『映像研には手を出すな!』第11話「それぞれの存在!」|感想と考察【ネタバレ注意!】-Web-tonbori堂アネックス

『映像研には手を出すな!』第11話「それぞれの存在!」|感想と考察【ネタバレ注意!】

2020年3月20日金曜日

anime manga SF

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 残すところあと1話。とうとうここまでやってきました。というかこのところ俗に言う「神回」が続いていると原作者の大童澄瞳氏がおっしゃっていますが、個人的には神回ってのはどうにもしっくりこないので傑作回が続いたとしたいところです。ですが今回は敢えて「神回」と言いたい。これまで確信犯的に原作エピソードの前後を入れ替えたり、登場人物を増やして作品の厚みを増したりしていたわけですが(その意味では「大芝浜祭!」も傑作回でした。)今回はその結晶が出てきたという回になっていました。

『映像研には手を出すな!』公式アカウントのツイート

神回

 「大芝浜祭!」後のエピソードは原作3巻のお話を骨格に据えて作られています。アニメでは6話のロボ研アニメ制作時から登場の百目鬼氏はこの巻からの登場で、浅草氏に重要な気付きを与えたりするけれど基本的に音にしか(正確には音を録る事にしか)興味の無い人物です。強いこだわりというよりは音を集める事が当然と考えて行動している、まあ変人です。とは言え特化したその能力は映像研には強い戦力となり音も豊かになったわけですが。


 で3巻の最初のエピソードはこの11巻での、顧問の藤本先生の「遊べ、若人よ」からの暗渠からの地下水路と水没した区画での大アトランティス連合です。実はこのエピソードで出てきたお話と第10話の水車の話は原作では特に拾われていません。まあ浅草氏の妄想から出てきたネタの一つとしてボツとなっていった上で、最終的には怪力線砲塔と謎のUFOが戦う「雑居UFO大戦争」という短編をCOMET-Aにて販売する事となったわけです。


 湯浅監督はこの水車と大アトランティス両方のエピソードもすくった上で「芝浜UFO大戦」の敵は?いったい誰と戦うのか?というところから、先のダンスシーンまでをもつなげてオチとなしたわけです。もうそこまでの流れが余りにも素晴らしくちょっと震えましたね。原作はまだ続いており、4巻では浅草氏開眼の本格ストーリーアニメ『たぬきのエルドラド』5巻ではアニメ研と芝浜高校裏の時計塔を中心に巻き起こるストーリーが描かれています。実は『芝浜UFO大戦』はストーリーも軸に据えられていますが、原作ではこの時点ではまだそこまで触れられていません。そこをも掬ってくる原作リスペクト。そして原作を120%活かす方向でそれをやり遂げるための構成に震えた訳です。原作通りに、つまりアニメとして原作を余すところなく表現する。そのための原作順序の入れ替え、百目鬼氏の早い登場などなどそれが結晶となった回でした。


 ファンはこのクオリティに当然のように2期ありますよね?という流れになっていると思うんですが(当然、原作者もスタッフサイドもTwitterのツイートからノリノリなのは感じられます)原作ストックやオリジナル展開を挟むにしてもそれが直ぐに結実するとは限りません。もっと言えば金森氏的に言えばリクープ出来ないと次作など夢また夢。となれば浅草氏は今そこに持てる限りのものを注ぎ込むのが当然な訳です。そして監督は映像研の芯となる部分を取り出しそこに込めていった事がよく分かるのです。いやもうそうなんだろうなという思いでずっと観てましたけど、完全に確信をもってそこにたどり着いたというか。それは「芝浜UFO大戦」のオチを浅草氏が金森氏に言って聞かせる共生というテーマ。そこに込められているものの重みというものとそこに至る道筋で想いが確信に変わったのです。いや本当に神回でしたね。

芝浜UFO大戦

『映像研には手を出すな!』第3巻~第5巻|小学館刊/大童澄瞳 著
『映像研には手を出すな!』第3巻~第5巻|小学館刊/大童澄瞳 著|tonbori堂私物

 そんなTVアニメ『映像剣には手を出すな!』の集大成になるであろう最終話が『芝浜UFO大戦』というタイトルになるという事が今日(2020.03.20)分かりました。教頭からの横やりもなんとかかわして最期の音入れの段階でデモ音源とは違う音源が届いたことで最期のダンスで和解というシーンにまったく合わない感じになってしまったという最大級のトラブルです。これをどう回避するのか?ってのも気になりますが(あらすじを読みましたけどどうなるかは本編のお楽しみにしたいと思います。)『映像剣には手を出すな!』最終回ラストシーンは原作の最終ページで決めてくると思うんです。それはこれまでのエピソードを見てても明らかですが、「動く」ことによって、またアニメならではのストーリーの織り込みでまた新たな道が見えてくるのではないか?と思っています。ともかく泣いても笑っても次が最終回、じっくりと味わいたいと思います。

おまけ

 攻殻機動隊パロディシーン、入らないかと思いましたが入ってきましたね。生徒会の切り込み隊長こと阿島九が映像研の屋根で少佐よろしくテーザーを構えてるシーンは出ませんでしたけど。窓の外からテーザーで狙撃されてその後ソワンデが校安って入ってくるところからでした。まあ屋根の上で銃を構えてる少女、警備部の踏み込むシーン、そして組織の名乗りで組み立てればコマ割が違えど分かるんですよね、マニアは(笑)とは言え九のシーンが無くても取り囲む機動隊に組織の名乗りだけでも十分攻殻味でてたのは面白いなと思いました。いや本当に余談ですね(苦笑



※『芝浜UFO大戦』エピソードの元になる原作第3巻。

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