登場する話で登場しました。その時は不定形なガス状の生命体でしたがコミックスでは実際に鎧をまとった姿を持つヴィランとして設定されています。)彼らはコズミック・ビーイング、宇宙的存在とされ強大な力を振るう事が出来ます。エターナルズを創り出したアリシェムはこの地球が同族であるセレスティアルズ・ティアマトの命を引き換えとなるほどの価値があるかどうかを判定すると語っていましたが、そうでない場合はまたすぐにでも地球に戻り砕いてしまうかもしれません。またはその存在を認めるかもしれません。今後の動向が気になる存在です。

M.C.Uクロスオーバー

 今後M.C.Uへのクロスオーバー要素や登場人物が他作品に登場するかは不明です。物語の最後に『エターナルズ』は戻ってくるとありましたがプロデューサーからは続編については考えられていない?かのような発言もありどうなるかは不明です。それでも今作台詞や描写でM.C.Uとの繋がりがしっかりとありました。例えばアスガルド人とエターナルズはそれぞれが長命であることから面識があるかのような発言がありましたし、ファストスがイカリスと戦ったときに使ったリング状の武器。それにユニ・マインド(エターナルズの意識を繋いでセレスティアルズを睡眠状態にしようとした)を行うためのガジェットはブレスレット(腕輪)。腕から光のリングを出してガジェットを組み立てる優れたエンジニアであるファストスの力はもしかして遥か以前にリングを産み出しそれをウェンウーが拾った…つまりテンリングスはエターナルズ起源?なんてちょっと想像してしまった人は多いはずでは?(tonbori堂だけかな?)


 そしてミッドクレジットシーンに出てきた人物…うん君だれや?(ヲイヲイ)原典コミックスファンからも若干の戸惑いをもって迎えられた彼に関しては今後どういう動きをするかは読めませんがその別名が『スターフォックス』だとネットで調べて知った時に任天堂64のあのゲームを思い出しました(笑)友人のウチで遊ばせてもらった事があるんですよね。懐かしいとこれは余談です。その彼にしても出自を含めて宇宙のメンバーと地球のメンバーを繋ぐかもしれない人物になりそうですし、ポストクレジットシーンではセルシの恋人デインがいわくありげな剣を取ろうとして謎の声に呼び止められます。アレは誰の声だ?ってなりましたけどかなり意外な方でした。今後剣を振るう者同士で共闘があるのかな?でも魔法や呪いの類ならまずはストレンジじゃないかとも思うんですが彼はスパイダーマンNWHやマルチバース・オブ・マッドネスがありますからね。でも今後はストレンジとデインそして声の主は絡んでいきそうな気がします。

エターナルズは帰ってくる

 ラストシーン暗転後にお約束である「エターナルズは帰ってくる」の文字が出てきました。現在プロデューサーの発言として続編は考えていないという話ですがどうやらそうでもない話もあったり。しかしラストから考えると続編ないしは続編的物語は必要であり『エターナルズ』という作品としては完結してもセレスティアルズとエターナルズの物語はまだまだ語るべきものが多く残っています。もちろんミッドクレジットのスターフォックスにポストクレジットのエボニー・ブレードとなぞの声の主と。


 同じく宇宙を舞台とする『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーVol.3』がトリロジーとして完結する事はアナウンス済ですがこれからまだまだ宇宙からの来訪者や宇宙を舞台する物語は作られる事になると思います。その時にセレスティアルズやエターナルズが関わりを持つ事はあるでしょうし、全員ではなく個々でアッセンブルも考えられます。エターナルズの今後は是非とも観たいですね。そして『エターナルズ』で描かれたものが今後のM.C.U作品へどういう影響を与えていくか?それはストーリーラインの話だけではなく表現として、関わりとしてその部分への期待も膨らみました。『エターナルズ』は間違いなくM.C.Uフェイズ4のターニングポイントととなる1本だと思います。

ハズブロMARVEL マーベルレジェンドシリーズ 映画エターナルズ/マッカリ 6インチアクションフィギュア(Amazon)/他にもセルシ、イカリス、ドルイグ、キンゴ、スプライト、ファストスがありますが何故かセナとエイジャックは別でマーケットプレイスからの販売かつギルガメッシュはないんですよ。と思ったら…セルシからの7体買うとギルガメッシュがという!上手いな、ヲイ!って感じです(笑)あとディヴィアンツのクロもありました。

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